毎日のできごとの反省

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米国民は第二次大戦参戦を欲していた

2019-06-15 00:39:59 | 大東亜戦争

 現在の第二次大戦参戦以前の米国の状況の通説は、ルーズベルト政権は国民に隠れて英国を救うために、対独参戦を望み、米国民は大勢が第一次大戦による厭戦気分で参戦反対が、絶対多数であった、というものである。ルーズベルト(FDR)は裏口からの参戦のために、日本を挑発していたということがこれに加わる。

 小生は、平成20年頃から、米国は国民と政府共に、対独参戦のみならず、対日参戦をも欲していた、と言う説を「幻の日本本土爆撃」という本を読んで以来、確信するようになった。このような説は、日本のメジャーな刊行物には皆無であるように思われる。だが一般に公表された書籍を読む限り、このような結論に至らざるを得ないのである。

 まず、ルーズベルト政権が、英国を助けるために参戦を欲したと言う点については、通説の通りであると考える。最大の問題は米国民の厭戦感情である。渡辺氏の著書(*)では、真珠湾攻撃が始まるまで、世論調査では、80%を超える米国人が、戦争絶対反対であった、という。これが大多数の書籍に書かれている通説である。

ところが川田稔氏は(**)米海軍による対英援助物資運搬の米商船護送とグリーンランドの米軍の進駐などを例示して「イギリスの敗北を阻止するため、アメリカが参戦する姿勢は、これらの点からも明らかだった。なお、このころの(昭和16年4月ころの)世論調査では、「欧州参戦支持が八〇パーセントあまりにたっしていた。(P234)」と書く。アメリカが参戦云々は政府の姿勢であろう。これは通説と同じである。ところが、すぐあとに80%もの米国民が欧州参戦支持である、とことも無げに書いているのには驚いた。だから通説との矛盾は自覚していないのであろう。

これを他の書籍と比較して読み解いてみよう。数々の秘密協定も隠され続けていた。それにしても、渡辺氏が指摘する(*)、FDRが実行した多くの公表された事実から、国民や多くの政治家、政治経済軍事の専門家筋が、FDRが戦争を欲していることは明白であり、隠しようもないとしか考えられない。

 まさか共産圏のような絶対秘密主義国家ならともかく、マスメディアも政治批判も発達していた米国において、大多数の米国民を完璧に騙しおおせる、というのは単純に考えて不可解過ぎる、というのが小生の根本的発想である。米軍の戦時下における、報道管制はシステマチックで厳格である、と言う点においては日本のように杜撰で恣意的でないことは知られている。

それにしても、米国が参戦前の時点でドイツがデンマークを占領したときに、米軍がグリーンランドを保障占領したと言うことが公的に知られないはずはあるまいし、米駆逐艦が独潜水艦を攻撃したということが報道されていない、ということはあり得ない。中立法の改定による交戦国への武器輸出や日本に対する経済制裁は国民の知るところである。当時の米国は、経済制裁は戦争に準ずる、という国際法解釈であったから、日本に対して戦争を強いていると国際法の専門家が指摘してもおかしくない。本書に書かれている当時公表されている事実の全てを総合すれば、FDRか三選に際して約束したとされる、参戦しないと言う公約は破られつつある、と考えなければ国民はよほど愚かか、情報から絶対的に隔離されている、としか考える他はあるまいが、そんなことはあり得ない。

チャールズ・リンドバーグの「リンドバーグ第二次大戦日記(角川文庫上巻)を見よう。リンドバーグは「翼よあれがパリの灯だ」で有名な大西洋無着陸横断の英雄であるが、欧州大戦に参戦絶対反対のキャンペーンを展開したことでも有名な人物である。彼はパイロットとして有名だったから軍関係者とも知己があるが、一民間人であり、彼の知り得た情報は一般的に国民も共有していたはずである、ということを前提にする必要がある。

リンドバーグはルーズベルトが欧州参戦に向けて画策しているということを、日記では随所に述べていることが注目される。その上、ルーズベルトは参戦しない、と公約していたにも拘わらずリンドバーグは全く信用しておらず、ルーズベルトの「三選は参戦」とすら断言している。「大多数の国民と同じく」一貫して世論に参戦反対を主張していたリンドバーグがこの調子である。リンドバーグが中立法改定その他の立法は全て参戦に向けたものだと判断しているのは、当たり前と言えば当たり前で、参戦前の米国の雰囲気が理解できるではないか。

 小生が重要だと考えるのは、ルースベルトが三選された後の1941年1月6日の次の記述である。

 

 こんにちはとりわけ、戦争前の暗い帳が頭上に重く感ぜられる。何の抵抗もなく戦争に赴こうとする人々が増えつつある。万端の用意が出来ていると主張する人たちが多い。国民の態度は前後に揺れている。最初のうち、反戦勢力が勢いを得ていたかと思うと、今ではそれと正反対の方向に振子が動いている。-国民の現実と態度と新聞の大見出しとは常に区別して見分けるように努めねばならぬ。が、全般的にいえば、アメリカの戦争介入に反対する我々の勢力は、少なくとも相対的に見た場合はじりじりと後退しつつあるように思われる。われわれにとり最大の希望は、合衆国の八十五パーセントが戦争介入に反対していると言う事実だ(最新の世論調査に拠る)。一方、約六十五パーセントが「戦争の危険を冒してまで大英帝国を助ける」ことを望んでいる。換言すれば、自ら戦争の代価を払わないでイギリスに勝ってほしいと望んでいるかのように思われるのだ。われわれはいわば希望的観測の類にのめりこんでおり、それは遅かれ早かれ、われわれを二進も三進も行かぬ状況に追い込むに違いない。

 

 この記述は見事に当時のアメリカの世論の状況を叙述していると思われるのだ。渡辺氏も含め、日本の歴史家等は、この記述のように、世論調査の85パーセント参戦反対となっていることと、国民の大多数が参戦反対でルーズベルト自身も三選の際の公約に参戦しない、と約束したことをもって、ルーズベルトの裏口からの参戦の陰謀を主張している。ところが参戦反対の闘士であったリンドバーグの記述は、米国の状況がそのように単純なものではないことを示している。

この日記は昭和16年の1月6日の記述だから、世論調査の発表は12月末に行われたのであろう。その結果は、85%の国民が参戦反対だが、約65%戦争の危険を冒してまで英国を助けることを望んでいる、というのである。つまり戦争には反対だが、戦争の危険があっても英国を助けたい、というのであり、何が何でも戦争絶対反対と言っているのではない。その上リンドバーグによれば、国民は段々参戦に傾きつつある、というのである。

すると昭和16年4月、つまり半年後に川田氏(**)がいうように、80%が参戦支持に変化していったということはあり得る。多くの論者が米国民の大多数が参戦反対であった、というのはリンドバーグが言う「85%の国民が参戦反対」の部分だけ切り取って主張しているのだと考えれば納得できる。

ところが、リンドバーグの日記(上巻P345)には、昭和16年4月16日には「ギャラップ調査世論は奇妙な矛盾を明らかにした。八十パーセントが戦争に反対しているかの如く思われるのに、七十一パーセントはイギリスが敗北するならばという条件付で輸送船団の覇権に賛成。三日前に発表されたその調査によれば、アメリカ人の大多数はイギリスを助けるべく陸海軍あるいは空軍を一部でも派遣することには反対なのだ。回答者が混乱しているのか、世論調査の質問が回答者を混乱させたのか・・・」と書かれているのだ。参戦反対派はやや減り、イギリス支援派は1月よりやや増えている。しかも、80%の戦争反対派と71%の英国支援派は、重複しているとしか考えられない。

どうやらリンドバーグの記述は、一月も六月もギャラップ調査のようである。出所が判明している。ところが川田氏の「80%が参戦支持」は出所不明であるが、全く同じ四月に正反対の結論が出ているから、川田氏の調査の出所はギャラップ調査ではないことはほぼ間違いはあるまい。トランプとヒラリー・クリントンが争った大統領選挙でも、大メディアの世論調査は間違った結果を示しているので、一概に川田氏の記述が間違いであるとは断言はできない。

次は対日参戦計画である。これは「幻」の日本爆撃計画、に詳しい。本書に書かれているのは、日本本土爆撃計画であり、最初の大きな一発を米国が打とうとする、積極的な計画である。小生には検証能力はないが、著者のアラン・アームストロング氏はきちんと資料出所を提示しており、いい加減なものではないと考えられる。戦後アメリカ政府は、自国民の広範な民族、広範な年齢層に放射能汚染をさせる人体実験を行っている。何でもありの国なのである。

ルーズベルト大統領は戦闘機350機と爆撃機150機という大編隊により、日本の首都圏爆撃をする計画にサインしていた、というのである。もちろん中国空軍に偽装しての空襲だった、というのであるが、当時の日米国民の常識から考えても、中国がこのような戦力を持っていると考えるはずはない。

実際には、米国から爆撃機や戦闘機とそれらに付帯する整備機材を送り、パイロットと整備クルー等は義勇軍として米国から派遣する、というものであるから、人員だけでも数千人に及ぶ。注意すべきは、この計画は計画倒れになったのではない、ということである。戦闘機部隊の一部は、実際にP-40戦闘機と所要人員が派遣されている。

現在では、義勇軍として派遣されたとして有名になった「シェンノートのフライングタイガース部隊」である。計画の実行は長距離爆撃機が援英のため、調達が難しくなって実行が遅れているうちに、真珠湾攻撃が始まって、中止となった。しかし、フライングタイガース部隊は、実際に派遣されて、その後日本機と交戦している。つまり計画は実行されない机上プランではなく、実行途上にそれどころではなくなってしまったのである。

85%もの米国民が本気で参戦に絶対反対であったなら、この計画が実行されたら、囂々たる非難をあびたであろう。リンドバーグの日記は、結果的に大多数の米国民が、次第に欧州参戦やむなし、に傾いていったことを暗示している。ルーズベルトは国民の多数派の本音が参戦賛成であったことを知っていたから、どんな手段でも戦争を始めてしまえば、国民はついてくる、と踏んだとしか考えられないのである。しかし何故か渡辺氏の著書では「幻」の日本爆撃計画にも触れていない。日本に最初の一発を撃たせるためにFDRが「軍艦ライカニ」というボロ舟を太平洋に送り込んだ、比較的知られたエピソードにも触れない

ルーズベルトの爆撃計画は、支那事変で疲弊した日本は、一撃で国力に壊滅的打撃を与えられ、日本が何年も戦うことができた、などとは考えられなかったと想定した節がある。日本を早いところ片付けて、対独戦に専念しようと考えていたのかも知れない。日本をなめていたのである。現に対日戦などは3か月で片付く、と語った米軍幹部がいるのである。

その意味では、最初の一撃が真珠湾であろうとフィリピンであろうと、どうでもよかったのであろう。「幻」の日本爆撃計画の引用にあったTHE UNITED STATES NEWSという週刊誌も調べてみた。一九四一年十月三十一日号には、BOMBER LINES TO JAPANという記事があった。図入りで、重慶、香港、シンガポール、フィリピン、グァム、ダッジハーバの6か所から本州を爆撃できる、と書いているのである。

アームストロング氏は、この記事を日本本土空襲の予告に等しいと書くが、その通りである。類似の記事は、他の有名雑誌にも掲載されていたそうだから、米国の日本本土爆撃計画を知るのに、日本はスパイさえいらない、とアームストロング氏は、言うのである。FDR政権は日本に先制攻撃をかけても、国民の賛同は得られると判断したことの、重大な傍証である。この週刊誌は軍事雑誌でもないのに、それ以前から軍用機や戦車、などのコマーシャルが満載である。この時期の米国民にも戦争に対する歓迎ムードがあったのである。

ルーズベルトや国民が対日戦を欲する大きなきっかけとなったのは、昭和12年の支那事変の開始であろうと、小生は仮設する。FDRの隔離演説はこの頃に行われているからである。さらに米国民の心理から言えば満洲事変、いやそれよりも早く、排日移民のムードが高まったころに淵源を発すると思う。この頃日米戦わば、という本がさかんに出版されているのである。

結論を言おう。FDR政権と米国民は真珠湾攻撃以前から、対独戦と同時に対日戦を欲していた。結果的に、あくまでも結果的にではあるが、真珠湾攻撃は両方の戦争に参加する重大なきっかけを作ったのである。ルーズベルトは裏口からの対独参戦を欲したのではない。真珠湾攻撃は、ガソリンの充満した部屋にマッチを放り込んだのである。真珠湾攻撃の戦果からはマッチでは失礼である。松明を放り込んだとしよう。

付記する。以上の説は、スターリンが日本と米国の双方の政府に食い込んで、米国の対独、対日参戦を画策したと言う説と矛盾するものではない。ただし、対日戦については、コミンテルンの画策の以前から米国自身にも、その淵源がなければならなかったと考える次第である。

 

*フーバー大統領「裏切られた自由」を読み解く・渡辺惣樹

**昭和陸軍の軌跡・川田稔

 

 


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