ある日、私は一編の詩に心を奪われた。それは杉山平一の「よもぎ摘み」という短い詩である。
戦争へ行ったまま4年になるのに
良人はまだ帰ってゐなかった
彼女はその日よもぎを摘みに出た
一番末の子をおんぶして
八つの姉娘と五つの子は家で絵本を見て乏しい昼餉を待っていた
…………
私はその詩を何度も読み返した。よもぎ摘みの最中、母親は幼い子供たちを残したまま、電車にはねられ死んでしまうのだ。戦地から帰らぬ夫を待ち続け、あまつさえ食糧事情も乏しい戦時下に、3人の幼子を抱え、必死に生きる母親。
素直な子供たちは、おなかを空かしながらも、おとなしく母親の帰りを待っていたのだろう。情景が目に浮かび胸が詰まった。
戦争がもたらす不幸は、貧しさに追い打ちをかける。
何のため、誰のための戦争なのか。
過酷な時代を生き抜いた人でなければ、真の苦しさは分からないだろう。
戦後に生まれ、2人の子の母親として今思うこと。それは、再び軍靴の響きが聞こえることのない世の中であってほしい。切にそう願う。
長崎市 斉藤敬子(58)2007/8/16 毎日新聞鹿児島版「女の気持ち」欄掲載
戦争へ行ったまま4年になるのに
良人はまだ帰ってゐなかった
彼女はその日よもぎを摘みに出た
一番末の子をおんぶして
八つの姉娘と五つの子は家で絵本を見て乏しい昼餉を待っていた
…………
私はその詩を何度も読み返した。よもぎ摘みの最中、母親は幼い子供たちを残したまま、電車にはねられ死んでしまうのだ。戦地から帰らぬ夫を待ち続け、あまつさえ食糧事情も乏しい戦時下に、3人の幼子を抱え、必死に生きる母親。
素直な子供たちは、おなかを空かしながらも、おとなしく母親の帰りを待っていたのだろう。情景が目に浮かび胸が詰まった。
戦争がもたらす不幸は、貧しさに追い打ちをかける。
何のため、誰のための戦争なのか。
過酷な時代を生き抜いた人でなければ、真の苦しさは分からないだろう。
戦後に生まれ、2人の子の母親として今思うこと。それは、再び軍靴の響きが聞こえることのない世の中であってほしい。切にそう願う。
長崎市 斉藤敬子(58)2007/8/16 毎日新聞鹿児島版「女の気持ち」欄掲載