私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

ブラジルの政治的大地震、モロの大芝居

2019-07-18 20:06:48 | 日記・エッセイ・コラム
 前回、7月4日のブログ記事『ブラジルの政治的大地震、ルーラとボルソナーロ』(前回のボルソナールをボルソナーロと訂正します)をアップした後、そろそろ、この事件をマスメディアが大きく取り上げ始めるのではないかと期待していたのですが、米欧でも、日本でも、大きく取り上げる気配がありません。米国でこの問題の重要性を強調しているのはAmy Goodmannが主宰するDemocracy Now 放送局です。私はその日本でのホームページに翻訳記事が出るのを待っていましたが、期待はずれのようなので、次のニュース放送のトランスクリプト、
https://www.democracynow.org/2019/7/9/glenn_greenwald_sergio_moro_corruption_investigation
の翻訳を、途中まで試みました。ニュース放送の英語は聞き取りやすい語り方なので、試しに聞いてみてください。同じトランスクリプトは次のサイトでも読むことができます:
https://zcomm.org/znetarticle/exposing-large-corruption-scandal-in-brazil/
もし、このグレン・グリーンワルドの決死とも言える勇敢な暴露行為が実を結んで、ルーラ・ダ・シルヴァが出獄し、大統領の座に返り咲くことになれば、これは確かに世界的に重大な意味を持つ事件になります。昔日のBRICSがまた生き返ってきたら、米国にとって誠に由々しき事態ですから。米国は、中南米地域から、反米的な政府を全て抹殺することにあらゆる手段を尽くしているのが現状です。セルジオ・モロという男の世紀の大芝居を陰から操ったのは、モロが、既に、ボルソナーロと連れ立ってお礼参りを済ませたCIAでしょう。

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Exposing Large Corruption Scandal in Brazil
By Glenn Greenwald
Source: Democracy Now
July 10, 2019

前ブラジル大統領ルイス・イニャシオ・ルーラ・ダ・シルバに対する汚職事件の連邦検察官を援助したと考えられる裁判官についてのインターセプト誌の調査記事の煽りを受けて、ブラジルで政治的危機が大きくなっている。月曜日にボルソナーロ政権は法務大臣セルジオ・モロが7月15日から19日まで“個人的要件を処理”するために休暇が与えられたと発表した。インターセプト誌が入手した、ブラジルの法務官達の間で交わされた携帯電話メッセージの漏洩やその他の情報は、洗車作戦(Operation Car Wash)として知られる一大汚職事件の捜査に当たっていた検察官達と当時の判事セルジオ・モロとの間に継続的な協力があったことを示している。 2018年の大統領選挙の前段階で、ルーラは、多くの人々がでっち上げだと言う汚職罪状によって投獄され、選挙レースから締め出されるまでは、本命の候補と見做されていた。漏洩文書はまた検察官たちもルーラの有罪性について真剣な疑惑を抱いていたことも明らかにした。ルーラの収監は、極右の元軍人ジャイール・ボルソナーロの大統領当選の道を開くことになった。その彼は、当選すればセルジオ・モロを法務大臣に任命すると言っていたのだ。モロの休暇のニュースは、ブラジル最大の保守的雑誌ヴェジャがインターセプト誌と手を携えて、洗車作戦で果たしたモロのいかがわしい役割についての新しい事実を暴露した後、モロに辞任を要求する声が高まる中で伝えられている。我々は、ピュリッツアー賞受賞者でインターセプト誌の創設編集者の一人であるグレン・グリーンワルドのお話を伺う。グリーンワルドはこのスキャンダルを報じた為に複数の殺害脅迫と政府による捜査の可能性に曝されている。

エイミー・グッドマン:これは番組デモクラシーナウ! 私はエイミー・グッドマン、フアン・ゴンサレスと共にお送りします。

フアン・ゴンサレス:全ブラジル大統領ルイス・イニャシオ・ルーラ・ダ・シルバに対する汚職事件の捜査で連邦検察官たちを支援したと思われる一判事についてインターセプト誌が行った調査究明の煽りを受けて大きくなっているブラジルの政治的危機の話題に入ります。ボルソナーロ政権は、月曜日、法務大臣セルジオ・モロに、7月15日から19日まで、“個人的要件を処理”するための休暇が与えられたと発表しました。インターセプト誌が入手した、ブラジルの法務官達の間で交わされた携帯電話メッセージの漏洩やその他の情報は、洗車作戦(Operation Car Wash)として知られる一大汚職事件の捜査に当たっていた検察官達と当時の判事セルジオ・モロとの間に継続的な協力があったことを示しています。2018年の大統領選挙の前段階で、ルーラは、多くの人々がでっち上げだと言う汚職罪状によって彼が投獄され、選挙レースから締め出されるまでは、本命の候補と見做されていました。漏洩文書はまた検察官たちもルーラの有罪性について真剣な疑惑を抱いていたことも明らかにしました。ルーラの収監は、極右の元軍人ジャイール・ボルソナーロの大統領当選の道を開くことになりました。その彼は、当選すればセルジオ・モロを法務大臣に任命すると言っていたのです。

エイミー・グッドマン:モロの休暇のニュースは、ブラジル最大の保守的雑誌が、洗車作戦で行われた不法行為の新しい事実を暴露した後、モロに辞任を要求する声が高まる中で、伝えられています。インターセプト誌と提携したその記事には、モロの汚職腐敗の規模についての新しい詳細が発表されています。その出版雑誌はこれまでモロの主要な支持者の一つだったのですが、編集者は、その8ページに及ぶカバーストーリーで、“モロが、洗車事件の検察官達の行動を指揮し、陰謀の一員として、彼がどのように法的機能を悪用したかを明らかにする”と書いています。出版雑誌はさらに語を継いで、“雑誌ヴェジャの報道チームが分析した(漏洩)通信は本物であり、このストーリーは洗車事件がこれまで知られているよりもさらに重大なものであることを示している”としています。雑誌の表紙には、モロが指を天秤の皿の上に置いている絵があり、“独占記事:自分の手での裁き:新しいチャット情報はセルジオ・モロが不法な行為を犯し、洗車事件捜査で検察側に有利なように法の天秤を傾けたことを示している”とあります。

もっと詳しいお話は、ピュリッツアー賞受賞者でインターセプト誌の創設編集者の一人であるグレン・グリーンワルドに伺いましょう。彼は、このスキャンダルを報じた為に複数の殺害脅迫を既に受け、また、政府による捜査の可能性に直面しています。

グレンさん、ようこそデモクラシーナウ!にお帰りなさい。最新の暴露事実とそれからあなたが直面している脅迫についても話してください。

グレン・グリーンワルド:素晴らしい最新の事実露呈といえば、あなたがおっしゃったように、ブラジルの最大で最も影響の大きい週刊誌であるヴェジャのこのカバーストーリーでした。ヴェジャはブラジルの、いわば、タイム誌のようなもので、しかも、右翼寄りです。あの記事の大きな意義は、編集者たち自身が認めているように——彼らは我々と協力して記事を作ったわけですが——彼らは過去四、五年間セルジオ・モロ神話を信じてやっていたという所にあります。モロ神話とは、彼が、イデオロギーや政党と関係なしに汚職と戦い、そうすることでブラジルを清浄化して、民主主義を強化している、信じ難いほど倫理的な人物だという神話です。ヴェジャの編集者たちはこの神話を信じて、繰り返しモロを表紙に乗せることで神話を作り上げることに貢献してきました。こうした週刊誌の表紙は信じ難いほど影響が大きいもので、政治的雑誌を見ない人々もそれを目にするからです。あらゆる街角で目につきます。こうした週刊誌の表紙はディルマとルーラの評判を汚し、破壊することを助け、その一方で、全く反対のことをモロにしました:モロ神話を創り上げたのです。

そいうわけで、ヴェジャの編集者たちは、我々が資料のコレクションについて彼らと共同で仕事を始め、我々がこの資料を入手してからの過去6、7週間、読み続けてきた内容を読み始めたことで、彼らは単にショックを受けただけではなく、ひどく腹を立ててしまったのです。彼らが、民主主義の原理に献身する倫理的で清廉潔白な判事だと思い込んでいたこの人物が、実は、ただ時折、ただ散発的な個別の出来事についてだけではなく、彼が身を処し、判事として彼の権力を悪用するやり方において、如何に一貫して腐敗していたことか、編集者たちはすっかり裏切られたのです。

そして、認識すべき最も重要なことと私が考えるのは、単にルーラの起訴だけではなく、あまりにも多くの人々、数十人の人々を投獄した洗車作戦の全体が問題で、事件の全体を統括していた判事、今や大統領をも凌ぐブラジル最高の権力の保持者が、初めから一貫して腐敗行為に従事していたのだから、洗車作戦は根本的に腐敗し切っていたのであり、それが大変ショッキングで深刻であったため、これまでモロ判事の最大の支持者であった右翼雑誌でさえ、彼を攻撃し始め、ブラジル・インターセプト誌と協力して、 この人物、ブラジルだけでなく世界中で倫理の鏡と崇められていたモロが、実は、徹底的に腐敗していたことを白日の下にさらし、その仮面を剥ぎとる暴露記事のシリーズをカバーストーリーに採用したという事です。

フアン・ゴンサレス:ところで、グレンさん、セルジオ・モロは先週ブラジルの下院で7時間証言してあなたの暴露記事を反駁しようとしました。それでどうなったかを話してくれますか?下院はほとんど——一時、下院議員の数人は殴り合いしそうになりましたね?

グレン・グリーンワルド:そうですね。これまでのところ、イタチごっこのような事になっています。セルジオ・モロが最初上院に行きました。そのあと私が下院に行って6時間半証言しました。それから彼が下院の同じ委員会に行って7時間証言し、今度は、私が来たる木曜日に上院の委員会に出席することになっていますが、そこで私は、彼の証言の後を追って、何時間も証言することになるでしょう。

そして、彼が上院の委員会で証言していた、まさにその日、セルジオ・モロの統率下にある連邦警察が私の財政状態の捜査を開始していたというニュースが伝えられました。法務大臣と連邦警察との関係は、米国のFBIと司法長官の関係によく似ています。ブラジル政府にCOAFという部局があり、政治家とその家族の金の動きを検知し、賄賂の受け渡しやそうしたことが進行中かどうかを監視する仕組みになっています。私の夫(訳注:グレン・グリーンワルドは同性愛者)は下院の議員ですので、私もこの部局の権限下に入るわけです。それで、セルジオ・モロが統率する連邦警察は、秘密裏に、私の全ての財政的活動の報告書をCOAFに請求しました。ブラジルで15年生活してきた私は、今になって突然この申告をしている所です。

フアン・ゴンサレス:そうなるとグレンサン、モロの活躍のおかげで、ルーラが不当に投獄されたことについての暴露が続いている結果として、今も獄中にあるルーラにはどんな影響がありそうですか?

********** (全文の約半分を訳出) **********

藤永茂(2019年7月18日)