はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

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2010-10-11 13:28:48 | ペン&ぺん
 ウェンディという名は男の子の名前だと、ずっと誤解していた時期がある。大学生のころだ。
 1980年代。米国のロック歌手、ブルース・スプリングスティーンが好きだった。アルバムを全部持っており、レコードがすり切れるほど何度も聴いていた。彼の曲「ボーン・トゥ・ラン(邦題=明日なき暴走)」の中で「来いよ、ウェンディ」と呼びかける歌詞があった。どういう訳か、男の子が、男の友だちを誘っているイメージが浮かんだ。やんちゃなダウンタウン・ボーイたちの姿を心に描いていた。
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 「ピーターパン」は、ご存じだろう。日本でも頻繁に舞台で演じられる人気作。主人公は大人になりきれない男の子。
 原作は英国の作家、J・M・バリーが1911年に出版した。原題は「ピーター・アンド・ウェンディ」。そうでした。スプリングスティーンが歌っていたのは、ピーターに家から連れ出される女の子、ウェンディのことだ。歌詞には、どこにも書いていない。でも、お母さんから童話を読み聞かせしてもらった英国人や米国人なら、そう受け取るらしい。
 日本では福音館書店から出ている本(石井桃子訳)がお勧めだ。心地よい文章が続く。その一節。
 「お母さんが初めてピーターのことを聞いたのは、子どもたちの心の整理をしている時でした。子どもたちが眠ってしまってから、子どもたちの心をくまなくかき回して検査するのは、どのいいお母さんも夜ごとやる仕事です。(中略)それは、引き出しを整理するのによく似ています」(一部、ひらがなを漢字にし引用した)
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 今年は国民読書年。大人になってこそ、初めて心に染みる一文もあります。読み返してみませんか。昔、読んでいた懐かしいページを。
  鹿児島支局長・馬原浩 2010/10/11毎日新聞掲載

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 筆者付記。上記コラムの執筆に際し、何人か英語を読み書き出来る同僚に意見を求めた。
「ボーン・トゥ・ラン」の歌詞を改めて点検してくれた記者からは「ハニー」と呼びかけている部分もあり「どう聴いても、男の子が女の子を誘っている歌詞です」との指摘があった。別の同僚には「アイ・ウォナ・ビー・ユア・フレンドって、呼びかけている。ダチになろうぜって意味で、男性の友人同士と受け取れるだろう」と言ってみたが、「それは、お友だちから始めましょ、っていうヤツです」と軽くあしらわれた。つまり、コラムの前半部分は、ただただ、筆者の英語力のなさを示している。他方、誤解して聴いていたという事実は、変えられないため、指摘を受けたあとも文章を変えなかった。同僚たちの協力に感謝します。

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