『機雷』

2014-07-29 16:30:42 | 本の話
古い本があります。
光岡明『機雷』講談社

文庫にもなっているそうですが
手元にあるのは単行本
1982年3月、第6刷となっています。

直木賞を受賞し話題となっていたので購入した
のでしょう。

この本は父方の叔父から貰いました。

400頁近くあるし「戦争もの」だし、で手が出ず
つい最近、埃をはたいて開いてみました。

放っておいたからか本の状態は極端に悪いのですが
力強い内容に引き込まれています。

フィクションでなければ出版できないという(真実)
これを描いて秀逸な作品です。


時代掛ったものを表現するに、おおまかに二通りの
方法があります。

時代を設定に借りるだけで内容は現代であるもの、と
時代をきちんと再現しようとするもの、と。

後者が圧倒的な仕事量になります。
朝ドラのようなちょろいものは前者(今のもひどいね)

もちろん前者がただ無責任なだけに終始しているとは
申しませんが、人々の感覚をミスリードするので
安易な筆はご遠慮願いたいですがねえ。
金儲けだからどうでもいいのか。


逆に時代をそのままに再現しようというものは
読み手が御粗末だと、その当時の人間が分からず
活字を追いつつも理解できないでしまう恐れがあります。

なぜ戦争に赴いたのだろう?とか
心の底から死を恐れなかった人がいるとか
私が今の中学生なら理解できないかもしれない。

だれも責任をとらず、何となく戦争になったのは
分かるような気がします。
現代がそうですからね。


叔父は戦時中は学生でした。
商船学校に行ったようですから少し年齢が上なら
海軍に入るコースだったはずです。

彼がなぜ「この本をやろう」と言ったか
今になって分かる気がします。

遺言のようにして伝えたかった(真実)
カッコよくもヒロイックでもない戦争

今、新刊で出ても誰も読まないでしょうね。
戦争ごっこばかりが受ける世の中です。


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