ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『偽りなき者』

2013-02-28 22:46:54 | 新作映画
(原題:JAGTEN)

----この映画って、
ラース・フォン・トリアーらと
ドグマ85の運動を起こした
トマス・ヴィンタ―ベアの作品だよね。
「うん。
でも、予告編を覗いてみたら、
ドラマトゥルギーの強烈さを感じさせてくれる作品。
それだけで観てみたくなったね」

----どういうお話ニャの?
「じゃあ、まずはそこから。
主人公はマッツ・ミケルセン演じるルーカス。
42歳になる彼は、
森と湖の景観が美しい故郷の田舎町で
愛犬のファニーと暮している。
妻とは最近離縁し、
隔週の週末しかひとり息子のマルクスと会えない。
さらに教師として務めていた小学校が閉鎖されたことで失業も経験。
いまは、幼稚園教師の職を得て生活を支えている。
さて、物語は11月の狩猟シーズンから始まる。
ルーカスは、テオを始め
仲のいい友だちと鹿狩りを楽しむ日々。
ところが、そんなある日、
彼の人生を根底から揺るがす事件が勃発する。
ルーカスが幼稚園児に悪戯したという噂が流れたのだ。
その種を蒔いたのは
テオの娘で幼稚園に通うクララ。
不仲の両親に代って優しく面倒を観てくれるルーカスに好意を抱く彼女は、
その気持ちを期すとプレゼントに託して伝えたところ、
ルーカスがやんわりとそれを拒否。
これに傷付いたクララは作り話を園長に話してしまう…」

----うわあ、恐い話だニャ。
周囲は子供の言うことを信じてしまうよね。
「そういうこと。
子供は嘘はつくはずはない…という
先入観を基に映画を作っていく、
その着眼点もさすがだけど、
ぼくが感心したのは
もし、そのような状況が生まれたら、
そのとき、
事態はどのように推移していくかを
細かく検証した脚本の素晴らしさ。
そのどのエピソードもが
説得力を持って観る者に迫ってくるんだ」

----たとえば?
「クララは、
比較的早い段階で
自分がついた嘘がとんでもない事態を巻き起こしていることに気づき、
『あれは、ほんとうは違うの』と撤回しようとする。
ところがそれを聞いた母親は
ショックなことは忘れようとするものと、
娘に言い聞かせ、
最初に彼女が発した “嘘”の方を信じてしまうんだ。
一方、幼稚園の園長はといえば、
自分が想像する最悪の事態を、
ルーカスが行なっていると思い込み、
同じく、彼女に頼まれてやってきた調査員も
その前提のもとに
クララに対して、不適切な誘導質問を行なう。
さらに園長は、
これはクララに限っていないのではないかと、
他の親にも話を広め、
あげく警察へ通報してしまう」

----うわあ、泥沼だニャあ?
「この後は想像つくよね。
ルーカスは町の人々から白眼視され、
日々の買い物にも困るほどの迫害を受ける。
周りの反応としては『悪いことをしたお前に売るものはない』ってヤツだ。
実は、ぼくはここに
現代(いま)のこの国の空気に繋がるものを感じたんだ。
たとえば、つい先日も問題となった死刑執行。
『それだけの悪いことをして
裁判でも判決が下りたんだから当然』みたいな…。
でも、その人がほんとうに犯罪者だということを
ぼくらが確信を持って断言できるほど、
個別の事件に詳しいと言えるだろうか?
この国では、冤罪はずっと起こり続けているじゃないか…とね。
自分がいつルーカスみたいな立場になるか分からないのに、
まるで裁判官のようにふるまってしまうのは、
ほんとうに信じられない」

----う~ん。言っていることは分かるけど、
今日は少し、映画というよりも
そこでの主義主張に偏りすぎていニャい?
「そうだね。
でも、この映画の素晴らしいところは、
そういった、
時代の病巣を
映画として過不足なく抉りだしているところ。
実は、この映画のオチが、
もう、これしかない…というほどよくできている。
一回、押されてしまった烙印は
そう簡単には消えない。
それによって
その人は
一生、安心して人生を送ることはできないということを
映像として見せてくれる
ほんとうに秀逸なラストだったよ」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「主演のマッツ・ミケルセンがいいらしいのニャ」身を乗り出す

※とりわけ芽の演技。“北欧の至宝”と言われるのも分かる度
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『ボクたちの交換日記』

2013-02-26 13:54:48 | 新作映画


----これ、ウッチャンナンチャンの内村光良監督作品だよね。
「うん。『ピーナッツ』以来になるかな。
これはよく知られていることだけど、
彼はもとより映画監督を志望。
映画にももちろん詳しくって
バラエティ番組ではミル姉さんとして
けっこう、マジに映画紹介していた」

----でも、今回のお話は、
お笑いコンビの物語。
ニャんだか、ベタな展開になりそうな気がするな…。
「それはそのとおりだったね。
簡単に言えば、
中学時代に、お笑いのコンビを組んだ
田中(伊藤敦史)と甲本(小出恵介)の二人が
なかなか芽が出ずに、
しびれを切らした甲本は、
交換日記で本音をぶつけあうことで
その局面を打開しようというもの。
正直言うと、最初は小出恵介の
あまりにアクティブなセリフ回しが耳についていたんだけど、
実は、これも後半への伏線と分かってくる」

----ふうん。つまりこれは一言で言えば、
青春サクセスストーリーってワケだニャ。
「そう、
その<光と影>を描いているワケで、
確かに目新しいものがあるというものでもない。
同じ事務所のコンビの大成功をよそめに、
ただ、黙々と営業をこなすふたり。
そんな中、田中には同じTSUTAYAで働く恋人・麻衣子(木村文乃)が…
一方の、甲本には同棲している久美(長澤まさみ)との間に
子供(後に川口春奈)ができることで
<生活>が強くのしかかってくる。
さあ、そんな中、彼らは
『交換日記』が触媒となって
新たな<ネタ>にもチャレンジ。
全てを<お笑いコンテスト>に賭けるのだが…」

----いよいよ、普通だ。
ここにドラマを入れるとしたら、
<挫折>がないとオモシロくニャいよね。
どうも決勝まではいかない気がするニャあ。
「まあ、どこまで話していいのか…。
大体、想像したとおりの形で進んでゆく。
ハーバート・ロス『愛と喝采の日々』じゃないけど、
大成するのは一人だけ。
で、時代はあっという間に、
彼らが親となる時代まで進み、
ある<衝撃>(ってほどでもないけど)の事実が語られる。
ぼくが、ちょっと感心したのは、
この段階で、いったん、物語は
情動を外して魅せること。
ストレートに素直な<感動>へと結びつけはしない。
内村監督の演出も
特に映像で凝るようなこともせず、
丁寧に映し出していく」

----勝手知ったる世界というのも大きいんじゃニャい?
「それはあるだろうね。
コントも、彼自身が書き下ろしたみたいだし、
主人公たちの掛け合いも楽しかった。
ぼくは、いわゆる問題作とかよりも
こういう映画の方に好感が持てるなあ」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「伊藤敦史は『陰日向に咲く』でもお笑い芸人をやっているのニャ」いいねぇ


『劇場版 SPEC~天~』では伊藤敦史本人として出ている度
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画像はプレスですより。

『ラストスタンド』

2013-02-21 22:30:50 | 新作映画

(原題:The Last Stand)

----この映画、シュワルツェネーッガ-の復活作。
“10年ぶり”というと、
その前は『ターミネーター3』になるんだっけ?
「そうだね。
以後、『』『エクスペンダブルズ』
『エクスペンダブルズ2』
もあったけど、
まあ、特別出演だったり、せいぜい肩慣らしの顔見せだったり…」

----そう言えばそうだね。
でもそれだったら、
もう少し話題になってもよさそうだけど…。
「うん。
この間、ある打合せの席で耳にしたんだけど、
これ、アメリカではヒットしなかったらしい。
ぼく個人としては多いに楽しめたんだけどね」

----どういうところが受けなかったんだろう?
「これは観てみるとすぐ分かることなんだけど、
映画が今っぽくない。
たとえば、ジェイソン・ステイサムのアクションみたいに
いわゆる、エッジの利いた映像じゃないんだ。
ただ、ぼくはそこに
逆にこの映画の魅力を感じたんだけどね。
最近のアクション映画ときたら、
青みがかったざらついた画を
ぶんぶん振り回すキャメラで捉える。
しかもそれをめまぐるしい編集で繋ぎ、
さらには耳をつんざく効果音を付け加える。
どうも、シャープという言葉を勘違いしているかのよう」

----それって、映画が
お芝居で勝負していないってことだよね?
「おっ、分かっているね。
実は僕もそう思うんだ。
もし、物語や役者で見せることができたら、
こんな小手先の技術は使わないでもいいはず。
この映画は、
シュワルツェネッガーという
いまや伝説の域に入ろうとしているビッグスターを主人公に持ってくることによって
技術周りのことに頼らなくていいようなっている。
カ―アクションにしても、
ここぞというときに使うだけ。
延々と繰り広げるような愚は犯さない。
その分、数少ないそのシーンでは、
趣向を凝らしたユニークなスタントを見せてくれる。
ガンアクションにしてもそう。
やたら、撃ち合いを続けるのではなく、
レトロな重火器を次々と使うことにより、
敵側のハイテク装備と対抗する」

----えっ、ハイテク装備?
どういう敵ニャんだろう?
ストーリーを説明してよ。
「では簡単に。
事件の引き金を引くのは、
まやく王のコルテス(エドゥアルド・ノリエガ)。
移送中にバニスター捜査官(フォレスト・ウィテカー)らFBIの警備を出し抜いた彼は、
時速400キロで走るコルベットZR1を駆り、
メキシコ国境に向けて逃走を開始。
彼が目指すのは
元ロス市警のオ-ウェンズ(アーノルド・シュワルツェネッガー)が保安官を務める辺境の街。
FBIからの通報で上京を知ったオーウェンズは
コルテスをみすみすメキシコへ逃すか、
最後の砦(ラストスタンド)となって
阻止するかの選択を迫られる。
結果、後者の道を選んだオーウェンズの下には、
戦闘体験はないが気持ちだけは熱い4人の仲間が集結する」

----ニャんだか、漫画チック!
「確かに。
迎え撃つ彼らの武器が
スクールバスに、
第二次世界大戦の骨とう品なんだから。
ただ、これも突き詰めて言うなら西部劇だね。
メキシコの国境、保安官ときたら
『リオ・ブラボー』
もちろん、あの名作と比べてしまったら
身も蓋もないかもしれないけど、
こういうシンプルな男のドラマで
映画を観始めた過去を持つ身にとっては
このジョン・ウェイン的な強い主人公とその仲間の構図は
ほんとうに懐かしい。
スクリーンで映画を観る楽しさ、
その原点を思い起こさせてくれた。
そういう意味でも、この映画はいとおしいね」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「監督は『悪魔を見た』キム・ジウンなのニャ」身を乗り出す

※でも、今の映画ファンには突っ込まれてしまうんだろうな度
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猫ニュー


『ぼっちゃん』

2013-02-19 22:21:30 | 新作映画
----うわあ、ずいぶんと久しぶりだね。
やっと再開…と思ったら何この映画?
ほら、ほかにもいろいろ観ていたでしょう。
アカデミー賞がらみの『世界にひとつのプレイブック』とか、
超大作の『クラウド・アトラス』とか。
今日だって、『ヒッチコック』
レオス・カラックス『ホーリー・モーターズ』…。
「う~ん。
ずっと忙しかったからなあ。
とてもすべては喋りきれない。
でも、そんな中、どうしても落としたくない一本がこの『ぼっちゃん』
使い古された言葉だけど、
『圧倒された!』、これに尽きるね」

----へぇ~っ。
確かこの映画って、
秋葉原無差別殺傷事件"の“犯人”をモチーフにしているんだよね。
「そう。監督が
『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』、そして『まほろ駅前多田便利軒』大森立嗣
試写の回数も少なく、
しかも最終は朝10時からだったにも限らず、
どうしても観てみたい!、そう思ったのは
この題材と監督の組み合わせが大きいかな」

----ニャるほど。
そして、それをここで喋っているということは、
期待に違わなかったってわけだ。
「うん。
もちろん、最初は自分の中に、ある懸念もあった。
あれだけの犯罪を犯した男を主人公にしているワケだし、
どう描いたって、
これは、彼が今まで描いてきたような
社会的弱者の立場に寄り添うのは難しいのではないかと…。
もし、安易に主人公を社会の犠牲者としてしまったら、
それは、ひ弱なヒューマニズムとして逆効果になるのではないかと…」

----確か、この犯人の男って
ネットに犯罪予告と化していたんだよね?
「そう。
そこがどう描かれているかも
興味があったところ。
この映画では、主人公の梶知之(水澤伸吾)は
友だちも恋人もなく、
掲示板サイトに自身のコンプレックスや孤独な叫びを書き込んでいる。
その彼が、新しく務めた先の工場で
自分と似た境遇で、さらに突然眠る奇病持ちの田中(宇野祥平)と出会う。
梶の見る今の世の中、その定義はこうだ。
『基地内――イケメソ、彼女いる、友だちいる、正社員
基地外――ブサイク、彼女いない、友だちいない、非社員』

そして『私はキチガイです』と結論づけるんだ」

----うわあ。いかにもって用語。
あまりスキくないニャあ。
「ぼくだってそうだよ。
でも、この映画を観ていて思ったのは、
社会の仕組みがいつの間にかそうなっているということ。
そんな時代の中に、生まれ落ちてきたら、
個人の努力だけでは変えられない。
壊すことのできない壁みたいなものがすでに横たわっている。
たとえば、家が豊かでなければ教育を受ける機会も少なくなる。
教育の機会がなければ、就職も希望どおりに行くとは限らなくなる。
そして、昔でいうところのエリート路線から
いったん外れてしまうと、
もう、後は、このようにそこから抜け出せないまま
自分がどんどん卑屈になっていくばかり」

----まさに悪循環だニャあ。
でも、全員そうとは限らないわけでしょ。
「そうだね。
たとえば、この梶の場合は
自分はブサイクという自意識が強すぎて、
その巧くいかない苛立ちを、
まるで獣の唸りのような叫びなどで外に出し、
いよいよ周囲から気味悪がられていく。
一方、田中の方はどちらかというと諦観。
その向こうには優しさみたいなものがほの見える。
この違いが、実は、
ふたりの前に女性が現れたときの
幸不幸を分けるんだけどね」

----うわあ、女性が絡んでくるんだ。
それは悲惨になりそう。
「うん。
基地外同士の友情にヒビが入っていく。
そして、その女性ユリ(田村愛)と絡む形で登場するのが
イケメン同僚の岡田(淵上泰史)。
岡田は梶と同日入社。
元スピードスケートの国体選手で、
最初から梶を下僕のように扱っていた。
だが、その岡田にもある秘密があった…。
と、このあたりが映画オリジナルの設定」

----えっ、創作箇所もあるの?
「うん。
それによって、
この映画は、これまでの日本映画が生んだ
傑作青春映画の一群に肩を並べた…
ぼくはそう思うな。
『ぼっちゃん』を観ながら思い出したのは
長谷川和彦『青春の殺人者』根岸吉太郎『遠雷』

----話聞いていると、主人公の卑屈さとかは
『苦役列車』 に近い気がするけど…。
「う~ん。
あの映画の主人公・貫多は
列島コンプレックスの裏返しというか、
ある意味、周りを軽蔑して優越感を抱いているようなところがあった。
ところが、この映画の梶はもう卑屈の塊。
しかも『私はもてたい。人を愛したい』の気持ちが強いあまり、
人格が崩壊している。
でも本来、人間として生まれてきて青春を迎えたら、
それはだれもが当然抱く感情。
しかし梶はそのスタートラインに立つことさえできない」

----う~ん。キツイニャあ。
「しかしそれにしても、
ここまで強烈な主人公には、
とんとお目にかかったことはない。
日本映画には、ほんと珍しいキャラクターだと思う。
主人公を演じた水澤伸吾は
『苦役列車』の森山未來に決して引けは取らない。
宇野祥平、そして
よくぞここまで嫌な男を演じたという意味で
淵上泰史も加えてアンサンブル賞というのがあったらぜひ彼らに送りたい。
まあ、いずれにせよこれは必見の問題作だよ」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「しかし、熱く語るニャ」身を乗り出す

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猫ニュー

『キャビン』

2013-02-09 15:02:07 | 新作映画

(原題:The Cabin in the Woods)

----この映画、
スゴく興奮していなかった。
「そうだね。
気が早いようだけど、
今年のトップ10には必ず入る…
そんな気がするな」

----それはまたまた気が早い。
いつもそんなこと言って、
最後の方になると外れているじゃない。
「(笑)。確かに。
でも、それだけの衝撃がこの映画にはあるということ」

----へぇ~っ。
森の中で若者たちが襲われる…。
ホラー映画の定番のような気がするけど?
「そうだね。
実はキャッチコピーの
『あなたの想像力なんて、
たかが知れている』
という挑発を見ても、
いやあ、そんなことはないだろうと、
高をくくっていたところがある。
ところが見事にやられてしまった。
ストーリーは一見、簡単。
森の別荘へとやって来たデイナ(クリステン・コノリー)、
カート(クリス・ヘムズワース)ら大学生の男女5人。
彼らは、そこで身の毛もよだつ恐怖を味わうことになる」

----う~ん。普通っぽいけど…?
「そう思うよね。
トレーラーのナレーションでも、そう言っている。
ここまではよくある話と思うかもしれない』。
さて、本編の物語は、次のように続く。
彼らは、ある呪文を唱えることで
恐ろしい何かを復活させてしまう。
で、これはいわゆる『死霊のはらわた』系かと…。
ところが実は、それを監視し、コントロールしている科学者らしき一団がいる」

----ん?じゃあ、『CUBE・キューブ』系?。
「ところが、ナレーションはさらにこう続く。
だがこれから先の展開は絶対に読めない。賭けてもいい。絶対に読めない』」

----ゴクッ。どうニャるの?
「う~ん。
ここまでしかこの映画については語れないんだ。
これほどネタをバラしてはいけない映画もない。
というか、言いたくない。
でもこれだけは確か。
怒涛の展開から、
阿鼻叫喚の地獄へと一気になだれこんでいく。
で、いま考えると、ここの伏線がまた巧い。
リチャード・ジェンキンスらが扮するこの科学者たちは、
彼らの待つ死の運命を、
楽しそうに、のどかに、
賭けまでして見守っている。
だから、まさか、こんなとんでもないことになろうとは、
ゆめゆめ思わないんだ。
そして待ち受けるエンディングの衝撃。
これは個人的には、
漫画『幻魔大戦』連載最終回の衝撃に並ぶ。
あっ、これも言いすぎかな」


                    (byえいwithフォーン)

(memo)『クローバーフィールド/HAKAISHA』の脚本を担当したドリュー・ゴダードが本作で監督デビュー。
共同脚本には『アベンジャーズ』ジョス・ウェドン監督。
『CUBE ZERO』はこちら。

フォーンの一言「大物女優がカメオ出演しているらしいのニャ」身を乗り出す

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猫ニュー

『サイレント・ハウス』

2013-02-06 13:44:56 | 新作映画

(原題:50/50)

----この映画って、
「渋谷ミッドナイト・マッドネス2013」と題して
連続公開される作品の一本だよね。
けっこう買うが多いけど、
どうしてこれを観ようと思ったの?
「やはり、
出ている俳優かな。
ヒロインのサラを演じるエリザベス・オルセン
『マーサ、あるいはマーシー・メイ』 『レッド・ライト』という、
いずれも、癖のある作品に出演。
とびきりの美人というワケじゃないけど、
妙に記憶に残る
愛のある演技をしてくれる」

----でも、お話自体はありふれている気がしないでもないけど…。
「そうだね。
別荘売却のため、
その修繕に父親と訪れたヒロイン、サラが
そこで体験する恐怖。
この家には誰かいる…!
こういうとき、
いくつかのパターンがあって、
オカルトものなのか、
サイコものなのか、
それによって恐怖の<カタチ>は変わってくる」

----で、この映画の場合は?
「それははっきり言えないけど、
その曖昧さが恐怖をあおっているとも言えるだろうね。
つまり、そこに<謎>=ミステリーを絡めるわけだ。
それと、この映画、
もうひとつの大きな特徴として
全編ワンカットに“見える”撮影を行なっている」

----それ、どういうこと?
「全編ワンカットに見えると言えば、
ヒッチコック『ロープ』が有名。
これは柱などでロールチェンジを行なったと言われている。
ぼくがこれまで観たワンカット撮影の圧巻は、
アレクサンドル・ソクーロフ監督の『エルターミジュ幻想』
この90分長回しは、
いやあ、そのバックステージを想像しただけでも、
もう気が遠くなりそうになる。
で、そのときのことを思い出しつつ、
さてこの映画の場合、
どうやって “見える”ようにしたのかなと…」

----結論は…?
「すいません。
分かりませんでした(汗)。
それどころか、
最初はそれを見破ってやろうとしたのに、
それどころじゃなくなって…。
もう、これが怖い怖い。
久しぶりにゾクッとしたね。
なにせエリザベス・オルセンの演技が巧い。
いわゆる“スクリーミング(絶叫)”の逆を行く。
サラは、その家の中にいる“何者”かに見つからないよう、
悲鳴を押し殺さなくてはならない。
その悲鳴押し殺しの表情が真に迫っていて、
観客の恐怖と同期するんだ。
これで、あの最近はやりのオチさえなければ、
けっこう、高評価される映画になったと思う。
まあ、この映画には
<実話>を基に作られた
ウルグアイ映画『SHOT/ショット』という
オリジナル作品があるだけに
それを望むのは酷というものかもしれないけど…。
あっ、そちらもワンショット風撮影で作られたらしいよ」


                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ワンカットということは、
映画のランニングタイムと中で行なわれている出来事の時間が一致しているのニャ」
身を乗り出す

※このタイトルの付け方も巧い度
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猫ニュー

『汚れなき祈り』

2013-02-03 18:31:35 | 新作映画
(原題:Du pa dealuri)



「これまた見ごたえある映画だったな」
----“パルムドール受賞監督の最新作”…。
それって、
確か『4ヶ月、3週と2日』を監督したクリスティアン・ムンジウのことだよね?



確か、東欧の方の国の映画じゃなかった?
「そう。
ルーマニア
しかし、映画は観てみないと
ほんとうに分からない。
この映画、実際にルーマニアで起こった、
『悪魔祓い』によって23歳の女性が亡くなった事件”を基にしているというから、
修道院(正教会)の閉鎖性や独善性を摘発したものかと…」

----そうじゃないの?
「もちろん、
それも描かれてはいるけれど、
そのような“事件”情報が前もって入ってくると、
おのずと被害者である女性アリーナの目線となってしまう。
それを説明するために、
まずは物語から…。
かつて同じ孤児院で育ったアリーナとヴォイキツァ。
国を出てドイツで暮らしていたアリーナは、
ヴォイキツァに会いにルーマニアへ戻る。
アリーナの願いは、
世界でただひとり愛するヴォイキツァと一緒にいること。
どうやら、
このふたり同性愛に近い関係にもあったようなんだ」




----ニャるほど。
で、そのヴォイキツァは
いまは
修道院で暮らしているってワケか…。
「うん。
ヴォイキツァは孤独なアリーナのことを思いやり、
そこの司祭に相談。
しかし司祭は
一時的にでもヴォイキツァの修道生活が途切れることを懸念して、
それを認めない。
と、ここまでの描き方が、
先ほど言ったようにアリーナ目線になることも加わり、
『もしかして、
この修道院は、そしてこの司祭はいかがわしいのでは?』
と、そういうように見えてくるんだね。
これは、とりわけぼくたち日本人は余計にそうだと思う。
まだ、カトリックやプロテスタントならともかく、
それらに比べて馴染みのない正教会。
その質素倹約ぶりがかえってカルト臭を感じてしまうんだ。
そういう疑念を持ちながら観るものだから、
アリーナが興奮状態に陥り、
異常な行動をしても
それが最初のうち<病気>というよりも
彼女の<抗議>からのものと見えてしまう」




----えっ、<病気>って?
「実際に起こった事件では
その被害者女性は<統合失調症>だったということらしい。
修道院でも、病院に連絡したり、
あるいは直接運び込んだりしているけど、
ここでも病院側は、修道院に対して
祈っていろ…といわんばかりの冷笑的な態度を取る。
この客観描写によって
観客はいよいよ
この修道院には何かあるぞ…となるワケだ。
そんな中、異常行動がエスカレートし、
手に負えなくなった修道院側は
ついに<悪魔祓い>の儀式を執り行う…。
と、こういうわけだね。
ぼくなんて途中からは
『盗人にも三分の理』じゃないけど、
まあ、ここまでアリーナにやられたらな…と
思わないでもなかったからね。
まあ、だけど
一般の倫理観から言えば、
確かにこの<儀式>はやりすぎ…」

----そりゃ、そうだよ。
人一人の命を奪ったんだから…。
「そうなんだよね。
その最後の<儀式>からが圧巻。
だれも、自分たちが悪いことをしているのではないか?
ということにまったく疑念を抱かず、
熱にでもうなされたかのように、
その<悪魔祓い>をみんな一丸となって遂行する。
アリーナを押さえつけ板に寝かせて鎖で縛って…。
しかも食事も与えない。
これにも悪魔を弱らせるため…という理由があるんだね」

----でも、そんな酷いことにヴォイキツァも加担するの?
「そこはやはり友人だから、
当然迷いが生じる。
それを見咎めた司祭は
彼女をその席から退出させる。
このあたりが、
連合赤軍やオウムと違うところ」

----ニャるほど。
さっきから、どこかで聴いたような話と思っていたら、
これってそのふたつに少し似ている。
舞台が雪に覆われて寒々としているところもね。



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「2時間半があっという間なのニャ」身を乗り出す

カンヌ国際映画祭女優賞&脚本賞W受賞だ度
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