毎日のできごとの反省

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漢族と西欧人の相似性

2019-06-15 19:54:35 | 歴史

 漢民族とは何かは、曖昧模糊としている。漢民族と言っても、北京語、広東語、上海語など全く違う言語を使う。その反面、これらのグループは、チベット人、ウィグル人、モンゴル人などとは全く異なるようにも思えるのである。そのことを説明する。

 小生は、アナロジーで説明するしかないと考えた。ずばり言えば、「現代の漢民族」とは西欧人と同レベルの概念なのである。西欧人は、ヨーロッパ大陸に住むものとし、米国を除くものとする。米国人はあまりに多人種の国家であり、各々の人種が固有の居住地域を持たずに混淆して住んでいるからである。唯一の例外はインディアンとも呼ばれるネイティブアメリカンである。米国文化に融合している多くのインディアンを除けば、固有の文化を保持しているインディアンは強制的に「インディアン居留区」に住まわされているからである。

 また、ロシア人をはじめとする、スラブ系の民族も除く。言語も文字も完全に異系統だからである。また、DNAや習俗もモンゴルの影響を強く受けていて、見かけも独特である。ただ宗教がキリスト教系統なので、截然と分離しにくいのであるが、取り敢えず分けて置く。漢民族とは西欧人同じレベルの概念である、と言った。西欧人にはスペイン人やフランス人のようなラテン系の民族、ドイツ人のようなゲルマン系の民族、イギリス人のようなアングロ・サクソン系の民族やその他の民族がいる。

 ただし、基本がキリスト教徒であり、アルファベットを使う。英語が古ドイツ語からフランス語の影響を受けて分化して異言語になったように、これらの言語の類似性もある。例えば、イギリス人のジョージは、ドイツ人ではゲオルグ、フランス人ではジョルジュである、といったように共通性がある。DNAにおいても、各民族は混血しているから共通性はあるものの、西欧人自身には外見の区別はつくらしい。分かれているようでも共通性はある。婚姻等の人間関係を律するものも西欧人共通するものがある。しかも、国境を接する、周辺のトルコやイランなどの中東の地域とは文字、言語、宗教、婚姻関係等について著しい差異がある。このような周辺民族とは截然と区別できる、西欧人と言う共通概念が、存在する。

 西欧人と言う概念と同レベルの概念が、現代の漢民族、というわけである。中共政府はチベット民族などのいわゆる「少数民族」などいうものと区別するために、漢民族ではなく「漢族」というそうであるが、これは好都合である。秦、漢、といった漢字文明を発明した本来の漢民族は、ほとんど滅びて、客家などとして辛うじて生きているのであろう。それならば、漢民族と区別するために、現代の北京語、広東語、上海語などの「漢語」を話す人たちを、漢族と総称すればよいのである。

 漢族は小室直樹氏のいう、血縁社会であると同時に、特殊な共同体を形成する。文字は漢字がベースである。外見上の共通点も多い。ただし、言語は北京語、広東語などを話し、これらの言語と特定の地域との結びつきがある。このような民族特性の共通点と相違点が西欧人と同様に存在する。そして、漢族は、チベット、モンゴル、ウィグルなどといった周辺に居住する民族とは相違点の方がはるかに大きい。

 つまり西欧人に対比できる概念は、漢族なのである。西欧人に対応するスラブ系や中東の民族のように、漢族に対応する概念が、チベット、ウィグル、モンゴルなどの諸民族である。こういえば分かり易かろう。中共は明らかに漢族の支配する国家であって、スラブ、チベット、ウィグル、モンゴルなどは支配層には入れない民族、すなわち植民地民族なのである。従って、中共は国民国家ではなく、帝国である。

 それでは満洲人はどこに行ったのだろう。楊海英氏は「逆転の中国史」で、新疆に住むシボ族は、マンジュ語を話し、マンジュ文字を読めるから、故宮博物館にあるマンジュ文字の文献を翻訳させられている、という。これは、本論考で言う満洲文字で書かれた満洲語訳の漢文の四書五経などの翻訳をしている、ということである。要するに純粋な満洲人はシボ族として生きている、ということである。これはインディアン居留区に住むインディアンの運命に似ている。

 ところが、北京語は元々満洲語なのだから、大多数の満洲人ならびに、満洲化した漢民族は、北京語を母語とする漢族として生きているのである。その勢力は大きなものである。同様に、広東語、上海語などを話す民族は、かつて異民族として支那本土に侵入支配した、随、唐などの支配民族の末裔である。彼等も現代では、あたかも漢族として生きているのである。

 唯一の例外はモンゴル人である。モンゴル人はモンゴル帝国が崩壊すると、モンゴルの故地に戻って国家を維持し、言語や文字も保持し続けて現代に到っている。ただし、内モンゴル自治区として中共に支配されているモンゴル人もいるのであるが。要するに、ほとんどの支那大陸の支配民族は、漢族として残った。それは漢化、すなわち漢民族に同化したのではない。今でも言語や風俗は固有のものを保持し続けているのである。

 これに比較すると、西欧人は永い歴史的経緯を経て、各言語民族が各々国民国家を形成している。厳密にいえば、ドイツ語やフランス語を話す民族が、西欧内でもドイツやフランスだけにとどまらないように、その分布は複雑ではあるが、中共に比べ国民国家を形成しやすい状況にあり、国民の幸せを追求しやすい。もちろんバスク地方や北アイルランドなどの独立運動も多数存在するから、現在の国家構成も国境も確定的ではないのはもちろんである。しかし、中共より遥かに安定的であり、収束の方向に向かっていると言える。結論を繰り返す。漢族と対比すべきは概念は西欧人である、と。決して漢族をドイツ人やフランス人といった概念と同一レベル視してはならない。


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