頭の中は魑魅魍魎

いつの間にやらブックレビューばかり

『リボルバー・リリー』長浦京

2016-06-03 | books
関東大震災の後、13歳の慎太と11歳の喬太は東京から秩父へ引っ越しさせられる。しかも偽名を使って。父の細見は陸軍の機密を持っており、陸軍から狙われている。小曽根百合。16歳で特殊訓練を受け、中国で何人もの殺害に関わった。ゆえあって、百合は慎太を救うことになる…

長い。ひたすらに長い。490頁もみっちりと続く。

細見は陸軍と組んで、色々と後ろ暗いことをしているのだけれど、その前後の歴史(どっからどこまでがフィクションだかよく分からない。山本五十六とか宇垣など実名が出て来るけれど)がなかなか面白い。

幣原機関(架空だと思う)が女性のスパイを養成していたときに、銃器の扱いがずば抜けていたのが百合。タイトルのリボルバー・リリーはここから来てる(と思う。)見目麗しく、きっぷがいい。彼女に軽く恋をしつつ読んでしまう。

百合や慎太を救おうとする弁護士岩見などのサブキャラもいい。

難点は、やはり長いということだろう。しかし、直木賞候補なってもおかしくないほど、外も中も重厚だった。

リボルバー・リリー

今日の一曲

リボルバー。氷室京介で"REVOLVER"



では、また。
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『咲ク、ララ、ファミリア』越智月子

2016-06-01 | books
36歳、次女柊子。母は14年前に三女の桐子の家庭教師と出奔した。長女はすぐに妊娠し家を出る。家には自分と高3の桐子と高1の楓子と父が残された。柊子は家のことで頑張って来た。自分の結婚のことなど考えられずに。そして時は流れ。62歳の父が言った。もう一度結婚すると。相手はもうすぐ40歳になると言う。フリーの翻訳家。そして、その人は、男だった…

意外なほど面白かった。

62歳の父が再婚するだけでもおったまげるのに、しかも相手は男!この設定だけで十分いける。

加えて、各章ごとに、各々の姉妹の立場から描く。それぞれの姉妹が抱えている問題がだんだん分かってきたり、父親の相手がどんな人間か分かってきたり。彼がなかなかいい奴なんだけれど、そのいい奴具合がなかなかいい。

家族とか結婚とか、愛情とか。とかく面倒なものだけれども、同時にまた味わい深いものなんだとしみじみ思った。

冒頭で小津安二郎の「晩春」の話が出てくるのだけれど、この映画をぜひ観なくちゃとも思った。

咲ク・ララ・ファミリア

今日の一曲

家族、とか故郷とか。Bruce Springsteenで"My Hometown"



では、また。
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