「インパラの朝」中村安希 集英社 2009年
日本人・女性・28歳がユーラシア大陸、アフリカ大陸を180万円の予算で2年かけて一人旅をする。筆致は乾いていて、女性的ではなくて、そして心を打つ。人間とはいったいなんなのか、あらためて深く考えさせられた。
私は海外を一人で一ヶ月旅したことが二回ある。一度は冬の北アメリカ大陸一周。一度は真夏の東南アジア一周。どこに行っても地元に馴染みすぎるぐらい馴染んだ自分が=旅人ではないかと思ったり、逆にどこに行っても「どこーにいても、そこで生まれたような気がしない@久保田利伸」と思ったり。
貧しい所を結構巡ったと思っていたけれど、中村の西アジアからアフリカの旅とは比べ物にならない。それ以上に感受性の高さ、そして感じたことを伝える能力がさらに比べ物にならない。
ボディブローのようにじわじわと効いてくる文章があちこちにあまりにも多い。2年の旅をたった一冊の本にまとめているから、一カ国があっと言う間に終わってしまう。旅のガイドブックではなくて、<一人旅とは何か>考えさせてくれたり、<文明がもたらす意味>、<支援ということの無意味さ>について考えさせてくれたりする本である。
私は富む者が貧しい者に与えたり、先進国が途上国に与えたり、NGOだのNPOだの、青年海外協力隊だの、国連だのに対して懐疑的な感情を抱いていた。しかしながら否定できてはいなくて<まだ私には結論づけられていない保留事項>だった。少なくとも、誰が何と言おうと絶対的に賞賛すべき大いなる善行である、とは思っていなかった。
中村は、ボランティアの心を持って旅に出たのだが、色々あって考える。結果として、プロセスは別なのにも関わらず、私と同じような考えを持つに至った(ということが本の最後の方になって書かれている。)
悲しい気持ちになった。私のことを誰かに論破して欲しかった。金持ちが貧乏人に施すことはいいことなんだよ、なぜかと言うと・・・と。しかし、むしろ、施しは施す側のエゴとプロフィットを満たすだけの道具にすぎないとすれば、我々の経済行為の半分以上が否定されることになる。
私はなんのために生きているのだろう。私はいったいなにをしてきたのだろう。想いはアフリカの地でぐるぐると回っている。
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