温泉行脚の旅。
函館から登別へ向かう。
特急北斗で二時間と十数分。
登別駅で路線バスに乗り換えた。
終点の登別温泉駅で下車。
駅からは十数分だったろうか。
「望楼NOGUCHIさんは何処ですか?」
「ここからは少しありますよ。
連絡したら迎えに来てくれますよ。」
案内所で尋ねたら
感じのいい中年女性が答えてくれた。
バスターミナルから電話して
ホテルに迎えに来てもらう。
登別温泉はもう晩秋の装いであった。
「この道も先のサミットでできたんです。
突貫工事でしたよ。すごいもんですね。」
「紅葉は先週が見ごろでした。
まだ少し残ってますかねえ。」
今宵の宿泊先は望楼NOGUCHI登別。
エントランスは判りにくい。
普通の扉がひとつがあるだけだ。
薄暗い通路を通りフロントへ。
まるで京都の玄関に続く路地みたい。
まさに大人の隠れ家である。
外観は言わばリゾートの
デザイナーズマンションといった感じ。
露天風呂付ジュニアスイート。
室内は「和モダン」をテーマとした
全く新しいコンセプトのデザイン空間。
広いっ!50㎡はあるという。
照明はすべて間接照明が施され
温泉は源泉かけ流しである。
さっそく部屋の風呂につかる。
たっぷりとしたお湯。
御影石でできた広い浴槽。
ゆうに三人はつかれる広さだ。
この湯は特にアトピーなど
皮膚疾患によく効くらしい。
全室スイートのこのホテル。
さすがにゆったりしている。
テレビは大画面の液晶がリビングに
そしてベッド脇にも1台。
冷蔵庫の飲み物はすべて無料だ。
珈琲ミルまで設えてある。
まさにラグジュアリースペース。
温泉につかりバスローブをまとい
早速冷蔵庫から缶ビールをプシュッツ。
まるでギャッツビーになった気分。
「いやあ。1年に1回くらい
こういう贅沢してもバチ当たらんよね。」
「贅沢は敵だ!」と
戦中派の親から教えられた世代ゆえ
貧乏性がなかなか抜け切らない。
齢(よわい)五十を過ぎてようやく
こんな贅沢も肯定できるようになった。
でもまだどこかで
繰り返し言い訳している自分がいる。
習い性となるとはこのことか?
夕食は階下の個室レストランへ。
掘りごたつ式にテーブル席式と
異なった設えの個室が配置されている。
ここも間接照明が施され
ほのかに浮かび上がる二人の食卓。
フレンチ懐石風の食事…。
一品一品は上品に盛り付けられ
食前酒、先付から前菜、吸物に造り
焼物、凌ぎ、強肴、煮物、酢の物
食事、留椀、そして水菓子と続いた。
虎杖浜産たらこ、白老産キャビア
根室産タラバ、襟裳産螺貝と
すべて産地表示の食材である。
品数は多いので楽しめる。
一つ注文があるとすれば
デザートまでのフルコース仕立てなのに
珈琲がでないのは画竜点睛を欠く。
翌朝も野鳥がさえずる森の眺めの中
ゆったりそしてたっぷりな朝食が出た。
・かじき鮪の昆布〆
・鮭の西京焼
・もずくととろろの酢の物
・肉じゃが
・昆布の佃煮
・温泉たまご
・野菜サラダ
・しじみの味噌汁
・はさみ漬物
・たらこ
そして特産の登別牛乳と牛乳プリン。
朝からこれだけでるとは…。
チェックアウトは正午。
やはり遅めのチェックアウトが多い。
案外若い客が多かったのには驚いた。
勿論、こういう温泉地では定番の
おじさんと妙齢女性の二人連れも。
なんと言ってもここ登別温泉は
新千歳空港からが近い。
ひゅっとひとっ飛びで
極上の温泉とスイートの夜が楽しめる。
登別温泉も、この宿も
また再訪してみたくなる処である。