褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 天国は待ってくれる(1943) 女好きの男の一生が笑える

2021年01月28日 | 映画(た行)
 本当に天国と地獄があるのならば、俺は果たしてどっちに行くのだろうか?残念ながら今のところ、地獄に送られてしまうことしか想像できない。これから徳を積んだとしても、もう手遅れのような気がする。そんな俺と同じように後悔だらけの人生を送ってしまったと嘆いている人に希望を与えてくれる映画が天国は待ってくれる。1943年という第二次世界大戦の最中に作られた映画だが、白黒画面じゃなくて綺麗なテクニカラーだし、古さを感じさせない。テンポの良いストーリー展開とユーモア溢れる会話は非常に洗練されており名匠エルンスト・ルビッチ監督によるテクニックを感じることができる。

 少しばかり度が過ぎた女好きの人生を過ごしてしまった男性が行き着く先は天国か地獄か、それではストーリーをできるだけ簡単に。
 冒頭からいきなり死後の世界から始まる。ヘンリー・ヴァン・クリーヴ(ドン・アメチー)は地獄への受付けにやって来る。そこには閻魔大王(レアード・クリーガー)が居て、死者に対して天国か地獄かの行き先を決めるのだが、ヘンリーは自分でもこれは酷いことばかりしてきたと悟っていたので、いちいち裁決されるのを待つまでもなく地獄の受付けにやってきたのだ。そんなヘンリーに興味を持った閻魔大王は、とりあえずヘンリーが進んで地獄の受付けにやってきた理由を聞いてやると、ヘンリーが自らの人生を回顧するのだが、出てくるのは女性遍歴の数々。流石にこれは間違いなく地獄へ行かされるのかと思いきや・・・

 ヘンリーと閻魔大王の地獄の受付け場所のセットがなかなか新鮮さを感じる。さぞかし恐ろしい場所かと思ってたら、広々とした会社の事務所みたいな感じ。しかも閻魔大王の格好がビジネススーツと言うのがけっこうシュールに感じられて怖さはゼロなのが少し笑える。ドボケた味わいを持ち合わせているヘンリーの風情も重なり、2人の会話はけっこう楽しい。
 主にヘンリーの生まれてから死ぬまでの回顧録が展開されるのだが、少年時代からお祖父さん(チャールズ・コバーン)に甘やかされて、放蕩息子ぶりを発揮してくれる。結婚は略奪婚だし、浮気癖は妻のマーサ(ジーン・ティアーニ)が死ぬまで治らない。妻の亡き後も女遊びは止まらず息子にまで注意されるほど。そして死ぬ瞬間での出来事も笑わせる。
 現実においては、女癖の悪い男のすることはドン引きさせるようなことばかりだが、ところが本作を観ていると気色悪さを感じさせないどころか、まるでお伽噺のようなファンタジーな世界を感じられる。超一流の映画監督の手に掛かると、ロクでもない男のはずが伊達男に見えてしまうから不思議だ。
 しかし、女好きの男を演じるドン・アメチーだが、この人の声のトーンが渋くて、見た目もダンディ。そして洒落たことを言うので、そりゃ~モテる。俺もこんな男を目指そうと心の底から思った。
 そして、閻魔大王の判決の粋な計らいが非常に良い。自分の人生の良し悪しなんか自身で判断なんかできないし、どれだけ他人から感謝されるかによって価値が決まるのだ。俺もこれからは目一杯に周囲の人を楽しませてあげられるように努めよう。そして天国を目指すのだ。
 正直なところ女性がこの映画を観たら腹立つかもしれない。しかし自責の念に駆られて自分自身を、追い詰めてしまっている人がこの世の中は多い。そんな人にとって本作は、きっと笑いと心の安らぎを与えてくれると思う。

 監督は前述したエルンスト・ルビッチ。ハリウッド黄金期を支えた偉大なる監督。共産主義を笑いで皮肉ったニノチカ、正義感溢れるキャラクターが似合うジェームズ・スチュアート主演の桃色の街角、当時ナチスにボロボロにされていたポーランド国民への応援賛歌的な意味を込めた生きるべきか、死ぬべきかがお勧めです。
 
 

 


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