私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

プエルト・リコ(海坊主さんのコメント)

2018-03-12 22:04:32 | 日記・エッセイ・コラム
 プエルト・リコの復興の現状に関連して、海坊主さんから重要なコメントを戴きました。ただ投稿の場所が2012年4月11日付のブログ『神妙な顔で謝る男(3)』ですので、皆さんに読んでいただく為に、ここに転載します:
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プエルト・リコに見るニューオーリンズとハイチへの道 (海坊主)
2018-03-11 16:33:23
 2017年9月にハリケーン「マリア」の直撃を受けたプエルト・リコの復興は依然として進んでいません。住民が米国民であるのに関わらず、その米国の健康基準を満たし得ない不衛生な水での生活を強いさせられています。これは、あたかも大地震を被災したハイチの姿と重なります。被災後のハイチがどう扱われてきたのか、この『私の闇の奥』の過去の記事群から私たちは知り得ます。

 被災後のハイチは国際的な援助を受けるもそのほとんどが現地住民の手に渡る事はなく、現地の復興もなおざりに、長きに渡り粗末なキャンプで不衛生な生活を強いられました(性暴力、人身売買なども発生)。そしてコレラの蔓延を許し、多く人々が病に倒れ亡くなりました。今でも復興の兆しが見えていません。圧政を敷いたかつての独裁者はしれっと帰国し、米国の息のかかった支配者がハイチの将来を握るという有様です。米国の強い干渉下にあるとはいえ、仮にも主権を持った独立国家ハイチに起きていることであり、ハイチの人々がハイチの為に立ち上がるのを私は強く願うのみです。

 しかし、プエルト・リコは米国自治領で米国政府が責任を持って事態収拾に努めなければなりません。しかし、このプエルト・リコといい、ハリケーン「カトリーナ」で被災したニューオーリンズといい、災害発生当初の事態収拾へのアクションは緩慢で決して満足いくものではないと思われます。この二つの地域に共通するのは、被災前の経済活動は停滞期に入っていた、という点でしょう。するとこう考えることができます。機会便乗型、惨事便乗型の復興の場にしよう、と。被災した住民は潜在的な扇動者・暴動者なのでとっとと退場してもらい、空いた土地をグランドゼロにして一から新たな都市計画に基づいて復興してしまおう、と。

 レベッカ・ソルニット氏の「災害ユートピア」を読まれた方は、被災直後のニューオーリンズで住民達がどう扱われたかを知っています。ハリケーンから10年後、ニューオーリンズは「起業のまち」として復興を果たしたと言います。かつてのニューオーリンズといえば黒人の多い南部の町、ジャズの聖地として名高いものでしたが、多くの住民が黒人であることが指し示すように経済的には貧しい地域だったでしょう。その貧しき被災者たちは復興したニューオーリンズに以前と同じレベルの暮らしを得ることが出来たのでしょうか。
 現在、プエルト・リコが置かれて居る状況はかつてのニューオーリンズでありハイチであると私は思います。数年後にプエルト・リコが見違えるように復興したとしても、おそらく被災住民でその恩恵に預かるのは一部で、多くの貧しき人々には悲惨な未来が待っていると思います。その上、ハリケーンの被災以前から問題視されていた石炭火力発電所の廃棄物問題はそのまま現存し、プエルト・リコの人々が安全な飲料水にアクセス出来ずにいます。未来に渡っての健康被害は深刻なものだと思います。

Democracy Now!
"Five Months After Maria, San Juan Mayor Decries “Disaster Capitalism” & Privatization in Puerto Rico"
https://www.democracynow.org/2018/2/19/five_months_after_maria_san_juan

"Toxic Coal Ash Being Dumped in Puerto Rico, Which Already Suffers Worst Drinking Water in the Nation"
https://www.democracynow.org/2018/3/9/toxic_coal_ash_being_dumped_in

 これは米国に限ったことではなく世界中で、日本で起きていることです。福島や熊本に代表される数々の被災地が、今どういう状況下に置かれているでしょうか。つまり、中東、アフリカや中南米などで起きていることを知ることは、日本で起きていることを知ることなのです。
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 海坊主さんの結びの言葉:「中東、アフリカや中南米などで起きていることを知ることは、日本で起きていることを知ることなのです。」は至言です。


藤永茂(2018年3月12日)