頭の中は魑魅魍魎

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『けむたい後輩』柚木麻子

2016-06-20 | books
横浜は山手の聖フェリシモ女学院大学に入学してきた真美子。たまたま知り合えた先輩は、14歳で作家デビューした、昔から憧れていた栞子だった。栞子の父親は有名な翻訳家。煙草をスパスパ吸い、大学教授とずっと付き合っている。真美子は栞子に夢中になる。栞子に呼ばれればすぐ行くようになる。そんな真美子のことが心配でならないのは、幼馴染の美里。真美子と同じ寮に住んでいる。真美子は病弱なのだ。人を振り回し、チヤホヤされることに夢中の栞子。女子アナを目指している美里。栞子は美里を嫌い、美里は栞子を嫌う。この二人の視線から描く、真美子と、周辺の人たち…

おお。おお。おお。(なぜか三連発) これは面白かった。ものすごく面白かった。

フェリシモはどう考えてもフェリスのことを指しているのだろうけれども、まあそれはいいとして。キャラクターが立っている。天然記念物のような真美子。映像化するなら綾瀬はるかだろうか。栞子は(古いけれど)石原真理子(真理だっけか?)の若い頃がぴったり。美里は人の目を惹く程度に美人であれば誰でもいいかな。

ストーリーがどう展開していくか、後半ドキドキしながら読んでしまう。

それ以外にも考えさせられることが多い。主役は真美子なんだけれど、特に栞子については。

例えば、30代、40代ぐらいの女性で、「あたしの人生こんなはずじゃなかった」「もっとあたしはできる女だったはずなのに」と思っている人は、ぜひ読んで欲しい。あなたは、もしかすると栞子なのかも知れない。

それとタイトルの「けむたい後輩」 煙草を吸ってけむたいのは栞子のはず。それが後輩の真美子の方がけむたいとはどういうことなのか。最後まで読めば納得。このラストもすごくいい。

また各章が「真美子、とりこになる(一年生編)」はどういうことか読めばすぐに分かるけれど、「真美子、とりのこされる(二年生編)」「真美子、トリコロール(三年生編)」「真美子、鳥になる(四年生編)」、どういう意味だか全然分からなくなる。本文を読んでもすぐには分からない。この洒落のきいたタイトルも好きだ。

けむたい後輩

今日の一曲

最近聴きたくなって、スマホでリピートしている曲。he=栞子、she=真美子として解釈できなくもない。The Doobie Brothersで"What A Fool Believes"



歌詞の内容についてここ数日考えているのだけれど、よく分からない。
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