褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 ミュージックボックス(1989) 法廷&ホローコスト

2023年07月03日 | 映画(ま行)
 ハリウッドお得意の法廷映画だが、それにプラスアルファとしてユダヤ人大虐殺をテーマに描いたのが今回紹介する映画ミュージックボックス。戦争犯罪人の汚名を着せられたお父さんの無罪を証明するために、弁護士の娘が無罪を勝ち取るために奮闘するストーリー。本作は更に一歩先に驚きの展開が待っている。
 娘は弁護士だから被告の無罪を勝ち取ろうと一生懸命に頑張ろうとするのは当たり前のことだ。しかも父親の弁護士になったからには更にその想いは強くなるのは当然のことだろう。しかし、本作では父親の弁護をするからには当然ながら自分の知らなかった父親のことを調べなければならず、しかも調べれば調べるほど、または勝手に父親の真実の姿が浮き彫りになってくる。理想と現実、過去と現在の狭間に悩まされ、そしてナチスが行ったホローコスト(ユダヤ人に対する大虐殺)の酷さを現実として突きつけられた時、果たしてこのまま見逃すことができるのか?という悩みに苛れる。俺なんかは今でこそ聖人君子と見られている人格者であるが、現在の俺に騙されている人は果たして俺の過去の数々の悪行を知った時に、今でも俺を聖人君子として見ることができるのか?

 人というのは観る視点が変わるだけで これだけ見方が変わるのかを痛感させられるストーリーの紹介を。
 父親のマイク(アーミン・ミューラー=スタール)はハンガリーからの移民で、男手一つで苦労しながら息子と娘のアン(ジェシカ・ラング)を育ててきており、今ではその甲斐もあってアンは優秀な弁護士として活躍しており、家族はそれぞれが独立しながらも何不自由のない生活をアメリカで送っていた。
 しかし、ある日のこと。マイクがアメリカ政府から訴えられる。最初こそは簡単に人間違いぐらいだと思っていたアンだったのだが、内容が戦時中のハンガリーにおいてのユダヤ人虐殺の首謀者としてハンガリー政府からの身柄引き渡しとして父親が挙がっていることにアンはびっくり。今まで自分にとっては善良な父親であることしか知らないアンは父親の無実を信じて弁護を引き受けることを決意し、アメリカ政府と法廷で対決する。
 さて、裁判が始まってからは出るわ、出るわのマイクにとっての不利になる証言の数々。しかも、父親のハンガリー時代に聞かされていた生活が嘘だったことを知らされ、アメリカに来てからも自分の知らないところで父親が怪しい行動をしていたことを知ってしまう。それでも相手側の証人のスキを見つけることに長けているアンは裁判を有利に進めていき、無罪を勝ち取るところまで手が届きそうになるのだが・・・

 アンと相対するアメリカ側の検察が能力不足のおかげで辛うじてマイクが助かっているように見えてしまったのが残念。検察側がマイクがハンガリーで行ってきたことの酷さを矢継ぎ早に証人を引っ張り出して来てアピールしているだけ。ハンガリーでもかつてはユダヤ人虐殺が行われていて、その残酷さは伝わったが、それがマイクを有罪にする証拠にならないのが俺でもわかってしまった。
 アンにとっても、この裁判は心配していたよりも案外チョロいと感じたのかもしれないが、しかし被告人である父親の弁護士、娘という立場を離れて考えた時に、やはり父親は本当にケダモノだったのではないかと考えてしまう。人間のみならずある事象を色々な角度を変えて見ると、実は善悪の判断をつけるのかどれだけ難しいか本作を観ればちょっとぐらいは理解できる。
 さて、タイトル名の「ミュージックボックス」だが本作と何の関係があるのかと思われるかもしれないが、裁判で出される証拠品よりも重要な物として出てくるので、これは映画を観てのお楽しみに。
 サスペンスフルだし、家族の絆について考えさせられるし、アンが最後に取った行動の是非、ハンガリーの綺麗な風景、建築物が観れるし、まだこの映画が公開された1989年といえば米ソ冷戦の終末だったし、ハンガリーって前は共産党国家だったよな~なんて歴史を振り返ることができる。社会派映画でありながらエンタメであるように色々な内容が含まれる映画ミュージックボックスを今回はお勧めに挙げておこう

 監督はギリシア人のコスタ=ガブラス。本国ギリシャでもZという社会派映画を撮ってますがこれはお勧め。オリバー・ストーン監督のJFKは明らかにこの作品を模倣してます。ハリウッドに渡ってからも社会派映画の監督としての面目躍如の作品を撮り続ける。本作以外にも、ジャック・レモン、シシー・スペイセク共演のミッシング、ダスティン・ホフマン、ジョン・トラヴォルタ共演のマッド・シティがお勧めです。








 

 
 
 

 

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