ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『トラッシュ! この街が輝く日まで』

2014-12-26 23:10:07 | 新作映画
(英題:Trash)


----またまた間があいたのニャ。
もうすぐ2014年も終るというのに、
ちょっとヤバくニャい?
「う~ん。
仕事も忙しかったし、
PCの調子が悪いのもあったんだけどね」

----まあ、言い訳はその程度にして、
今日の映画は?
『トラッシュ! この街が輝く日まで』
これ、観るまでどういう映画かまったく想像がつかなくて…。
ところが脚本がリチャード・カーティス
監督がスティーヴン・ダルドリーっていうじゃない。
これはなかなかオモシロい組み合わせだと…」

----リチャード・カーティスって、
確かこの前、『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』を発表した人だよね。
「そう。
実は、あの映画の中にこの『トラッシュ!』の原作本を読むシーンが映し出されているんだ」

----へぇ~っ。
じゃあ、けっこう有名な原作ニャんだね。
「らしいね。
27カ国語に翻訳されて
2012年のカーネギー・メダル賞にもノミネートされたらしい」

----どんな物語ニャの?
「舞台はブラジル、リオデジャネイロ。
あっ、これ、原作では架空の土地になっているらしい。
で、物語の軸となるのは
そこでゴミ(Trash)を拾って生活している3人の少年たち。
ある日、彼らはゴミの山の中から
ひとつの財布を拾う。
ところがそれは
決して外に出てはならない重大な<秘密>が隠されている財布だった。
警察は財布の大捜索を開始し、
彼ら少年たちの存在を突き止め、
ついには彼らの命を消そうとまでする。
だが、少年たちは自らの信じる“正しい道”を選ぶため、
財布に隠された謎を解き明かす決意をする」

----へぇ~っ。
ビジュアルから予想していたのとかなり違う。
フォーンは
もっと、ヒューマンなお話かと思っていたのニャ。
「ぼくもそう。
その意味でいけば、
このビジュアルはかなり損をしている。
実際は、スリル、サスペンス、アクション、
そしてミステリーの中に、
いまの日本にも通じる貧富の格差、
さらには支配層の腐敗などを、
少年たちの勇気と希望を軸にあぶり出した
もう、贅沢すぎるほどに贅沢な映画なんだ」

----なるほど。
そう言えば、監督のスティーヴン・ダルドリーって、
少年を描きながら、その背景となる世界を語っていくよね。
『愛を読むひと』とか『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』とか。
「うん。
そこに今回は製作総指揮として
リオの貧民街を知り尽くしている
『シティ・オブ・ゴッド』フェルナンド・メイレレスが参加。
迷路のようなリオの貧民街を縦横無尽に駆けめぐる
スリリングなチェイス・シーンを生みだすことに貢献している。
ぼくがこの映画を好きなのは、
『正しいこと』だから行動を起こす”という、
そのシンプルなテーマを
血沸き肉踊るエンターテイメントに仕上げているところにある」

----それって少し間違うと気恥ずかしくニャい?
「だからこそ監督たちは
このテーマを
明日への希望を捨てない少年たちを代弁者にすることで
真正面から描こうとする。
少年たちから夢と希望を取り上げる、
それはいかな現実主義者であっても
さすがに許せないことだからね。
この事件の黒幕から芋づる式にその名があぶり出される組織もまた驚き。
よくぞここまで針を振り切った。
これは日本ではとても作れない映画だね」




フォーンの一言「思っていたのと、まったく違うのニャ」身を乗り出す

※バルクールのような少年たちの動きも見モノだ度

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猫ニュー

画像はオフィシャル(壁紙ダウンロードサイト)より。

『ラブストーリーズ コナーの涙/エリナーの愛情』

2014-12-16 15:08:56 | 新作映画
(原題:The Disappearance of Eleanor Rigby: Him & Her)


----『ラブストーリーズ コナーの涙/エリナーの愛情』?
昨日からその話しているけど、
その長いタイトル、
いまいち、よく分からないのニャ。
「そうだね。
これはいままでありそうでなかった映画。
あるひと組の夫婦に起こったできごと。
その同じ時間軸を、
男の視点、女の視点で描いているんだ。
もっとも、それだけだったら
カットバックという手法で描けばいいだけで、
これまでにもなかったワケじゃない。
ところが、この作品では
それを2本の映画に分けている…
ここがオモシロいんだ」

----ふうん。
その“できごと”って?
「ニューヨーク、マンハッタン。
コナー(ジェームズ・マカヴォイ)とエリナー(ジェシカ・チャスティン)。
ふたりの間には、子どもを失って以来、重苦しい空気が立ち込めている。
そんなある日、エリナーの姿が消えてしまう。
と、これは『コナー』側からの物語。
実は、エリナーは橋から身を投げていた」

----ええっ!?
いきなりだニャあ。
「だよね。
でも、これが『エリナー』の物語では、
いきなり冒頭に置かれているんだから、
もっと驚くしかない。
さて、この身投げで腕を骨折したエリナーは、
以後、コナーからは距離を置こうと実家に戻る。
というわけで、
『エリナーの愛情』は、
傷を負った彼女の不安定な心、行動をじっくりと描いている」

----そうか分った。
『コナーの涙』では、
彼女の真意が分からないコナーの
あたふたぶりが描かれるんだニャ。
「そういうこと。
つまり、この映画は
どちらを先に観るかで、
その印象はまったく異なってくる。
いずれにしろ、物語をリードしていくのはエリナー。
それはタイトルにすでに明らか。
なにせ"The Disappearance of Eleanor Rigby: Him & Her"だからね。
だから、『コナー』篇よりも『エリナー』篇の方が
その心理に深く分け入ったものとなっている」

----でも、えいは
『コナーの涙』の方が好きなんだよね。
「それは、ぼくが男だからね。
“置いてきぼりにされた感” が痛いほどよく分かる。
あ、あと言っておかなくてはならないのは、
同じ場面でも、
それぞれのセリフや服が、両作品で異なっていること。
これもなるほどと。
だって記憶に確実はないもの。
この映画、同じく
妻の失踪を描いた『ゴーン・ガール』のような派手なビジュアル、
そしてスリリングな語り口はないけども、
かなり野心的。
二本を同時公開らしいけど、
それは正解だと思うよ」


※音楽もおススメ!


THE DISAPPEARANCE OF ELEANOR RIGBY (2014) Official HD Trailer



https://www.youtube.com/watch?v=0dtk9yJDckw



フォーンの一言「でもどっちを先に観たかで印象が変わるというのも困りものだニャ」身を乗り出す

※う~ん。同じ土俵では話せないかもだ度

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猫ニュー

『幸せのありか』

2014-12-09 14:47:42 | 新作映画
(英題:LIFE FEELS GOOD)


----う~ん。渋いニャあ。
いい加減にメジャーな作品のお話もしなきゃ、
だれも聞いてくれなくなるよ。
「うん。確かに。
ただ以前のように、毎日、映画のおしゃべりしていた頃と違って
いまは忙しいし、
厳選…というのとも少し違うな。
喋るポイントがくっきりしている映画に絞られてしまうんだ」

----だからって、この映画とは…!?
確か、ポーランドの映画だよね。
しかも脳性まひの人のお話でしょ。
あまり、えいの好みの映画ではないような…。
『最強のふたり』も気に入ってなかったし。
「あ、それは少し誤解が…。
障害者が主人公の映画、
たとえば韓国の『オアシス』とか『マラソン』はとても好きな映画。
それはおそらく作家の姿勢の違いだと思うんだ。
最近、同じ監督の『サンバ』を観る機会があって、
あっ、なるほど
だから、『最強のふたり』が自分には受け入れられなかったんだなと…」

----ふむ。
ということは、
今日のポイントはその“作家の姿勢”だニャ。
「そうだね。
まず言いたいのは、
障害者という言葉で
登場人物ひとくくりにしたくはないということ。
一人ひとりに個性がある。
これを前提に、ある一人(主人公)に切り込んでいく場合、
作者は、いつも以上に自分を真っ白にしなくてはならないと思うんだ

----つまり、それは“障害者”に対する
あらゆる先入観をなくすことから出発するってことなのかニャ。
「そういうこと。
この映画は、実在の人物をモデルに、
幼くして植物状態だと診断された青年マテウシュが、
実は、自分が周囲のことを理解しているだけでなく、
個人としての感情、思考を有していることを
ある機会をとらえて伝えきるまでを描いていく」

----『ジョニーは戦場へ行った』もそうだったよね。
「う~ん。
あそこまで極端に描いてはないけど、
それに近い状態だね。
さて、主人公マテウシュは脳性まひであって
植物人間どころか知的障害もさほどあるわけでもない。
ぼくらと同じように
少年時代から異性への興味もある。
そのあたりの描き方がほんとうに素直で、特別視されていないんだ。
そんな中、マテウシュには意思、感情があると考える女性が出てくる。
やがて彼女は彼に好意を持ち、家族にまで紹介する。
これまでの映画だと、
そこでふたりの愛の物語が…と、
こうなるところだけど、
ここでは思いもよらぬ方向へ物語が転がっていく。
相手の彼女が、なぜそこまで彼に執心するのか…。
映画は、
マテウシュだけでなく彼女の人生、
その明と暗に対してもきちっとスポットを当てていくんだ。
そしてそこから生まれるふたりの愛の行方…
あっ、これについては言わない方がいいかな。
ラストで彼が選びとる
これからの自分の道の選択と並んで、
ここはこの映画の大きなポイントとなるし…」

----ニャるほど。
ストーリー面でもオモシロそう。
「あと、
驚いたのはマテウシュを演じるダヴィッド・オグロドニック
『オアシス』のムン・ソリのとき同様に、
ほんとうに脳性まひの人が演じているのかと…。
これは彼が出演している『イーダ』を観ていないぼくの勉強不足でもあるけどね」





フォーンの一言「つまり、自分の頭の中だけで分かったつもりになってはいけないということだニャ」身を乗り出す

※最近読んだ 「自閉症の僕が跳びはねる理由」でよけいその気持ちは強くなった度

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『愛して 飲んで 歌って』

2014-12-04 23:55:07 | 新作映画
(原題:Aimer, boire et chanter)




----『愛して 飲んで 歌って』
えっ、これに似たタイトル聞いたことあるよ。
確かジュリア・ロバーツの映画だったような…。
そうだ思い出した。
『食べて、祈って、恋をして』だ。
でも、それよりこっちの方が楽しそう?
「だよね。
ところがこれがなんとアラン・レネ監督の作品、
それも遺作って言うから驚いちゃう」

----アラン・レネって、
ヌーヴェル・ヴァーグが出てきた頃、
セーヌ左岸派とか呼ばれた一団のひとりだよね。
『去年マリエンバートで』とか、
ニャんだか難しそうな映画を作っていたような…。
「そうだね。
ところが近頃は『恋するシャンソン』だの
『巴里の恋愛協奏曲(コンチェルト)』だの、
タイトルからして楽しげな映画が多い。
描かれる内容も、
ウディ・アレンを彷彿とさせるような
男女の恋愛群像劇

----へぇ~っ。
歳とって丸くなったってこと?
「いやいや、どうしてどうして。
ひとくせもふたくせもある。
じゃあ、ちょっと説明してみよう。
とあるのどかな田舎の実景。
でも、どこか変。
まるで時間が止まったかのように美しく静まり返っている。
そしてカメラは英国地図へ。
で、次には目にも鮮やかな書き割りセット。
この映画、いったい、
観客をどこへ連れてい行こうとしているのかと…?

と、軽く混乱。
というのも、ここでアラン・レネは
ちょっと意地悪な演出をしてみせるんだ」

----意地悪…どういうこと?
「そのセットで
最初に登場した、とある夫婦は、
いかにもお芝居と言った感じでセリフのやりとりをするんだ。
実はこれは芝居の練習だった…ということがすぐに分るんだけど、
観ている方は、
そこが舞台の上であるかのような錯覚を起こす。
次のカットではノーマルな映像が出てくるんではないかとね…。
ところが、続いて
カメラは同じように実景を挟み、地図、そして新たな書き割りセットと、
まったく同じ形で次のカップルを紹介してゆくんだ」

----ふうん。
ということは、
その“セット世界”の中で
映画が進んでいくということなのかニャ?
「そういうこと。
あっ、言い忘れたけど、
彼らの出入りは、
垂れ下がった色とりどりの背景幕。
そしてひとりで喋るカットのアップでは、
細かい線がたくさん引かれた壁紙のようなバックになるんだ」

----へぇ~っ。
不思議な映画…。
「でしょ。
もっともそこで描かれている内容と言えば、
いわゆる“笑劇”。
友人ジョルジュが末期のガンになったことを知った仲間たちが、
愛すべき旧友の残り少ない人生をよきものにしようと一致団結…
ところが…というもの」

----“ところが”?
「うん。
ジョルジュの魅力の前に
夫がある身でありながら、
その妻たちはメロメロに。
元より彼は、かなりのヤリ手、
女好きだったという設定なんだね。
ここが、この映画のミソで、
たとえ死期が迫っているからといって、
物語は決して暗く湿った方へとは向かわない。
タイトルどおり
『愛して 飲んで 歌って』
人生を楽しもうとなるワケだ」

----へぇ~っ。
そのジョルジュって誰が演じているの?
「これがまた傑作。
このジョルジュ自身は最後まで姿を現さないんだ。
あの『桐島、部活やめるってよ』と同じようにね。
実はこの映画には
英国の戯曲家によるアラン・エイクボーンの『お気楽な生活』という原作がある。
そこではすべての会話=は
それぞれの家の庭で演じられている。
ところが、映画では3回ほど、
家の中にカメラが入るという
“改変”が行なわれているんだ。
その瞬間がなんともスリリング。
そう、映画の中に、ピンと緊張の糸を張っちゃうんだ。
こういうところが映画監督の“才”。
いやあ、満足、満腹の一本だったね」





フォーンの一言「モグラが2回ほど出てくるらしいのニャ」身を乗り出す

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