福島菊次郎全仕事集『戦争がはじまる』(社会評論社、1987年)という本があります。もし、お近くの図書館にあれば開いてみて下さい。福島菊次郎さんは私より5歳年上、2015年に亡くなりました。私は終戦の年1945年の春に九州大学の物理学科の学生になりました。生き残れるとは思いませんでした。間もなく沖縄から九州に攻め上がってくる米軍を竹槍で迎える決心をした一人の愚かな愛国青年でした。
戦争で、一番酷い目に遭うのは我々です。福島菊次郎の本を開かずとも、今では私もよく分かっています。我々は、これまでの歴史が示す限り、無辜の民ではありません。有罪です。戦争をしたという罪を犯しました。いつの世にも、罪がないのは赤ん坊たちだけです。
我々は、もう戦争をしないと誓った筈です。この戦争を止めなければなりません。戦争を推し進めている人間たちは、確かに、我々よりはるかによく頭の回る人間たちです。彼等彼女等は実に巧妙な虚言で「この戦争は正しい戦争だ」と我々を説得します。しかし、我々にとって、正しい戦争、得をする戦争などありません。赤ん坊を含めて、我々は無残に殺され、苦しみに打ちひじかれるだけです。けれども、彼等とて所詮しがない人間たち、我々が、心を合わせ、力を合わせれば、彼等の愚行悪行を阻止できない筈はありません。一蓮托生は、もう真っ平ごめんです。
藤永茂(2023年1月25日)
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