はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆1月度入選

2012-02-24 14:26:36 | 受賞作品
 はがき随筆1月度入選作品が決まりました。
▽出水市緑町、道田道範さん(62)の「ラストシーン」(7日)
▽鹿児島市薬師、種子田真理さん(59)の「マイ骨壺」(13日)
▽同市真砂本町、萩原裕子さん(59)の「さらりと生きる」(4日)

の──3点です。

 映像文化関係者の話ですが、テロリズムの映画などで、いくら迫力のある映像を作っても、9.11の映像以上にリアリティーのあるものはできにくいそうです。同様に、自然災害のパニック映像の作成も、3.11の映像以上のリアリティーは難しいそうです。3月11日が近づいてきました。言語文化にはどのような表現の可能性があるのでしょうか。
 道田道範さんの「ラストシーン」は心温まる内容です。病院で見かけた、上品で温かい雰囲気の老夫婦の情景のスケッチですが、素晴らしい夫婦愛を見つけるのも、思いやりと包容力のある観察者の心が必要のようです。
 種子田真理さんの「マイ骨壺」は、骨壺の話は文章にし難いものですが、感じのいい内容にまとまっています。有田の陶器店で買った、桜の図柄の骨壺が気に入った御母堂は、桐箱に入れて、来客にも披露しているという、その情景が目に浮かぶような文章です。
 萩原裕子さんの「さらりと生きる」は、題とは異なる、暗い悲しい内容です。御主人の病状が思わしくなく、それを悲しむ自分を逆に御主人が慰めてくれるという内容です。「さらりと生きる」と言っても、老いと死の問題はそれほど簡単なものではありません。文章表現はあるいは一つの解決策になるかもしれません。
 入選作の他に3編を紹介します。
 阿久根市大川、的場豊子さん(66)の「もったいないⅡ」(30日)は、片付け方の本を読んで、ゴミ5袋分を捨てることにしたが、ゴミ出しまでの間に、逆にゴミの量が減ってしまったという、もったいない世代の心理が描かれています。
 鹿屋市寿、小幡晋一郎さん(79)の「偶然の数字」(17日)は、車の購入日が11年11月11日であったり、父親の誕生と死亡が同月同日であったり、私たちが偶然の数字の巡り合わせのなかで生きている不思議が書かれています。古い中国では、運命のことを「数」といいます。
鹿児島大学名誉教授・石田忠彦

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