陽だまりの旅路イスキア

あ、slice of life…日向香を感じる日々の暮らし…

くいしん忘備録 こいわし

2009年06月04日 | slow gourmet

広島にやって来て、ご当地で
これは一番旨いと思ったものは
牡蠣でもなく、お好み焼きでもなく
そしてもみじ饅頭でもなかった。
もちろんそれらも旨かったのだが。

これは最高にうまかっ!!
と思ったものは
こいわしの刺身であった。

最初はこいわしの身が
てんこ盛りになった皿を見て
身の色はどどめ色(*注)だし

「何だかなあ?旨いのかいなあ?」

なんて正直、感じたのであるが
生姜醤油で口に含んでみると
これが口中で化けたのである。
醜いアヒルの子よろしく
こいわしが鯛に化けたのじゃ。

「こいわしちゃん
馬鹿にして、本当にごめんね。」

広島では
毎年6月初旬から解禁になる小いわし漁。
すでに他産のものも出回っているが
特に鮮度の良い小いわしの刺身は
背の銀鱗がきらきら輝いている。
こいわしは古来から
七回洗えば鯛の味と言われているのだ。
まさしく鯛に劣らない絶品の味わい。
関西ではそうそうお見受けできない
瀬戸内は広島が誇る庶民の味覚だ。

週に一度、仕事帰りに行きつけの
安居酒屋でこの小こいわしを
冷蔵ケースから、もそっと取り出して
カウンターでカープのナイターを見ながら
芋のお湯割りをちびちび飲みつつ
銀鱗のこいわしを箸でつまむひととき。

なんだか。これがいいんだよなあ。
ちょっぴりうら寂しくて、けれど
一日が終わった安堵の至福の時間で。
とは言え、なんだか人恋しくなったり…。
今日も日は暮れゆきましたでござるよ。

こいわしや ひとり酒場の 箸の友 拙私有

お粗末です。

*注:どどめ色とは熟れた桑の実の色。
 暗紫褐色の色味を言うらしい。)
コメント