陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

廊下はどこに続く

2006年05月06日 | cocoro

“みんながあの日の服装で
あの日の顔つきで
落葉松の緑が萌えている道を
笑いながらもう一度やって来ないかな”
■伊藤整「もう一度」より

陽光がまぶしい校庭で野球を見ていたが、
体のほてりを休めようと校舎に入った。
ひんやりした廊下が見通せた。
右手に職員室と校長室の看板。左手は窓が続く。
まるで遠近法の写生のモデルになりそうな廊下だ。
映像なら廊下の向こうからカメラに向かって
若き日の自分と昔の級友たちのシャドウが
スローで駆けてくるのかな。

震災で残ったこの校舎には
野球の歓声は何も聞こえてこない。
心を澄ませば
あの日の14歳たちの声が聞こえてきそうだな。
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竜門の鯉

2006年05月05日 | cocoro

子供を立たせ柱に傷をつける。
3年前からは21㎝も高くなった。
私とはあと2㎝差…。
来年はきっと追い越されているだろう。

この子に竜門を登るだけの力があるだろうか?
いやいや、たとえそんな力鯉でなくとも
穏やかな池で平凡に過ごしてくれるだけでいい。

しかし
初めからそんな穏やかな池で住めるわけではない。
幾多の竜門らしきものを正面から登り切り
急流に跳ね返されたり、蹉跌したりしながらも
自らの川を進んでいくしかないのだろうな。

見上げた空の何処かから
誰かが言った。

…見てごらん!鯉のぼりはね、ほら、
何処のおうちでも精一杯にたなびいているだろう
親たちの希望と愛情をはらんでいるからなんだよ…

「五月の神様。だから五日は晴れるんですね。」

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GWの留守番犬

2006年05月04日 | slow life

風薫る五月の或る日。
山の麓の坂の家。
ワンちゃんの独白が聴こえる…。

「吾輩は犬である。って見りゃ解るよね。
今日はとてもいいお天気なので
ご主人さまたちは子供たちと
車でどこかに出かけちゃいました。
だから今日はひとりでお留守番。
ゴールデンウィークで不用心らしいから
こうしてね、ここから見張ってて欲しいって。
『なんか頼りなさそう』だって?
ちょっと眠いかなぁ?」

「だってこのテラスね。とても風が気持ちいいんだ。
だからついうとうと眠くなってくるのは仕方ないよ。
でも大丈夫!しっかり見張ってるから。
だけど…。
みんな早く帰ってきてくれないかなあ?」
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石切詣で

2006年05月03日 | slow life

太陽は隠れたままの肌寒い日であった。
老母の願いで石切神社へ連れ行く。
阪神高速を一路、真東に突き切り生駒山の麓へ。
ゴールデンウィークの谷間だからか
意外とスムーズな流れで約50分で神社へ着く。

石切神社は「でんぼの神さん」である。
「でんぼ」とはできもの(腫瘍)のことで、
故に病気治癒を願う多くの人びとが参詣に訪れ
境内で信心深くお百度参りをしている。

小さい頃から年に数回家族でお参りした神社である。
母は意外と信心深い人で、昨年は体調が悪くて
お参りできなかったことを悔やんでおり
暖かくなったら連れて行って欲しいと懇願されていた。

境内は空いていた。
連休の谷間ということとこの寒さで
お年寄りたちは参詣を見合わせたのだと思う。

原発、転移と2度の大手術を乗り越え、
自らは知らない癌と共存しながら
2度目の手術から十数年が経過した。
齢78歳。母は今こうして生き続けている。
大柄だっただけに32キロの体は
吹けば飛びそうな弱々しい姿である。

母は「でんぼの神様」が治してくれたのだと
何の疑いもなく信じている。

人が神様に祈る姿は美しい。
「信じるものは救われる」というのは
絶対真実だろうと私は思う…。
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