平成16年からは天井田の丸ごとビオトープに手をつける。これまでは湿地・湛水化のみを進めてきたが、水田に手をつけ、不耕起栽培・湛水化を導入した。千葉県香取市で指導する岩澤信夫氏の指導する日本不耕起栽培普及会に所属するメンバーの協力で吉井光と私、鳥井報恩が協力することになり、今年で3年目になる。約10aからはじめすこしづつ休耕地の復元をはじめる。昨年平成17年にはその復元田に古代米ミドリマイを作付けしたがそのミドリマイは順調に育ち日照時間で50%程度の谷津田の不利な条件でもイネは倒れることもなく分けつも確保できコシヒカリとは全く異なっていた。2000年という歴史のなかで培われた遺伝子は遺憾なくその特徴が生かされていると感じた。戦後の50年コシヒカリ系が大勢を占めているとしても、それ以前の歴史の方がはるかに重みを感じる。多古の谷津田に適応して、天候不順のなかで不安なく生育するミドリマイの生育には驚いた。
復元にあたっては普及会の会員たちの何人かの若者や早期退職者など意欲のある人たちの協力を得てすすめている。
地元の古老というか経験豊かな知恵袋と奇抜なアイデアマンの岩澤信夫さんの知恵を生かして不耕起栽培は順調にいっている。谷津田の特徴を生かして湧き水が豊かでその水をイネ刈り後直ちに貯めることで畑雑草は抑えられる。藻類の発生については2年間の経験で、これまで発生が認められなかったのでその理由について考えていた。信州大繊維学部の中本信忠教授の緩速濾過装置の「藻類(メロシラ)の発生はゆっくりとした流速が必要」からヒントを得て水田の上にある溜め池からの水を波板で抑え畦をつくり迂回するように下から水田内に水が入るようにしたら、2~3週間後には藻類が発生しはじめた。
藻類が多く発生すれば植物性・動物性のプランクトンが活動しイトミミズやユスリカも日常化してトロトロ層の形成が促進され、不耕起栽培であっても、イネの生育は初期分けつを可能にする。
肥料としては米ぬか10aあたり50キロ程度で足りる。これも肥料というよりも藻類の発生を促し、イトミミズ、ユスリカの養殖という感覚で施している。
病害虫についてはもちろん無農薬であるが、稚苗の機械植えでなく成苗で4.5~5.5葉植えをすることで、健康な生育がはかられ病害虫にも5%レベルで小動物の餌として与える。それぐらいの太っ腹でいけば、多少やられても気にしなくなる。
里山に囲まれた水田は害虫の発生も多くイネの葉も食われるが、その分天敵になるクモ類やカエル、カマキリなどの活動も活発であり、全体としてはバランスのとれた関係が生まれる。