さてこれは何でしょう?成田航空宇宙博物館の展示物です。空冷星型エンジンだと分かったあなたは偉い。昭和19年に試作された貴重なエンジンの実物です。第二次大戦機マニアにはこれを見るだけで価値がある。ここには、シミュレータなど面白そうなものは多いが、博物館の博物館たるゆえんは、こうしたレアものの展示物である。
何せ、世界にひとつしかないものであり、当時の日本の航空エンジン技術の粋を示すものだから。他にもアメリカのR-2800とかR-3350とかいう優れものがある。屋外展示にはかの、YS-11の試作一号機と同じく富士重工のFA-300の試作一号機がある。これもレアものである。
これらの貴重な機体は、屋外で雨ざらしにするのではなく、屋内に永久保存すべきものである。YS-11などは機内に入れるのはありがたいが、破損しやすく長期保存には向かない。とにかく日本では、こうした航空関係の遺産の保護展示に無頓着である。これも敗戦後遺症と言うべきか。
ところで、水をさすわけではないが、皮肉なことにハ-50の展示は日本の技術水準の限界を示している。展示にはハ-50の要目として、出力2600馬力、重量1.5トン、排気量66リットルとある。そして昭和19年に試作された。一方のR-3350は、各々、2800馬力、1.2トン、55リットルである。R-3350は小型、軽量、大馬力なのだから、両者の優劣は歴然としている。
しかも、R-3350は昭和19年には試作段階を終えて、実用化されている。当時の航空関係の技術者の全てが、日本の航空技術者の必至の努力により、日本は最高水準に達していたと証言する。そして至らぬ点は、日本の基礎工業の遅れのせいにする。だが現実は上記のようなものである。ともあれ、一度成田にいくべし。一見の価値有りです。次回は航空宇宙博物館に行く際の注意事項をお知らせします。