私はひっつき虫。正式な名前はしらない。
老人のズボンにひっついて来て、今は老人の部屋の座布団の上。
老人は掃除をしない。従って、私は座布団の上から動かない。イヤ、動けないのだ。
彼が座布団の上に座ってくれれば、ズボンにひっつく方法もあるのだが、座布団には座らない。
自室にいるとき、彼は椅子に座っている。パソコンを操作したり、書きものをしたり………。
電話をするときも椅子に座ったままだ。
電話の相手はさまざまだが、相手によって、使用する電話が違う。
兄弟や親戚関係は、固定電話。お互いに健康状態の確認をしている様子だ。
友人関係はケイタイ専門。内容のほとんどは遊びの相談で、さしたる内容ではないらしい。
女性かららしい電話もある。一つは老人の妹だ。内容を聞けばイッパツで分かる。通話時間も短い。
女性相手の電話はもう一つ。この場合は、ほとんど長電話だ。延々と話しているのだから妙ではないか。
もちろん、内容は分からない。しかし、ひっつき虫の私と言えど、特別の相手らしい雰囲気は察知できる。
そんな状況の中、座布団の上でじっとしている私。なんとも不憫ではないか。
次に外出する時こそ、ズボンの裾かセーターの袖にひっつくつもりだ。
彼の老人は怪しいねっ。
そんな長電話する女性が居るなんて・・
やはり、人は見かけに因らないとかいう言葉通りかもねっ