-------2004年もあと少し。
こんなとこでパソコンに向かってていいの?
「だいじょうぶ。お雑煮もおせちも準備万端。
あとはゆっくり1年を映画で振り返るだけさ」
-------おっ、いよいよベスト10が出るなりか?
「10本を厳密に選ぶのはなかなか難しいから、
まあ、気に入った10本プラスαという感じで、気楽に聞いてよ。
とはいうものの、どこから始めようかな?
月別か、国別か、それともジャンル別か.....う~ん、悩むなあ」
-------1月から順に観た映画の中で気に入ったのをあげていったら?
ここも、ジャンルとか関係なく喋ってるんだし。
「なるほど確かに。そうしよう。
でも1月公開の映画は前の年に観ているし、
それでは2003年12月から始めることにするかな」
------パチパチパチ。
「って、拍手してるのフォーンだけじゃん。
●さて12月。ここで2004年一番の号泣映画が早くも現れる。
12月26日に観たイタリア映画『ぼくは怖くない』。
配給会社の宣伝マンいわく「私が関わった映画の中で一番よかった」。
そんなまた大袈裟な....と思ったら見事にやられた。
ある秘密を知った少年の決断と実行が、
思いもよらない事態を巻き起こす。
あのラスト10分間のたたみかける展開は映画的興奮の極致だね。
音楽はパッヘルベルのカノン。
映画『夫婦』以来、よく使われる曲だけど、
この映画の使用法がベストだろうね。
●1月。楽天での日記のタイトルにも使っている
『きょうのできごと a day on the planet』。
この映画は京都に引っ越してきた一人の若者と、
その手伝いにやってきた仲間たち、彼らの一夜の物語。
これは京都の下宿の特徴なんだろうけど、
マンションとは違う古い民家が効果的に使われ、
大森一樹の『ヒポクラテスたち』を思い出したな。
いま注目株の妻夫木聡より柏原収史の方が印象に残ったね。
こういう奴、いるいるという感じ。
あっ、そうだ『69 sixty-nine』も柏原収史がやったら
まだよかったかも。
ただ、ふたりも含め若手男優のアンサンブルが見事なのに対して
田中麗奈をはじめ女の子たちの演技がわざとらしいのは頂けなかったな。
●1月はもう1本『殺人の追憶』。
この映画の出現は衝撃!
最初、犯人捜しのミステリーかと思って観てると、
コメディ風になったり、ホラー風になったり、
果ては社会ドラマにもなっていく。
もっとも息を呑んだのが、
刑事3人が犯人とおぼしき男を追いかけて無人の町を走り回るシーン。
そのチェイスの一部始終を、カメラはあらゆるアングルから捉える。
ところが、あるカットが次のカットに移った瞬間、
いきなり工事現場が現れる。
しかもそこには徹夜で働く男たちがうようよ。
何か狐につままれたような感じ。
そう、ここで映画は一瞬にして今までとまったく別の<顔>を見せるんだ。
●2月は『ロスト・イン・トランスレーション』。
これはビル・マーレイ抜きではありえなかった映画だね。
彼はまるでジャック・レモンのよう。
それにしても、日本、そして東京の不可思議さを
あそこまで客観的かつ緻密に見せてくれた外国映画はあまり記憶にない。
一見、風刺たっぷりの映画に見えるけど、ぼくはそうじゃないと思う。
この映画が嫌みにならなかったのは、監督が東京という街を愛しているからなんだ。
●3月は『子猫をお願い』。
これも韓国映画。
高校を卒業して1年。
かつての仲間たちは....?という
いわば韓国版『セント・エルモス・ファイヤー』。
携帯電話のメールの文字をスクリーンに映し出したりするなど
その手法も斬新だけど、
なんと言ってもこの映画はぺ・ドゥナの魅力に負うところが大きかった。
『殺人の追憶』の監督のデビュー作
『吠える犬はかまない』ですでに頭角を現してはいたけどね。
●3月はもう1本『下妻物語』。
映像で遊びに遊んでる映画だけど、
だからって悪ふざけになってないんだ。
最近のCMやビデオクリップ上がりの若手監督は
映像で遊ぶものの、肝心の映画にはなってないことが多い。
ただただ長いビデオクリップを見せられている感じで、
いい加減途中で飽きがきちゃう。
ところがこの映画ではロリータとヤンキー、
主人公二人のキャラがきちんと描き分けられ、
さらに深田恭子と土屋アンナもそれに応えてる。
-------ふう、ここでまだ6本か。
そろそろおなかいっぱいになってきたにゃあ。
「ちょっとブレイクしようか........?
でもそうすると続きは年明けになるから一気に行こう。
●4月は試写じゃないけど『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』。
第1作目の時から思ってたことだけど、
映画の技術、特にSFXはこの映画を作るために
発展してきたんじゃないかと...。
しかもぼくがこの映画を好きなのはサムの存在。
そう、ラストでも明らかなようにこのシリーズはサムの物語なんだ。
監督はサムの生きざまに託す形で
真のヒーローとは何かを訴えているような気がする。
●5月は『ぼくセザール、10歳半1メートル39cm』。
もともと子供の映画は好きなんだけど、
これってまるで『トリュフォーの思春期』みたい。
子供同士の友情とほのかな恋の芽生え、そして冒険。
それがレノ・イザークの音楽に乗ってリリカルに紡がれる。
子供の視線1メートル39cmからのカメラで描いているのも嬉しいね。
●6月は『らくだの涙』。
これはモンゴルの遊牧民とらくだを描いたドキュメンタリー。
難産で生まれた赤ちゃんらくだに対して邪険な母らくだ。
困った大人たちは、母らくだの頑なな心を音楽療法で溶かそうと
子供たちに演奏家を呼びに行かせる。
シンプルなお話なんだけど、
その演奏が始まると、なんと母らくだの目には大きな涙が...。
しかもこんな奇跡とでも呼びたくなる瞬間に立ち会いながら
遊牧民の家族は『よかったよかった』で、別に驚きもしない。
いやあ世界の広さを感じたね。
ぼくらには驚きでも彼らには当然なんだから。
しかしこれってほんとうにドキュメンタリーなんだろうか?
あまりにもできすぎていて信じられないのは、
こちらが文明社会の常識に囚われているからなのかも。
●少し飛んで8月が『オールド・ボーイ』。
これは確かそのとき喋ってるからいいよね。
ふう~っ、これで10本だ。
------思った以上に趣味的だにゃ。惜しくも漏れたのは?
「『パピヨンの贈りもの』『ワイルドフラワーズ』『花とアリス』
『天国の本屋~恋火』『スパイダーマン2』『誰も知らない』
『いま、会いにゆきます』『ベルヴィル・ランデブー』
『マッハ!』『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』
あたりが次点の10本かな。
ここは思い出したら、また追加するかも。
さっそく『ラブ・アクチュアリー』『パッション』を追加」
------ところで、えいの「いい映画」の規準って何なの?
「単純だよ。見ていて退屈しない、あくびが出ない。
なによりも眠くならないこと(笑)」
※極私的2004度
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こんなとこでパソコンに向かってていいの?
「だいじょうぶ。お雑煮もおせちも準備万端。
あとはゆっくり1年を映画で振り返るだけさ」
-------おっ、いよいよベスト10が出るなりか?
「10本を厳密に選ぶのはなかなか難しいから、
まあ、気に入った10本プラスαという感じで、気楽に聞いてよ。
とはいうものの、どこから始めようかな?
月別か、国別か、それともジャンル別か.....う~ん、悩むなあ」
-------1月から順に観た映画の中で気に入ったのをあげていったら?
ここも、ジャンルとか関係なく喋ってるんだし。
「なるほど確かに。そうしよう。
でも1月公開の映画は前の年に観ているし、
それでは2003年12月から始めることにするかな」
------パチパチパチ。
「って、拍手してるのフォーンだけじゃん。
●さて12月。ここで2004年一番の号泣映画が早くも現れる。
12月26日に観たイタリア映画『ぼくは怖くない』。
配給会社の宣伝マンいわく「私が関わった映画の中で一番よかった」。
そんなまた大袈裟な....と思ったら見事にやられた。
ある秘密を知った少年の決断と実行が、
思いもよらない事態を巻き起こす。
あのラスト10分間のたたみかける展開は映画的興奮の極致だね。
音楽はパッヘルベルのカノン。
映画『夫婦』以来、よく使われる曲だけど、
この映画の使用法がベストだろうね。
●1月。楽天での日記のタイトルにも使っている
『きょうのできごと a day on the planet』。
この映画は京都に引っ越してきた一人の若者と、
その手伝いにやってきた仲間たち、彼らの一夜の物語。
これは京都の下宿の特徴なんだろうけど、
マンションとは違う古い民家が効果的に使われ、
大森一樹の『ヒポクラテスたち』を思い出したな。
いま注目株の妻夫木聡より柏原収史の方が印象に残ったね。
こういう奴、いるいるという感じ。
あっ、そうだ『69 sixty-nine』も柏原収史がやったら
まだよかったかも。
ただ、ふたりも含め若手男優のアンサンブルが見事なのに対して
田中麗奈をはじめ女の子たちの演技がわざとらしいのは頂けなかったな。
●1月はもう1本『殺人の追憶』。
この映画の出現は衝撃!
最初、犯人捜しのミステリーかと思って観てると、
コメディ風になったり、ホラー風になったり、
果ては社会ドラマにもなっていく。
もっとも息を呑んだのが、
刑事3人が犯人とおぼしき男を追いかけて無人の町を走り回るシーン。
そのチェイスの一部始終を、カメラはあらゆるアングルから捉える。
ところが、あるカットが次のカットに移った瞬間、
いきなり工事現場が現れる。
しかもそこには徹夜で働く男たちがうようよ。
何か狐につままれたような感じ。
そう、ここで映画は一瞬にして今までとまったく別の<顔>を見せるんだ。
●2月は『ロスト・イン・トランスレーション』。
これはビル・マーレイ抜きではありえなかった映画だね。
彼はまるでジャック・レモンのよう。
それにしても、日本、そして東京の不可思議さを
あそこまで客観的かつ緻密に見せてくれた外国映画はあまり記憶にない。
一見、風刺たっぷりの映画に見えるけど、ぼくはそうじゃないと思う。
この映画が嫌みにならなかったのは、監督が東京という街を愛しているからなんだ。
●3月は『子猫をお願い』。
これも韓国映画。
高校を卒業して1年。
かつての仲間たちは....?という
いわば韓国版『セント・エルモス・ファイヤー』。
携帯電話のメールの文字をスクリーンに映し出したりするなど
その手法も斬新だけど、
なんと言ってもこの映画はぺ・ドゥナの魅力に負うところが大きかった。
『殺人の追憶』の監督のデビュー作
『吠える犬はかまない』ですでに頭角を現してはいたけどね。
●3月はもう1本『下妻物語』。
映像で遊びに遊んでる映画だけど、
だからって悪ふざけになってないんだ。
最近のCMやビデオクリップ上がりの若手監督は
映像で遊ぶものの、肝心の映画にはなってないことが多い。
ただただ長いビデオクリップを見せられている感じで、
いい加減途中で飽きがきちゃう。
ところがこの映画ではロリータとヤンキー、
主人公二人のキャラがきちんと描き分けられ、
さらに深田恭子と土屋アンナもそれに応えてる。
-------ふう、ここでまだ6本か。
そろそろおなかいっぱいになってきたにゃあ。
「ちょっとブレイクしようか........?
でもそうすると続きは年明けになるから一気に行こう。
●4月は試写じゃないけど『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』。
第1作目の時から思ってたことだけど、
映画の技術、特にSFXはこの映画を作るために
発展してきたんじゃないかと...。
しかもぼくがこの映画を好きなのはサムの存在。
そう、ラストでも明らかなようにこのシリーズはサムの物語なんだ。
監督はサムの生きざまに託す形で
真のヒーローとは何かを訴えているような気がする。
●5月は『ぼくセザール、10歳半1メートル39cm』。
もともと子供の映画は好きなんだけど、
これってまるで『トリュフォーの思春期』みたい。
子供同士の友情とほのかな恋の芽生え、そして冒険。
それがレノ・イザークの音楽に乗ってリリカルに紡がれる。
子供の視線1メートル39cmからのカメラで描いているのも嬉しいね。
●6月は『らくだの涙』。
これはモンゴルの遊牧民とらくだを描いたドキュメンタリー。
難産で生まれた赤ちゃんらくだに対して邪険な母らくだ。
困った大人たちは、母らくだの頑なな心を音楽療法で溶かそうと
子供たちに演奏家を呼びに行かせる。
シンプルなお話なんだけど、
その演奏が始まると、なんと母らくだの目には大きな涙が...。
しかもこんな奇跡とでも呼びたくなる瞬間に立ち会いながら
遊牧民の家族は『よかったよかった』で、別に驚きもしない。
いやあ世界の広さを感じたね。
ぼくらには驚きでも彼らには当然なんだから。
しかしこれってほんとうにドキュメンタリーなんだろうか?
あまりにもできすぎていて信じられないのは、
こちらが文明社会の常識に囚われているからなのかも。
●少し飛んで8月が『オールド・ボーイ』。
これは確かそのとき喋ってるからいいよね。
ふう~っ、これで10本だ。
------思った以上に趣味的だにゃ。惜しくも漏れたのは?
「『パピヨンの贈りもの』『ワイルドフラワーズ』『花とアリス』
『天国の本屋~恋火』『スパイダーマン2』『誰も知らない』
『いま、会いにゆきます』『ベルヴィル・ランデブー』
『マッハ!』『スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー』
あたりが次点の10本かな。
ここは思い出したら、また追加するかも。
さっそく『ラブ・アクチュアリー』『パッション』を追加」
------ところで、えいの「いい映画」の規準って何なの?
「単純だよ。見ていて退屈しない、あくびが出ない。
なによりも眠くならないこと(笑)」
※極私的2004度
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