YPJに象徴される女性達の革命的運動がシリア問題を含む中東の近未来の形成に決定的な役割を果たすだろうと私は予測します。強い希望でもあります。この運動を理解するのに大変有用な記事がありますので、その全文を以下に訳出します。初めに出た日付は2022年6月20日になっていますが、最近またANFNEWSというサイトに再掲載されて多数の読者を得ているようです:
https://anfenglish.com/news/interview-with-ypj-international-60679
私が特に興味を持ったポイントを、あらかじめ、紹介しておきます。以前この私のブログで『現代アメリカの五人の悪女』と題して三回連続の記事を書きました。初回(1)の日付は2011年7月13日です:
https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/428b04c02e7dee1706975f7be3196c3f
冒頭の所を書き移します:
「ここでの悪女は“bad girls”ではなく“evil women”です。“bad girls”という言葉が含みうる愛嬌など微塵もありません。多くの無辜の人々を死出の旅に送っている魔女たちです。マドレーヌ・オールブライト,サマンサ・パワー、ヒラリー・クリントン,コンドリーザ・ライス,スーザン・ライスの五人、はじめの三人は白人、あとの二人は黒人です。」
ご存知のようにこの米国女性達はいずれも米国政府内で極めて高い地位を占め、多数の男達の上に立って、米国の覇権政策の担い手になっていました。現在では、国務次官ビクトリア・ヌーランドもその一人と言えましょう。米欧社会でのこうした ”女性進出” に対してYPJインターナショナルのスポークパーソンは鋭い批判を投げ掛けます。以下に掲げる翻訳文の中程に
「イデオロギー的なレベルでは、私たちは自由主義を女性とその闘いに対する大きな攻撃とみなしています。それは、女性を抑圧的システムの中に組み込むことで、私たちを懐柔ようと試みます。女性の上司やリーダーの存在を女性の解放の証拠とすることで、私たちの解放の要求を不要なものと思わせることを目論んでいます。」
という鋭い指摘がありますので注目して下さい。我が国にも同じ問題があると思われます。
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YPJ International
YPJインターナショナルの同志ディランは、ロジャヴァのすべての構成員が革命と民主主義社会の建設に参加し、ロジャヴァ革命のモデルは中東全体の問題の解決策を提供できると述べた。
YPJインターナショナルの同志ディランは、YPJインターナショナルは自由を求め、女性革命を理解し、発展させ、守るために働きたい女性のための場所であると述べた。
世界中から自発的にロジャバにやってくる女性たちは、自由な生活の構築のために役割を果たし続けている。
YPJインターナショナルの同志ディランは、ANFに同組織の活動と目的について語った。
YPJインターナショナルとは、どのような組織で、どのような目的を持っているのでしょうか?
YPJインターナショナルは、ロジャヴァの女性防衛部隊の中にある国際的な組織です。民主連合主義の枠組みに沿った国際的ボランティアを組織・教育し、女性革命への積極的な参加とグローバルな同盟の構築を可能にしています。2015年のコバネの戦い以降、YPJへの関心は世界的に高まり、どうすれば参加できるのかと手を差し伸べてくれる女性も増えてきました。そこで、私たちはYPJの中に国際的な部隊を組織する必要性を感じ、それ以来、YPJインターナショナルは、女性が思想的・軍事的訓練を受け、クルド語を学び、YPJ内のさまざまな活動領域で働く準備ができる場所となりました。
なぜ女性として自衛のために組織することが重要なのでしょうか、なぜ国際協調主義者はロジャヴァの防衛軍に参加するのでしょうか。
すべての生物は、バラがその美しさを守るために棘を持つように、独自の防衛システムを持っています。人類の生活の初期から、自己防衛は社会によって自然に組織された任務でした。家父長制の制度化、資本の蓄積、階級制度の出現によって、自己防衛能力は支配階級に掌握され、男も女も自己防衛の手段を剥奪されました。軍隊が設立され、社会を守るために使われるのではなく、世界中の人々を搾取する殺人的な戦争マシーンとして使われるようになったのです。
私たちが武器を取るときは、家父長的な軍国主義に反対し、資本や国民国家の利益ではなく、女性と私たちの民衆を守ることを目的として行うのです。YPJは、スペイン内戦におけるムヘレス・リブレス、第二次世界大戦中のナチズムと戦った女性パルチザン、占領から自分の土地を守ったベトナム人女性のように、ファシズムや占領から自分の土地を守り、革命を守った女性の歴史的遺産の一部であると考えます。
ロジャヴァ革命は、地域のコミューンや評議会を通じて社会を組織する草の根民主主義を築き上げました。女性は社会のあらゆるレベルで自律的な女性機構を構築しています。共同議長制度は、あらゆる政治団体への女性の参加を保証し、女性のための教育はアカデミーを通じて広範囲に組織され、女性協同組合は女性に経済的自立の機会を与えています。ジネオロジー(女性の科学)は、実証主義の教義を再生産するのではなく、女性革命の科学的根拠を提供し、女性司法評議会は正義の創造を目指し、YPJでは女性が独自の自衛軍を創設しました。これらの成果は、全世界の女性のために作られたものであり、真の民主主義国家の発展に寄与するものです。
トルコのファシズムとISISのようなイスラム主義集団が、北・東シリアの解放地域を攻撃しています。彼らは、私たちの解放された土地を占領し、女性差別的で抑圧的なシステムを実施しようとします。さらに、覇権勢力はロジャヴァ革命を故意に歪めて伝え、クルド人分離主義のプロジェクトであるかのように見せかけ、彼らが我々に強要する戦争を民族間紛争として提示しようとして居ます。しかし、ロジャバ革命はクルド人の革命ではありません。それは、アブドゥッラー・オジャランの「民主国家」のパラダイムに基づくものであり、地域内のあらゆる宗教、文化、民族を含むものなのです。この地域の異なる民族の間に団結を生み出すことを目的としています。ロジャヴァのすべての民族共同体の人々が、革命と民主的な社会の構築に携わっています。ロジャヴァ革命は、宗教、文化、民族の協力のための政治モデルを提供しているため、中東全体の問題の解決策を提示することが出来ます。覇権国家は中東を活動領域として異なる民族が互いに敵対するように仕向けていますが、ロジャヴァ革命はこの計画の土台を蝕むので、彼らにとって危険なのです。
YPJインターナショナルのボランティアは、この革命の可能性を理解し、クルド人に限定された視点ではなく、自分たちのものとして捉えています。ドイツのイヴァナ・ホフマン、イギリスのアンナ・キャンベル、アルゼンチンのアリーナ・サンチェスの3人の国際的な革命家は、YPJの構成員として殉教者となりました。彼女たちの献身は、ロジャヴァに来た女性たちが求めていたもの、つまり5000年にわたる女性の抑圧から自らを解放する具体的な方法を見つけたことを私たちに証明しています。世界中の女性たちがここで自由を見つけ、それゆえに自由を守ることを望んでいるのです。
国際的協力者達と共有した経験を踏まえて、資本主義近代における女性への主な攻撃と、それに対抗する戦略は何だと思いますか?
私たちのメンバーは世界のさまざまな地域から集まっていますが、私たちには共通の敵がいます。帝国主義、植民地主義、戦争、ファシズムは、世界中の女性にとって実存的な脅威です。資本主義は女性を二重に抑圧しています。女性は男性よりも安い金額で労働力を売る必要があり、同時に家庭内での生殖労働を担う無給の労働者になることを余儀なくされています。私たちは、そうした経済状況こそが、女性を男性への依存に追い込み、暴力を受けやすくしていることを知っています。
資本主義は、あらゆるものを商品化しつつあります。世界最大の産業の一つである性産業は、女性を商品として使い、その性的搾取から利益を得ています。すべてのものを単に物質的な価値に還元することは、無形の価値、倫理的な価値を否定することになります。しかし、私たちは、倫理的な価値こそが、コミュニティを強く保つために不可欠だと考えています。このシステムは、愛の意味さえも劣化させ、「愛」が女性を殺す正当な口実になっていることを理解する必要があります。この抑圧搾取システムは生命そのものへの攻撃であり、私たちはこの殺人マシーンをこのまま放置しておくわけにはいきません。
イデオロギー的なレベルでは、私たちは自由主義を女性とその闘いに対する大きな攻撃とみなしています。それは、女性を抑圧的システムの中に組み込むことで、私たちを懐柔しようと試みます。女性の上司やリーダーの存在を女性の解放の証拠とすることで、私たちの解放の要求を不要なものと思わせることを目論んでいます。フェミニズムに対するリベラリズムの影響は、徹底的な闘争と変化を妨げているのです。女性が行うあらゆる選択が「フェミニスト」の選択として提示され、女性は、自由に選択できる限り、抑圧は抑圧ではないと信じ込まされます。私たちは、このことが、女性が選択を行う物質的・歴史的条件を完全に否定していることを理解する必要があります。それは女性を歴史から切り離し、ただ個人とその機会が重要であるかのように見せかけます。すべてを個人の選択に分解し、問題の本当の原因である搾取的な家父長制から目をそらすのです。このアプローチでは、個人の自律性が決して疑問や異議を唱えられることのないものとして使われるため、批判的な議論が出来ないことがわかります。私たちは、個人主義が強いコミュニティを築くことを妨げるものだと考えており、女性たちが互いにますます孤立していることに気づいています。女性が互いに分離していれば、コントロールしやすくなる。そして、さらに危険なのは、女性がお互いのために立ち上がることをしなくなることです。
YPJインターナショナル内で私たちが行った議論で、こうした戦略が女性の心理にどのような影響を及ぼしているかを知ることが出来ました。このシステムを抑圧の源と見なすことがないと、女性たちは搾取や暴力に直面してもそれが自分のせいだと考えるようになります。恥や罪悪感は、私たちの来歴に共通するパターンであることがわかります。これが、リベラリズムを女性に対するイデオロギー的攻撃とみなす理由です。私たちは、世界中の女性が目覚め、家父長制をこれ以上受け入れないということを目の当たりにしています。しかし、リベラリズムが解決策を提示し、女性が革命的な政治に参加することを妨げていることも、私たちは大きな懸念を持って見ています。だからこそ私たちは、リベラリズムの危険性について教育を提供し、代わりに革命的な語り口を広めることが急務だと考えています。抑圧のシステムを分析し、女性が解放のために闘うことができるようにする語り口です。
YPJインターナショナルは、国民国家や官僚制の支配と抑圧から解放され、女性が革命的な文脈で自らを教育することができる場所です。抑圧的システムの孤立戦略に対抗して、私たちは女性たちの間に団結と愛を築くことを目指しています。私たちは、女性の抑圧の歴史だけでなく、女性の自由の歴史についての教育も行います。私たちは、クルディスタン女性運動に根ざした概念である「女性解放思想」を教え、女性が如何にして自らを解放できるかを導く中核的な原則を提示します。私たちは教育の力を信じていますし、抑圧的システムが教育を受けた革命的な女性たちを恐れていることも知っています。だからこそ、私たちは、他の人々を鼓舞し、革命を世界に広めることのできる女性を作り上げる必要があると考えるのです。
YPJインターナショナルに入会するための条件と、女性たちがあなたに連絡する方法を教えてください。
YPJインターナショナルは、自由を求め、女性革命の理解、発展、防衛のためにエネルギーと努力を惜しまない女性のための場所です。私たちは、たくさんの理論を読んできた人に期待するのではなく、集団的ケア、思いやり、無私の精神といった価値観を学び、日常生活の中で生きることにオープンであることを求めます。自分自身を教育し、成長させることに前向きな人なら、誰でも歓迎します。革命に参加するということは、自分の中にも革命を起こすということです。私たちは日常生活の中で、批判と自己批判の方法を用いて、共に分析し、学び、成長していきます。
しかし、もちろんこのプロセスには時間が必要なので、ロジャヴァに来るときは忍耐が必要です。ロジャヴァの女性たちは多くの成果を上げていますが、まだ長い道のりがあります。すべての問題や矛盾が解決されるような完璧な革命を期待してはいけないのです。言葉を学び、文化を知り、軍事訓練を受け、革命の理念を理解する時間を持つために、ボランティアは最低1年滞在する必要があります。軍隊の経験は必要ありません。
Eメール(womensrevolution@protonmail.com)やツイッター(@YPJ_volunteers)で私たちにコンタクトを取ることができます。私たちは、ラテンアメリカ、アジア、アフリカの女性たちとの連携を強化することに特に関心があることを強調し、彼女たちが私たちに連絡するよう呼びかけたいと思います。女性革命の中心から、資本主義-家父長制に抵抗しているすべての姉妹に挨拶を送り、女性革命を守り、広めるためにあらゆることを行うと約束します。(翻訳終わり)
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(付記)
上掲の記事の始まりに近いところに
「YPJは、スペイン内戦におけるムヘレス・リブレス、第二次世界大戦中のナチズムと戦った女性パルチザン、占領から自分の土地を守ったベトナム人女性のように、ファシズムや占領から自分の土地を守り、革命を守った女性の歴史的遺産の一部であると考えます。」
とあります。
スペイン内戦は1936年から1939年までスペインの人民戦線政府とフランシスコ・フランコが率いる軍部との間で行われた内戦です。ムヘレス・リブレス(Mujeres Libres、自由な女性たち)はその時期に行われた女性解放運動の組織の名前で、最盛期には積極的参加者2万を超えました。1936年のスペイン内戦の勃発と共に、組織としてのムヘレス・リブレスは名乗りを挙げ、今のYPJと同じく、女性達は武器を手に取ってフランコ軍と勇敢に戦いましたが、1939年の人民戦線側の敗北と共に、軍事勢力としてのムヘレス・リブレスも消滅しました。しかし、解放運動としてのムヘレス・リブレスが1936年以前から一般のスペイン女性の意識の中で大きく成長を遂げていたことは運動を推進する目的で1936年5月20日にバルセローナで発刊された機関紙「ムヘレス・リブレス」第1号がすぐに売り切れてしまったという事実によって確認されます。その出版はフランコ軍がバルセローナを占領するまで第14号まで続きました。
スペインのムヘレス・リブレス運動については画期的な著作が出版されています。マーサ・アッケルスバーグ著『スペインの自由女性達』(Marhta Ackelsberg: Free Women of Spain, 1991 and 2005)です。出版の時点から、クルドのYPJへの言及がないのは仕方がありませんが、二つの運動には共通点があり過ぎるほどあることがこの本を読めばよくわかります。それは、ムヘレス・リブレスの女性闘士達が「ムヘレス・リブレスはフェミニスト運動ではない」と主張していたという事実に要約することが出来ます。
何故ムヘレス・リブレスの女性たちがこの様な考えを抱いていたか? 私は、このブログ記事の始めに引いたYPJの若い女性の言葉「これは女性だけではなく人類全体を守るための戦いです」 を、またここで思い出しています。ムヘレス・リブレスは、残念ながら、現代のスペイン女性達の意識の底にしか生きていませんが、クルドのYPJはその動員結成から既に約10年間を経て、その要員は数万人に及んでいます。今もトルコとその指揮下のテロ勢力との凄惨な闘争で出血を続けていますが、シリア北部のロジャヴァ地域でクルド女性達は、男性達と力を合わせて、瞠目に値する社会的成果を着々と達成しています。このところ、シリアをめぐる情勢は激変の様相を示しつつあります。このブログの冒頭でも同じことを書きましたが、「YPJインターナショナル」に象徴される運動とそれが達成しつつある現実的成果が、シリアの地に住む全ての人たちの幸福を実現する決定的要素となるものと私は祈念し、信じています。
藤永茂(2023年4月27日)
不勉強でした。ご指摘ありがとうございます。
私のブログ記事をお読みいただいてありがとうございます。ご紹介してくだされば幸甚です。