はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

梅の季節

2007-02-12 12:13:00 | アカショウビンのつぶやき




 子供たちの小学校卒業記念樹、紅白の梅が散り始めた。
まん丸い小さな花びらは、風に乗ってチョウのように舞い落ち、やがて庭中を紅白に染めてしまう。

巣立っていった子供たちが大きく成長したように、この樹も二階の窓に届くほどに伸びた。当時子供たちが可愛がっていた猫は、猫のくせに木登りが苦手。愛猫のために二階の子ども部屋に木登りで上がってこれるようにと場所を選んで植えた息子。今でもご近所の猫たちに人気があるらしいけど、相手が猫じゃしょうがないなあ…と嘆く母です。

大きく育った梅でも、油虫の駆除をしなかったため年々弱り、一時は諦めましたが、昨年オルトランを散布してから蘇りました。枯れてしまった枝は寂しく残っていますが、生き生きとした枝には蕾がいっぱいつきました。

困難な問題を抱えた子供たちにも、今は忍耐の時よ! と励ましているアカショウビンです。


冬スミレ

2007-02-12 10:46:15 | はがき随筆
 母と2人で暮らしている私に、友だちがしみじみと言う。
 「家庭介護をしている人をみると尊敬するわ。私も看てやればよかった、と後悔しきりよ。息抜きしながらでもやり抜いてね」
 「心で殺す」と誰かが言ったが、認知症が進んでいく母といると、この言葉が頭をよぎる。
 トイレはどこ? 電気のスイッチはどれ? これは食べてもいいの?
 曇りがちな母の顔を、笑顔に変える言葉をさがす朝夕である。
 母の窓に、冬スミレがひそと咲いている。
   阿久根市 別枝由井(65) 2007/2/12 掲載