毎日のできごとの反省

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書評・尖閣喪失

2012-12-29 13:47:33 | 軍事

尖閣喪失・大石英司・中央公論社

 タイトルの通り中国が漁船などを利用して軍人を上陸させて実効支配する、というものである。プロローグで、ある中国老人がカナダから中国に送還されて処刑されるが自伝を残す。実はその中には暗号が隠されていて、出版された本を入手した外務省の職員が解読すると、尖閣侵略計画を実行している主席のスキャンダルだった。ここまでは思わせぶりだが、それが尖閣侵略防止には何の役にも立たない、と言うのだから龍頭蛇尾である。

 本当なら心強いのだが、防衛省や海保がひそかに侵略防止と奪還のための色々なプランを用意していて、海保などは上陸阻止のために漁船などを撃沈することにためらいがない、ということである。

 今の中国の行動からあり得て恐ろしいと思えるのは、尖閣侵略の実行が、政権交代の空白を突く、という事である。また日本が逆上陸する計画を立てても、中国の経済的ブラフによって米国が安保を発動しないということもありうる話である。幸い政権交代の空白にも何も起こらなかったが。

 陸自の逆上陸実施部隊員が、血判を集めて下剋上まがいの行動で、逆上陸実施を迫る、と言うのだがそのような志士がいたら心強い。しかし、総理も陸自幹部も彼らの行動を満州事変に例えて非難しているのは現実的だが、個人的にはいただけない。現在はほとんどの植民地が独立して自由貿易ができる世界であるのに対して、当時の世界はほとんど欧米の植民地であり、日本は数少ない有色人種の独立国として欧米により経済的にも軍事的に強い圧迫を受け、国家崩壊の危機にあったのに政党政治は何の対策もしなかったのである。

 もし欧米流の政党政治が機能していたのなら、満洲事変など起こさずに、中西輝政教授が言うように、支那の排日行為を理由に満洲を正当な外交手続きにより保障占領すればよかったのである。それが行われないために、関東軍はクーデターまがいの行動で満洲を占領したのである。

いずれにしても、自衛隊や海上保安庁の行動のディティールが面白い本である。現実的にはあり得ない話ならもっと気楽に楽しめる本なのだが。