(原題:Passion)
----今日の映画『パッション』は
ブライアン・デ・パルマ監督の新作。
確かこの監督、えいのお気に入りのひとりニャんだよね。
「さすが、長年連れ添っているだけのことはあるね。
てっきり、
『あれっ。ゴダール?メル・ギブソン?』なんて
ボケてくるかと思った」
----(笑)初めはそうしようかと…。
ところで、このデ・パルマって、
ずいぶん久しぶりじゃニャい?
「うん。
『リダクテッド 真実の価値』以来だから、
日本に来るのは6年ぶりかな。
実を言うと、観るまではおそるおそる。
というのも、ぼくが好きだったデ・パルマは
このところ、すっかり影を潜めていたから…」
----デ・パルマって、
『アンタッチャブル』が人気あるよね。
その後、『ミッション:インポッシブル』も手がけたし、
ニャんだか、巨匠ッてイメージ…。
「それそれ。
実はぼくはこの二作でがっかりしてしまったクチ。
ほんとうのファン、
たとえば三留まゆみさんあたりだと、
それらも含めてデ・パルマ命なんだろうけど、
ぼくはやはり、初期。
『ヒッチコックの後継者』と呼ばれた頃の
めくるめく映像マジックが忘れられない」
----映像マジック?
「うん。
いまでこそCGでなんでもできるようになったけど、
それってかえって映画をつまらなくさせている。
このブライアン・デ・パルマという監督は、
撮影と編集のテクニックによって
観る者を陶酔へといざなっていくんだ。
たとえばそれは『悪魔のシスター』『ファントム・オブ・パラダイス』での
スクリーン分割であったり、
『愛のメモリー』『フューリー』『ボディ・ダブル』での
スローモーションであったり。
しかも、そこに三角移動や回転カメラという併せ技を持ってきたりする。
そして、それらは
物語が急展開するというデ・パルマのサイン。
もう、これらが始まると
『来たぞ来たぞ』とゾクゾクしてしまう。
日本では大林宣彦、アメリカではこのデ・パルマが
いわゆる“映像の魔術師”。
ところが『アンタッチャブル』では、その映像ギミックを封印。
もちろん『戦艦ポチョムキン』のオデッサの階段を意識したシーンや、
アル・カポネを真俯瞰で捉えたシーン、あるいは旅客機のセットなど、
映像に凝っているところがないワケでもない。
でも、これだけの風格のある大作においては
それらは、
ファンのためにちょっと入れてみました…にしか見えない」
----そうか。この監督の場合、
“山椒は小粒でも…”の方がいいってワケだニャ。
「うん。ぼくにとってはね。
この映画は、久しぶりに
彼らしいサスペンス・スリラー。
しかもサイコ・ミステリーの要素まで入ってきている。
物語は簡単に言うと、
次のようになる。
舞台はドイツ、ベルリン。
広告会社に勤めるイザベル(ノオミ・ラバス)は、
アシスタントのダニ(カロリーネ・ヘルフルト)の協力を得て、
スマートフォンのプロモーション・ビデオを完成。
それをちらっと見た上司のクリスティーン(レイチェル・マクアダムス)は、
自分の代わりにイザベルをロンドンでのプレゼンテーションに出張させる。
このプレゼンテーションは大成功に終わるものの、
ベルリンに戻ると、
クリスティーンがその手柄をすべて我がものに。
彼女の眼の前で自分の本社復帰の約束まで社長と取り付ける。
『えっ、それが何か?』的な態度に出るクリスティーンは、
その後もイザベルを操り人形のように軽く扱う。
彼女の冷酷な本性を改めて知ったイザベルは、
スマートフォンのオリジナル・ビデオを動画サイトで公開。
ビデオは世界中で大反響を呼び、
イザベルはクリスティーンを出し抜いてニューヨーク栄転のチャンスを勝ち取る。
これを黙って見ているようなクリスティーンではない。
イザベルの愛人ダーク(ポール・アンダーソン)を意のままに操り
精神的ダメージを与え、
さらには、
イザベルがひとり泣き叫ぶ姿を記録した監視カメラの映像を
社内の懇親パーティの席で上映。
耐え難い屈辱にまみれ薬に依存するようになるイザベル。
そんな中、会社中を震撼させる事件が起こる。
クリスティーンが何者かに刃物で傷つけられ、
無残な死を遂げてしまうのだ…。
はい、話はここまで」
----うわあ。これはオモシロそうだ。
「でしょ。
オリジナルは
フランスのアラン・コルノー監督の遺作となった
『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』なんだけどね。
とはいえ、
とてもこれがリメイクには見えない。
双子、シャワー、マスク、鬘、殺人、悪夢、覗き、ベッド、ナイフ…。
デ・パルマの過去の名作のエッセンスがこれでもかとばかりに詰まっている。
音楽が『キャリー』『殺しのドレス』『ミッドナイトクロス』などの
サスペンス・スリラーで組んだピノ・ドナッジオというのもファンには嬉しいところ」
----でも撮影は初めての人だよね?
「ホセ・ルイス・アルカイネ。
アルモドバルの原色の世界をサポートしてきた彼だけど、
ここでも、ユニークな試みを見せてくれる。
前半は華やかな広告社会にふさわしく色彩豊か。
ところが後半ではざらついた青味の強いモノトーンの映像に。
しかもそこに太いボーダーの影が覆いかぶさる。
と、その映像を観ているだけでも
時間を忘れさせてくれるのに、
“果たして真犯人は誰か?”
というミステリーまで付いてくる。
もう、終ってしまうのがもったいないって感じだったね。
映画監督というモノ、
いろんなジャンル、いろんな表現にチャレンジしたいのは分かるけど、
こと、デ・パルマに関しては
このサスペンス・スリラーに徹してほしいと
いまさらながらに思ったね」
(byえいwithフォーン)
フォーンの一言「この真相はフォーンには読めないのニャ」
※名作・傑作ではなくても好きな映画というものはある度
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