たいへん面白い本です。
齋藤光政著『偽書「東日流外三郡誌」事件』
新人物往来社の新人物文庫。
450頁ほどの厚さがありますが、一気に読んでしまえます。
文章も良い!
著者は新聞記者ですから、凝った形容をされません。
理系の方などにしばしば見受けられる無理やりモってある
「詩的」な文章の反対で、さらりと書いてあります。
内容が、考えようによってはおどろおどろしい世界ですから
すっきりとした日本語がありがたいですね。
○
本屋でチェックできる方は、この文庫本の終わり辺りを
先にご覧になり、「あとがき」を2頁ほど読んでいただけば
どのような本か分かると思います。
今ではほぼ完ぺきに偽書とされている「東日流外三郡誌」が
なぜ一時期もてはやされ有名になったのか。
この事件から現代の日本が見えてきます。
東北では前土器遺跡のフェイクでFさんが有名ですが
それよりもさらに深い問題を提起している事件でしょう。
○
偽書ではないという説もあるそうです。
しかし、この本を読めば答えは決まっていますね。
Aと非Aとが対立している場合、片方の話を聞けば
「そうだ、完璧にAが正しい」と思い
あとで非Aを読むと「いや非Aだ」となる
困った私ですが、この偽書に関しては間違えることは
ないでしょう。
それほど目配りがきいた本です。
○
こういう証拠で偽書だ、という部分も面白いのですが
それより、この偽書事件を通して見える日本文化の
ありかたが勉強になりますね。
なぜここまでウソがまかり通ってしまったのか。
嘘を作り上げた人物像から文化的背景、日本社会の
かかえる問題まで、幅広く言及してあります。
学者や専門家もマスメディアも問題があります。
それ以上に役人の罪が重い。
いわゆるお役所仕事がいかに重大な影響を与えるか
おそるべき実態があきらかにされます。
ニセモノ造りだけが悪いのではない、ようです。
この本の中から短く引用しますと
「自分の頭で考えることを怠ってきた日本人独特の
前例主義」
「主体性のない横並びの論理」
筆者が厳しく言及しているのは役人だけではなく
日本文化に根付く「お役所」的事なかれ主義の人々
すべてに向けられたものでしょう。
また偽書と分かっていても未だにそれを利用する
文化にも怒っておられます。
「面白いからよい」「ロマンがある」などという
逃げ口上で商売にいそしむ人がいるのです。
金がもうかればよい、厭な世の中ですね。
とはいえ私も清貧に生きる立派な人間なんぞには
なれそうもないのですけれども。
○
忘れていました。
「東日流外三郡誌」は(つがるそとさんぐんし)と
読むそうです。
齋藤光政著『偽書「東日流外三郡誌」事件』
新人物往来社の新人物文庫。
450頁ほどの厚さがありますが、一気に読んでしまえます。
文章も良い!
著者は新聞記者ですから、凝った形容をされません。
理系の方などにしばしば見受けられる無理やりモってある
「詩的」な文章の反対で、さらりと書いてあります。
内容が、考えようによってはおどろおどろしい世界ですから
すっきりとした日本語がありがたいですね。
○
本屋でチェックできる方は、この文庫本の終わり辺りを
先にご覧になり、「あとがき」を2頁ほど読んでいただけば
どのような本か分かると思います。
今ではほぼ完ぺきに偽書とされている「東日流外三郡誌」が
なぜ一時期もてはやされ有名になったのか。
この事件から現代の日本が見えてきます。
東北では前土器遺跡のフェイクでFさんが有名ですが
それよりもさらに深い問題を提起している事件でしょう。
○
偽書ではないという説もあるそうです。
しかし、この本を読めば答えは決まっていますね。
Aと非Aとが対立している場合、片方の話を聞けば
「そうだ、完璧にAが正しい」と思い
あとで非Aを読むと「いや非Aだ」となる
困った私ですが、この偽書に関しては間違えることは
ないでしょう。
それほど目配りがきいた本です。
○
こういう証拠で偽書だ、という部分も面白いのですが
それより、この偽書事件を通して見える日本文化の
ありかたが勉強になりますね。
なぜここまでウソがまかり通ってしまったのか。
嘘を作り上げた人物像から文化的背景、日本社会の
かかえる問題まで、幅広く言及してあります。
学者や専門家もマスメディアも問題があります。
それ以上に役人の罪が重い。
いわゆるお役所仕事がいかに重大な影響を与えるか
おそるべき実態があきらかにされます。
ニセモノ造りだけが悪いのではない、ようです。
この本の中から短く引用しますと
「自分の頭で考えることを怠ってきた日本人独特の
前例主義」
「主体性のない横並びの論理」
筆者が厳しく言及しているのは役人だけではなく
日本文化に根付く「お役所」的事なかれ主義の人々
すべてに向けられたものでしょう。
また偽書と分かっていても未だにそれを利用する
文化にも怒っておられます。
「面白いからよい」「ロマンがある」などという
逃げ口上で商売にいそしむ人がいるのです。
金がもうかればよい、厭な世の中ですね。
とはいえ私も清貧に生きる立派な人間なんぞには
なれそうもないのですけれども。
○
忘れていました。
「東日流外三郡誌」は(つがるそとさんぐんし)と
読むそうです。