B-17は、緒戦でさかんに日本海軍の艦艇を爆撃したが、ほとんど戦果を挙げていない。当然であろう。5千メートル以上から爆撃するから滅多に命中しない。だがB-17の使用目的のひとつも、このような艦艇攻撃にあったから、結果を出せなかったのである。
日本の陸攻は、マレー沖海戦では、わずか3機の喪失で2隻の戦艦を撃沈する、という大戦果を挙げた。これは、都合で空母の護衛ができなかったために、戦闘機の援護がなかったことと、英戦艦の対空火器が貧弱だったことによる。
しかし、この戦果に味をしめた日本海軍は、陸攻を重用したが、その後は3年間の戦果の合計は、マレー沖海戦の一度分にも及ばなかったと思われる。海軍航空が元気であったラバウル航空戦で、陸攻は常に米軍に撃退されている。
艦船攻撃を効果的にやった爆撃機は、大戦後期のB-25などによるスキップボミングすなわち反跳爆撃による船舶攻撃で、巡洋艦以上の艦艇には、ほとんど実施されていない。対空火器が極めて少ない輸送船を狙ったものがほとんどである。
それも、対空火器を制圧する為に、機首に装備した多数の機銃を打ちっぱなしにして、攻撃したのである。このように、大型機による艦船攻撃は、高高度水平爆撃では、比較的安全だが命中しない。雷撃や反跳爆撃は効果が大きいが、魚雷や爆弾を投下する前に、直進しなければならないため、特に図体の大きい爆撃機は対空火器の目標になりやすい。
結局日米共に、大型機による艦艇攻撃ということを戦前から企画しながら、結局は失敗に終わっている。米軍は陸軍ないし、空軍が爆撃機の任務のひとつとして、艦船攻撃を企画したのに比べ、特に日本海軍は、艦船攻撃を主任務とした陸攻という、従来の海軍航空にない機種を発明したから、失敗によるロスは大きい。
日本海軍が陸攻を発明したのは、主力艦の戦力不足を補うために、大型機による大航続距離を利用して、陸上基地から米艦艇を迎撃しようというのであった。その期待は大きかった。もちろん結果論であるが、陸攻よりオーソドックスに艦攻や艦爆を多数整備した方が、物的資源、人的資源の有効活用になったのである。
もっともこれは、相手が米軍でなかったら、話は違う。以前に論じたとおり、英海軍の艦上機開発は惨憺たる有様で、米海軍の支援が無かったら、まともな艦上機運用はできなかった。英海軍は戦前既に1.5流に成り下がっていたのである。