はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

落ちた雛

2007-08-01 19:08:23 | アカショウビンのつぶやき
 隣の庭の隅に変な色の蛙がもぞもぞ動いている。
「あらっ変な蛙が居るよ」と姉に言うと、「蛙じゃないがね、よく見てごらん、スズメの雛だがね、また落ちたんだねぇ」。
拾い上げて見ると、まだ毛が生えてないつるつるの体はピンク色、時々黄色い嘴を大きく開けるけれど、声にならない。
「あんたの家の屋根のスズメの巣からよく落ちるんだよ、可哀相だけど育たないもんね」と。
 自然界は厳しい、巣に帰したとて、人間の匂いがついた雛を親鳥が育てることはないだろう。母鳥のように育てることは、私にはできそうもない。しばらく手のひらの上で温めてみたが、やがて全く動かなくなってしまった。
 小さな雛をテッシュに包み、クリスマスローズの根元にそっと戻した。

霧の朝

2007-08-01 18:46:28 | はがき随筆
 いつものように4時前に起きて外に出てみる。せっかく梅雨が明けたのに曇って何となく暗い。山並みも家々もかすんでいて灰いろの霧が立ちこめている。あるいは靄なのかもしれない。
 海岸に向かって歩きながら、ふと地震の起きた新潟地方のその後の生活を考えた。大変だろうと思うと同時に、水にも電気にも不自由しない生活をありがたいと思った。協力できることは協力して、避難された方々が一日も早く普通の生活に戻られることを祈りたい。
 海も霧に包まれて島影も見えず、波の音だけが静かに聞こえていた。
  志布志市 小村豊一郎(81) 2007/8/1 毎日新聞鹿児島版掲載