遅い起きがけの休日の朝
窓を開け放つと
少し肌寒い秋風が部屋を吹き抜けた。
秋風はどこかの庭に咲いている
金木犀の甘い香りを同時に連れて来た。
懐かしい香りが部屋に留まる。
やはり芳香剤とは違う絶対芳香?だ。
風は向こう1キロあたり先にある
小学校で行われている少年野球の
掛け声と喚声も運んできた。
マンションの上階にある我が家は
幸い遮るものもなく、ときどき
潮の香りや船の汽笛も流れてくる。
湾岸沿いの煙突の煙はややたなびく程度。
今日は比較的風も穏やかなようだ。
澄んだ日には遠くの空港も見える。
とある日の秋の休日…。
風が運んでくるそれらの音や匂いを
なすがままに感じているひととき。
五十を過ぎると
そういうことが実は人の幸せなのだと
やっと思えるようになってきた。
幸せの渦中にいる人は
幸せを実感しないのだと言う。
ん?ならば私は…
「いいえ。そういう随想を書くこと自体
貴方は幸せなのですよ。」
秋風が運んだ空耳?天の声?
野球の喚声がひときわ大きくなった。
きっと点が入ったのだろう。
■美祢線・長門湯本の踏切りにて