この質問に何と皆さんは答えるでしょう。テレビは画面が小さく迫力がないから、とでも言うのでしょうか。もちろんこれは本末転倒です。元々昔は動画を見ることが出来るのは、映画しかなかったのですから。そう考えれば理由は分かります。
映画を映す装置やフィルムなどは高価で、映すにも特殊な技術が必要である。つまり今のテレビ用に家庭で映画を見るのは不可能なのである。当時家庭では、せいぜい幻燈というちゃちなものしかなかった。この事情は今でも変わらないのである。つまり高価な映画を有料で見ることが出来るようにするには、一度に多数の観客が必要である。
多数の人が同時に見るには、画面が大きくなくてはならないのである。21インチの1台のテレビを100人で同時に見ることを想像すれば、納得できるだろう。ところがテレビの登場で、映画の衰退が始まった。特にカラーテレビが普及すると、映画はますます不利になる。
その上ビデオが登場すると、映画もテレビ番組に関係なく、いつでも見られるようになった。このとき映画の唯一のメリットは、大画面と音声による大迫力となった。つまり大画面は映画の必要条件だったのが、メリットに転換したのである。映画のメリットは多数の観客を動員することによる、高額の制作費を使った良い映画を作ることができる、と言う点にも発見された。
なぜ洋画が一時日本映画をはるかにしのいだか。それは世界中に配給することによって、多数の観客を動員することができたからである。それによりパニック映画や、SFなどコストがかかるが、迫力があり大衆を楽しませることができる、映画を制作出来るになったのである。
このとき日本では相変わらず金のかからない、家でお茶漬けをすするようなちまちました映画か、ピンク映画や、やくざ映画に走った。これでは大衆を動員できようはずがない。日本映画が復活したのは、結局洋画をみならったからである。
大画面は良いのに違いない。初期のテレビは14インチが主流であった。しかしデジタル放送などにより、いい画質の番組が出来、テレビで映画を見ることが一般化し、液晶テレビが普及すると、今や大衆は大画面テレビに走っている。
今では夫婦二人だけの少人数の家で40インチ以上のテレビも、ごく普通である。40インチ以上のブラウン管テレビは、想像してもぞっとするほど大きいし、デジタル放送でなければ、画面が粗くてみられたものではない。やはり大画面はいいのである。つまり映画は初期のメリットとは違う面を生かして復活したのである。
復活したといっても、動画を映画が独占していたのとは違う。映画が産業として成り立つことを再び可能にしたのである。そのことにより、ライターや監督、俳優といった人材まで、優秀な才能の者達が、映画に戻ってくる。そのことにより映画の質を高めて、映画の人気も高める。それで映画とテレビが共存する時代が来たのである。