毎日のできごとの反省

 毎日、見たこと、聞いたこと、考えたこと、好きなことを書きます。
歴史、政治、プラモ、イラストなどです。

旧皇族の皇籍復帰は皇室存続対策となるのか

2017-07-30 16:09:12 | 皇室

 皇室のことを語るのは、畏れ多いとは思うが、ある本に気になることが書かれているので、紹介したい。このままでは、将来皇族がいなくなってしまう可能性が高い。それで女性宮家の創設や、旧皇族の皇籍復帰が対策として主張されている。女系天皇につながる可能性のある、女性宮家の創設よりも、旧皇族の皇籍復帰の方が小生には常道だと考えていた。

 臣籍降下した家は皇族には戻れない、という慣例があるが、戦後の臣籍降下は占領されている時代に占領軍から強要されたもので、そもそもあってはならないことだからである。ところが、倉山満氏の「日本一やさしい天皇の講座」に「・・・強制的に臣籍降下させられた十一宮家、いわゆる旧皇族の方々はすべて伏見宮にさかのぼります。維新後に創設された宮家はすべて伏見宮家の系統ということになります。・・・この伏見宮家が江戸時代に絶えそうになります。・・・御兄弟が次々とお亡くなりになられたときに、鍛冶屋の丁稚に行っている男の子を連れ戻しました。・・・その『長九郎くん』を第十三代伏見宮家当主貞致親王として戻し、今に至っています。真贋は、当時の京都所司代が『これはご落胤に違いない』と判定したとのこと。」(P106)と書かれている。

 これは「伏見宮家実録」に載っている話だそうである。さらに明治期にこの疑義を払拭するために伏見宮家出身の皇族との婚姻を進めたので、臣籍降下させられた伏見宮家の系統の人々は、明治天皇と女系ではつながってはいるそうなのである。つまり、占領軍に臣籍降下させられた旧宮家は、男系である確証が確実とは言えない、ということである。

 これは重大なことである。旧皇族の皇籍復帰を実現して、その子孫が将来天皇となった場合、天皇に反対する反日日本人が、これは女系天皇だから、万世一系の天皇はいなくなった、と快哉を叫ぶ可能性がある、ということなのである。

 もちろん倉山氏は単に旧皇族の皇籍復帰をするだけではなく、皇籍復帰した家と今の皇室の内親王との婚姻を考えるべきだ、などのいくつかの対案を提案している。現在の皇室存続対策は、女性宮家の創設が主流で、旧皇族の皇籍復帰論は比較的少ないようにみられる。しかし、旧皇族の皇籍復帰論すら危険をはらんでいる。天皇のおられない日本は、日本ではない、という観点からすれば、日本は滅亡の危機に瀕している。


合法な生麦事件

2017-07-24 16:21:09 | 維新

 生麦事件は、現在横浜となっている生麦村で起きた事件である。島津久光らの一行に、英国人の商人らが騎馬で大名行列に正対して、通過しようとして殺傷された事件である。結局、日本は賠償金を取られたが、果たして国際的に見て違法な事件だったのだろうか。

 アメリカ大統領が自動車に乗ってパレードをしていたとする。ケネディー大統領の暗殺時のパレードのシーンを思い出せばよい。大統領と警護の車の列に、正面から数台の自動車が正対して走行し、パレードの車の間をすり抜けて行ったとする。この時何が起こるか。警護の車や周辺の警察官が、これらの車の乗員を、警告もなしに全員射殺してしまうだろうことは、火を見るより明らかである。

 これを米国では、正当な警護と看做す。他の西欧諸国やロシアで類似な事件が、現在起きたとしても同じことである。生麦事件では、警護の侍たちは、英国商人たちに馬から降り、立ち去るよう、身振りで警告すらしたのである。それを無視した英国商人で、殺害されたのは、たった一人に過ぎない。

 当時の日本の警護というのは、現在の世界的常識と比較してすら、かくも微温的だったのである。日本では今でも生麦事件は、侍の横暴であった、と言うのが普通の意見であろう。だが、かく言うように、当時の一藩の幹部の列に突っ込む人たちを成敗するのは、警護の義務ですらある。

 御定法に照らすまでもなく、緊急措置として合法である。当時、他にも類似の事件が発生しているが、同様である。西欧の横暴がまかり通ったのは、当時の日欧の力関係に過ぎない。

 


書評・この世界の片隅に・こうの史代 双葉社

2017-07-02 17:17:06 | Weblog

 平成29年の正月、暇つぶしに映画を見に行った。候補は三つあって、アニメの「君の名は」と「この世界の片隅に」と洋画の「バイオハザード・ファイナル」である。結局、日本映画のようなわざとらしい平和主義がないのをかって、バイオハザード・ファイナルにしたのだが、意外にもハッピーエンドに近かったのと、主人公のそれまでの剃刀のような切れ味鋭い容貌が、ややぽってりし味だったのには少し失望したが、見るには充分耐えた。

 残りのアニメには、宣伝の画のやさしそうな主人公「すず」の姿と、なんと敗戦時の巡洋艦青葉がクライマックスに登場する、というので、この世界の片隅の方に興味を持った。そこで、本屋に行くと、オリジナルのコミックと、映画の場面集とノベライズ本の三種があった。それで、オリジナルのコミックを買った。映画化されたアニメには、製作の都合で原作の画が壊されているケースが多いからである。

 画は期待通りだった。ストーリーも日本の戦争映画によくみられるような、後知恵の平和主義がないのが良い。しかもあとがきのように「戦時の生活がだらだら続く様子が」描かれているのが好ましい。主人公のすずの幼馴染みの水原とは、二人とも何となく惹かれるところがあったのに、親が決めた見合い結婚を素直に受け入れたのも、むしろ時代のリアリティーを感じさせた。

 雑誌にも紹介があったが、玉音放送を聞いたすずが「最後のひとりまで戦うんじゃなかったんかね?」と怒るシーンも、うまく描かれたひとつの真実であろう。評判になった巡洋艦青葉の、実写真をもとに描かれた、大破着底した画も風雅である。すずが呉湾を航走する軍艦の名前を全てきちんと識別できたのは、意外だが、ストーリーの展開上はむしろ自然に思える。ただし、

 長門などは、絵葉書などでも庶民にも広く知られていた。しかし戦艦大和の名前が出てくるのは、不自然である。大和は呉の海軍工廠で作られたが、最後まで名称が秘匿されていたから庶民が知るはずもない。不思議なのは、広工廠で作られた海軍機の中に「13式艦上爆撃機(製造のみ)」と書かれた絵である。一瞬、あれっ、と思った。これは一三式艦攻の間違いである。少し知識があれば、艦爆は大正時代にはない機種だから、このような間違いはしない。

 予備知識が少なく、調べて描いたから起こる間違いである。それにしても懐かしい飛行艇や大攻まで描かれているのには恐れ入る。しかも資料によれば一三艦攻は三菱で設計製造され、少数が広工廠で作られたから、正確である。それにしても良く調べたものだし、海軍機や軍艦なども、簡単なスケッチで雰囲気を正確にとらえているのは、やはり好きなのだろう。そんな意味で、このコミックは面白い。

 軍事用語の知識の少ないのは、青葉の説明書きで知れた。青葉は「・・・負傷して帰港・・・」「・・・呉沖海空戦に参戦、切断・着底。」とある。「負傷」は「損傷、中破、大破」のいずれかで、「切断・着底」は「大破・着底」であろう。いずれにしても、現代女性が戦時をこのように描けたのには感服した次第である。