褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 第七の封印(1957) 人間の生死を通して神の存在を問いかける

2015年02月09日 | 映画(た行)
 セブン7つの贈り物などのようにキリスト教圏内の映画でタイトル名に数字の7(七)が入っていると、それは宗教絡みの内容である映画であることが殆んど。もちろん今回紹介する映画第七の封印もバリバリの宗教映画。ちなみにタイトルの由来は新約聖書のヨハネの黙示録から採られており、子羊が七つの封印を開封する場面に由来する。

 時代背景は中世の時代で北欧が舞台。十字軍が聖地奪回とばかりにエルサレムへ遠征し、殺戮、略奪を繰り返し、異教徒、邪教に対する魔女裁判が行われ、疫病が蔓延しているヨーロッパの暗黒の歴史を観ている気分になる映画。観ている多くの人は『あ~、中世のヨーロッパなんかに生まれてこなくて良かった』なんて思うはずだ。
 こんな堕落しきった世界になっているのに、なぜ神様は沈黙したままなのか?そもそも本当に神様って存在するのか?なんて事がテーマに描かれているが、しかも、この映画をわざわざ難解に感じているようにしているのが黒装束で白塗りの顔をした死神が登場すること。一歩間違えれば、ギャグ映画になってしまいそうな設定だが、全体的に厳格なムードが漂い、死神に取付かれてしまって余命がわずかであることを知ってしまう切なさが込みあがってくるように、死神の存在が本作をなかなか奥深い作品にしている。
 そして、死神と十字軍に遠征した騎士がチェスをして対決するシーンがあるのだが、死神が黒、騎士が白の駒を持って戦うシーンは、まさに死が覆っている暗黒の世界に、わずかな生の光を見いだそうとする世界観を表わしているように俺には思えた。

 さて、人間の生死を通して神の存在を問いかけるストーリーとはいかなるものか。
 騎士のアントニウス(マックス・フォン・シドー)と彼の従者であるヨンス(グンナール・ビョルンストランド)は10年間にも及ぶ十字軍遠征において、心身ともに疲れきってしまい、北欧の故郷に帰ってくるが、そこでは疫病が蔓延していた。
 十字軍遠征では虐殺、略奪を目の当たりにしており、故郷では疫病によって多くの人が死んでいる。このような状況の世の中にアントニウス(マックス・ファン・シドー)は自分の存在価値に懐疑的になっており、果たしてこの悲惨な状況を神様はどのように思っているのか、どうして神様はただ沈黙しているだけなのか、神様に対して不信を感じるようになっていた。そんな折に、アントニウス(マックス・ファン・シドー)は死神(ベント・エケロート)と出会い、いきなり『お前には死んでもらう』なんて唐突に言われてしまう。ちょっとばかり慌ててしまったアントニウス(マックス・フォン・シドー)だったが、死神(ベント・エケロート)に自分が勝てば命をすぐに奪われないように取引きをしてチェスの勝負を死神(ベント・エケロート)に挑む。
 チェスの勝負は長引き、その合間にアントニウス(マックス・フォン・シドー)は妻のいる居城を目指す。道中でアントニウス(マックス・フォン・シドー)は様々な人間に出会う。すっかり堕落しきった人間、魔女裁判にかけられている女性、ドMの狂信者たち。そんな人々と出会うことによって彼はますます人間の生と死に対して悩むようになっていき、本当は神様なんて何処にも居ないんじゃないかという思いが強くなる。しかし、その一方で貧しいながらも何となく幸せそうな旅芸人一座の夫婦と出会うことによって、少しばかり穏やかな気持ちも芽生えてくる。
 そしていよいよチェスの勝負は佳境に入ってくるのだが、アントニウス(マックス・フォン・シドー)は死神(ベント・エケロート)が旅芸人一座の夫婦の命を狙っていることに気付いてしまうのだが・・・

 俺なんかは神様は居ると信じているのだが、何処に居るかと言えばそれは俺の心の中に存在して、俺の心を支配している。俺の行動は即ち俺の神の思し召し。ただ祈っているだけでは神様は何も答えてくれない。勇気を持って行動する人間を神様は好むことは間違いない。しかしながら俺にはその肝心要の勇気が無いので、俺の神様はなかなか祝福してくれない。
 しかし、中世のヨーロッパに生まれなくて良かったと思いながらも、実は現在の国際的社会も大してこの映画の時代背景と変わらない。勝手にイスラム国と名乗っているテロリストの連中は日本人にも問題を引き起こし、エボラ熱なんて今以上に世界中を巻き込んでさらに多くの命を奪いかねない。そして全くモラルの欠片も無い国が、覇権国家として台頭してきている中で果たして世界はどの方向に向かっていくのか!?このままいくと世界は破滅に向かっていくような気がするが、その時救世主は再びこの世に降誕するか?
 なんだか日本人には全く理解できない内容かと思いきや、国内外に多くの問題を抱えている日本こそ第七の封印には大きく共感できることがある。『滅びの中に救いがあり、絶望の中に希望がある』。なんで自分がこの世に存在しているのか疑問に感じて悩んでいる人、いつも神様って本当に居るの?と考え続けて貴重な時間を無駄にしている人、とにかくまるで希望が持てない人には特にお勧めしたい

第七の封印 <HDリマスター版> 【DVD】
マックス・フォン・シドーほか
キングレコード


 監督は本国スウェーデンのみならず、世界中の映画人から尊敬されている巨匠中の巨匠イングマール・ベルイマン。彼の映画を観ると本当に生きるって辛いよね、と思わせます。お勧めは名誉ある教授が過去を振り返る心象風景が印象的な野いちご、本作と同じく本当に神様って居るのかよ!と思わせておいて感動的なシーンを用意している処女の泉、名女優イングリッド・バークマンの遺作であり、母と娘の罵りあいが見せ場たっぷりの秋のソナタ等がお勧めです。

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