のぞみが京都に着く。
久しぶりの京都だ。
地下鉄に乗って御池へ。さらに
東西線に乗り換え東山で降りた。
地上に出た瞬間に
あのどこか懐かしい肌感覚…。
それは、70年代の京都…あの夏。
熱せられた空気が逃げ場なくよどみ
そして蒸れた空気の塊がべっとりと
肌にまとわりつくような暑さ。
今住んでいる瀬戸内の広島とは
明らかに違う夏の暑さであった。
駅から十五分位は歩いただろうか?
熊野神社近く、岡崎の北
今日のお宿がある
聖護院門跡へたどり着く。
ここは本山修験宗の総本山。
いわゆる厳しい修行で知られる
山伏の寺の総本山である。
そして皇室ゆかりの地でもある。
今宵お世話になる聖護院
御殿荘はそのお寺の境内にあった。
純和風の旅館である。
中庭には京都らしい草花のひとつ
桔梗が咲いていた。ちなみに
私の一番好きな花である。
今は早咲きの桔梗が主流だが
やはり桔梗と言えば秋の花
晩夏から秋にかけて咲く姿がいい。
今日は、関東方面から
修学旅行の中学生が来ていた。
これは騒がしいかなと思ったのだが…。
私たちの隣が校長先生の部屋だった。
ということは
この並びにある部屋はいい部屋なのだ。
案内された部屋は新しくはなかったが
広くて小さな庭に面した部屋だった。
生徒たちの喧騒も、ここでは
まったく気にはならなかった。
中学生たちの入浴時間は
午後八時であるという。
「それまでにお入りいただいたほうが。」
ゆっくりできますという
係りの勧めにしたがって大浴場へ。
幸運にも誰もいない。貸切だ。
温泉ではないが、いい湯であった。
日中、湧き出るように出た汗を
お湯できれいさっぱりと流し
歩き疲れた足腰を
入念に湯でほぐすことができた。
京都は私にとって
神戸、大分に続く
第三のふるさとである。
学生時代、そして社会人となって
再び通った京都勤務時代と
足掛け八年あまりを過ごした街だ。
しかし住んだことはない。
住まない方が自分にとっては
案外よかったように思う。
“神戸に住んで
大阪で働いて、京都で遊ぶ”
この細雪的生活への憧憬が
色褪せずに今も続いているのだから。
食事は部屋でゆっくり取る。
野菜が中心の京懐石は胃にも優しい。
美味しいものを、視覚で愛でながら
そして、ちょこちょこっと
食べたい年代の者にとっては
京料理はこの上なく間尺にあう
最高の料理であると思う。
泊まって、味わう
そして遊ぶ…。
夏の京都三昧である。
つづく。