毎日のできごとの反省

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石原莞爾・備忘録ノート・早瀬利之・光人社

2013-02-23 11:56:32 | 歴史

 石原の名前とタイトルに興味を以て読んだが、私としては外れでした。石原が活躍した満洲事変と支那事変の頃の日記は何故か欠落しているが、代わりに備忘録があり、それを解説したものである。ところが小生の分かる知識の範囲でさえ疑義のあるものがあるから、残りは推して知るべしだと思うのである。

 例えば「戦闘機、五万メートル、現地にて」とあるのを、「朝鮮海峡では五万メートル飛べる長距離の戦闘機を現地で製作したい。なお、内地では、長野県の松本航空基地で、「双発の長距離戦闘機83」が、昭和十六年に試作された。」(P40)とある。

 これはでたらめに近い。明治の飛行機ならともかく、航続距離が50kmでは長距離も何も話にはならない。航続距離の数字が二桁も相場と違う。83とあるのは、キ-83であるのはいいとして、キ-83は三菱の名古屋の工場で製作され、1号機が松本飛行場に空輸されてテスト中であった。昭和16年に試作された、というのも試作指示が昭和16年で完成したのは昭和19年である、というのはけちのつけすぎだろう。ちなみにキ-83の航続距離は約2000kmである。

 我国にてオクタン価一〇〇のものを用い、一馬力一六〇gまで出せり(P48)とあるのをそのまま、100オクタンの燃料160gで1馬力が出せる、と書くのだがとんでもない話である。馬力は単位時間当たりのエネルギー量だから、時間の次元があるが、ガソリンの重量はエネルギーの量を表しているだけであるから、両方が比較できるはずがない。  

そもそもオクタン価が高かろうと低かろうと単位重量当たりに持つガソリンのエネルギーは同一である。効率が同じならば、1リットルのガソリンを短時間で消費するエンジンは、長時間で消費するエンジンより高い馬力を出すことができる。ただし、高オクタンのガソリンの使用を前提にすれば同じ馬力でも、より小型軽量のエンジンが作れると言うだけのことである。石原が間違っていなければ別の解釈があるはずである。

 石原が飛行機の操縦ができたとか、エンジン通だった(P49)と持ち上げるなら、もっとよく調べるべきなのである。私は著者が知識が不足している事を言っているのではない。調べれば分かることを調べていない節があることを言っている。以上指摘したことは、調べるなり、専門家にちょっと聞くだけで分かる程度のことだからである。

 


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