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はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

弦のひびき

2007-08-23 13:20:21 | アカショウビンのつぶやき




演奏を終えてホッと…笑顔の団員たち




 かのやオーケストラの第6回定期演奏会に行って来ました。
それぞれの楽器が奏でる美しいハーモニーは胸のうちに響き、豊かなひとときを過ごしました。

第1曲は、モーツアルトのディヴェルティメントヘ長調。
室内楽をこよなく愛した亡夫がいつも聞いていた懐かしい曲。
響き合う弦の音色は美しく、よくここまで練習したなあと感動。

第2曲は、シューベルトの交響曲第7番ロ短調「未完成」。
私たちが若い頃は大作曲家や名曲をテーマにした名画が数多く、
ハンス・ヤーライが主演した「未完成交響楽」は何回見たことだろう。
若き日を思い起こしつつ、繰り返し演奏される主題に酔いしれていた。

最後はベートーベンの交響曲第1番。
28歳のベートーベンが作った若々しい曲。あまり馴染みのない曲だが、やはりベートーベンらしい重厚さを感じさせる曲だった。

この鹿屋の地で、6年間地道に練習を重ね、私たちの誇るべきオーケストラとして成長を続ける「かのやオーケストラ」。
これからの更なるご活躍を祈りつつ会場をあとにした。


解体の日

2007-08-23 13:19:53 | はがき随筆
 40年余り人生の最も苦労との戦いの中で住んできた住居を解体する日がやって来たのです。早朝、まだ明けきれぬ小庭から家財を出し終えてがらんとなった家の中へ。台所、居間、寝室、子供部屋など、過ぎし日の喜怒哀楽が走馬灯のごとく頭の中をかけめぐってくるのです。神棚の前に座して、つつがなく暮らすことができたお礼と感謝を拝礼していると熱いものがこみ上げてくるのを禁じ得ませんでした。帰り際、目頭を押さえてじっと立っている末娘を見た時、門ごしの朝露にぬれたアジサイから落ちてくる滴の玉を複雑な思いで追っていることでした。
   鹿児島市 春田和美(72) 2007/8/23 毎日新聞鹿児島版掲載