陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

静謐の情念 上村松園

2010年12月12日 | slow culture

京都国立近代美術館・上村松園展へ。

旧きよき日本の暮らし。その生活の中での
何気ない女性の表情を静謐なタッチ中に
そこはかとなく浮かび上がらせている。
そのように感じる絵だった。
日常の中にある日本人のさりげない品と格。
心の動き。俳句に通じるものを感じた。

■本日の私のお気に入り作品。

作品番号25 蛍
蚊帳を吊っている女性がふと蛍に眼を留める。
そのしぐさや表情が何とも可愛い。写生の妙。
デッサンの下絵もとても美しい表情だった。
私の一番はこの作品。

同71 夕暮
夕日の光りに針先に糸を通そうとしている女性。
淡い光りのなかでどこか懐かしい光景だ。

同72 晩秋
敗れた障子を繕ふ女性。その背(せな)と
女性の美しい表情が何ともいえない。
どちらも手の表情の何と美しいことよ。

ベスト3は以上の作品でした。
蛍は松園38歳の時の作品。
どこか若々しいタッチを感じるが
夕暮と晩秋は60歳後半の晩年の作品。
そぎおとされた静謐の中でひしと伝わる情感。
息を詰めて、いつまでも眺めていたい
心の深部を突き動かされるような
そんな衝動に駆られた作品である。

その他のお気に入り作品。

・粧   品のある色っぽさ
・時雨  紅葉に俯き加減の女性がなんとも
     今にも駆けていく臨場感
・虫の音 すだれから覗く女性。今にも虫の音
・人形つかい 襖の間の人の表情がなんとも
・待月  後姿が美しいなあ
・冬雨  動きのある絵。松園の雨の絵は好きだ
・虹を見る きっと綺麗な虹がかかっているのだろう
・風   碧い着物の何とも美しき。表情もよくて
     出している足がなんとも言えん可愛さ。
・鼓の音 2種類ある。2年後の作品のほうは躍動感があった。
     着物の配色違いだけではない何か
・新蛍  こちらの蛍もいいねえ。
・鴛鴦髷 合わせ鏡を覗き髪を気にする女性。可愛い。 

松園の描く女性は、浮世絵の女性と違って
唇小さく、楚々としてとても可愛い。
何故だか心落ち着く美人なのだ。
それは松園の母への憧憬が、作品に
どことなく現れているからなのだろうか。

日本の美しい心と情景に触れた一日(ひとひ)
でした。

“針穴の先に夕べの冬日かな”
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