毎日のできごとの反省

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日本人の性に関する意識について

2020-05-01 16:25:16 | 文化

日本人の性に関する意識について

 古来、日本では現在に言われるほどに、性についての貞操観念と言うものは、厳格ではなかったと言うのが、小生の調べる限りでの常識です。貞操観念が厳しくなったのは、明治以降に大挙して入ったキリスト教の影響によるものが大であろうと考えます。大衆浴場と言えば、長い間男女混浴当たり前の世界でした。それが西洋人に野蛮と思われる、というので政府が禁止したのです。今では日本人自身が混浴なんて野蛮な、と自然に思うようになっています。常識も人為的に変わる場合もあるのです。大著なのでまともに読み通したわけではありませんが、概要を聞く限り、源氏物語は、今日の目から見ても奔放な自由恋愛物語ではありませんか。

 明治期においては、軍人の恋愛結婚と言えば、大抵は売春婦(芸者)との結婚であったと言うのです。女性と親しくなるのは芸者遊びしかなかったからでもありますが。ところが奥さんが売春婦上がりであったということによって、出世に差別は全くありませんでした。何も見ずに書いているので名前は忘れましたが、奥さんが売春婦上がりで将官にまでなった人はいくらもいるはずです。政治家なども似たようなものです。

 一方で鴎外・森林太郎は、外国人と結婚すると、軍人としての出世の妨になるとのことで、母や上司に妨害されて、軍人を辞める覚悟でのドイツ女性との結婚を放擲させられて生涯悔いています。母の軍人として出世してくれと言う願いが絶大だったようです。相手が日本人なら売春婦でも結婚できたのです。

 たとえキリスト教の影響が明治に入ってきたと言っても、過去の風習はそう簡単に消えるものではありません。これは仮説ですが、大衆に売春は悲惨なものと言う意識を決定的に植え付けたのは、大恐慌だったのではないでしょうか。大恐慌によって食うや食わずになった東北の農民が、借金のかたに娘を売春宿に売り込まざるを得ない羽目になったのです。

 五一五事件や二二六事件などで、不況にあえぐ農民を救わんとして唱えられた昭和維新なるものがあります。これは共産主義者にそそのかれた面が大きいにしても、下級将校たちには、娘を売春宿に売り込まざるを得ない、東北の貧困は政治の貧困として、怨嗟打倒の対象となったのです。

 こうして、未曾有の不況から起きた、娘を売春宿に売る、という行為は許されざる悪として日本の社会に定着していったのではないでしょうか。兵士の姉、妹が売られていったのです。それによって、戦後には、売春防止法制定と言う運動に発展したものと推量します。それまでは、江戸時代よりはるか以前から、単なる職業のひとつに過ぎなかった売春と言う行為が、賤業として卑しめられていったのです。

 今でも時代劇に出てくる、花魁の行列は華々しくはあれ、賎しいものではありません。しかし、他方で売春は賎業だと言うテレビの脚本家たちは、同時に性病でだめになっていく、哀れな売春婦をも描くことを忘れません。現代に作られる時代劇では、娼婦たちは哀れなだけの存在でなければならないのです。キリスト教の布教などの西洋文化の流入に伴う、それまでになかった貞操観念と、大恐慌によって売られていく哀れな娘たち、そしてそれを弄ぶ大財閥というような観念が、売春というものを賎業と言う意識を生み出したものと想像します。

 小生は売春を論じてきましたが、必ずしも性風俗イコール売春ではないとは思いますが、イコールの場合もあるはずです。その場合は売春防止法が戦後成立した以上は、現在の性風俗産業即違法となります。違法であるにも拘わらずニーズがある以上存在する、ということです。その問題点は論点をはずれるので、これ以上は言いません。ただ性風俗を賎しく辛いだけのものである、というのは日本の古来より続くものではなく、明治維新を契機として始まり、戦後になって常識となった観念である、と言っているまでです。


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2 コメント

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猫の誠さんこんにちは! (小平次)
2020-05-06 15:03:12
猫の誠さんこんにちは!

御慧眼に感服です。
私も以前から江戸時代の書物や、文化、庶民の生活ぶりなどを自分なりに学んでいく中、実に日本人は性に対しあっけらかんとしていたのだと感じておりました。かと言って街中、市中がみだれていたようにも見えません。古くは魏志倭人伝にも風俗が淫らではないことが記されております。

この度の記事を拝読し、そのあたりのことを少し調べてみたくなりました

ありがとうございました
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コメントありがとうございます。 (猫の誠)
2020-05-06 15:30:34
 実は、このテーマ、「美雨」さんというHNの女性ブロガーが扱っておりまして、コメントを書き始めたら、長くなったので先方に通知して、ブログにまとめた経緯からすると、あまり自慢できたものではありません。
 美雨さんは「職業一般には表と裏があるように、性風俗にも闇もあるが明るい面もある」という持論の持ち主です。ちなみに今は体調不良で休むと宣言しています。
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