ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『オーバー・フェンス』

2016-08-22 12:36:09 | 新作映画
「鑑賞」というより「体験」の言葉が似合う。
この『オーバー・フェンス』はそういう映画だ。
なかでもオダギリジョーと蒼井優の喧嘩シーンは逃げ出したくなる息苦しさ。
主人公の白岩は職業訓練校生との設定だが、
この今の日本が『フルメタル・ジャケット』の海兵訓練所のように感じられてならなかった。
(8月19日Twitterより)


----いきなりキューブリックの戦争映画を引き合いに。
また、思い切ったことをツイートしたものだニャ。
「この映画、
その主要舞台の一つが職業訓練校。
そこの教師の
人を人と思わぬ態度に、
あの映画の海軍訓練所を重ね合わせてしまったんだね」

----ということは、
その中で精神を狂わせてゆく人とか、
事件が引き起こされたりとかもあるのかニャ。
「うん。
観ているうちに、
これはヤバいってことは分かる。
その役回りを演じるのは
周囲からつまはじきになっている森(満島真之介)。
こういう訓練校では、いろんな人がやってくる。
森は大学中退。
そしてその学歴がかえって周りからは疎まれるんだ。
他の連中は、
今の世の一般的な流れの中、
リストラやその他の理由で失職。
まあ、なかには還暦を過ぎてここに通う勝間田(鈴木常吉)なんてのもいる…」

----ニャるほど。
で、オダギリジョーだとか松田翔太ってのは、
そこに通う訓練生のひとりってわけ?
「そうだね。
オダギリジョー演じる白岩は東京で働いていたんだけど、
ある事情から会社を辞めて故郷のこの函館に戻ってきている。
一方の松田翔太演じる代島は元・営業という設定。
代島は実は飲食業を始めようとしている。
そのパートナーとして彼が目をつけたのが白岩。
彼は白岩を酒に誘い、
そこでこの話を持ち出し、新事業に誘う。
酒と言っても、居酒屋とかではなくキャバクラ。
つまりこれも代島なりの営業なわけだ」

----ふむ。
そこにいたのが蒼井優というわけだニャ。
「うん。
まあ、ここまでは出会いとしてよくある話だよね。
蒼井優演じる田村聡が白岩を積極的に誘うところも、
まあ、よくあるパターン。
しかし、なかなか白岩はそれに応じようとしない。
何か自分を抑えている風なのは
オダギリジョーの演技、
その醸し出す空気から伝わってくる。
さて、間をすっ飛ばしちゃうけど、
いくつかの出来事があった後、
ようやく二人は結ばれる。
ところがここで聡が思いもかけない態度に出る。
理不尽な怒りを白岩にぶつけ、
彼を罵倒し、責め立てるんだ。
それまであらゆることを笑顔で受け流すことで
日々の平安を保っていた白岩もついにキレてしまう。
実は最初にツーとで紹介したケンカというのはここなんだけどね。
その背景は明らかにはされないものの、
聡がかなり精神を病んでいることだけは分かる。
体をゴシゴシ拭き清め、薬を飲み、
そして何より意味不明の怒り。
で、ここに至ってぼくは思ったわけだ。
あ~、この映画は、
いまの日本を凝縮した世界を描いているんだなって。
フェンス、それは職業訓練校の中ではなく、
この日本社会そのものを指しているんだなってね

----へぇ~っ。
それは象徴的な作品だニャ。
監督はだれだっけ?
山下敦弘
この監督の観察眼はあいかわらずスゴイ。
ある意味、スリリング。
たとえば代島が聡を、誰とでもヤレル女だみたいなことを言っているときの
代島へのカメラの寄り方。
観ているこちらは、
いつ彼がキレやしないかとハラハラ。
というのも
合コンに誘われた代島が、
相手の女性たちの意味のない笑いに
いつまでもそうやってはいれないんだぞと説教。
その場の空気を壊してしまうシーンが
伏線として張られていたりもするからなんだけどね。
いま、ふと思ったんだけど、
こういう飲みの席で、人間の本性を映してしまうのはこの監督、
ほんとうまいね。
『苦役列車』 の森山未來の演技を思い出したよ。
話を基に戻そう。
映画というものがそうで、
だからこそ映画はオモシロいわけだけど、
世の中には、自分たちの想像もつかないいろんな人がいて、
それぞれの人生を生きている。
そして、誰もがひとりで生きていけず、
誰かとと関わるわけだけど、
その出逢い、また関わり方によって
そこには、自分が思ってもいなかった新たなドラマが生まれ、
それまでとは違う人生を歩み始める。
この映画の魅力はそこにつきる
結局、いつものように端折ってしまったけどね…」

----ということは、
その中のどの個性、
どの出逢いを描くかで映画は変わってくるということだニャ。
「うん。
そういう意味で、ぼくは今回、
蒼井優のあるコメントにとても共鳴したんだ。
プレスに書いてあったその言葉、
ツイートもしたこのコメントを紹介して
この映画の締めにしよう」


自分がどういうキャラクターを演じたか1%も分からず
「完成した作品を観るのがイヤだ」と言う蒼井優。
山下敦弘監督は言う。
「役者が(自分を)見たがらないものを撮りたいから、それでいいんだ」。
再び蒼井優。「ダメな人間を肯定できなければ映画じゃない」。
(『オーバー・フェンス』プレスより)


フォーンの一言「ところで予告編で蒼井優が踊っていた、あれは何なのニャ」身を乗り出す

※鳥の求愛の踊り。「今回はダンスを…」というプロデューサーの要望をうまく生かした脚本家・高田亮のアイデアだ度

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