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はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

コスト考

2011-12-06 18:13:16 | ペン&ぺん
 「使わない機能が多すぎますよね」
 先日、鹿児島市内の会社を訪ねた際、会社幹部とのよもやま話が携帯電話に及んだ。
 「社員用の携帯を持たせるにしても、仕事では電話とメールしか使わない。電話会社は多機能を売りにしますけれど、ムダですよね」
 同じ携帯会社の機種に統一した方が通話料などのコストは安くなる。だが、社員に携帯を貸与するには、使わない機能が多すぎるという。
 「それに」と幹部は続ける。「全部の機能を使わないまま捨てられる携帯やパソコンは、社会全体にとっては浪費だと思います」
確かに、ある会社の内部だけ、ある時期だけのコストではなく、世の中全体のコストを考える必要もある。
   ◇
 11月下旬に公表された政治資金収支報告書。県選管が公表した資料は約980団体分。A4判の資料にして約8000㌻に及ぶ。
 そのコピーの整理を支局で手伝ったが、前年分を翌年に繰り越すだけで実質的な活動をしていない団体も多い。それも含めて点検作業は膨大。提出する政治団体側の事務量も相当だろう。
 記入事項は多岐にわたる。政治活動の報告会などで司会を依頼した人への謝礼3万円、名刺整理と案内状あて名書き6万円などなど。政治にかかわる資金の流れを可能な限り透明にするには詳細な報告が必要だ。いわば、健全な民主主義を維持するためのコストなのだろうと感じた。
   ◇
 さて、師走。賀状を印刷しようかと思い、印刷会社のパンフレットを眺めた。今年は東日本大震災の影響か、毛筆で大きく「絆」と書いたサンプルなどもあった。
 地縁血縁、友人など社会的な絆の価値は、金銭では表せない。コスト計算できぬものの大切さを思うのも歳末だろう。
  鹿児島支局長 馬原浩 2011/12/5 毎日新聞掲載