1945年8月6日午前8時15分、広島に原爆が投下されました。今日は78回目の記念日です。
今年、2023年、の7月21日に米国などでクリストッファー・ノーラン監督の映画『オッペンハイマー』が世界中で(日本は未公開)封切られ、大評判になっていて、それに関する報道や記事がネット上に溢れています。世界終末時計で有名な雑誌Bulletin of the Atomic Scientists (BAS, 「原子力科学者会報」と翻訳されています)やアメリカ物理学会の会誌Physics Today にも多数の関連記事が掲載されています。仮にこれを映画『オッペンハイマー』現象と呼ぶことにします。この米国の社会現象に対して私は極めて批判的です。ここには米国人社会の、米国ののっ引きならない深刻な病巣が露呈されています。「まだ見てもいないくせに何を言うか」という非難を受けるでしょう。私は、敢えて、“現象”という言葉を使いました。映画そのものを見る必要はないのです。反核、核兵器廃絶の立場を取る人間として、これは最悪のエンタメだと私は断言します。運命に揉みくちゃにされる一人の人間として、オッペンハイマーは稀有の標本ではありません。運命の方は稀有のものでしたが。「悪の陳腐さ(Banality of Evil)」という概念があります。この概念の定義の変更、拡大が求められています。アメリカという文明の性格そのものの問題です。「バービー人形」と「オッペンハイマー」をペアにして売り込む言語道断の行為は「悪の陳腐さ」の見事な一例です。日本で公開されても映画館に見に行くつもりはありません。やがては安価なDVDも発売されるでしょうが、その頃には、私自身のほうが“時間切れ”になっていると思います。何しろ、オスカー賞を総なめするだろうという前評判ですから。
70年前の1953年、日本で関川秀雄監督の映画『ひろしま』が製作されました。異色の作品で、企画制作は日本教職員組合、出演者の筆頭は、広島原爆被害者、延8万8千5百人とあります。内容が反米的という事で、松竹、東宝、大映などの大手は映画館への配給を拒否しました。しかし、1955年には第5回ベルリン国際映画祭で長編映画賞を受賞しました。幸いにも、2011年、核廃絶を目指す有志の人々の手によって1953年の映画『ひろしま』がカラー映画として再製作され、我々はYouTube で1時間43分39秒の映画を見ることが出来ます:
https://www.youtube.com/watch?v=O66BcBeoSj8
俳優の出演者としては、山田五十鈴、岡田英治、加藤嘉、月丘夢路、薄田研二、三島雅夫、信欣三、などなど、私の年代の人間にとって懐かしい俳優さんが名を連ねます。音楽は伊福部昭。製作費は募金に頼り、月丘夢路は無償で出演と伝わります。
この映画は、今の日本人にとって必見の映画です。ノーランの『オッペンハイマー』とはまるで異次元の映画です。今日この日に、是非ご覧ください。『ひろしま』にはオッペンハイマーは出て来ません。『オッペンハイマー』には広島長崎は出て来ないそうです。
藤永茂(2023年8月6日、広島原爆の日)
お知らせ有り難うございました。今夜しっかりと視聴します。
今のアフリカのニジェールのことを考えてたら、昔ミニシアターで観た「ルムンバの叫び」を思い出してしまいました。
この映画に関連して、藤永茂さんのことを遅まきながら知りました。
福島原発事故で、原発や核開発のことを調べてましたら、遅まきながら藤永さんのブログに突き当たり、「カタンガのウランが広島の空に」を繰り返し読み返しています。そしてサンジェーのことも。
原爆の日の本日、午後9時〜nhkスペシャルで
「原子爆弾極秘記録
知られざるウラン争奪 謎のウラン商人が暗躍」
が放送されるそうです。
藤永茂さんのブログを愛読してる者にとっては、
当たり前、何を今さらの感じがしますが
どんな内容なるやら
このことをお知らせしたくて、コメントいたしました。まだまだ暑い日が続きますがご自愛下さい。