ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『メリー・ポピンズ リターンズ』

2019-02-04 20:49:29 | 新作映画
※注:今回は原作ファンとしての感想。
この映画が大好きな方はスルーされた方がいいかも。



あれはたしか小学5年の頃。
ちょっとミステリアスな転校生が
ぼくらのクラスにやってきた。
友だちと遊びに行ったその子の家の応接間で
彼女が見せてくれたのは
緑色のりんごが描かれたビートルズのドーナツ盤、
そしてP.L.トラヴァースの「とびらをあけるメアリー・ポピンズ」だった。



そのカヴァーの絵は、
それまでにぼくが読んできた童話のそれとはまったく異なっていた。
いや、絵だけではない。
その中身もほかのメルヘン、ファンタジーとは似ても似つかぬものだった。
主人公のポピンズはしつけに厳しい家庭教師。
そんな彼女が魔法の世界に子どもたちをいざなう。
と、ここまでだったら、それまでにもよくあったであろう話。
ところが、このポピンズ、現実の世界に戻ってきたら全てはなかったかのように、
冒険の興奮の余韻に浸る子どもたちに、
「なにバカなこと言ってるの?」という突き放した態度を取るのだ。
このキャラ設定の妙こそが
原作「メアリー・ポピンズ」の最大の魅力。

さて、ここからがようやく映画の話。
ジュリー・アンドリュース主演の『メリー・ポピンズ』を観たのは、それから約10年後。
渋谷の東急名画座だった。

うーむ。これは…。
鳥やペンギンなどのアニメと実写の合成はたしかに楽しいし、
「チム・チム・チェリー」を始め、
その頃にはすでにスタンダードとなっていた音楽も気分を浮き浮きとさせてくれる。
映画として見る分には決して悪くはない。
でも、どこか違う。
そう、彼女はその笑顔も含めて優しすぎるのだ。
映画もエンタメの宿命とはいえ、
魔法に重きを置き、
子どもたちの心が置き去りになっている。

これについてトラヴァースはどう思っているのだろう。
ここに興味深い一本の映画がある。
『ウォルト・ディズニーの約束』
その中では『メリー・ポピンズ』の映画化に
なかなか首を縦に振らないP.L.トラヴァースの姿が描かれる。
彼女を迎えるにあたってのディズニーの
「戦略」の失敗も手伝って交渉は難航。
部屋に置いてあった「くまのプーさん」のぬいぐるみに、
「かわいそうなA.A.ミルン」と呟くところに
トラヴァースの気持ちは象徴されている。
音楽を聴かせてもダメ、アニメと実写の合成などとんでもない話。
もちろん歴史が証明するように、最終的にはトラヴァースは映画化を承諾するのだが、
これを観て、なぜ「メリー・ポピンズ」にだけディズニー・グッズがないかは分かった気がした。
「白雪姫」「ピーターパン」「ピノキオ」のように、
ディズニーの作り出したキャラクター・イメージで自分の物語が語り継がれるのだけは避けようとしたのだろう。

さて、そんな中、半世紀ぶりに「メリー・ポピンズ」の新作『メリー・ポピンズ リターンズ』が登場。
前作を踏襲して、楽しいミュージカル仕立て。
ところが個人的にはこれがダメ。
霧のロンドンの情景も数多く取り入れられ、
世界観が一歩原作に近づいたかなと思ったら、
50年代ハリウッド黄金期を彷彿とさせる歌と振り付けがそれを遮断してしまう。
前作より、さらに現実パートは少なく、
ふしぎな世界のオンパレード。
エミリー・ブラントも美しすぎてポピンズ臭が薄い。
また、劇中、なんども「とびらをあける」に言及しながら、
ラスト、あっさりと去っていき、子どもたちもそのことに興味なしというのは…。
久しぶりに「とびらをあけるメアリー・ポピンズ」を開きたくなった。

2019年、外国映画、3本plus7本

2018-12-31 20:46:05 | 新作映画


2018年、「ラムの大通り」が選んだ3本の外国映画。

●スリー・ビルボード

●バトル・オブ・ザ・セクシーズ

●タクシー運転手 約束は海を越えて



さらに…
●アイ,トーニャ
●正しい日|間違えた日
● バッド・ジーニアス 危険な天才たち
●イコライザー2
●マチルド、翼を広げ
●リメンバー・ミー
●ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生


『スリー・ビルボード』の長回し手持ちワンカット撮影には息を飲んだ。
周りからどう見られようとも自分の意思を貫き通すヒロインを始め、
登場人物それぞれのキャラ設定もこれまでのハリウッド映画にはあまり見られないもの。
毒というよりも、これまで観たことがない映画を観ることの喜び。その意味ではこの映画が圧倒的にベストだ。
『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』『アイ,トーニャ』も、いわゆるヒューマンドラマの枠を超えたモンスターがドラマを牽引していく。
『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』もその路線だが、
これは実在のふたりの現役時代を知っているだけに物足りなさが残った。
『タクシー運転手 海を越えて』は、実話とは思えないほど映画的素材。
名もない個人がジャーナリストを客として乗せたことで、それまで知らなかった政治の闇を覗き見ることとなる。
少し『キリング・フィールド』が頭をかすめた。
『1987、ある闘いの真実』も同じく韓国政治の裏面史。
なぜか日本ではこういう歴史に切り込んだ作品が見られない。
何本もまとめて日本公開されたホン・サンス作品からは『正しい日|間違えた日』
「もし、あのときこうしていたら」タイプの映画はたまにハリウッドや香港からも現れるが、
それらは「右のドアか?左のドアか?」、いわゆるシンプルな二者択一行動ものが多い。
この映画は主人公単独の行動ではなく、
それによって変わってしまうふたりの関係を相手の人間性も加味して描いていたところが目新しかった。
『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』。カンニングをここまでサスペンスに仕上げられるとは⁉︎
タイという、映画ではあまりなじみのない国であることも驚きをいや増した。
『イコライザー2』はクライマックスの嵐の中の死闘。
SFやファンタジーではなく、こういう仕事にこそアカデミー特殊視覚効果賞を授与してほしい。
アニメでは『リメンバー・ミー』
実は『犬ヶ島』も日本の60年代アンダーグラウンド・シーンを思い起こさせてくれ、かなり好きなのだが、
「観る前の期待値を超える」感動という点でこちらを選んだ。しかし憎いストーリーだ。
『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』
いわゆるハリウッド超大作は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『ジュラシック・ワールド/炎の王国』も、もちろん『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』もみんな好きなのだが、それらを並べてもあまり意味がない気が…。
そこで前作から一転、いきなりダークファンタジーへと舵を切ったこの作品に。これなら「ハリポタ」ファンでも大丈夫。
最後に『マチルド、翼を広げ』
実はこれは来年早々に公開の映画。
本来ならばこの年間振り返りには入らない作品だが、ヒットを祈願。
応援の意味も兼ねて入れ替えないままここに。


1年の映画を振り返ったのは、ほんと久しぶり。
フォーンが旅立って5年。
どうにかひとりでも映画を語れる気が…。
というわけで来年は本格的にブログ復帰予定。
そうそう、FILMAGAにも不定期に深掘り記事を連載。こちらもよろしく。

来年はいい年でありますように。

2018年、日本映画。3本plus7本。

2018-12-29 22:06:37 | 新作映画


2018年、「ラムの大通り」が選んだ3本の日本映画。

●寝ても覚めても

●生きてるだけで、愛。

●母さんがどんなに僕を嫌いでも


さらに…。
●孤狼の血
●羊の木
●愛しきアイリーン
●友罪
●太陽の塔
●空飛ぶタイヤ
●止められるか、俺たちを


🔳2018年、日本映画を振り返って…。
日本映画はなぜか「ひとつの恋が結ばれるまで」を描き、その後について語ることは滅多にない。
日本映画の特徴の一つでもある「(少女)コミックスの映画化」では特にそう。
そんな中、『寝ても覚めても』『生きてるだけで、愛。』は「出会いの後」を描く
『寝ても覚めても』東出昌大が一人二役。
顔は同じだが中身はまったく違う。彼のファンは、もし自分の前に二人の東出昌大が現れたらどうするのだろう?
ヒロインと同じような葛藤にとらわれるのではないか?
そう、この映画は「スクリーンのこちらと向こう側」を繋ぐ。
『生きてるだけで、愛。』は趣里に尽きる。
彼女がクライマックスで菅田将暉に言う「いいなあ。私と別れられて」には戦慄が走った。
あのウイリアム・フリードキン監督『真夜中のパーティ』の「これ以上、自分を嫌いたくない」に並ぶ、絶望的な自己否定の言葉だ。
監督は関根光才。それまで意識したことがないと、思っていたのだが、なんとドキュメンタリー『太陽の塔』の監督だった。
この映画は、天才アーティスト岡本太郎にさまざまな角度からスポットを当てながら、
いまの時代の闇に切り込むという個人的に大収穫の作品。
日本映画から本格社会派作品が消えて久しい中、なるほど映画ではこういうこともできるのかと感心させられた。
社会派といえば『空飛ぶタイヤ』がリコール隠しに走る大企業に立ち向かう個人の闘いを描き、
政界の改竄、隠蔽が相次いだ2018年に映画で一矢報いた感があった。
『孤狼の血』も一種の社会派バイオレンス。
『仁義なき戦い』を現代に蘇らせたような猥雑さがスクリーンから熱として迸っていた。
猥雑と言えば『愛しきアイリーン』
四文字言葉の連発は原作で知っていたとは言え、やはり暴力的に凄まじかった。
『娼男』もロマンポルノ時代の監督たちが羨むような直接的性描写が話題となったが、
いかんせん、きれいに収まりすぎていた。
60〜70年代を描いた作品が多かったのも嬉しかった。
『止められるか、俺たちを』『素敵なダイナマイトスキャンダル』は、それぞれ時代の空気感をよく出していた。
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』は太賀に尽きる。彼はまさに役を生きていた。『友罪』の瑛太と並び、長く記憶に残る演技だ。
『羊の木』はその歪な世界に魅せられた。
『シャルロット すさび』も60年代の初期ATGや金井勝『無人列島』を懐かしく思い起こさせてくれたが、
こちらが歳をとったからか、それとも時代のせいか少しキツい。
歪路線ではほかに『ニワトリ★スター』『君が君で君だ』などもあったが、化けに化けた『カメラを止めるな!』にすべて持っていかれた感があった。
コメディではニッチェの江上敬子にやられた『犬猿』。これは未見の人は観て損はないと思う。
『パンとバスと2度目のハツコイ』『モリのいる場所』もそれぞれの語り口が楽しかった。
青春映画では東京近郊の高校生にスポットを当てた『青の帰り道』『高崎グラフィティ』
時代を超えた普遍の青春の悩みを描き、嬉し恥ずかし。
あの頃の自分を重ねてしまった。
アニメはやはり『若おかみは小学生』

なんて、振り返り始めると止まらなくなるので、このあたりで。



『デイアンドナイト』

2018-12-23 10:10:09 | 新作映画
山田孝之が製作、共同脚本を担当した『デイアンドナイト』が見応えがあった。

●脚本完成に至るまでの新たな試み。
脚本を作り上げるにあたって、
山田孝之は主演の阿部進之介以外のすべてのセリフの読み合わせをして、
息継ぎしにくいところなど細かく修正していったという。

●タイトルの意味と内包するテーマ。
『デイアンドナイト』、昼と夜。
これは善と悪のメタファ以前に、裏での違法行為が表の善行を営むために意味を持つという、実に興味深い設定。
一方でこの映画は、正義の行為が他方では人の人生を壊すという、皮肉な捩れもあぶり出す。
さらには家族を殺された者の復讐の是非など、テーマは多岐にわたる。

●『七つの会議』と通底。
『デイアンドナイト』。
話の発端は車の部品の欠陥告発。
リコール隠しを描いた『七つの会議』のような派手なエンタメ性はないものの、あわせて観ると、より心に響くものが…。

●地域開発映画プロジェクト。
『デイアンドナイト』。
映画製作上、もう一つなるほどと思ったことがある。
それは「地域開発映画プロジェクト」。
これは例えば、少子化に悩む小学校の統合、伝統工芸の後継者不足、名産品が売れないなど、
悩める地方都市の宣伝を映画が担うというもの。本作のロケ地、秋田県鹿角市もその流れ。
ふと思った。
もしこれが東京国際映画祭のコンペに出ていたら…と。
この映画は、描きたいものが明確。
しかもオリジナリティもある。
アートかどうかは人によって受け止め方が違う誰うけど、
商業性は結果としてのご褒美という、
審査委員長ブリランテ・メンドーサ監督の考えに近いと思う。




パンセとカノン。昼は…。言うまでもないか。^^;

『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』

2018-11-15 22:55:51 | 新作映画
『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』



(ネタバレなし)
ある意味、今年最大の嬉しい誤算であった。
『ハリポタ』は第1作からすべて初版で揃えたほどハマってしまった自分だが、
それだけにすべてが終わった後の虚脱感は大きく、『ファンタビ』に対しては、なぜ番外編を作るのか? と、正直怪訝な気持ちでいたのだ。
あにはからんや、第1作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』にはまったくノレず。
物語より前に、主人公に扮するエディ・レッドメインに華がない。
しかも彼が活躍(?)する舞台が「新世界」アメリカ。これほどファンタジーに似つかわしくない場所はない。
後で生まれた作品ではあるが、新版『ゴーストバスターズ』などと同じ、クライマックスの持っていき方はどれも似たり寄ったりとなってしまう。
『ハリポタ』は主たる舞台がもう一つのロンドン。イギリスの児童文学、その代表作「メアリー・ポピンズ」にもあるように、
公園の石畳に描かれた絵から、あちらの世界へと行ける、それが子供の夢を掻き立てるのだ。

さて前置きが長くなったが、この第2作は物語の舞台を欧州に戻したことで、窮屈感がまったくなくなった。
なにせ、ダンブルドア(ジュード・ロウ)は出てくるわ、ホグワーツは出てくるわで、
「ハリポタ」ファンはもうそれだけでクラクラ。
いや、なにも黒い魔法使いグリンデルバルド(ジョニー・デップ)のかけた目くらましの術にかかったわけではない。映画はあきらかに軌道修正(?)が行われている。
前作では、顔見せという印象しかなかった「魔法動物」が今回は物語と有機的に絡んでいき、それぞれのキャラクターにたっぷりと感情移入ができる。
監督はデイビッド・イェーツ。彼は「ハリポタ」がダークになっていく『不死鳥の騎士団』以降の章をまとめあげた人。
『魔法使いの旅』とこの『黒い魔法使いの誕生」はある意味、『賢者の石」から『死の秘宝』に一気に飛んだ、
それくらいの奥行き、そして迫力がある。

さて、その奥行きとは? それを明かすのは公開前のこの時期、さすがに控えたい。
しかし、これだけは言ってもいいだろう。いま世界にはびこる民族、そして「我が国ファースト」。そこから派生する排他性、不寛容、そして分断。
純血にこだわることはなんて愚かで、そして恐ろしいことか。この映画はいまの時代の空気、風潮に敢然と立ち向かう意欲作。一年の締めくくりにふさわしい。


(byえい)

※日本人にとっては、それぞれ違う意味でドキッとするシーンが二ヶ所。いやあ、よくやったな。
※いま振り返ってみると、ヴォルデモートはその絶対的な力で相手に死の恐怖を与え、悪に君臨するダース・ベイダー型。それに対してグリンデルバルドは相手の心理を巧みに操る。政治家タイプかな。

マタゴスという黒猫そっくりの魔法動物が出てくるのニャ。ということで今回はカノンも。
まあ、映画もある意味、バディムービーの要素もあるし…(byパンセ)

やはり悪役らしいのニャ(byカノン)


『ジョニー・イングリッシュ アナログの復讐』

2018-11-13 17:32:56 | 新作映画
『ジョニー・イングリッシュ アナログの復讐』

ローワン・アトキンソンによる007パロディ第3弾
なんとものどか。
60年代スパイ映画のガジェットを用い、
アトキンソンが敵地侵入するだけで笑いがこみ上げてくる。
『Mr.ビーン』の笑いには馴染めなかったが、
007のパロディとしては『オースティン・パワーズ』よりも
オマージュが感じられて好感が持てる。
しかし、そこで少しだけ不安が…。
もしや、いまの若い映画ファンが
初期コネリーのボンドを観たらこんな感じ?
ケタケタとまではいかなくとも
「なに、このユルさは…」とニヤニヤされたりなんか…。
そう考えると少し怖い。
でも、まあベスト10には入ってるみたい。
あっ、日本での第一週目の興収ね。

(byえい)

『オースティン・パワーズ』。
みんな大好き『ボヘミアン・ラプソディ』にもピンク・フロイド「狂気」を手がけたレイ・フォスター役で出演しているマイクマイヤーズがプロデュース、脚本も兼ねて主演した007パロディ映画。第3作まで作られた。

おっ、2日続いたニャ。(byパンセ)

『メアリーの総て』

2018-11-12 11:58:53 | 新作映画


Twitterが息苦しくなって
懐かしのブログに。
でもフォーンとの会話はできないし、
かと言ってパンセにお相手は厳しい。
しばらくは画像のみ。

さて、なにから始めるか。
最近観た中からまずはこれ。
と言ってもTwitterのコピペ。

メアリーの総て

「フランケンシュタイン」の作者メアリー・シェリーがこのSF的名著を生み出すまでがドラマチックに展開。
監督がサウジアラビア生まれの女性ということも手伝い、「自由恋愛」という男の都合のいい概念の前に苦悩し、自身の主義と葛藤するさまが、70年代後期の女性映画にも被った。

映画のクライマックスは「ディオダディ荘の怪奇談義」。
ケン・ラッセル監督『ゴシック』とはまた異なるアプローチに目を細めるのもまた一興。

※70年代女性映画
『ミスター・グッドバーを探して』『結婚しない女』『ジュリア』『愛と喝采の日々』『グッバイガール』など。


さて、実はこれ2度目のライティング。最初はPCの管理画面をiPhoneでやったところ、途中で消えてしまった。
仕方なく新たに投稿しようとしたらスマホ用管理画面が…。
そうそう、ブログは下書きが必要だった。
慣れるまで時間がかかりそうですが、よろしくお願いします。

(byえい)

「パンセがなぜここに?」
実は、えいが書いているあいだ、
ずっとお膝で寝てたから。
いや、話は聞いてたのたけど…。(byパンセ)

『聖の青春』

2016-11-24 22:08:19 | 新作映画
----えっ。ここにくるの久しぶりじゃん。
もう4か月。
これはさすがにやめたのかと…。
「うん。なんど、
もういいや…になったことか。
でもTwitterでもちょっと呟いたように、
この映画は久々に喋ってみたいなと…」

---そんなによかったの?
「いや。
今年の日本映画はほんとスゴくって…。
おそらくこの『聖の青春』はベストテンからは漏れると思うんだけど、
それでもここのベースにある“奇妙な味わい”だけは捨てがたいと…」

----“奇妙な味わい”?
それってTwitterで言っていたことかニャ。
「 『聖の青春』。これは力作だわ。
映画を支配する医者の母親への残酷な告知から夏の蝉の声まで。
久しぶりにブログを書きたくなった」

正直、ニャんのことかと?
「うん。
この映画、いわゆる“お涙ちょうだいもの”でもなければ
ハートフルなヒューマニズム映画でもない。
それを冒頭すぐに、観る者に感じさせてくれるのが
子供の頃、病気になった聖を初めて病院に連れてきた母親に
ドクターが投げかける言葉。
『なぜ、こうなるまで連れてこなかったんですか?
お子さんを大変な病気にしてしまいましたね。
一生、この病気と付き合っていかなくてはならない』。
ざっと、こういったような内容。
これって母親にとっては、罪の重荷を背負わされる言葉。
最近、 “毒親”というような言葉が巷ではやっているけど、
このドクターの言葉は
それこそ“母親失格”との烙印を押されたようなもの。
以後、映画は
彼に将棋のきっかけを与えたり、
終盤に出てくる“男同士の会話”などに表されるように、
父親へは、
寄り添うように好意的に描かれるのに対して、
母親には、感情的なセリフを用意するなど、
対照的な描き方を見せるんだ。
ぼくはこの時点で、これはかなり“歪な映画”だなと…」

----ニャるほどね。
映画をストーリーでは観ない「えい」らしいニャあ。
じゃあ、このTweetは?
「映画を脚色するというのはこういうことなんだろうな。
聖が羽生を前に食堂ではしゃぐ子供のような姿。対する羽生の言葉もいい。
「村山さんとだったら海の底を〜」。もう、これは恋だ。
聖の悪手に沈着冷静なはずの羽生の顔が歪む。
いずれもフィクションなのだろうけど、そこが好きだ」
って…。
「うん。
この映画は
主人公の村山聖をまるで人格破綻者のように描いている。
実力がないものに対しては
弟弟子・江川(染谷将太)はもちろんのこと、
師匠(リリー・フランキー)に対してもまったく遠慮がない。
傍若無人。
退会が決まった江川がどんなに落ち込んでいようと、
第二の人生を目指すと自分に諦め聞かせようと、
才能がない奴が何を言っているんだ…のようなといった接し方。
そんな彼が唯一認めているのが将棋七冠を達成した羽生名人(東出昌大)。
天才は天才のみを認めるということなのか…。
その羽生に勝ったある大会の後、
聖は彼を町の飲み屋に誘う。
そこで聖は、他では決して見せない無邪気な姿となり、
他の人から言われたら不機嫌にしかならない内容の話を、
自分からするわけだ。
このシーンはこの映画の白眉。
脚本の向井康介という人は
『マイ・バック・ページ』もそうだったけど、
“飲み屋”の描き方がうまいね」

----ふむふむ。
あと、
「『役になりきる』という言葉があるけど『聖の青春』はそうではない。
これは脚本に書かれた『役作り』をしているのだ。
体重増加の松山ケンイチは言わずもがなだが、羽生役の東出昌大が出色。
『デス・ノート』よりもこういう方が向いている。
筒井道隆もよかった。最後のナレーションまで気づかなかった」
というのもあったよね。
「うん。
役者が役を演じるということ、
それを楽しませてもらった気がする。

さっきのTweetともダブるけど、
最後に対極で、あと一手で聖の勝利が決まるというとき、
彼は大きなミスを犯してしまう。
それに気づいた時の羽生の表情、
いつもは見せない筋肉の動きが素晴らしい。
実際の対局はもっと淡々としていたらしいんだけど、
やはりここはこういう“誇張”が映画をオモシロくする
つまり、この映画は徹底して映画的表現にこだわるんだ。
羽生が亡くなった後、
彼のことを思い偲ぶ弟弟子・江川。
そこに浮かび上がる聖の面影に
蝉の声がかぶさる。
蝉が何を意味するか…。
フォーンだったら分かるよね」

----えっ? 蝉、蝉、蝉…
あっ、そうか。
蝉は7日しか地上では生きられない。
<短命>の象徴だ。


「なんでも食い入るように観たらしいのニャ」身を乗り出す

※映画は映画として描かれるからオモシロい度


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『オーバー・フェンス』

2016-08-22 12:36:09 | 新作映画
「鑑賞」というより「体験」の言葉が似合う。
この『オーバー・フェンス』はそういう映画だ。
なかでもオダギリジョーと蒼井優の喧嘩シーンは逃げ出したくなる息苦しさ。
主人公の白岩は職業訓練校生との設定だが、
この今の日本が『フルメタル・ジャケット』の海兵訓練所のように感じられてならなかった。
(8月19日Twitterより)


----いきなりキューブリックの戦争映画を引き合いに。
また、思い切ったことをツイートしたものだニャ。
「この映画、
その主要舞台の一つが職業訓練校。
そこの教師の
人を人と思わぬ態度に、
あの映画の海軍訓練所を重ね合わせてしまったんだね」

----ということは、
その中で精神を狂わせてゆく人とか、
事件が引き起こされたりとかもあるのかニャ。
「うん。
観ているうちに、
これはヤバいってことは分かる。
その役回りを演じるのは
周囲からつまはじきになっている森(満島真之介)。
こういう訓練校では、いろんな人がやってくる。
森は大学中退。
そしてその学歴がかえって周りからは疎まれるんだ。
他の連中は、
今の世の一般的な流れの中、
リストラやその他の理由で失職。
まあ、なかには還暦を過ぎてここに通う勝間田(鈴木常吉)なんてのもいる…」

----ニャるほど。
で、オダギリジョーだとか松田翔太ってのは、
そこに通う訓練生のひとりってわけ?
「そうだね。
オダギリジョー演じる白岩は東京で働いていたんだけど、
ある事情から会社を辞めて故郷のこの函館に戻ってきている。
一方の松田翔太演じる代島は元・営業という設定。
代島は実は飲食業を始めようとしている。
そのパートナーとして彼が目をつけたのが白岩。
彼は白岩を酒に誘い、
そこでこの話を持ち出し、新事業に誘う。
酒と言っても、居酒屋とかではなくキャバクラ。
つまりこれも代島なりの営業なわけだ」

----ふむ。
そこにいたのが蒼井優というわけだニャ。
「うん。
まあ、ここまでは出会いとしてよくある話だよね。
蒼井優演じる田村聡が白岩を積極的に誘うところも、
まあ、よくあるパターン。
しかし、なかなか白岩はそれに応じようとしない。
何か自分を抑えている風なのは
オダギリジョーの演技、
その醸し出す空気から伝わってくる。
さて、間をすっ飛ばしちゃうけど、
いくつかの出来事があった後、
ようやく二人は結ばれる。
ところがここで聡が思いもかけない態度に出る。
理不尽な怒りを白岩にぶつけ、
彼を罵倒し、責め立てるんだ。
それまであらゆることを笑顔で受け流すことで
日々の平安を保っていた白岩もついにキレてしまう。
実は最初にツーとで紹介したケンカというのはここなんだけどね。
その背景は明らかにはされないものの、
聡がかなり精神を病んでいることだけは分かる。
体をゴシゴシ拭き清め、薬を飲み、
そして何より意味不明の怒り。
で、ここに至ってぼくは思ったわけだ。
あ~、この映画は、
いまの日本を凝縮した世界を描いているんだなって。
フェンス、それは職業訓練校の中ではなく、
この日本社会そのものを指しているんだなってね

----へぇ~っ。
それは象徴的な作品だニャ。
監督はだれだっけ?
山下敦弘
この監督の観察眼はあいかわらずスゴイ。
ある意味、スリリング。
たとえば代島が聡を、誰とでもヤレル女だみたいなことを言っているときの
代島へのカメラの寄り方。
観ているこちらは、
いつ彼がキレやしないかとハラハラ。
というのも
合コンに誘われた代島が、
相手の女性たちの意味のない笑いに
いつまでもそうやってはいれないんだぞと説教。
その場の空気を壊してしまうシーンが
伏線として張られていたりもするからなんだけどね。
いま、ふと思ったんだけど、
こういう飲みの席で、人間の本性を映してしまうのはこの監督、
ほんとうまいね。
『苦役列車』 の森山未來の演技を思い出したよ。
話を基に戻そう。
映画というものがそうで、
だからこそ映画はオモシロいわけだけど、
世の中には、自分たちの想像もつかないいろんな人がいて、
それぞれの人生を生きている。
そして、誰もがひとりで生きていけず、
誰かとと関わるわけだけど、
その出逢い、また関わり方によって
そこには、自分が思ってもいなかった新たなドラマが生まれ、
それまでとは違う人生を歩み始める。
この映画の魅力はそこにつきる
結局、いつものように端折ってしまったけどね…」

----ということは、
その中のどの個性、
どの出逢いを描くかで映画は変わってくるということだニャ。
「うん。
そういう意味で、ぼくは今回、
蒼井優のあるコメントにとても共鳴したんだ。
プレスに書いてあったその言葉、
ツイートもしたこのコメントを紹介して
この映画の締めにしよう」


自分がどういうキャラクターを演じたか1%も分からず
「完成した作品を観るのがイヤだ」と言う蒼井優。
山下敦弘監督は言う。
「役者が(自分を)見たがらないものを撮りたいから、それでいいんだ」。
再び蒼井優。「ダメな人間を肯定できなければ映画じゃない」。
(『オーバー・フェンス』プレスより)


フォーンの一言「ところで予告編で蒼井優が踊っていた、あれは何なのニャ」身を乗り出す

※鳥の求愛の踊り。「今回はダンスを…」というプロデューサーの要望をうまく生かした脚本家・高田亮のアイデアだ度

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猫ニュー



『グッバイ、サマー』(ミシェル・ゴンドリー作品でブログ13年目突入!)

2016-07-25 20:55:05 | 新作映画

(原題:Microbe et Gasoli)



『グッバイ、サマー』
ミシェル・ゴンドリーは、その気取った構えが鼻につき、あまり好きになれなかった。
だがこの新作『グッバイ、サマー』にはやられた。
クラスの中で浮いている二人の少年が動くログハウスで旅に出る。
中学時代、今は亡き友と船室付きのボートを作り博多湾に出ようとしたことを思い出し、
胸がざわついた。(6月17日のTweetより)

----うわあ。ついに一か月もあいちゃったね。
12年前に始めて以来、ここまで長いお休みってのは初めて。
7月18日が、なんの日かも忘れてたでしょ。
「いやいや。
ちゃんと覚えているよ。
13年前にブログを始めた日。
そしてフォーンの命日。
気にはかけていたんだけどね」

---そうかな。その日、確か東京にいなかったような…。
まあ、仕方ニャいや。
ところで、ミシェル・ゴンドリーって、
もしかして苦手な方じゃなかった?
「そうなんだよね。
こういう『私は他の監督さんとはちょっと違います』というタイプの人はね…。
『エターナル・サンシャイン』の少し気をてらった物語構成、
これはまあ内容が内容だから分からない気もしなかったけど、
『僕のミライへの逆回転』にしても、
なんだか中途半端。突き抜けたところがない。
『ムード・インディゴ うたかたの日々』では、
おそらく興行側もそれを感じたんだろうね。
後半をカットしたショート・ヴァージョンを公開のベースに、
全長版はファン向けに夜の最終回のみの上映。
あの映画も映像的にはユニークなんだけど、
どこか自信なさげな感じで
開き直りが感じられなかったんだよね」

----はいはい。
そういう前置きが長い時は
「今回は違う」と、そう言いたいワケだよね。
「さすが長い付き合い。
よく分かっている。
この物語は“監督の自伝的要素”が数多く取り入れられている。
それもローティーンの頃の思い出。
あの頃って、自分が子供と大人の中間にて、
個人的な悩みを引きずりながら
でも確実に日々は過ぎていくわけで、
大人の世界に足を踏み入れていかざるをえない。
そこに異性への思いなども入ってくるから、
人の一生を描くうえで、もっとも感情豊かな表現ができるとき。
ぼくはそう思うんだね」

----それって最近の言葉で言う
“厨二病”では?
「あっ、
それはそうなのかもしれない。
まあ、でも周りが何を言おうと、
その時期の子どもは、
その世界の中で生きているわけ。
で、たとえば、体格がよかったり、成績が抜群に優れていたり。
さらにはそれで女の子にモテていたりという優等生には、
この映画はあまり関係ない。
ここにあるのは周囲とはどうしてもなじめない、
その違和感の中にある少年が、
自分とはもちろん全く同じではないけど、
やはり浮いている少年、
つまりは個性的な友と出会い、
彼らだけの世界を作り、
その時期を共に乗り切っていく

そういう世界なんだ」

----ふたりは、まったく同じってわけじゃニャいよね?
「もちろん。
それぞれ、自分が周りとは違うことを感じているから、
互いの疎外感、孤独感をも共有できる。
で、そんなふたりが完全に周囲とは切れる、
それが“旅”なんだ」

----そういえば、少年たちがひと夏の“旅”を通して成長するって
『スタンド・バイ・ミー』がそうじゃなかったっけ?
「うん。後でその映画も思い出したけど、
ぼくはどちらかというと
ブラッド・レンフロ主演の『マイ・フレンド・フォーエバー』を思いだしたね。
ふたりっきりというところで…。
ただ、この『グッバイ、サマー』
あの映画のように“病”と“死”が影を落としているわけじゃない。
その分、ウェットに傾きすぎることなく、
旅の途中の“逆さモヒカン”事件など、
ユーモアとちょっとしたエロス、
さらには“怪しい歯科医との遭遇”のような
一見、ホラーに転がるのかと匂わせるサスペンスもありで、
映画としての広がりを感じさせてくれる。
あと、この映画がユニークなのは、
その“旅”をするために
自分たちで自動車を作っちゃうこと。
しかもそれが“家”の形をとっているところにまた意味がある。
彼らにとっては、こここそがほんとうの“家庭”なんだ」

----ニャるほど。
で、思春期特有の女の子の話は?
「それは常にベースにある。
このラストに、それがまた生きてくる。
ここでそれは明かせないけど、
これまた記憶に残るセリフで締めくくられるよ」


「こういう、えいが喋りたくなる映画をもっと公開してほしいのニャ」身を乗り出す

※天国の友に捧げる映画。オドレイ・トトゥも出ている度
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『死霊館 エンフィールド事件』

2016-06-29 14:27:35 | 新作映画
(原題:The Conjuring 2)


『死霊館2』。
ホラーに限らずハリウッドのジャンルムービーのベースには家族の絆と夫婦愛がある。
舞台をロンドンに移した本編はその二つが悪魔と対決。
『エクソシスト』ばりのショック映像の連打なれども、
その「想い」の強さが観客にも伝わり恐怖は和らぐ。
パワフルすぎる演出と共にこれは誤算か?
(6月17日のTweetより)

----えっ? 『死霊館』 に続編ができたの?
最近はあまり、映画のお話してくれなくなったのに、
これを選ぶなんて、ほんと好きだニャあ。
「そうだね。
他にもホラーはいろんな作品が公開が待機しているけど、
なぜかこれは見逃せないなって…。
でも、ほんと観てよかった、
そう思うよ」

---怖い映画は苦手なはずのなのに
ちょっと不思議。
「うん。
決め手となったのは監督がジェイムズ・ワンということかな。
前作『ワイルド・スピード SKY MISSION』
これがまたとてつもなく面白く、
ああ、この監督はホラーだけじゃないんだなと…。
タイトルがタイトルだけにB級映画と思われがちだけど、
この『死霊館 エンフィールド事件』
なかなかの風格を兼ね備えた映画」

----確か、これって<実話>が基になっているんだよね?
「そう。
1977年に、ロンドン北部で起きた心霊現象がね。
そしてそれは報道機関が撮影した写真と映像によって
世界中に広まった…と、こういうことらしい。
この映画、何が珍しいかって、
普通、こういった超常現象は
人里離れた民家で起こることが多いのに、
これは何の変哲もない住宅街の中の一軒で発生。
ということで町の人々は、みなそれを目撃」

----うわあ。それは心強い。
いや待てよ。
周りから嫌がられるのでは…。
「さすがフォーン。
この映画はそのどちらもきちんと描き分けている。
救われるのは向かいの家の住人が
彼ら“狙われた家族”を自分の家に迎え入れ、
そして宿泊までさせていること」

----狙われた家族って?
「シングルマザー、ホギー(フランシス・オコナー)と
4人の子供たち。
その中の末娘、次女のジャネット(マディソン・ウルフ)が、
いわゆる悪魔憑き状態になるんだ。
しかも椅子やタンスが部屋を動き回り家族を攻撃。
そして、その話は前作『死霊館』 の主人公でもある
エド(パトリック・ウィルソン)とロレイン(ベラ・ファーミガ)のウォーレン夫妻の耳に届く。
しかし、ロレインはこの事件の<解決>に現地に向かうことは及び腰」

----どうして?
「それはね。
この映画の冒頭にも出てくるアミティビル事件の交霊会、
そこで有名になった夫妻に対する世間の冷たい目がある。
彼らは、いわゆる詐欺師呼ばわりされていたんだね。
そんなこんなでふたりは心身ともに疲弊している。
そんな中、ロレインは夫エドが死ぬという悪夢を見る。
これを予知夢と思ったロレインは
もう第一線を退こう、そう思っていたわけだ。
しかし<解決>ではなく<調査>だけ…というエドに押し切られてふたりはロンドンへ。
そしてそこで彼らが遭遇したのは…?
と、これは実はプロローグなんだけどね。
話を端折ってしまうけど、
この映画のクライマックスは、ロレインが見た悪夢と同じ光景が起こる。
そのまま館に足を踏み込むと夫の命が危ない。
妻としては彼を死なせるわけにはいかない。
でも、エドは目の前で苦しんでいる少女を見捨てることができない。
ただでさえ恐怖が渦巻く館に
身の危険を顧みずに踏み込んでいくエド。
それを必死で止めようとする妻。
これはアメリカン・ヒーローの物語であり
夫婦愛の物語。
ハリウッド映画らしい大感動作。
列車のシーンもあり
ぼくは『エクソシスト2』を思いだしたね」


「時代背景もよく考えられているらしいのニャ」身を乗り出す

※プレスリーをギターで奏でるパトリック・ウィルソンに涙だ度

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『セトウツミ』

2016-06-15 14:33:59 | 新作映画


喋っているだけの映画なのに、なぜこんなにも胸に刺さるのだろう。
『セトウツミ』。池松壮亮、菅田将暉。他に代替のきかない見事なキャスティングが、
帰りこぬあの頃を暖色の中に甦らせる。
しかも猫のエピソード…。
これはズルい。つい泣かされてしまったじゃないか。
(6月14日のTweetより)

----ニャに。
珍しく観てすぐ(と言っても翌日だけど)のお喋り。
よっぽど気に入ったのかニャ。
「最近の反省として、
ブログを長く放置し、結局そのままに。
たまに喋っても。
観た直後の感動を再現できていなかったからね」

---それはそうだけど、
確かこの映画の予告編を観たときは、
『こんな映画、オモシロくなるはずがない』とまで
言っていたような…。
「いやあ、浅はかだったね。
これはほんとうに
胸に刺さる映画。
なにがそんなにいいんだろうと思ったら、
Twitterでも呟いたように、
池松壮亮、菅田将暉
この若手実力派ふたりが演じていることにある。
なにせ、ほぼ会話だけで話が進むのだから、
これは相当な演技力が要求される。
言葉のアクセント、会話の間はもちろんのこと、
微妙な、それこそ
細かい目線、口角の上げ下げによって作られる表情が
重要なファクターとなってくる。
それを観客に見せきるには
客席から遠いお芝居では無理。
アップという表現手段を持つ映画でなくてはね。
そういう意味でも、全8話からなるオムニバスの第一話に
“神妙な面持ち”を持ってきたのは正解だったと思う。
ここでまず池松壮亮の演技の幅を堪能できる」

----ニャるほど。
監督はだれだっけ?
大森立嗣
『まほろ駅前多田便利軒』がそうだったように、
彼は異なるふたつの個性をぶつけ合わせるのがほんとうにうまい」

----でもあれは、
ある程度の年齢に達した男たちの話だったよね。
これは高校生の話「うん。
逆に言えば『まほろ駅前・ビギニング』ともいえるかも。
この映画は、舞台となるのは放課後。
その中には、花火など“夜”のシーンもあるけど、
ほとんどは“夕景”。
オレンジががった暖色で画を染め上げるんだ
だからそこにおのずと
“いつかこんなことあったな”という郷愁がにじんでくる。
それが、いまは大人になった大森立嗣監督の視座なんだろうな。
音楽も、普通、この手の映画には用いられないようなタンゴ。
また、彼らの会話を常に自動車が通っているのもリアル。
で、それがほとんど軽自動車であるところが
この地域の特性を際立たせている。
なんて、こんな細かいことを喋られるのも
観た直後だから」

----ニャるほど。
ところで“猫さん”が出てくるというのは?
「ああっ、
それは言えない…」


「猫さんが出てくるだけで点数が高くなっているのニャ」身を乗り出す

※この時間にいつまでも浸っていたい度

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『日本で一番悪い奴ら』(一部『ヒメアノ~ル』)

2016-06-10 18:59:02 | 新作映画

『日本で一番悪い奴ら』。これまた最高!
ある意味『64-ロクヨン-』とは対照的、東映ならではの作品。
綾野剛という稀代の俳優に、オールスターではなく、
スクリーンだからこそ輝きを放つ異形の役者をぶつける。
製作陣が目指したという『ウルフ・オブ・ストリート』も納得の、これは悪漢コメディ。

(5月13日のTweetより)

----続くニャ。
最近の日本映画ってバイオレンスばっかり。
「確かに。
でもどの作品も、
それぞれの監督の個性を出しながら
映画にぶつかっていくから
“あれもいいけど、これはこれでオモシロい”、
そんな感じになるんだ」

---そういえば『ヒメアノ~ル』について
話してなかったよね。
確か、あの映画も「『ディストラクション・ベイビーズ』とは対極だ」とか言ってなかった?
「うん。
参考までに、『ヒメアノ~ル』を見た直後のtweetを。

『ヒメアノール』。
日本映画界はなぜ今までこんな逸材を放っておいたんだ?
森田剛。バイオレンスものに出た時のビートたけしと肩を並べる異常犯罪者ぶり。
一方、こちらは安定の(?)危うさ、佐津川愛美。声かけをためらわせる愛らしさが、
一皮剥けば経験豊富、生っぽい普通の子に。これはたまらない。

(4月26日のTweetより)

一言で言えば、その“動機”も含めて主人公の“内面”に切り込むことなく、
彼が引き起こす“理由なき暴力”をスクリーンに映し出し、
それによって観客を挑発しているのが『ディストラクション・ベイビーズ』。

対して、『ヒメアノ~ル』は、
主人公の心の闇と正対する。
その闇が生まれた背景、
それを個人の資質のみでなく背景の社会が抱える問題にまで広げてゆく。

そういう意味では、こちらはオーソドックスなつくり。
もちろん、巷間でよく言われているように、
前半の青春ラブコメ的ルックが、
後半には心も凍りつくようなホラーへと旋回するという
その構成は、真ん中にタイトルを出すギミックも含めて
ユニークではあるけどね。
でもたとえば、あの韓国映画の名作『息もできない』を引き合いに出すんだったら、
心に重くのしかかるエンディングも含めて
『ディストラクション・ベイビーズ』よりも
それはむしろ『ヒメアノ~ル』の方だと思う」

----あらあら、
いつの間にか『ヒメアノ~ル』の話になっている。
今日の本題は『日本で一番悪い奴ら』でしょ?
「ごめんごめん。
まあ、これはTwitterで呟いたことに凝縮されるんだけどね。
『64-ロクヨン-』は東宝でなくてはできない
潤沢な製作費によるオールスタームービー。
しかし東映にそれを望むのは難しい(ごめんなさい)。
でも、それならそれで他のつくり方があるのではないか?
そこから生まれたのがこの映画(なんて勝手に決めつけています)。
カメレオン俳優・綾野剛を軸に置き、
その周囲を、ユニークな個性を発揮する俳優たちで固める。
そこから生まれるケミカル。
それこそがこの映画最大の魅力。
彼ら脇役の風貌は東宝の格調高い世界とは相いれない。
ヤクザ映画やVシネの伝統を持つ東映だからこそ作り出すことのできた世界。
言葉も汚くやることなすこと欲望にまみれ下品。
しかし、それはあるエネルギーの塊となって映画を熱くさせる
もちろんそこには
上から下まで「富める者こそが善」という
金満日本への痛烈な風刺と批判もある。
でも、ぼくはそれ以前に、
彼らが金の匂いを求めて
蠢き回るその姿がとてつもなく面白かったね」

----ニャるほど。
テーマ主義ではない
えいの好みそうな観方だニャ。

綾野剛のベストの声も高いのニャ」身を乗り出す

白石和彌監督、ぼくは前作『凶悪』よりこっちを買う度

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『神様メール』

2016-05-18 13:26:32 | 新作映画

(原題:Le tout nouveau testament)


『神様メール』。
神様は初めにベルギーの街を作り、
いろんな動物を配置したもののうまくいかず最後に人間を作った…。
プロットからビジュアルまで、
これは隅々にまでドルマル監督の独創性が行き渡った映画。
神様はブリュッセルの街に住んでパソコンで人間を虐めている…
なんて、まず日本では作れない。

『神様メール』。
(この映画は)ただ無闇に驚かせようとしているわけではない。
もし自分の余命を知ってしまったら、人々はどう変わるのか?
例えば戦争なんてだれもやる気はなくなってしまう。
夫婦の片方は年内に死に、もう一方は何十年も生きると分かったら?
これらの考察が人生のさまざまな局面で行われるのだ。


(5月11日のTweetより)

----久しぶりのおしゃべりが
まさかベルギー映画でくるとは、
これにはフォーンもびっくり。
しかも、もうすぐ始まいるのでは?
「そうだね。
5月27日公開。
あいかわらず、いろいろ新作は観ているんだけど、
ちょっとこの映画には触れてみたいところがあって」

----2本のtweetを見れば
中身の方はもう想像ついちゃうけど…。
結局、意表を突いた設定と
豊かなイマジネーションの中に、
きっちりと問題提起がなされているということでしょ?
「あらら。
全部言われちゃった。
ただ、それでも言いたいのは
そのファンタジー造形の独創性
最近、誰かの呟きで
なるほどと思ったのが、
SF&ファンタジーなどで描かれる世界が
どれもワンパターン
だということ。
そう言われてみると、
確かにどこかで観たようなものばかり。
『アバター』の惑星と似たり寄ったりのものになっているんだ。
一方、そこに登場するクリーチャーは
トールキンの世界の変形版という感じ。
どうせありえないファンタジーなら、
もっと突拍子のないものであってもいいんじゃないかなと…」

----ニャるほどね。
でも、それを細かく明かしたら
観るほうの楽しみがなくなっちゃうよね?
「そこがこういう映画の紹介の難しいところだね。
でも、まあ設定くらいはいいかな。
この<世界>を生み出した神様は、
いまもブリュッセルのアパートに
妻と娘と暮らし、
パソコンで人々の暮らしをいじっている。
それも、
『お風呂に入った瞬間、電話のベルが鳴る』といったようなつまんないもの。
いわゆる、品のよくない意地悪で
人々が困るのを見て喜んでいる、
と、こういうわけだ。
そんなある日、神様の10歳になる娘がパソコンをいじり、
人々に自分の余命を知らせ、
自らも人間界へ行ってしまう」

----へぇ~っ。
でもそれって天から下界へというわけじゃないよね。
どうやって行くのかニャあ。
「これがまたとんでもない方法。
なんと洗濯機から入って
出口はコインランドリー。
そこで彼女は自分の“使徒”を見つけ、
さまざまな奇跡を引き起こしてゆく。
あわてた神様は彼女の後を追うが、
その身なりがみすぼらしく、
だれも相手にしてくれない」

----ブッ。それは…(笑)。
「正直言って、
この監督ジャコ・ヴァン・ドルマルって、
これまで
さして好きな方ではなかったんだけど、
今回のこの野心的な試みにはもう脱帽したね。
使徒、一人一人の物語も
ある意味でタブーを破ったエピソードが連なる。
そして最後に起こる奇跡。
その発想とビジュアルには、
こんなのあり?とまで思ったもの」


「神様をこんな風に扱っても罰が当たる気がしないところがいいのニャ」身を乗り出す

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画像はオフィシャル(壁紙ダウンロードサイト)より。

『ディストラクション・ベイビーズ』(一部『シマウマ』)

2016-04-12 23:16:48 | 新作映画
通常映画は、カメラが主人公を捕えることによって骨格が固まり、土台が安定する。
ところがここでは柳楽優弥がフレームインしてくることで、
世界がざわめき落ち着かなくなってくる。
人にあらざる者がもたらす不穏な空気。そこにバイオレンスが呼応する。
それが『ディストラクション・ベイビーズ』だ。

映画『ディストラクション・ベイビーズ』(3月8日のTweetより)

----そう、これこれ。
『ディストラクション・ベイビーズ』
このツイートを聞かされたときから気になっていたのニャ。
もう少しフォーンにも分かるように説明してくれニャい?
「いやあ、
ここで言っている以上のことはないんだけどね。
この映画、最初から最後まで
主演の柳楽優弥はほとんどセリフを発することなく、
とにかく人を殴りまくる。
そこに理由があるかといえば、
『楽しければええけん』
それ以上の説明はつけようがない」

----へぇ~っ。
そんな映画のどこがいいの?
よく『ファイト・クラブ』と比べられたり、
『日本映画もようやく世界のレベルに追いついた』みたいなことまで
言われているみたいだけど?
「一言で言えば、
物語は二の次。
映画とは何か?
これは永遠の命題だけど、
なぜか文学でも語るかのように
言葉でそのテーマを解説する評論が主流。
ときにはその時代背景や政情、文化にまで言及したりしてね。
ところがこの映画はそうではない。
“主人公はなぜ暴力に走るのか”ではなく、
暴力そのもの”を描いていく」

----でも、暴力を描いた映画ってこれまでにもいっぱいあるよね。
思わず目をそむけたくなるようなものも…。
「うん。
今日観た『シマウマ』もそう。
バイオレンスの激しさ、そして残酷描写から言えば
圧倒的に『シマウマ』。
流血も半端じゃないからね。
ただ、そこには
“暴力を起こす理由”がキッチリと描かれている。
そういう意味では
こちらは従来のバイオレンス映画の枠内に収まる。
ついでだから、この『シマウマ』のtweetも紹介しよう」


映画『シマウマ』。
外の光に触れたときホッとした。
まるで韓国のバイオレンスたっぷりクライム・サスペンスを観た後のようなグッタリ感。
『花と蛇 ZERO』もそうだが、
橋本一監督は喜劇よりも、こういうアンダーグラウンド世界の方が本領を発揮する。

映画『シマウマ』(4月12日のTweetより)

----ふむふむ。
なあ~んとなく分かってきたような。
「いやいや。
こればかりは観てみないと分からないと思うよ。
それにしても瞠目すべきは柳楽優弥
映画評論家の樋口尚文さんの 3月7日のtweetに
そのすべてがある。

真利子哲也監督の『ディストラクション・ベイビーズ』は、
ふり切れてたなあ。いやーふり切れてた。


もう、これに尽きるね」


「ふむふむ。言葉では説明しづらいのだニャ」身を乗り出す

※まあ、観てもらうしかない度

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