ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『デジャヴ』

2006-12-29 22:08:57 | 新作映画
(原題:Deja Vu)

----「デジャヴ」って、
「あれっ?これ、なんか前にも見たことある…」
っていう、あの感覚だよね?
そのものズバリのタイトルだけど、
監督がトニー・スコット。
どういうアプローチなんだろう?
「ぼくもそれが気になっていたところ。
なにせ製作が、あのジェリー・ブラッカイマー。
この組み合わせだと、
スペクタクル大作しか思い浮かばない」

----でしょ。
<デジャヴ>というのが
そもそも個人の内面的な世界だけに、
彼らの作る映画の作風と結びつかないもの。
というところで、
まずはお話を説明してよ。
「そうするかな。
物語は、543名もの犠牲者を出した
凄惨なフェリー爆破事件から始まる。
捜査官ダグ(デンゼル・ワシントン)は、
手がかりと思われるひとりの女性クレア(ポーラ・パットン)の遺体を見て、
不思議な感覚にとらわれる」

----それがデジャヴってこと?
「うん。そういう風にチラシやプレスには書いてある。
ところが正直言って、それが観る者には伝わりにくい。
この捜査官の私生活がはっきり描かれていないこともあって、
自分の感じた<デジャヴ>的な感覚を
気のおけない仲間や家族に喋ると言ったようなシーンがないんだ。
つまり、観る側はデンゼル・ワシントンの表情だけで
<デジャヴ>を推測しなくてはならない。
もう一つ、問題なのは
素早いカットの切り返しを重ねた
トニー・スコット十八番のファッショナブルな映像。
もとより映像自体が眩惑的なものだから、
どこからがデジャヴ感覚なのかが分かりにくいんだ」

----でも、それはしっかり観ていれば分かるのかもよ。
「そう言われると返す言葉もないんだけどね(汗)。
さて、話を先に進めると、
その才能を高く買われたダグは特別捜査官の一員に抜擢され、
政府が極秘に開発した、とある映像装置を見せられる。
それは4日と6時間前の映像を自由に見ることができるという
驚くべき監視システム」

----あらら、思いっきりSFに針が振れたね。
そんなのあるわけないじゃニャい。
「いやいや。
ところがこの映画のSF志向はこんなものでは終わらない。
ダグはこの装置でクレアの過去を見るうちに、
彼女に強く惹かれていき、
どうにかしてその命を助けたいと思うようになる」

----えっ、だってクレアはとっくに死んでいるんだよね?
「そこなんだよね。
まあ、それがデジャヴ感覚に突き動かされてとも言えなくはないんだけど、
映画は、それについて合理的説明を試みようとしていく。
この辺りがいかにもハリウッドらしいんだけど、
映画はSFへSFへと突き進んででゆくんだ。
配給会社から最後の方については話さないようにと
強い要望が出されているので、
これ以上喋るのは止めておくけども、
この映画に<デジャヴ>からイメージされる
<心理映画>を期待しては肩すかしを食らうことになる。
そうではなくて<デジャヴ>をモチーフに
そこにSF的な化粧を施したサスペンス・アクション。
そう考えていった方がいいだろうね」

----うわあ。そこまで言ってもいいの?
「うん。だって最近、
思っていたのと全然違ったと言う話をよく聞くじゃない。
それがいい意味に裏切られているのならいいんだけど、
この映画の場合、タイトルがタイトルだけに
単館系のアーティスティックな
あるいは個人映画と思って観に行く人もいるかもしれないと…」

----いやあ、それはニャいんじゃないの?
だってトニー・スコットだよ。
キャッチコピーも【デジャヴを、操れ----】
「あっ、そうか」

フォーンの一言「デジャヴじゃないニャ?」小首ニャ

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猫ニュー

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『エクステ』

2006-12-26 00:18:19 | 新作映画
----最近、園子温って精力的じゃニャい?
「そうだね。
『自殺サークル』を観たときは、
なんてグロい映画を作る監督だろうって思ったものだけど…」

---思ったけど?
と言うことは、今度はそうでもなかったんだ。
「いやいや。映像としてはさらにパワーアップ!
ただ、寸止めにしているところは、
少しオトナになったのかなと(笑)」

---ふうん。一言で言うと、
これはどんな映画ニャの?
『エクステ』って、つけ毛のことでしょ?
もしかして、これって
殺された人の毛が呪いとなって
次々と人を襲うと言う話じゃニャい?
「鋭いなあ(笑)。
ただね、この映画では
その殺された人が東南アジアで、
腎臓を売買された女性というところがたまらない。
その摘出手術の場面なんか
ちょっと『ホステル』を思い出したね。
まあ、こういう設定を映画にすること自体が
ほんとうはぼくにとっては苦手のはずなんだけど…」

----ん?その言い方からすると
けっこう楽しめたわけだ?
「うん。あまりにもブラックユーモア満載でね。
いちばんの功労者は、大杉漣。
フラワームーブメントを思わせる
70年代風ヒッピーファッションで
自分のことを『ぼくちゃん』なんて呼んでいる。
一つひとつの言動が芝居じみていて
これ以上の怪演は望めないほどだ」

----あれっ、主演は栗山千明なのでは?
「本来はね。
栗山千明が演じているのは
美容師の卵・優子。
女友達・由紀(佐藤めぐみ)と2人で将来の成功を目指している。
彼女には実の姉・清美(つぐみ)がいるんだけど、
娘のマミ(佐藤未来)に対して児童虐待をしていて、
優子はその少女を保護しようとする。
この物語の中に、
警察の死体安置所の管理人であり、
究極の髪フェチである山崎(大杉漣)が絡んでくる。
山崎は、死後も美しい髪が次々と生え続ける少女の死体から作った
エクステを売り歩くわけだけど、
そのエクステを付けた客が次々と怪死していく…。
まあ、映画のストーリーは、
ざっとこういうところだね」

----へぇ~っ。
そう言えば、栗山千明の黒髪もきれいだよね。
あっ、マミ役の佐藤未来も長い黒髪だね。
「うん。
そこで山崎は優子とマミ2人の髪に惹かれていくんだ。
その点でも
この映画は、まさに栗山千明にピッタリの企画だ」

----で、このエクステはどうやって人を襲うの?
「これが想像を絶する。
エクステが伸びていって、
付けた人の喉を絞めるなんてのは序の口。
まず耳から体の内部に入り込んで、
頭の中に自分の記憶を植え付けることで宿主(?)を完全支配。
爪から毛が伸びてきたかと思えば、
眼球を塞いだりもしてしまう。
あげくの果ては伸びた髪が部屋中に突っ張っていって、
宿主を宙づりに……」

----うわあ。痛そう。
「ここでぼくは、
頭皮が剥がれる凄惨な情景を想像し、
目を覆う用意をしていたけど、
さすがにこれは押さえてくれた(汗)」

----それがさっき話していた寸止めだね?
でも、映像は迫力ありそう。
「うん。
映画を観ていて、
ぼくの頭をよぎったのがスペクタクル・ホラーと言う言葉。
映像がとにかくパワフルなんだ。
CGなんかは、まだ特撮と分かる粗さを持ってはいるんだけどね。
それとこの監督が巧いなと思ったのは、
女優たちの演技バトル。
とりわけ、つぐみVS栗山千明による姉妹の喧嘩は
演技とは思えないほど真に迫っていた。
また、清美が置き去りにした娘の元へ現れるシーンは、
童話の『狼と七匹の子山羊』を現実に置き換えたような恐怖。
ジャパニーズ・ホラーの新たな地平を覗かせてくれたね」

----ニャんだか、べたボメだね?
「もっと言おうか?
少しネタバレチックになるけど、
山崎のラスト。
そのぶっ飛び方は、
園子温=和製ティム・バートン!」」

----それは言いすぎだあ。

フォーンの一言「フォーンの毛も黒いよ。大丈夫かニャ」もう寝る

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猫ニュー

『ユメ十夜』

2006-12-24 12:22:12 | 新作映画
----最近、少し喋りすぎていない?
ストーリーばかり、だらだらやっていると
いい加減飽きちゃうよ。
「いやあ、痛いところを突いてきたね。
その反省ってワケでもないけど、
今日はストーリーを重要視しなくてもいい映画の紹介」

----ニャに、それ?
ドキュメンタリーってこと?
「それが違うんだな。
タイトルから気づかなかった?
これはね夏目漱石が41歳の時に発表した小説を、
市川崑監督や西川美和監督など
ベテランから若手まで、
日本を代表する監督が独自のアプローチで映画化したと言うものなんだ」

----どのお話がオモシロかったの?
「そこなんだよね。
このオムニバスは、
映画はストーリーじゃないと言うことを
改めて教えてくれる」

----どういうこと?
一口に夢と言ってもさまざまでしょ。
その中身を聞かなきゃ分からないんじゃニャいの?
「うん、もちろん。
でもね。ここで間違えてはならないのが、
そのストーリーだけを取り上げて、
「あのエピソードはオモシロいけど、
こっちはつまらない」という理由で、
映画の優劣を語ってはならないということ。
だって、ストーリーは夏目漱石が編み出したものであって、
映画監督のオリジナルではない。
だから、そこに、自分なりにどのようなアレンジをするか、
それが映像作家としての勝負となってくる」

----ニャんだ。そんな当たり前のことを言いたかったわけ。
「もう。皮肉らないでよ。
さて、その観点から言って、
自分の感覚にピッタリあったものをあげてみると…。
まず、第三夜の清水崇。
夜泣きを止めるため、
赤ちゃんを背負って散歩する漱石。
この映像は背筋が凍ると言う表現がピッタリ。
と言うのもこの赤ちゃんは、なぜか目がつぶれていて、
しかも父親である漱石に
彼が過去に侵した罪状に付いて話しかける……。
恐怖度では、十本のうちでこれにまさるものはない」

----でも、その恐怖って、
ストレートすぎない?
「いや。
赤ちゃんのつぶれた目のメイク、
その徹底ぶりでだけでもよくやったと思うよ。
次に清水厚監督の第四夜を紹介しよう。
これは想い出の世界に迷い込んだ男、漱石の話。
ノスタルジー色豊かな映像設計が、
二度とは帰らぬ<時間>を狂おしいほどにせつなく描く。
清水厚は実相寺明雄監督に師事したのだとか。
その実相寺監督の第一夜も
アングラ芝居を思わせる背景の中に、
けれん味たっぷりの映像を駆使し、
妻を失う作家の恐怖を描き出す」

----この十本の<夢>は恐怖ものが多いの?
監督には松尾スズキとかもいるけど?
「彼の第六夜は特別だったね。
スタイリッシュなモノクロ映像の中に、
アニメーションダンスを導入。
役者たちは、2ちゃんねる用語を喋り、
その文字絵のポーズまで取る。
『モエ』とか『ダメポ _| ̄|○ 』とかね(笑)。
今回、現代との接点を取り入れている監督は多かったけど、
その中では彼がいちばん大胆だったかも。
さて駆け足で喋るけど
市川実日子の騎馬姿が印象的な
豊島圭介監督、第五夜も要注目。
映画の中であまのじゃくが出てくるんだけど、
これをハリボテみたいに作っている。
普通はしらけるところだけど、
低予算を逆手に使った効果的な絵になっている。
後は山口雄大監督の第十夜がオススメ。
本上まなみのおならなんて
これでしか観られないよ(笑)」

----え、ええ~っ。いまなんて言った?

    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンは、こんな夢は見ないニャ」もう寝る

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猫ニュー

『世界最速のインディアン』

2006-12-22 13:14:31 | 新作映画
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↑写真は撮影で使われた1920型インディアン・スカウト復元モデルです。
(原題:The World's Fastest Indian)

----このタイトルってどういう意味?
陸上かなにかで速く走ったインディアンの話?
「ね?よく分からないよね。
まさかアンソニー・ホプキンスが
ネイティブ・アメリカンを演じているとも思えないし…。
実はこれ、
それまで革製だったチェーンを初めて金属で製作したことで
世界的な成功を収めたマサチューセッツ州スプリングフィールドの工場が
1901年に販売を開始した“エンジン付き自転車”のこと。
ネイティブ・アメリカンの人々のように、
自由に“鉄の馬“を走らせたいと言う願いを込めて
“インディアン”と名付けられたらしい。
その後、このバイクはハーレーダビッドソンなど、
他社を大きく引き離して
No.1の地位を維持するものの、
第2次大戦後、イギリスの安価な輸入バイクに押されて
1953年に工場をクローズしたらしい。
ちなみにスティーブ・マックィーンの愛機は
1930年型の“インディアン・チーフ74サイドカー”だったらしい」

----と言うことは、これはそのバイクを乗って
世界記録を作った人のお話だね?
「うん。そう言うこと。
この映画のモデルとなっているバート・マンローと言う人は
1899年ニュージーランド南端のインバーカギル生まれ。
1920年、生涯の相棒となる1920型インディアン・スカウトを購入。
もともとの最高時速は80キロ台だったものの、
26年より改良を始め、
48年以降は仕事を辞めてフルタイムで
あらゆるパーツの改良に励んだらしい。
この映画は、その彼が62年に、
アメリカのボンヌヴィル塩平原(ソルトフラッツ)で
世界記録に初挑戦し、
時速288キロの世界記録を達成したときのことを描いたものなんだ」

----ちょっと待って。
それ計算あわないよ。
その記録を作ったときは62~63歳ってことになるじゃニャい?
「そうなんだ。
彼は以後、70歳を越すまで毎年のように
ボンヌヴィルへ行き、自己記録を更新。
この映画は、その彼が最初にボンヌヴィルへたどり着き、
記録を達成するまでを
ロードムービー形式で描いていく。
1920型インディアン・スカウトの独自の改良により、
ニュージーランドやオーストラリアで
数々の国内スピード記録を出したバート・マンロー。
しかし彼の夢は、こんなところで収まりはしない。
ライダーの聖地ボンヌヴィルで世界記録に挑戦するべく、
家を抵当に入れて銀行から借金した彼は、
貨物船にコックとして乗り込み、ロサンゼルスに上陸。
砂漠の真ん中でトレーラーの車輪がはずれるなど、
さまざまなトラブルに見舞われながらも、夢の土地へ向かうのだった……。
まあ、こういうお話だね」

----ホントだ。ロードムービーになってる。
じゃあ、行き交う人々のキャラクターがポイントになるね。
「うん。女装のフロント係をはじめ、癖はあるものの基本的にいい人ばかり。
違法駐車も、警官は物わかりよく見過ごしてくれるしね。
ボンヌヴィルでのレース参加も
事前登録していなかったことから
最初は受付で門前払いされるものの、
回りの人たちの応援で特例が認められる」

----それってあまりにもアメリカ万歳だね。
少し気にならないでもないけど……。
「うん。その中にあって
ベトナム休暇兵ラスティ(パトリック・フリューガー)のエピソードは
少しだけチクリとくる。
彼はこの戦争がすぐに終わると思っている上に、
枯れ葉剤を使用した作戦に対しての罪悪感がまったくない。
そんな青年に、
バートは、戦争はそんなに甘いものではないと、自分の経験を語る。
かくしてバートに親近感以上のものを抱いたラスティは
ボンヌヴィルに着いた時のバートの顔が見たいと、
彼の地まで同行を申し出るんだ」

----それはハイライトだね。
「うん。そこは真っ白な塩がガチガチに固まった広大なデザートエリア。
『夢を追わない人間は、野菜と同じだ』と言い続けていた彼の目には
熱い涙が浮かぶ。
つまり、この映画は『人のやらないことをやろう』として、
一生をその夢に賭けてきた男がそれを実現させる物語。
人生を前向きに生きている彼には年齢など関係ない。
ガールフレンドフラン(アニー・ホイットル)とはもちろんのこと、
アメリカで一夜の宿を提供する未亡人エイダ(ダイアン・ラッド)とも
一夜を共にする。
これって前立腺に障害まで抱えているのに、スゴいよね」

----う~ん。それはよく分からないニャ。
フォーンは、○○手術受けているから(汗)。
「あっ、そうか(汗)。
今日は、試写室前に展示されていた
映画撮影に使われた“インディアン”を写してきたので
それを見せることにしようかな。
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オイルキャップはブランデーのコルク、
オイルタンクのカバーは台所の古いドア。
ブレーキはあまり利かず。
スピードメーターは付いていない。
極めつけはタイヤ。
スリックタイヤがないので、
普通のタイヤの溝を自分で削っているんだ。
監督のロジャーー・ドナルドソンが実在のバート・マンローに惚れ込み、
かつて彼のドキュメンタリーを撮ったにもかかわらず、
また映画化したと言うのもうなずける。
でも、何よりの見ものはアンソニー・ホプキンス。
彼がここまで“普通に明るいおじさん”を演じているとは?
ホプキンス自身も
『ずっと変質者や神経質な人間を演じているのにうんざりしていたからね』
とコメント。
ほんとアンソニー・ホプキンスとは思えないほどだよ」

----う~ん。確かに珍しいかも。


                     (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ロードムービーはいいニャ」いいねぇ

※夢はかなえるためにある度
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猫ニュー


『約束の旅路』

2006-12-21 00:25:45 | 新作映画
(原題:Va, vis et deviens)

----「行け、生きろ、生まれ変われ----」
この映画のキャッチコピー、凄まじいね。
「それでタイトルが『約束の旅路』。
しかもランニングタイムが2時間半とくれば、
ちょっと腰が重くなるのも仕方がないよね。
でも、やはり映画は観てみなければ分からない。
この映画、とりわけ感動のラストは
貴重な映画体験として
いつまでもぼくの心に残ること間違いないね」

----ふうん。
そもそも、これはどんなお話ニャの?
「と、絶賛しながらも
これが、なかなか説明しにくい映画。
どこまでその魅力を伝えることができるか?
まずは映画の背景となっている歴史的な事実から話そう。
以下、『モーセ作戦』について
プレスより抜粋するから、よく聞いててね。
<エチオピア北部ゴンダールの山中に、
ソロモン王とシバの女王の末裔として、
ファラシャと呼ばれるユダヤの民が古代より暮らしていた。
今から20年前、彼らはユダヤの地へ帰還するために、
エチオピアを密かに脱出し、スーダンまで歩き続けた。
当時、スーダンの難民キャンプには、
アフリカ諸国から干ばつや飢饉に追われた
多くの難民たちも集まっていた。
そして1984年、イスラエル諜報機関(モサド)によって、
エチオピアのユダヤ人だけを救出し、
イスラエルへ移送すると言う『モーセ作戦』が実行される>
この映画の物語は、その知られざる事実から生まれている」

----と言うことは主人公はエチオピア人?
「そう。舞台は1984年。
スーダン難民キャンプに2人の母子がいた。
彼らはキリスト教徒のエチオピア人だったが、
母親は息子にユダヤ人と名乗るように言った。
『生きなさい。生きて、そして何かになるのです』。
かくして、母は
幼い息子を亡くしたばかりのエチオピア系ユダヤ人の女性ハナに、
自分の息子を託す」

----うわあっ。オモシロくなってきた。
そうか、あのキャッチコピーは
このセリフから来ているんだ。
「うん。そして実はこれが原題(Va, vis et deviens)にもなっている。
さて、まだ9歳の少年は悲しみを胸に、飛行機に乗り込む。
移民局ではハナの言いつけを守り出自を偽ることで
無事入国を許されたその少年は、
シェロモというイスラエル名をもらうものの、
そこから彼の受難の日々が始まるわけだ」

----それって子供のうちから、
誇りを傷つけられているわけだよね。
「うん。いろんな意味でね。
イスラエルでは彼らを“黒い兄弟”(この言い方もなんだかなだけど)と呼ぶ。
しかしシェロモ自身はユダヤ教徒ではないし、
肌の色だって黒と言うよりは粘土色だ。
この苛酷な体験から、彼は拒食症状が続き、
周囲に対しても反抗的態度を取り続ける。
やがて、左派支持を表明するリベラルな一家族が
シェロモを自分たちの家族に迎え入れる。
彼らは大きな愛情を彼に注ぐものの、
それでもシェロモはだれにも心を開くことなく、
逆に疎外感と孤独感を深めてゆく」

----その頃、他のエチオピア系ユダヤ人たちは?
どんな暮らしを送っていたの?
「彼らもまた受難にあっていた。
ラビ庁はエチオピア系ユダヤ人を正当なユダヤ教徒とは認めず、
割礼と清めの水浴で正統ユダヤ教徒に改宗させようとする。
そんな中、彼は宗教指導者ケス・アムーラが
多くの両親がアフリカにまだとどまっていることを訴える。
その姿をテレビで見たシェロモは彼に会うため、
ひとりバスに乗るが…。
ふうっ、ストーリーはここまでにしよう」

----いやあ、長いお話だね。
しかも、これってまだ子供時代だけニャんでしょ?
「そうなんだ。
この映画は主人公シェロモの3つの時代、
少年期、思春期、
そして結婚して子供を設けるまでを、
3人の俳優によって描いていく。
そしてこれは、現代の映画の世界的な共通項でもあるんだけど、
厳しい現実を見つめながらも、
その中にユーモアを織り込むことも決して忘れてはいない」

----ふうん。社会派一辺倒ってワケでもないんだ。
「うん。そこから浮かび上がってくるのは、
シェロモと関わる4人の母親の大いなる愛。
産みの親、シェロモを預かったハナ、イスラエルの養母ヤエル、
そして彼の妻サラだ」

----えっ、3人までは分かるけど、
シェロモの妻と言うのは……?
「だって、彼女はシェロモの子供の母親になるわけだからね」
----あっ、ニャるほど。
「それと見逃せないのがこの監督ラデュ・ミヘイレアニュの話法。
この映画で彼は、一つのエピソードの終わりを
あえて最後まで見せようとはしないんだ」

----それって中途半端って意味じゃニャいよね?
「もちろん(笑)。
観客に想像の領域を与えることで、
映画に参加させることを狙っているわけだ。
この映画で描かれている史実は
もとより、あまり知られていないだけに、
もしこれを正攻法で描いていけば、
かなりヘビーなものとなり、
人によっては苦痛で
途中で放棄したくなるかも知れない」

----そうか、
この映画の方法だと
観客は、
次の展開を読みながら観ることになるわけだね。
それに何よりもテンポがよくなるよね。
あっ。
ユーモアを入れているのも
観客が映画にとっつきやすくするためか…。
「うん。そういうこと。
でも、やはりこの映画、最大のハイライトはラスト。
これから観る人のために伏せておくけど、
3月封切り作品の中では
今のところいちばんのオススメだね」


                  
    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「世界にはまだまだ知らないことがあるニャあ」身を乗り出す

※監督入魂の作品だ度

『約束の旅路』ブログ募金キャンペーン

※映画感想をTBすることで「株式会社カフェグルーヴ」より
UNHCR(国連難民高等弁務官)駐日事務所アフリカキャンペーンに
50円の寄付が行われるそうです。

※参考までに

■ 60人のブログで、毛布10枚
■ 100人のブログで、調理器具セット2家族分
■ 200人のブログで、健康診断25人分
■ 300人のブログで、テント1張
■ 600人のブログで、教科書100人分
■ 1,600人のブログで、井戸の掘削

※予告編も載せたかったのですが、
 残念ながらgooはYouTubeに対応していないようでした。

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猫ニュー


『パフューム ある人殺しの物語』

2006-12-19 00:22:18 | 新作映画
(原題:Das Parfum : Die Geschiche eines)

※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。



----この映画、スゴい評判だよね。
確か「衝撃のラスト!」とか言われているんでしょ?
「うん。そこまで言われると、
どんな映画だろうって…。
今日は期待に胸ふくらませて行ったんだけど…」

----ん?行ったんだけど…?
「確かに、変わった映画ではあるけれど、
やはりあまり期待しすぎると、
映画はよくないね。
思ったより分かりやすい。
もっと翻弄されるのかと…」

----う~ん。はっきりしないニャあ?
どんなお話ニャの?
「複雑に見えて説明しやすいお話。
時は18世紀のパリ。
悪臭漂うこの街で産み落とされたグルヌイユは
死んだ魚と一緒に川に流されそうになるところを
間一髪拾われて、
育児所に預けられ、そこで育てられる。
グルヌイユは、友だちができないばかりか、
赤ん坊の時には子供たちに殺されそうになる。
ところが、そんな彼にはある才能があった。
それは何キロも先の匂いを嗅ぎ分ける超人的嗅覚。
数年後、青年となった彼は、
初めて出会った香りに激しく鼓動する。
それは赤毛の少女の匂い。
怯えた少女の悲鳴を塞ごうとして
誤って彼女を死に至らしめてしまったグルヌイユは
香水調合師として働きながら、
少女の香りを再現することに自分の生きる道を見いだす」

----オモシロそうじゃニャい。
でも、香りや匂いを表現するのは難しそう。
「いや。これは素晴らしかったね。
監督は『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクヴァ。
グルヌイユが嗅ぎわける香りを、
カメラの繊細な動きによって見事に表現。
実際、スクリーンから匂いが漂ってきそうだった」

----じゃあ、問題ないじゃニャい。
「いや、ところが、
この後、物語が
彼の犯す連続殺人へと進むにつれて、
<香り>よりも<犯罪手口>を描くことに映画の比重が移っていく。
そうなると、これまで観てきた映画と、
さして変わらなくなってしまう。
ここでもあくまで<香り>の描写をキープしてくれれば、
この映画は素晴らしい傑作になったと思うんだけどね。
主人公グルヌイユは香りを捉えるべく、
特殊な技術を持つ職人たちの街グラースへ。
そこで脂に香りを移す冷浸法を習得する中で、
彼は、あの赤毛の少女の<香り>と再会する。
その香りの持ち主ローラを演じるレイチェル・ハード=ウッドが
あまりにも美しすぎるのも難。
匂い以前に、<視覚>で彼女がその運命の女性と観客に納得させてしまう」

----確かに美しい女性だね。
お父さん役はアラン・リックマン?
なんだか『アマデウス』のF・マーリー・エイブラハムに似てこない?
「(笑)映画も少し『アマデウス』に似た構造を持っているしね。
ただ、この映画でサリエリに当たる男を演じるのはダスティン・ホフマン。
彼は、グルヌイユに天才的才能を見いだす
落ち目の香水調合師バルディーニという設定だ」

----主人公はだれが演じているの?
「ベン・ウィショー。
若い頃のスティーブ・マックィーンのようでもあり、
また、テレンス・スタンプをも彷彿させる」

----そのふたり、全然違うよ(笑)。
※ネタバレ注意報発令※
さて、いよいよそこに言及するとしよう。
主人公は、クライマックスで、ある奇跡を起こす。
その姿は、あたかも別の時代に現れたキリストのよう。
これってパゾリーニの『テオレマ』(主演:テレンス・スタンプ)を想起させる。
しかもそこで繰り広げられる
集団による愛の交換はアントニオーニの『砂丘』、
さらに、その向こうにはケン・ラッセルさえもほの見える。
この映画、ぼくは決して新しいとは思わない。
それどころか、映画の表現領域を広げていた
60~70年代の映画作家たちの記憶が凝縮されていて、
懐かしくもあり微笑ましくもあった。
ただ、最近はこのような映画が作られなくなっていた。
おそらく若いファンには熱狂を持って迎えられる、
そういう気がするね」

----う~ん。確かにネタバレ注意報だ(汗)。


                                (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「でもこの映画、フォーンは話題になると思うニャ」身を乗り出す

※ある意味、刺激強い度
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『華麗なる恋の舞台で』

2006-12-16 12:23:39 | 新作映画
(原題:Being Julia)

----このイシュトヴァン・サボーって監督、
『太陽の雫』という叙事詩的大作を作った監督だよね。
「ああ、あれはオモシロかったね。
20世紀のハンガリーを舞台に、
主演のレイフ・ファインズが3代に渡る主人公を演じ分け、
3時間があっという間にすぎていった」

----今度の映画も長いの?
「いや、それがなんと104分しかない。
原作はサマセット・モームの『劇場』。
サボーは映像でドラマを語るのが実に巧いことは、
その『太陽の雫』でも証明済みだけど、
ここでも大人の恋のドラマを存分に堪能させてくれたね」

----で、この映画はどんなお話ニャの?
「舞台は1938年のロンドン。
人気女優のジュリア(アネット・ベニング)は
満たされながらも変化のない毎日に
うんざり飽き飽きしていた。
そんなある日、彼女は
親子ほども年の違う米国青年トム(ショーン・エヴァンス)と出逢い、恋に落ちる。
だが、それもつかの間、
トムは若い女優エイヴィス(ルーシー・パンチ)と恋仲になったばかりか、
彼女をジュリアの舞台に抜擢してほしいとまで頼み込む。
失恋に深く傷ついていたジュリアだが、
私生活と仕事は違うと、
エイヴィスの売り出しに一役買うのだった……」

----ありゃりゃ。それは辛い話だニャあ。
「ところがこれが違うんだなあ。
この映画は悲劇と言うよりも笑劇。
チラシやプレスではジュリアの『第2章が始まる』と書いてあったけど、
ここから実に爽快な復讐劇が始まるんだ。
話の流れから、クライマックスは舞台での復讐と予想はついたけど、
ここまで鮮やかに見せてくれると、
もう拍手喝采もの」

----キービジュアルでは
ジェレミー・アイアンズと踊っているようだけど、
彼はどんな役柄なの?
「ジュリアの夫だよ」
----えっ、夫がいるの?
「うん。元俳優で今は劇場主で演出家。
ついでに言えば子供もいて
彼はトムと友だちになる」

----あらあら、進んだ関係だね。
マイケル・ガンボンは?
「この役が実に不思議。
ジュリアの人生の決断の節目節目に現れて、
その行動を<役者はかくあるべし>という立場で批評してゆく。
彼によれば、役者にとっては舞台の上こそが現実と言うんだね。
オモシロいのは、
彼が実際には登場人物たちの目には映っていないところ。
いわば、ジュリアの内なる心と言ったらいいかな。
だから彼女の実生活での言動は一種の“お芝居”。
本心を隠しながら泣いてみせるなんてのはお手の物。
付き人のエヴィ(ジュリエット・スティーヴンソン)はそんなジュリアを見て
『まぶたを腫らさず泣けるなんて…』と皮肉にうらやむ」

----でも、それだとジュリアを演じるアネット・ベニングの比重が大きくなるね。
「うん。この映画の最大の見どころはまさにそこ。
監督サボーは、映画にしかない特別なものとして
『人の表情をクローズアップして映し出すことができること』をあげている。
『映画では感情や思考が生まれる瞬間やその変化を
新たに表情に反映させて表現することができる。
映画だけが、どのように愛が嫉妬に変わるのか、
芽生えた想いがどのように瞳に映し出されるのか、
人生の素晴らしい変化、人間の表情の絶え間ない動きや、
それが生まれた瞬間を表現することができるのだ』と。
そして彼はこう結論づける。
『映画の持つ力というものは、スクリーン上の表情から生まれることになる。
映画の歴史は人の顔と表情の歴史なのだ』と」

----それって大胆すぎる結論の気もするけど…。
「いや。ぼくは映画っていろんな考え方があるからこそ、楽しいと思うんだ。
だって、みんながみんな『長回しのロングショット』じゃつまらないもの。
この映画の素晴らしいところは、
『クローズアップは、ダイアモンドと同じくらいの価値があるのだ』と言う
サボー監督の映画観を理解した名優たちが
スクリーンでその要求に応える素晴らしい表情を見せているところ。
とりわけジュリアを演じたアネット・ベニングには驚きだ。
彼女がアカデミー主演女優賞のウィナーでもよかったのでは……と
この映画を観て、そう思ったな」


(byえいwithフォーン)

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『マリー・アントワネット』

2006-12-15 10:35:53 | 新作映画
----ソフィア・コッポラ監督の新作だよね。
まだ3作目だけど、こんな歴史劇を撮るとは
ちょっと意外な気がするニャあ。
「うん。でも観てみて納得。
これまでの宮廷映画とはまったく異なる。
まず、その色使いからして全然違うんだ」

----へぇ~。どういうところが?
「18世紀を描いた映画で指標となるのは
キューブリックの『バリー・リンドン』。
彼はその室内撮影では、
外光とロウソクの灯だけで撮影することで当時を再現。
確か、そのためにNASAで開発されたレンズを使ったんじゃないかな
ところが、この映画ではライトを大活用。
ポップな明るい世界を作り出している」

----と言うことは、リアリティに欠けているわけだ。
せっかくヴェルサイユ宮殿のロケ許可が下りたのに
もったいないね。
「いや。思うに、
この映画はマリー・アントワネット自身にスポットを当てて
その目に映るもの、体験したことを
心の動きのままに再現しようとしたのじゃないかな。
フォーンはオーストリア皇女だったアントワーヌ(キルティン・ダンスト)、
後のマリー・アントワネットが何歳の時に結婚したか知ってる?」

----え~っと。確かまだ幼かったんだよね。
「彼女はなんと14歳で
フランスの王太子ルイ・オーギュスト(ジェイソン・シュワルツマン)の元へ嫁いでいるんだ。
まだティーンエイジャーで遊びたい盛り。
そんなマリーの目に映るのは、
国王と愛人デュ・バリー夫人(アーシア・アルジェント)がいちゃつく姿や、
それを横目に見るスキャンダル好きの取り巻きたちの下品な会話。
そんな中、彼女は幼い夫ルイが自分を抱こうとしないばかりに、
いつまで経っても世継ぎとなるべき子供に恵まれず、
大きなプレッシャーを感じてしまう。
そこでマリーは同じ年代の取り巻きと遊びにふけり始めるんだ。
自分の世界を楽しむことを決意した
マリーの世界はそれこそガーリッシュ。
どのフレームも、美しい花と大きなケーキで占められている。
映画にはマカロンがたくさん出てくるけど、
それにあわせて
ミント・グリーンやカナリア・イエローといった
いわばキャンディポップが、
この映画の色の基軸となったわけだ」

----ははあ。見えてきた気がする。
つまり、彼女は周囲への反動から
自分の欲望を満たす方向へ向かって行ったわけだ。
「うん。それはルイ15世が
天然痘によって急逝したことでさらに拍車がかかる。
自分が最高位に位置したことで
もはや周囲にはマリーを制御する人はだれもいなくなる。
そのため、映像も彼女の退廃ぶりを写し出し、
明るさの中にも猥雑さが忍び寄るようになってくる。
髪型なんて、その退廃的遊び心の極地。
まるで中に何か入っているのでは?と思われるほど、
マリー・アントワネットの欲望のように大きく膨らんでいるからね。
そんな彼女を見て故国の母マリア・テレジアの心配は深まってゆく」

---それはそうだよね。でも彼女って子供も生まれていなかった。
「うん。兄のアドバイスによってマリーとルイは、
ようやく結ばれるんだ。
かくして長女に恵まれた彼女は、
別荘のプチ・トリアノン宮殿で
ガーニングや動物の飼育に喜びを見いだす牧歌的な世界を送り始める。
子供の教育のためだけでなく、
マリー自身も安らぎを感じたんだろうね。
そこでは、着るものまでもナチュラルなものとなっている」

----そうか。この映画は彼女の心理の推移によって
その衣装や小道具も変わってゆくわけだ。
「そういうこと。
だからこの作品は映画として十分に楽しめる。
リアリティがどうのこうのと言うのは、そこでは関係ない。
音楽も現代のものが使われていると聞いていたけど、
『ムーラン・ルージュ』のように全編がロックと言うのではない。
クラシックもあればニュー・ロマンティックも」

----ニャるほど。シーン、シーンの必要性に応じて使い分けているんだね。
「でもやはりこの映画の最大の功労者は、
マリーを演じたキルティン・ダンストだろうね。
ヴェルサイユ宮殿を去る時の彼女のアップは
それこそ見逃せないよ」

                  
    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「目を見張ったニャ」ぱっちり


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『Gガール 破壊的な彼女』

2006-12-14 11:01:11 | 新作映画
※一部、見どころを書いています。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


(原題:My Super Ex-girlfriend)

----へぇ~っ。ユマ・サーマン主演ニャんだ。
タイトルだけ聞くと、また韓流かなと…。
「さすがに、そこまでは思わなかったけど、
まさか、スーパーヒロイン・ムービーとはね…。
ところでベッドルームで楽しんでいる時に、
窓から大きなサメが口を開けて飛び込んできたらどうする?」

----えっ?何言っているの??
「まあまあ、
これは観てみてよ。
この映画、ぼくはそこだけでも観た価値があると思っているから。
さてそれはともかく、このスーパーガール、
Great級の困ったちゃん。
超音速で空を飛び、
鋼鉄のボディで銃弾をはね返し、
強盗団の乗る車を抱え上げ警察へ。
大火災が起これば、
身体を高速回転して炎を消してしまう」

----いいところばかりじゃニャい。
どこが困ったちゃんニャの?
「このスーパーガール、私生活では展覧会の企画をしている
インテリ風のメガネ美女ジェニー(ユマ・サーマン)。
そんな彼女が、地下鉄でひったくりにあった時に
身の危険を顧みずに追いかけて行ったのが
設計会社の部長のマット(ルーク・ウィルソン)。
いつも人を助けている自分を助けようとしてくれたこの快男児に
ジェニーはすっかりメロメロ。
マットを誘い、絶妙のキス・テクニックと
パワフルなセックスでマットを圧倒。
ついには自分がGガールであることをカミングアウトする。
最初こそ、自分の彼女が超有名人であることに
密かな誇りを感じていたマットだったが、
Gガールは嫉妬深さもスーパー級。
マットが他の女性と一緒にいると、
怒りのあまりすべてを破壊してしまう」

----ありゃりゃ。それは確かに困ったちゃんだ。
「Gガールにはどんな弁明も通じない。
そこでマットの心は離れてゆき、
同僚のハンナ(アンナ・ファリス)へと傾いていく」

----あ~、ニャんだか、
巨大なサメの意味が分かってきた。
「し~っ。
この映画のオモシロさは
従来のスーパーヒロインものに、
男たちが望みながらも
映画では決して触れてくれなかった部分、
いわゆるセックス・エピソードを大胆に入れているところにある」

----それは、えいにはたまらニャいね。
いわゆる「ちょいエロ」ってヤツ?
「う~ん。プレスにはそう書いてあるけど、
『ちょい』どころじゃなかったという気がするな。
まあ、ここまでやれるのはユマ・サーマン、
それにキャメロン・ディアスくらいかなあ。
ただ、キャメロンだと『エロかわいい』系になるけど、
ユマ・サーマンだとたくましい。
Gガールの衣装も、
マットへの嫉妬が高まると
より戦闘的になってくる」

---ニャるほどね。
ところで、Gガールの愛はどうニャるの?
「ネタバレを押さえ気味に言うならば、
これも意外な展開を迎えるよ。
カギは、
ここで触れていないもう一人の存在。
いわゆるGガールを付け狙う悪役にありだね」


                  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ぼくも観ていいのかニャ」バレました?


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『幸せのちから』

2006-12-13 10:12:03 | 新作映画
(原題:the PURSUIT of HAPPYNESS)

----これって実話ニャんだよね。
ウィル・スミスが実の息子と共演しているんだって?
「そう。彼の名前がまた長いんだ。
ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス。
ね、舌を噛みそうでしょ」

----どう?似ていた?……。
「どちらかと言うと、
お母さん役のタンディ・ニュートンに似ていたかな。
プレスの写真を見ても、目元がそっくり」

----ふうん。でも実の父と子じゃ
演技もしづらいだろうね?。
「ところが、
ウィルの息子と言うよりも
主人公クリスの息子のような錯覚に陥ってしまうほど、
彼は役になり切っていた。
映画は、ホームレスから億万長者になった男クリスの話。
クリスは医療機器のセールスマン。
ところが仕事ははかどら顧客はつかず、
家族を養うこともままならない。
家計を支えてきたパートナーのリンダも
とうとう家を飛び出してしまう。
そんなある日、学歴無用で高給取りへの道が開けると聞いた彼は、
一流証券会社の株式仲介人養成コースへ。
しかし半年の研修期間中は無給。
家賃滞納で、ついには家を追い出されてしまう。
かくして始まるクリスの奮闘の日々。
ホームレスであることを隠しながら厳しい研修をこなす一方で、
日々のねぐらの確保にも奔走しなくてはならない。
そんな彼の心の支えは愛する息子の笑顔だった…」

----うわあっ。大変だね。
日本ではホームレスは多いけど、
さすがに子供を抱えてと言うのは
あまり見かけないよね。
「この映画の中で印象的なのが、
トイレにカギをかけてふたりで寝るシーン。
『ライフ・イズ・ビューティフル』でのロベルト・ベニーニと同じく、
ある<嘘>の物語を作って息子に話して聞かせ、
生活の悲惨さを彼に実感させまいとするんだ」

----原題は『幸せの追求』か。
ニャるほどって感じ。
でも、こういう映画って、最後は心温まるんだろうけど、
あまり、観たくないようなシーンが多いんじゃニャい?
「それはあまりなかったね。
観客を泣かせようとするんだったら、
悲惨なエピソードの積み重ねでいくんだろうけど、
子供のかわいそうな描写は、
彼が大事にしていた人形のエピソードくらい(詳しくは観てね)。
どちらかと言うと、
クリスが体験する苦くて重いエピソードが軸になって展開していく。
セールス商品である医療機器(骨密度計測器)を盗まれたり、
自分の置かれている状況=ホームレスを
研修先に知られまいと必死に隠すという風にね。
でも、この映画の救いは
それらがテンポよく進み、
あまり後を引かないと言うところにあるんだ」

----へぇ~っ。監督はだれニャの?
「日本初登場となるガブリエレ・ムッチーノ。
彼は言う。『アメリカン・ドリームの真髄を理解するには、外国人でなきゃ』。
その一方で、彼はこの話を普遍的なものとして捉えている。
『ホームレスの人は世界中にいる』……と」

----そうか。この映画、日本でも人ごとではないわけだ。
「あと、興味深かったのは撮影。
これはあえてだと思うんだけど、
色が少しくすんでいて、画もザラつき気味。
時代が1981年と言う設定だからか、
その時代の映画のテイストなんだね。
同じホームレスを素材にした映画としては
マット・ディロン主演『聖者の眠る街』と並ぶ作品かも」



                 (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ぼくもニャくかも」悲しい


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『エラゴン 遺志を継ぐ者』

2006-12-12 11:11:04 | 新作映画
(原題:Eragon)

----この作品、今週から公開だよね。
「うん。日劇1がメイン・シアターだから、
本来ならば、今年のお正月映画の目玉のはず。
でも、ぎりぎりまで姿を現さなかったね」

----確か、原作は大ベストセラーになったんだよね?
とても若い人だと聞いてるけど……。
「クリストファー・パオリーニね。
執筆を開始したのは、なんと15歳なんだって」

----ふうん。その若さで人の心を掴めるんだから
やはり天才ということニャのかな?。
「う~ん。どうだろう。
原作を読んでいるわけじゃないから、
はっきりしたことは言えないけど、
映画を観た限りではそれほどの目新しさはなかったね。
物語の大筋はこう。
遥かなる昔。人間やエルフ、ドワーフ、魔法使いに怪物、
そしてドラゴンが住むアラゲイジアでは、
ドラゴンと心を交わし、その強さと魔力を身につけた
誇り高き一族ドラゴンライダーがいた。
しかし、彼らライダーたちによって保たれていたこの国の平和と繁栄に、
ある日、異変が起こる。
邪悪な力に支配されたライダー一族の一人、
ガルバトリックスが反乱を起こし、
アラゲイジアは、
暴君として君臨するガルバトリックス王に支配されてしまったわけだ」

----?????あれっ?確かにどこかで聞いたような気が?
「実は映画は、この後から始まる。さて長い年月が経ち、
17歳の少年、エラゴンは森で不思議な青い光を放つ石を見つける。
その石こそは、世界の命運を握るドラゴンの卵。
やがて卵は孵化し、雌のドラゴン、サフィラが生まれる。
かくしてドラゴンライダーとなったエラゴンは、
アライジアにかつての平和と繁栄を取り戻すべく立ち上がる!」

----う~ん。ニャんだろう。
ここまで出かかってるんだけど、
思い出せないニャあ。
「じゃあ、これでどうだろう?
エラゴンは、叔父の元で育てられている。
また、エラゴンを師として導いていくのは、
かつてのドラゴンライダー、ブロム。
国の語り部でもある彼は、
ブロムにさまざまな技や心得を教えるんだ。
また、冒頭ではエルフ族の美しき王女アーリアが
その卵を敵の手から逃がそうとする。
彼女は人間やエルフが結成した反乱軍ヴァーデンの勇敢な戦士。
さあ、もう分かるでしょ?」

----ニャるほど。これは『スター・ウォーズ』だね。
エラゴンがルーク、ブロムがオビ=ワン、
アーリアはレイアってわけだ。
「そういうこと。
なんとエラゴンが沈みゆく太陽を眺めるシーンまである。
このエピソードなんて原作にもあるのかな?
監督が『スター・ウォーズ』ファンへの目配せとして入れた気がする」

----でもそれだと、気が楽だ。
リラックスして観ることができそう。
有名な映画の筋をたどっていけばいいんだから…。
「そうだね。
ブロムを演じたジェレミー・アイアンズの
『「エラゴン 遺志を継ぐ者」は、
私が長い間遠ざかっていた
観客層にも観てもらえる映画だ」のセリフが、
少なくともこれが『キングダム・オブ・ヘブン』とは
まったく違うタイプの映画であることを
言い表している」

----えっ、ジェレミー・アイアンズも出ているの?
「エラゴンには新星エド・スペリーアス。
アーリアにはシエンナ・ギロリー。
ガルバトリックスにジョン・マルコヴィッチ。
その配下のダーザに、
ほんとに久しぶりと言う気がするロバート・カーライル。
あとジャイモン・フンスーに、
忘れてはいけないレイチェル・ワイズね」

----レイチェル・ワイズ?どこどこ?
「ボイスキャストで姿は出していないけどね。
サフィラ、つまり雌ドラゴンの声」

----そうか、このドラゴンは雌だったね。
キングギドラのような迫力もほしいところだけど……。
「クライマックスではなかなか激しい戦いを見せてくれるよ。
ただ、夜の戦いだけに画面が暗い上に、
アップが多くスピードがありすぎて、
ダーザが乗るビースト、ラーザックの全貌がはっきりしない。
映画館では少し後ろの席に座った方がいいかもね」

----でも、そんな激しい動きで
ドラゴンライダーは振り落とされないの?
「大丈夫。
ライダーは鎧を身につけ、鞍にまたがるからね。
そうそう、ドラゴンも兜みたいなものをかぶっているんだよ」

----mmmmm……。

                  
    (byえいwithフォーン)


フォーンの一言「似てるニャ」身を乗り出す

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『子宮の記憶 ここにあなたがいる』

2006-12-09 12:54:05 | 新作映画
----ふうん。松雪泰子主演の映画ニャんだ?
でも少し生々しいタイトルだね。
「うん。中身はいたってまじめな話なんだけどね。
17年前、ある病院で一人の新生児が連れ去られる事件が発生。
成長した少年・真人(柄本佑)は
裕福な家庭で何不自由なく育てられたかに見えながらも、
そこにはもっとも大切な家族の<愛>が欠けていた。
母親との衝突ばかりの日々の中、
真人は家を飛び出し、沖縄に旅立つ----というお話だ」

----どうして沖縄まで行っちゃうの?
「う~ん。
それは意外と早い段階で明らかにされる。
彼は、楚州の海岸沿いにある、
とある大衆食堂で住み込みで働き始める。
その食堂は入院中の夫(寺島進)を見舞いながら、
妻・愛子(松雪泰子)が一人で切り盛りをしている。
最初、ぼくはこの真人が、
彼女に惹かれて行き、
危うい関係にへと進む話かと思っていた」

----ゴクっ。
「しかし、真人の目的は別のところにあった。
彼には自分が愛された記憶が
誘拐されていたわずかな期間しかない。
そこでその誘拐した女性・愛子を訪ねて沖縄に渡ったと言う話だ。
原作がどうなっているのかは知らないけど、
愛子=誘拐犯の事実はクライマックスで明かされた方が、
ぼくの好みだったな。
愛子には夫の連れ子(野村佑香)がいて、
ふたりの秘密に気づいてしまう。
また、東京からはある悩みを抱えて
友人の沙代(中村映里子)がやってくる。
さらには沖縄には愛子を見守る友人(余貴美子)も。
この映画は、彼女ら女優たちの匂いで
それこそむせ返るほどだ」

----女優たちの共演ってわけ?
それこそタイトルのイメージにピッタリだね。
「確かに。
いくつかあるセックスシーンも
決して激しいわけじゃないけど、
どれも生っぽい。
女優では余貴美子がスナックのママに。
『愛の流刑地』でもバーのママ。
これは比較してみるとオモシロいと思うよ。
あと、野村佑香には気づかなかったな。
彼女も大人になったものだ」

----そう言えば、沖縄でロケした映画って
なぜか空が抜けていないって言ってなかった?
「うん。でもこの映画は空の青さや、
海の透明度など、
絵はがきなどで知る沖縄のイメージが
そのままに出ていたと思う。
映画の内容からして
愛と出会う場所がどんよりしていたら困ってしまう。
スタッフは、相当に天候にこだわったのだと思うよ」


      (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンにはタイトルが微妙だニャあ」もう寝る

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『早咲きの花』

2006-12-08 12:07:40 | 新作映画
※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


----あれっ?これ宗田理の原作なんだ。
てっきり実話かと思っていた。
「うん。ぼくもすっかり勘違いしていた。
でも考えてみたら、
海外で長年活躍して、
失明したピンホールカメラマンの
シュナイダー植松三奈子なんて人、
いままで耳にしたことなかったし……」

----どんなお話?
チラシとか見ると、
潤んだ目の浅丘ルリ子が大きく写っているけど?
あれっ?左にはもんぺの少女。
それにリヤカーの少年も……。
時代はいつなの?
「簡単に説明すれば、
失明寸前の女性カメラマンが
かつて家族と一緒に過ごした想い出の街を
その目に焼き付けるべく、
兄から受け継いだピンホールカメラで
故郷へ旅するというお話だ。
彼女の父親は医者で
東京から豊橋へ引っ越してきたと言う設定。
徐々に、戦争の影が映画を覆ってくるところは
『赤い鯨と白い蛇』と同じ。
でも監督が菅原浩志だけに、
子供の描き方が実に巧い。
西瓜を畑に盗みに行くシーンなんて
広告用語で言うところのシズル感たっぷりだし、
河原での石つぶてによる喧嘩のシーンでは
石に当たる恐怖、痛みが観る者を襲う。
とにかく子供たちが生き生きとしているんだ」

----そうか。菅原監督は子供たちの叛乱を描いた
『ぼくたちの七日間戦争』でデビュー。
これも宗田理原作だ
「原作は読んでいないから何とも言えないけど、
浅丘ルリ子演じるシュナイダー植松の前を、
子供時代の兄と自分が駆けていくシーンはよかったね。
現在から過去へのスムーズな橋渡しを
ワンショットの中でやっていて
あの『おもひでぽろぽろ』を思い出したね。
映画は、25分間の爆撃で約3000名もの人が亡くなった
豊川海軍工廠の悲劇でクライマックスを迎えるんだけど、
死体累々のこのシーンも、
よくぞ描いたものだと思った」

----そんなに亡くなったんだ。知らなかった。
「昭和20年8月7日の出来事。
前日の広島への原爆投下もあり、
軍の報道規制で表面化しなかったらしい」

----それにしても
どうしてピンホールカメラ?
「うん。このピンホールカメラと言うのは、
昨今の一瞬を切り取るカメラとは違い、
光をひとつぶひとつぶ集めて
長い時間をかけて写し出す。
そのため動くものは写らないんだけどね」

----そうか。変わらないものだけが写し出されるんだ。
「うん。少しネタバレになるけど、
そのカメラで写した
写真の中の先生と子供たちが、
少しずつ消えていくシーンはゾクゾクきた。
これは映画ならではの手法。
普通のカメラではなくピンホールカメラである理由が
ここになって生きてくる。
また、シュナイダー植松の話を聞いた高校生たちが
豊橋発祥の『ええじゃないか』をラップ風に復活させるのも
そんなに違和感なく受け取られたね」

----『ええじゃないか』って、
江戸時代に起こった踊りでしょう?。
「豊橋まつりの
ホームページによると
『明日に夢を求める民衆のエネルギーが熱気となって全国に伝わった』とある。
バブルの後、長いトンネルが続く現在、
その苛立ちを利用するかのように、
時代を逆行させる動きも見られるだけに、
監督としても、
この反戦映画と『ええじゃないか』を結びつけることで、
間違った世直しへ進むことの警鐘を発したのかもしれないね」


                  
    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンはバックシャンなりニャ」春告げ

※浅丘ルリ子が歌う西条八十の『風』も効果的だ度
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『リトル・ミス・サンシャイン』

2006-12-07 01:13:06 | 新作映画
(原題:LITTLE MISS SUNSHINE)
----この映画って、東京国際映画祭で三冠を受賞したんだよね。
監督が夫婦ってことでも話題になっていなかった?
「そう。
その最優秀監督賞に加えて
最優秀主演女優賞、そして観客賞。
もっともすでにサンダンス映画祭で上映され、
配給権をめぐる争奪戦の上、
その契約金は同映画祭史上最高額にまで
跳ね上がったと言う<伝説>を持っているだけに、
それから約10ヶ月遅れての
東京国際映画祭での受賞は、
そう驚くことでもないのかもしれないね」

----そうだよね。
アメリカではすでにサマーシーズンに
スマッシュヒットを飛ばしていたわけだし…。
でも、主演女優賞ってだれ?
もしかして、この眼鏡の女の子なの?
「そう。アビゲイル・ブレスリン。
日本でも最近、子役が巧くなってきたなと言う気がするけど、
彼女を観ると、まだまだということを思い知らされる」

----どういうところが違うんだろう?
「このアビゲイルは、
撮影当時まだ5歳。
でも映画のテーマを熟知している」

----テーマって?
「アビゲイルいわく
『映画のテーマは、
不完全な家族だって完璧な家族と同じくらい
愛し合えるってことなのよ』」

----それはスゴいや。
子供の言葉とは思えない。
でもどんなお話ニャの?
「<不完全な家族>=フーヴァー一家は
“リトル・ミス・サンシャイン”コンテストに
繰り上げ参加することになった娘オリーヴを連れて
カリフォルニアへ向かうことに。
その家族構成はと言えば、
独自の成功論を振りかざす家長リチャード(グレッグ・キニア)、
バラバラな家族を必死にまとめようとする母シェリル(トニ・コレット)、
家族を嫌って沈黙を続ける長男ドウェーン(ポール・ダノ)、
ヘロイン常用者でエロじじいの祖父(アラン・アーキン)、
男性への失恋が原因で自殺をはかった
プルースト研究者の叔父(スティーヴ・カレル)、
そしてビューティー・クイーンを夢見るオリーヴ(アビゲイル・ブレスリン)だ」

----ニャるほど。
キャラ設定を聞いただけでも、
いくつもの楽しいエピソードが生まれそうだ。
「いやあ。最近こんなに笑った映画はほかになかったね。
よく、<現実の悩みをコメディで忘れる>…という話を聞くけど、
そういうことってほんとうにあるんだなと、
この年にして初めて思ったね」

----それはまた大胆な!?
「うん。
彼らは、日本で言うところの負け組。
でも、この映画は、人生は勝ち負けじゃないと言うことを
ブラックな笑いに包んでたっぷり見せてくれる。
だからと言って、
彼らは、最初から自分たちを負け組と開き直っているわけじゃない。
それぞれに自分の置かれている立場を意識過剰なほどに自覚し、
そこから抜け出すべく
自分に折り合いを付けながら生きている。
でも似た者同士でもあるだけに、
些細なことでぶつかり合いもする。
しかし、みんな家族であることは間違いない。
だから各自が窮地に直面すると、
何はさておきお互いを守り抜こうとする。
たとえ外から見たら、
それがどんなに不器用であろうと、
あるいは異常であろうとかまいはしない。
根っこの部分が同じであるところから生まれる家族の絆とやさしさ、
それがこの映画の魅力だ」

----へぇ~っ。ニャるほどね。
よく、えいも<猫バカ>と言われるもんね。
「そう言うこと。
いや、ちょっと違うな(笑)」

----フォルクスワーゲンだっけ?
このミニバスもかわいいね?
「うん。このミニバスが、もうひとりの主人公。
クラッチがバカになって
みんなでエンジンを押しがけしたり、
クラクションが止まらなくなって
警察に捕まったり…と、
さまざまな場面で笑いを提供し、
同時に家族の絆が深まるきっかけを作ってくれる。
これまでにも
あまたのロードムービーが生まれたけど、
ここまで乗り物が大きなウェイトを占めた映画は、
そんなには多くはないのじゃないかな」

----ところでコンテストはどうなるの?
「さすがに結果までは言えないけど、
オリーヴの周りはレベルが違う。
大人顔負けの表情や仕草、
そしてパフォーマンスを見せるライバルたちに対して、
彼女は、何で勝負するのか?
よく、知った人が舞台に上がって芝居すると、
見ている方が恥ずかしくなるってことあるけど、
この映画ではそれと同じ感覚を抱いてしまう。
『ちょ、ちょっとヤバいんじゃない。止めた方が…』ってね」

----それだけ入り込んでしまったわけだ。
「まあ、そう言わないでよ。
観たら分かるって。
ラストも、やたらと余韻を持たせようとはせずに、
潔くスパっと終わる。
今年のお正月映画は本命不在と言われるけど、
ぼくはこの映画がNo.1だね」

----でも、この映画はそういうコンテスト的な観方を
否定していると言うか、おちょくっているんでしょ?
「いいの。
監督夫妻もコンテストに参加しているわけだし。
東京国際映画祭のコンぺティションにね。
あっ、音楽もいいよ。早くサントラ出ないかな」



                  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「よさそうだニャ」身を乗り出す

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『NANA2』

2006-12-06 00:16:21 | 新作映画
※公開間近。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


----おおっ。この映画、今週公開だよね。
キャストが大胆に変わったけど、
どうだった?
「前作『NANAーナナー』は、
映画の後にコミックを読んで
あまりにも同じシーンが出ていたことに
驚いたものだけど、
『2』は実に大胆に刈り込んであった」

----刈り込む?
「うん。
原作だと、ブラスト、トラネスのメンバー、
それぞれの男と女が
複雑に入り組んだ関係を見せる。
たとえばシンとレイラ、
レイラとレン、
ヤスとナナというようにね。
でも、映画では奈々(ハチ)とタクミ、
そしてノブの三角関係が軸となり、
ナナとレンの恋模様でさえほとんど描かれない。
まず松田龍平に替わって
姜愓雄が演じるレンのセリフがほとんどないし、
シンがおばさまたちを相手にしてお金をもらっているという
エピソードもカットされている。
まあ、あれだけ長い話を2時間10分にまとめるには
致し方なかったのかもしれないね」

----でも、それだと市川由衣の比重が大きくなるね。
宮崎あおいの後だけに、プレッシャーもスゴそうだけど…。
「うん。宮崎あおいが
ハチのイメージを徹底的に作りあげていたからね。
物語としても、この三角関係に妊娠が絡むわけだから、
前作にあったような
夢に向かうはちきれんばかりの青春のエネルギーは影を潜め、
替わって恋することの苦渋が描かれる」

----う~ん。大人の映画になったわけだ。
「そういうことだね。
いま話しながら気づいたけど、
青春の終焉を描いた映画は
それこそ山のようにあるけど、
それは常に男の立場からものだった。
今回のように女性映画として
“大人になることの寂しさ”を描いた映画は珍しい」

----ブラストもインディーズから
メジャーに移行するわけでしょ。
それでも明るさはないの?
「うん。音楽映画のはずなのに、はじけない。
人生の重みが前面に出ているんだね。
前作のノリを期待して観にきた
ファンがどういう反応を示すか、
これは少し興味深い。
例えて言えば『ハリポタ』の1と4ほど違うわけだから」

----でもあちらと違って、
こっちは同じ監督だからね。
「そうなんだよね……」

                  
    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ニャんと申しましょうか」ご不満

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