ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『キャプテン』

2007-06-30 23:36:50 | 新作映画
----これって、ちばあきおの漫画が原作だよね。
監督が室賀厚というのは少し意外。
「うん。彼はいわゆるアクション派のイメージが強いからね。
でも、原作のコミックを全巻揃えたほどのファンだったらしい」

----でも、原作ファンはそれぞれに
自分のイメージがあるから
映画化は難しいんじゃニャい?
「そうなんだよね。
正直、主人公の谷口タカオを演じている布施紀行の演技を見せられたときには、
これ果たして大丈夫なのかと言う、
いやな予感が全身を包み込んだくらいだ」

----それはまたオーバーな(笑)。
「いや、監督もそれは認めている。
『布施紀行、正直、出演者の中で最も演技がヘタクソだ』と
プレスにもコメントを寄せているくらい。
でも、『恥じらいながらも必死に演技しようとする姿』
『ユニフォームを着て野球に取り組むそのひたむきさ』、
それが谷口タカオそのものだった---と言うんだね」

----へぇ~っ。
ところでさ、この映画って原作の時代のままなニャの?
「うん。はっきり言及はされていないものの、
昭和の設定になっているようだったね。
細かい小道具などで、
『あれっ、それあの頃あったっけ?』
というのはいくつもあるけど、
なにせ撮り方自体が
あの漫画が生まれた70年代の映画っぽい」

----どういうこと?
「映像がどことなくユルいんだ。
ぼくは、この原作をそれほどまでに記憶しているわけじゃないから、
その頃読んだ印象で語っちゃうけど、
ちばあきおの野球漫画は他とは違って熱血からはほど遠い、
まったりとした空気が流れていた。
もちろん、劇中では特訓・猛訓練などもあるんだけど、
砂埃や暑苦しさががなぜか感じられなかったんだね」

----ふうん。
「これ、意識しての撮影かなと思い、
カメラマンを調べてみると田宮健彦」

----???
「フォーンが知らないのも無理ないよ。
ぼくも分からず調べてみたところ、
ピンク系のオリジナルビデオなどで
長いキャリアを積んだ人のよう。
この映画の“まったり、ゆるやか”な画は
シャープと言う言葉とは真逆。
でもなんとも懐かしく、
しかもこの映画にはとてもあっていたと言う気がする」

----え~っ。スポーツ映画でそれやっちゃったら、
緊迫感がなくなるんじゃニャいの?
「いやいや。
試合のシーンは室賀厚ならではの細かいカット割りで
きっちりと気持ちを高揚させてくれる。
そういう意味でも
ちばあきおらしい映画になっていたと思う。
もちろん、これはぼくの記憶の中の、ちばあきおだけどね」

----今日のえいの喋りもなんだか“まったり、ゆるやか”だニャあ。
第一、ストーリー話してないし…。
「mmmmm……」

  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ちばてつやの弟なんだニャあ」もう寝る

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猫ニュー

『レッスン!』

2007-06-29 00:31:30 | 新作映画
(原題:Take the lead)

----このキャッチ、スゴいね。
「今夏、“踊る先生”に日本中が熱くなる!」
チャウ・シンチーあたりがやりそう。
これってもしかしてコメディ?
「いやいや。そんなことないよ。
きわめて真っ当なドラマ。
次のサブコピーが中身を一言で言い当てている。
『先生、世界一の社交ダンサー。
生徒、誰もが見放す落ちこぼれ』
つまりこれは『いつも心に太陽を』の頃から、
いつの時代にもある“先生と生徒の絆”もの。
しかも、この先生をアントニオ・バンデラスがやっているところがミソ。
彼の演じるデュレイン先生は本来は社交ダンス教室の講師。
たまたま、生徒のひとりが校長の車をぶっ壊しているのを見かけたところから、
その学校に乗り込み、
自分が社交ダンスで彼らを更生させると見得を切るわけだ」

----ニャるほど。分かりやすい話。
でも、どうしてバンデラスがミソにニャるの?
「バンデラスってスペイン生まれのラテン系。
とても情熱的なイメージがある。
ところがこの映画の彼は、信じられないほど紳士。
たとえば女性がドアに近づくたびに、
立ち上がってはドアを開ける-----。
ジェームズ・スチュアートとかケーリー・グラントあたりの、
60年代のハリウッド俳優を思い出したよ」

----ふむふむ。
実際には今いないよね、そんな人?
「いやいや。
ところがこの映画は実話に基づいているんだ。
モデルとなったピエール・デユレイン氏は
ニューヨークのスラム街にある小学校でダンスを教えていたらしい。
イギリスのブラックプールダンスフェスティバルで
4年連続優勝を果たしているというから、
その実力は折り紙付きだ」

----ふうん。
で、物語は生徒がその社交ダンスを受け入れて
大会に出場するってわけ?
ニャンか、それもありえないニャあ。
「映画はどうして彼らがこの社交ダンスに引かれていったか、
そしてなぜ上達が早かったかが、
ユーモアたっぷりに描かれていく。
それはこの映画の見どころの一つである
社交ダンスのクラシックな曲を
自分たちの好きなHIP HOPとMIXして踊るシーンを見れば明らか」

----あっ、そうか。
もともと彼らはダンス好き。
上達が早いのもうなずけるニャ。
「しかも親との断絶や
ロミオとジュリエットばりの恋物語など
サブストーリーも盛りだくさん。
なかなか楽しめる作りとなっているよ」


  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「あらら、ホントに社交ダンス踊ってるニャ」ぱっちり

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猫ニュー 

『呪怨 パンデミック』

2007-06-27 23:01:30 | 新作映画
(原題:The Grudge 2)


----『呪怨』のハリウッド・ヴァージョンも
早くも2本目だね。
毎回、同じような内容を繰り返している気がするけど…。
「うん。
でも今回は日本版の『呪怨2』とは話が違っている。
清水崇監督もまったく同じものになることは避けたようだ」

----でも、またあの“家”が舞台で、
そこに入って行った人が取り憑かれるんでしょ?
「確かにその基本ラインは変わらない。
でも、タイトルに“パンデミック=感染爆発”と付いているように、
今回は、その恐怖の範囲が広がっていく」

----どういうこと?
もともとこの『呪怨』は他の幽霊映画の因果応報的な呪いとは違って、
何もしていないのに、
たまたまそこにいあわせたことで
呪われてしまうところにその特徴と恐怖があったのでは?
「そうなんだけどね。
今回は、その恐怖が黒沢清監督のホラー映画のように、
伝染して広がっていくんだ」

----ふうん。
「今回のお話は、
3つの物語が軸となっている。
(1)東京のインターナショナル・スクールに通う少女たちが、
ゴーストハウスとして有名になった、あの“家”へ行って取り憑かれてしまう話。
(2)前作で事件に巻きこまれた姉が入院したことを知った妹が東京で怪事件に遭遇。
香港人の記者と一緒にその謎を解こうとする話。
(3)シカゴに住む小学生のジェイクが
アパートの隣人たちの不審な行動を探るうちに身も凍る恐怖に襲われる話」

----へぇ~っ。またいつものように
物語の構造がパズル的になっているんだ。
「そう。
まず冒頭でいきなり
何が起こったのか分からないショッキングなエピソードを見せる。
そしてこの3つの話が一見バラバラに登場。
ところが、これらはそれぞれ時間軸が異なっていて、最後に納得と言う
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥを思わせる構成となっているんだ」

----ははぁ。でも恐怖度はどうニャの?
「『サイコ』を思わせるシャワーのシーンなどもあるけど
正直言って、これまでに比べたらかなり劣る。
それはこちらが見慣れたせいか、
それかもしくはハリウッドや世界マーケットを意識して
少し押さえてあるのかもしれないけどね。
しかしそれに替わって
今回は新しい趣向が凝らしてある」

----ニャにニャに?
「それは伽椰子のルーツに関わること。
彼女がいったいどのような少女時代を送ったのか?
これはかなり悲惨」

----ニャるほど。『リング0~バースデイ~』みたいなもんだニャ。
「そういうこと。
ここのくだりは、
西洋人は度肝を抜かれるだろうね。
ただ、伽椰子の母親を訪ねていった
アメリカ女性と彼女が英語で会話をしていたのは
ちょっと不自然だったけどね」


  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「あら。また黒猫さんが出てくるニャ」悲しい

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猫ニュー 

『ストンプ・ザ・ヤード』

2007-06-25 23:25:18 | 新作映画
(原題:Stomp The Yard)


「これは意外な拾いもの」
----えっ、ダンスムービーは苦手じゃなかったの?
特にこういうタイプのは…。
「ぼくも、そう思って臨んだけどね。
一言で言えばこれはダンス版『ドラムライン』。
激しいビートによるダンス・バトルに体の奥深い部分が感応。
苦手意識もどこへやら
血が騒いでたまらなかったね」

----このストンプってニャんニャの?
「ストンプというのはステッピングのこと。
正確なステップを踏みながら
手足で音を立ててリズムを刻むんだ」

----でも、それってストリート向きじゃニャイよね?
「そうなんだ。
さて、この大前提を分かってもらった上で、
ストーリーへと話を進めよう。
実を言うと、こちらの方はありふれている。
主人公はLAからアトランタの大学にやってきた
ストリート・ダンサー、DJ(コロンバス・ショート)。
かつてストリートでのいざこざで兄を死なせてしまった彼は、
だれも自分を知らないこの地で再起を図ろうとする。
そんな彼にダンス・チームのテータと
そことはライバル関係にある常勝チーム、デルタが目を付ける」

----分かった。彼が入るのはテータだ。
「あたり(笑)。
DJはもともとストンプにはあまり興味がない。
ところが彼が好きになった女の子がデルタのスターの恋人。
と言っても親が決めた許嫁のようなもの。
この男がとてもいけ好かないヤツなんだ」

----いけ好かない…? 変な言葉(笑)。
「何ていうか、
自分の才能を鼻にかけていて、
相手の気持ちなど、どうでもいいんだね。
考えることは自分のことだけ。
で、彼女の気持ちは徐々にDJへ。
DJもテータで活躍するものの、
そのスタンドプレイが
チームを危機に追いやってしまう。
才能ある者の傲慢さが起こす悲劇だね」

----ニャるほど。『ドラムライン』だ。
そう言えば、あれは迫力あったなあ。
「うん。この映画、
冒頭のシーンはハンディカムで画像も粗く、
リアルな分、逆に目が落ち着かず、
最後までこの調子だとキツいなと…。
ところが舞台がアトランタに移ってからは
一糸乱れぬストンプの群舞-----!
その迫力に、もう目はスクリーンに釘付け」

----でも、それだけじゃ
ニャんだか映画として満足できそうにないニャあ。
えいは、それでいいの?
「う~ん。これは難しいところだね。
ストーリーは、
これに加えて
DJの叔父夫婦と学長の関係など、
因縁話も出てきてふくらみを持たせているけど、
やはり見どころはダンス・バトル。
この映画のように、
どうせこれまでに幾度となく描かれてきた内容だったら、
いっそのこと、だれも観たことがない映像を見せてくれることに
ウェイトを置いた方がいいと思うんだ」

----そんなこと言っていいのかニャ。
別の映画では違うこと言ってそう(笑)。
「(汗)。ちょっとヤバかったかな。
でも、このバトルの中にもドラマはあるわけで…。
そこにこの超絶ダンス・テクニックが伴うとなれば
これはもう文句の付けようがなくなってくる。
そうそう。
この映画、MTVムービーアワードで
ブレイクスルー演技賞(コロンバス・ショート)と、
ベスト・キスの2賞を受賞。
と、これは後で知ったんだけど、
確かにこのキスは素敵だったね」


  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンだったら楽しめると思うニャあ」身を乗り出す

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猫ニュー

『ウィッカーマン』

2007-06-22 22:57:39 | 新作映画
(原題:THE WICKER MAN)

----この映画って1973年に一回作られているんだよね。
いわゆるリメイクってこと?
「う~ん。ティム・バートン版『猿の惑星』に倣って言えば
“リ・イマジネーション”ってことになるようだね」

----どんなお話ニャの?
「主人公はニコラス・ケイジ扮する白バイ警官のメイラス。
ある日、彼の元に
8年前に突然姿を消した婚約者ウィローから消印のない手紙が届く。
それによると彼女の娘ローワンが2週間前から失踪。
ウィローはメイラスにその捜索を依頼してきたというわけだ。
だがメイラスが向ったその島、サマーズアイルには…」

----ゴクッ。
「サマーズアイル、それは個人の私有地。
そこに住む閉鎖的な島民は彼に
『帰れ』とでも言わんばかりの冷たい視線を浴びせるばかりか、
みな一様に、ローワンなどと言う娘は存在しないと言う。
果たしてその謎は?
やがて衝撃の結末が彼を襲う!-----と、こういう内容だね」

----ふ~む。これは確かに最近では見かけないタイプの映画だニャあ。
「うん。70年代初期に名画座でよく味わった空気感。
それもそのはず、オリジナル脚本は
70年代に多くの脚本を書いたアンソニー・シェイファー。
彼の作品の中では、ぼくは『探偵/スルース』が好きだったな」

----アンソニー? ピーター・シェイファーならよく聞くけど…。
「あっ、アンソニーとピーターは双子の兄弟なんだ。
でも、先ほど<衝撃の結末>と言ったけど、
当時ならともかく、
いまの時代だともうこれは読めちゃうね」

----となると、その空気感だけど?
「実は冒頭に不思議なエピソードが…。
トラックが乗用車に激突!
その現場にたまたま居合わせたメイラス。
彼は燃え盛る車から少女を助けようとするんだけど失敗。
以来、それがトラウマとなって薬が手放せなくなっている。
だからと言って
この出来事がすべてメイラスの妄想かもしれないと観客に思い込ませるまでの
ミスリードの役割を果たしているわけではないけど…」

----でも、ぼくならコロリ騙されるかもよ。
ビジュアル面はどうニャの?
ホラーだから、なんかやってくれそう。
「なぜかこの島は老人から子供まで異様な双子が多い。
そのことがこの島を、より歪に見せている。
それと特筆すべきはエレン・バースティンの出演。
この映画で製作も兼ねるニコラス・ケイジ同様、
オリジナルの大ファンだと言う彼女が奇怪なメイクで
島の持ち主シスター・サマーズアイルを喜々として演じているんだ。
他にも、懐かしいリリー・ソビエスキー(『ディープインパクト』)、
それにジェームズ・フランコがカメオ出演」

----へぇ~っ。豪華だニャあ。
「でもぼくはオリジナルが観たいなあ。
全裸の女性たちが青空の下で舞い踊ったり
誘惑ダンスをしたりするらしいよ」

----ニャんだそれ(笑)。


  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「で、タイトルの意味はニャにニャ?」なにこれ?

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猫ニュー

『ダイ・ハード4.0』

2007-06-21 09:03:54 | 新作映画
(原題:Live Free or Die Hard)

----このシリーズって12年ぶりニャんだって?
「うん。自分くらいの年になると、
そんなのあっという間だけど、
前の映画ができた年に生まれた子供は
もう小学6年生になるという計算。
最初の映画ができた年の生まれだと、
大学1年生か浪人か、はたまた社会人」

----時代の移り変わりは早いよね。
「うん。この映画ではその犯罪が
合衆国そのものをジャックするサイバーテロの設定。
これも昔ではあまり考えられなかったこと」

----でもサイバーテロと言うと、
実際には姿を見せないでパソコンで仕掛けるから
たいしたことないんじゃニャいの?
「ぼくもそう高をくくっていたら、
これがまたスゴいのなんのって。
敵は超人的スピードとパワーを持っていて、
まるでターミネーター軍団。
物語は、その合衆国崩壊のプログラム開発を請け負ったひとり、
マット(ジャスティン・ロング)の元に
ジョン・マックレーン(ブルース・ウィリス)が
身柄確保のために訪れたことから始まる。
ところがテロの首謀者ガブリエル(ティモシー・オリファント)が
すでに用済みとなった彼を消すべく
傭兵部隊を差し向けていたことから激しい銃撃戦が勃発。
そこから始まるアクションのつるべ打ち。
交通、通信、電力、ガスなど、
コンピュータを利用しているありとあらゆるインフラがテロリストたちの手中に落ち、
都市機能が完全ストップする中、
マックレーンは、パトカーを暴走させ、武装ヘリに体当たりさせたり、
崩れゆくハイウェイからF35戦闘機に飛び乗ったり…」

----へぇ~っ。
でもそういうのってどこかで見たことある気が…。
あまり『ダイ・ハード』って感じじゃないニャあ。
「確かにそれは言える。
ぼくもそれら超現実的スペクタクルよりも
マックレーンとマギーQ演じるガブリエルの恋人、テロリスト、マイとの
エレベーター・シャフトでの一騎打ちをおススメしたい。
ここの描き方はまるで『エイリアン』シリーズ。
アクションがホラーにも変わりうるものだと言うことを身にしみて感じたね。
マイはエイリアン・クイーンのようにタフで、
例がよくないけどヤマカシのように敏捷。
それでいて、ゴキブリのように、
いくらたたき潰しても死なない」

----確かに例がよくないニャあ(笑)。
「あと、その設定が
最近のブルース・ウィリス映画を継承しているのもニヤリ。
連れとともに行動する------これは『16ブロック』
さらわれた子供の奪還に向う------これは『ホステージ』だ。
でも、ここは正直テレビ『24 ーTwenty fourー』が近いかな。
その絶体絶命の危機の中、彼女は父親との絆を取り戻すわけだ」

----監督は確か『アンダーグラウンド』シリーズのレン・ワイズマンだよね。
これまでSFファンタジーのイメージしかなかったけど、多才なんだね。
「なんでも、彼は相当な『ダイ・ハード』シリーズのファンで、
高校の頃、『ダイ・ハード』の短編を作った経験もあるとか。
まあそれだけならよくある話だけど、
彼はその中で自らマクレーンを演じているんだって」

----そ、それはスゴいや。
「それに加えてシリーズのセリフ全部暗記しているらしい。
そんな彼だからこそファンの夢を壊すわけもなく、
シリーズには欠かせないユーモアのスパイスもきちんと踏まえてある。
本編中には、
ある形で若かりし、つまり今よりはもう少しは髪の毛があったマクレーンが登場。
これも監督がファンなればこそ。こちらもお楽しみにね」


  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「どう、この横顔。渋いニャ」悲しい

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猫ニュー



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『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』

2007-06-20 12:36:30 | 新作映画
(原題:Harry Potter and The Order of The Phoenix)

----この原作って、映画化しにくいのでは?って心配していたよね。
観てみてどうだった?
「ぼくが最も気にしていたのは
クライマックスの魔法省のシーン。
そこで描かれている
“予言の間”での戦いを映像化するのは至難の業と思ったわけだ。
まあ、これはぼくの読解力不足かも知れないけどね。
ところが、無数の予言が保管された部屋にダンプルドア軍団6人が到着してからの一連の流れ。
ルシウスとハリー、ベラトリックスとシリウス、ダンプルドアとベラトリックス----。
とりわけダンプルドアとヴォルデモートの戦いは
火、水、砂などの元素を総動員。
一瞬の息をつく暇もない。
全編、ダークに統一されたこの暗黒物語の総決算と言う感じだ」

----ダーク?暗黒物語?
『ハリポタ』って、そんなお話だったっけ?
「うん。前作『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』でセドリックの死に直面し、
悪と戦いながらもまだどこかイノセンスでいられた子供の時間を終えたハリーたち。
この『不死鳥の騎士団』では、
その『炎のゴブレット』に輪をかけてダークになっていく。
まず、冒頭からハリーの受難が描かれる。
人間界に死喰い人が出現。
自分ばかりかダドリー・ダーズリーまでも襲ったことから
ハリーは彼を救うべく魔法を行使。
しかしそのことでホグワーツを退学になってしまうんだ----。
と、話し始めたらきりがないので止めておくけど、
魔法省の尋問会を経て復学した彼を
周囲は疑いの目で見る」

----どういうこと?
「ヴォルデモートが復活してセドリックを殺したと言うハリーの主張は嘘だと言うんだね。
日刊予言者新聞もハリーを糾弾。
そんな中、闇の魔術に対する防衛術の新任教師としてやってきた
ドローレス・アンブリッジがホグワーツを魔法省の支配下に置こうとする。
このあたりの描き方は管理教育が進むどこぞの国を思い出したね」

----あらら。
ところでドローレスはだれがやってるの?
『ヴェラ・ドレイク』のイメルダ・スタウントン。
いやあ、これはお見事だね。
いつも人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、
猫なで声(ちょっと違うか)で話しかける。
そうそう、猫と言えば彼女の部屋に飾られている絵皿には猫。
『ハリポタ』の世界だから、もちろんそれらは動き回る」

----え~っ、また猫が悪いイメージで使われている。
まったく、向こうの映画は…。
「まあまあ押さえて押さえて。
それはともかく、このイメルダ・スタウントンの演技は楽しい。
こういうのにオスカーあげてもいいんじゃないかな。
まずありえないけど…。
着ている服はいつもピンク。
これが権力が大きくなるにつれて
同じピンクでもだんだんとケバくなっていくんだ。
それにしても今回は女性陣が強烈。
悪女ベラトリックスには、もうこの人しかいないヘレナ・ボナム=カーター。
その異様なメイクとエキセントリックな演技は
ティム・バートンの世界での彼女を思い出す。
あと、ルーナ・ラブグッドに扮している新人イバナ・リンチも
オーディションをやって選んだかいがあったって感じ。
病的な個性で周囲の生徒たちを圧倒。
考えてみれば、このエピソードでは
それまで“いい子ちゃん”だったハーマイオニーがアンブリッジに反旗を翻し、
ダンプルドア軍団結成の要因を作るし、
ハリーのガールフレンド、チョウ・チャンも決定的な役割を果たす。
ある意味、女性が目立った映画だね。
さらに“禁じられた森”の巨人グロウプやケンタウルスを始め、
空を飛ぶセストラルなど、
原作に登場するさまざまなクリーチャーがいっぱい出てきて飽きさせない」

----じゃあ、原作ファンも大満足?
「いや、そう言い切るのは早計だね。
たとえば、シリウス・ブラックの生家。
その名もクリーチャーがそこでなぜぼやいているのかなど、
原作を読んでいないと分からないし、
実際、物語にあまり大きく絡むこともない。
また、ロングボトムはあまりにもあっさりと“必要の部屋”を見つけてしまう」

----ニャに言ってるかまったく分からないよ(笑)。
「そうだよね(笑)。これは第一作『賢者の石』のときからのぼくの持論なんだけど、
このシリーズは大ベストセラー。
すでにみんな原作を読んでいることが前提となっている。
だから、形だけでもいろんなエピソードやクリーチャーを出そうとしたと言うことじゃないかな。
いままでにもエピソードを丸まる割愛してファンがガッカリなんてことが
しばしばあったし…。
でも、次作『謎のプリンス』は大変だな。
クライマックスはもっともっと比較にならないほどダーク。
どんな風に映像化するんだろう?」


  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「このシリーズはいつも目ぱっちりニャ」ぱっちり

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猫ニュー 

画像はアメリカ ・オフィシャル壁紙より。

『西遊記』

2007-06-18 23:21:17 | 新作映画
「この作品は喋りにくいなあ。
こういうフジテレビ絡みの映画って、
いままでの例から言って
大ヒット、まず間違いないしね。
下手なこと言うと、とんでもないことになりそうだ」

----おやおや、それじゃあノレなかったってワケ?
「いや、それでも最初は驚いたんだよ。
どこまでも続く砂漠。
まるで『イングリッシュ・ペイシェント』か何かみたい。
日本映画もここまでやるようになったのか……としみじみ。
ところが、その背景があっという間に普通のゴロゴロした岩地に変わってしまう。
ここに代表されるように、この映画は場所と場所のつなぎ目が悪く、
たとえば日本の
しかも『仮面ライダー』あたりでよく見かけたような場所で
悟空と銀角が戦ったりすると、
中国ロケとのギャップが大きく、
興奮した分、かえってシラケちゃう」

----でもVFXとか、よくできているんじゃニャいの?
「うん。日本映画もCGというコストパフォーマンスのいいツールを手にしたおかげで、
世界と渡り合えるようになったんだなと、これまたしみじみ。
ところが、登場人物たちのチープな服装や、
こちらは意図的なんだろうとは思うけど
CGバレバレのマンガチックな映像処理で盛り下がってしまう」

----ちょっと待って。
この映画って、テレビシリーズのファンに向けているものだし、
それも子供がメインなんだから
そんなにシビアに言わなくてもいいんじゃないの?
「そういうことなんだよね。
たとえばこの映画、
『ボラット』じゃないけど、
『notギャグ』、いわゆる『なんちゃってギャグ』が多い。
こういうのって、
ぼくはせっかくドラマの中に入りこんでいたその気持ちが萎えちゃうけど、
おそらくテレビシリーズでのファンにとってはお約束で、
それもまた楽しいんだろうね。
オリエンタル・アドベンチャーの東宝映画って
ぼくも子供の頃『奇巌城の冒険』を観てドキドキしたことがある。
でも、もしかしたらあの映画だって
大人から観たら『なにこれ?』だったのかも知れないしね」

----そう、あまり子供たちの夢を壊すことは言わない方がいいニャ。
みんなギャグも含めて
そのすべてを一つの世界として楽しんでいるんだと思うよ。

   (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンだったら楽しめると思うニャあ」フォーン立つ


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猫ニュー

『ストレンヂア 無皇刃譚』

2007-06-17 22:54:33 | 新作映画
----あれれ、またアニメだ。
ん?これって時代劇みたいだニャあ。
「うん。時代は乱世。
しかも中国の明朝まで絡むと言うから、
あまり最近では見かけないタイプだね」

----でも、売りはアクションなんでしょ?
「そう。斬って斬って斬りまくる日本刀アクション。
この映画の主要人物は3人。
ひとりは名を捨て刀を封じた浪人“名無し”(長瀬智也)。
もうひとりは明に仕える金髪碧眼の剣士“羅狼”(山寺宏一)。
そして謎を秘めた少年“仔太郎”(知念侑李)。
この映画では、彼ら3人を異邦人=ストレンヂアと設定。
半SFチックな物語が展開する」

----半SFチック?
「これは早々と分かるから言ってもいいと思うけど、
仔太郎は、不老不死の薬を作るのに欠かせない血液の持ち主。
これに目を付けた明国皇帝は
仔太郎を生きたまま捕えるべく、
日本に武装集団を放ったと言う設定だ。
映画は、その明国武装集団と手を組んだ赤池の国や
自己防衛に回って仔太郎を売ってしまう禅僧など、
多彩な集団を登場させ、
人間の業と欲望を浮き彫りにしていく」

----おっ、ニャかニャか本格的だニャ。
「うん。ストーリーもそうだけど、
これはビジュアル的にもオモシロかったね。
なかでも不老不死の薬を作るための装置が、
十字架とからくり時計を合体させたような大掛かりなもので見応え十分。
螺旋階段を組み込んだその建造物が、
名無しと羅狼の最後の対決を盛り上げるんだ。
しかもこの対決がマカロニウエスタンもどき。
名無しは視力を失い、
その決着は『荒野の一ドル銀貨』で決まる」

----それ、ニャンのこと?
「あっ、ここ言いすぎかも。ヤバいヤバい。
さて話を元に戻して……。
名無しは、ある過去の出来事がきっかけで、
以来、決して剣を抜かないんだけども、
このクライマックスでは自らに課したその禁をついに破る。
ここなんて分かっていても胸にジ~ンとくる。
そういう意味ではけっこうノッて観れたのかもね。
ただ、ギャグは不発。
市井の人々の描写も
その、とぼけた“間”があまり生きてはいなかった気がするな」



   (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「時代劇アニメは珍しいニャあ」ぱっちり


『鋼の錬金術師・シャンバラを征く者』(劇場版)を作ったアニメスタジオ・ボンズの制作だ度

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猫ニュー

「遠くの空に消えた』

2007-06-15 21:57:49 | 新作映画
----この映画、行定勳監督が長年温めていたと言う企画でしょ?
「うん。一言で言えば、
空港建設計画で存続が危ぶまれている馬酔村を舞台に、
3人の子どもたちの友情を描いた作品。
主演が神木隆之介と大後寿々花、ささの友間の3人。
これに呼応するように
彼らの親たちの世代の話が語られる。
神木隆之介演じる東京から来た少年・亮介の父親には三浦友和。
父親がUFOに連れて行かれたと信じ、
その帰還を待ち続ける女の子・ヒハル役の大後寿々花の母親には中島ひろこ。
そしてささの友間演じる地元の悪がき・公平の両親は小日向文世と鈴木砂羽だ」

----話からすると、どうやら子供向け映画みたいだね?
「そうだね。話はほとんどおとぎ話。
この映画に『ぼくらの七日間戦争」を思い出す人もいるだろうけど、
ぼくはエミール・クストリッツアの世界を思い出した。
『ライフ・イズ・ミラクル』もそうだし、
『それでも生きる子供たちへ』の中で彼が担当した1エピソードもそうだけど、
騒々しい楽団が村々を練り歩く。
黒澤明の『夢』の最後のエピソードにも似たようなシーンがあったけど、
それよりもクストリッァが近い。
下ネタとまでは行かないけど、ちょっと上品ではないエピソードも多いしね」

----ふうん。そんなこと思うのって
えいくらいじゃニャいの?
「ところがところが……。
いま調べてビックリと言うよりゾクッ。
行定監督はクストリッツァの『黒猫・白猫』に影響を受けて、
この作品のイメージを膨らませていったんだって。
ネットでこの記事を見つけたときは、
ほんとうに嬉しかったなあ。
この作品は、予告編を観ておそらく誰しもが想像すると思われる
リリカルな映画がからはほど遠い。
村で空港反対闘争を行なう大人たちが集まる酒場は、
ネオン管がきらめく日活無国籍アクション風。
そこには黒づくめの、しかし決してハードボイルドとは言えない、
中途半端なチンピラたちがたむろする。
また、酒場の娘たちも金髪碧眼の白人だったり小人だったり。
フェリーニとまでは行かないけど、
かなりぶっ飛んでいる。
そんな中、伊藤歩演じる教師は
森の中で出会った空を飛ぶことを夢見る青年と恋に落ちもする」

----そう言えば空を飛ぼうとする話は
やはり行定監督の『ユビサキから世界を』にも
出てきたんじゃニャかった?
「そう。このモチーフは彼が大切にしてるのかもね。
この映画、リアリズム志向の映画を見慣れた人からすると
かなりの戸惑いを感じると思う。
ぼくも観た直後は、少々、やりすぎじゃないかと……。
でも、こうして話しているうちに少しずつ変わってきたね。
この映画は、根本的に児童映画なんだと思う。
その視点からすると、
このような大人たちの描き方はありだと思う。
ここに出てくる大人たちはどこか欠陥を持ったダメ大人たちばかり。
でも、絶対的権威を持った近づきがたい大人や
どろどろした感情に支配された大人たちよりもよっぽど魅力的。
これは、いわゆる子供目線の児童映画ってことだろうね」

----う~ん。分かったような分からないような。
物語についても、奇跡の内容についても
あまり話してくれていないし…。
「いいのいいの。
この映画はあまり中身を知らずに観て、
予想していた映画とのあまりのギャップに
度肝を抜かれるのが正しい(?)楽しみ方」

----でもそんなことを許されているのは
日本ではヒットメーカー・行定監督ならではかもね。

   (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「で、UFOは出てくるのかニャあ」ぱっちり


※『黒猫・白猫』の記事を見つけたときには、ほんとうに嬉しかった度
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猫ニュー

『オフサイド・ガールズ』

2007-06-13 15:36:14 | 新作映画
(原題:Offside)

----これってイラン映画だよね。
けっこう評判になっているみたいだけど?
「うん。なんと言ってもアイデアがいいね。
イランでは女性がサッカーの試合を競技場で観ることは厳禁。
でも、目の前で好きなチームを応援したいと思うのはファン共通の心理だよね。
そこで男性に変装して競技場に潜り込もうとする女性が続出。
これは、試合が始まる前にあえなく入場ゲートで捕まって
競技場内にある仮設の留置所に入れられた少女たちと
彼らを警察に引き渡すまで拘束する警備の兵士たちとの
駆け引きが描かれた映画なんだ」

----ニャるほど。これはある意味、
自分たちが属する国家への異議申し立てになっているんだね?
「そういうこと。
しかしこの映画、いったいどうやって撮影したんだろう?
冒頭に字幕でワールドカップ最終予選の
イランVSバーレーンの試合中に撮影したと出ることもあって、
一瞬、ドキュメンタリーを観ているかのような錯覚に陥ってしまう。
競技場には試合前から大行列ができ、兵士が入念なチェック。
ところがこの兵士たちがまるで俳優には見えないんだ。
ホンモノの兵士のようにリアル」

----ふうん。女性は競技場に入れないのに、
よく撮影できたよね?
「そこなんだよね。
一部だけど試合も映るしね。
実は、この捕まった中のひとりの少女が
トイレと言う名目で競技場内へ。
そこで脱走に成功して逃げ回るんだけど、
ここなんぞ、ほんとヤバいんじゃないかと思ったね。
おそらく吹き替えとかも使っているんだろうけど…」

----つまりドキュメンタリー的錯覚さえ持たせてしまうほどに、
よく作られたフィクションと言うことニャんだね。
「そういうこと。
海外での評価も高く、
実際、この映画を観たアフマディネジャード大統領は
スタジアムに女性席を設けようとしたらしい。
でも国会で反対にあったようだけど…」

----それはまたニャぜ?
「イランで試合に女性を同席させないのはその『騒音』が理由なんだって。
男たちの応援の下品な言葉を
彼女らに聞かせたくないのだとか。
と言うわけで、スタジアム内には女性トイレもなし。
映画では、これらの差別について食って掛かる少女と
受け答えにたじたじの若い兵士のやり取りも見モノ。
兵士が彼女らの拘束には
自分の生活がかかっていると訴えるシーンも切実。
ただ、ワンアイデアで引っ張りすぎたって気もしないでもない。
ラストの展開も予想がついちゃうしね」


   (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ぼくはサッカーよりも映画に行きたいニャあ」ぼくも観たい

※そう言えばイラン映画って、これまで女性があまり出てない度
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猫ニュー

『サルバドールの朝』

2007-06-11 15:31:14 | 新作映画
(原題:Salvador (Puig Antich))

----ダニエル・ブリュールって久しぶりって気がするよね?
「うん。一昨年とかはたくさん出ていたのに、
日本に来るのは『戦場のアリア』以来じゃないかな」

----彼ってドイツ映画が多いと言うイメージがあるけど
この作品はスペインが舞台なんだよね。
「そうなんだ。
ダニエルの生まれはバルセロナ。
父親がドイツ人、母親がカタルーニャ人。
本人はドイツ語とスペイン語の両方を話せる。
他にも英語、フランス語に秀でていて、
この映画ではスペイン語とカタルーニャごを話している」

----それはこれからの活躍が望めそうだニャ。
「そうだね。
現在ハリウッドで『ボーン・アイデンティティー』の続編、
『The Bourne Ultimatum』を撮影中らしい。
彼のキャリアからすると、少し遅いくらいだね」

----ふうん。そうだったんだ。
この映画ってスペインのアナーキスト青年の話ニャんでしょ。
彼って『グッバイ、レーニン!』とか『ベルリン、僕らの革命』とか
政治がらみの映画への出演が多いよね。
「そうだね。その甘いマスクが政治色をうまい具合に中和させるのかもね。
とは言え、今回はアナーキスト。
これまでよりかなり過激だね。
銃は打つし、銀行強盗は犯すし……」

----えっ、イメージしていたものとだいぶ違う。
学生運動の話じゃなかったの?
「うん。1970年代初頭。
フランコ独裁政権に、自由を求める多くの人々が反対の声を上げる。
その中で、青年サルバドール(ダニエル・ブリュール)は
活動資金を得るため銀行強盗に手を染めていく。
ここの描き方が『明日に向かって撃て!』か『デリンジャー』かって感じ。
西部劇やギャング映画を連想させるくらいだから、
もっとロマンやリリシズムが浮き彫りになってもいいんだけど、
なぜかそうはならない。
彼の行動が
普通の生活を送っている人たちに迷惑をかけているようにしか見えないんだ。
70年代と言う、まだ過去と言い切ることができない新しい時代だからか、
そのような行為がファンタジーとしては見ることができないんだね」

----あ~あ。ニャるほど。
日本で言えば赤軍派みたいなものか。
その過激な闘争が時代から遊離しているってワケだ。
「いやいや、そう言いきる自信はないね。
地球の裏側にある、よく知らない世界のことだし…。
ただ、個人的には彼の行動にあまりノレず、
そのため映画が転調する後半もサルバドールに同化できなかった」

----どういうこと?
「この映画では後半、
サルバドールの死刑判決をめぐって
それを阻止しようとする人々や
彼の家族、さらには看守とのふれあいが中心となってくる。
『デッドマン・ウォーキング』と同じ、
いわば死刑囚の最後を見つめた映画と考えていい。
ところがさっきからぼくが言っている前半のサルバドールの過激な行動が、
彼への感情移入を妨げてしまう。
サルバドールの容疑は
逮捕時に彼が暴れて乱射した銃弾による警官射殺。
サルバドールの拘束中に別グループのブランコ首相暗殺事件が重なり、
権力側は彼に死刑宣告するわけだけど、
実はこの警官の死体からは
サルバドールが撃った以外の銃弾も発見されたことが明らかとなる」

----ニャるほど。じゃあ彼の銃弾が直接の原因かどうかは分からないわけだ。
「そういうこと。
映画はここも意外とさらりと描いていくため、
冤罪と言う方向への掘り下げからもそれてしまう。
いま、思うにこの映画は
そういうすべてのことを抜きにして
一つの命を権力が残酷な手段で消すということの是非を問いたかったんだろうな」


  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「鉄環絞首刑って怖いニャ」もう寝る

※う~ん。重い。どんより度
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猫ニュー 

画像はスペイン・オフィシャルより。

『リトル・チルドレン』

2007-06-07 23:47:43 | 新作映画
(原題:Little Children)

※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


----この映画、ジャッキー・アール・ヘイリーがカムバックを遂げた作品だよね。
確か、各映画賞で助演男優賞にノミネートされていなかったっけ?
「うん。厳密には
その前の『オール・ザ・キングスメン』が復帰第一作だけどね。
それにしても、『がんばれ!ベアーズ』の少年が
こんな冴えない風貌のオジさんになっちゃうとは
いやあ、ちょっと信じられないよね」

----それと、ケイト・ウィンスレットの
5度目のアカデミー賞ノミネートだっけ。
俳優のことばかり話題が先行しているけど、
いったい、どんな映画ニャの?
「じゃあ、ストーリーを簡単に。
郊外の街に住む主婦のサラ(ケイト・ウィンスレット)は、
近所の公園で司法試験の合格を目指す子連れの主夫ブラッド(パトリック・ウィルソン)と出会う。
最初こそ、握手して別れるだけの自制を持っていた二人だけど、
いつしか彼らは道ならぬ関係になってしまう。
そんな中、街では元受刑者のロニー(ジャッキー・アール・ヘイリー)が出所。
ブラッドの友だちで元警官のラリーは、
子供たちを守るためロニーを糾弾するビラを街中に貼り回る。
周囲から拒絶されるロニーを暖かく見守る母親のメイ…。
彼らの物語は、ある夜、沸点を迎える……」

----あれれ、これもまた『クラッシュ』『バベル』のように
いくつかの物語が並行し、最後に交錯するお話?
「いや。そこまで複雑な構成ではない。
ロニーのことは街の誰もが知っているわけだからね。
映画にナレーションが多用されていることもあって、
話の筋は実に分かりやすい。
主人公たちの感情、その推移まで説明してくれるからね」

----ふうん。でもそれって映画の手法として安直すぎない?
「そうかな。
ぼくはトリュフォーも多用したこの手法は、けっこう好きだけどね。
映画に、ある種のアクセントをもたらせるし、
なによりも劇中に入り込みやすい。
この映画の場合、脚本に原作者トム・ペロッタ自身も参加。
文字で作られた世界を映画に置き換えるには
どの方法がベストかを考えた上での選択だと思うな」

----ところでタイトルの意味は?
「映画を観ているうちにだれもが気づくことだけど、
ここに出てくる大人たちは、みんな子供。
サラとブラッドはそれぞれ
夫がいて、あるいは妻がいて、子供がいて……。
でも考えるのは自分のことばかり。
そこに“自分の居場所はここではないはず”
“これはほんとうの自分ではない”という現実忌避の観念が結びついてくる。
彼らを取り巻く他の大人たちにしても
自分の価値観を金科玉条に生きているという意味では大差ない」

----ロニーの場合は?
「うん。彼の描き方も興味深い。
果たして彼は更生したのかどうか?
ロニーを執拗に付け回すラリーの過去と現在も含めて
彼の物語が単なる不倫ものに陥ることを防いでいる」

----どういうこと?
「この映画に含まれるメッセージ、
それは
『過去は変えられないけど、未来は変えられる。
さあ、一歩踏み出そう』ということ。
実は、ラスト近くで象徴的な映像が出てくる。
ブラッドとの駆け落ちを決意したサラ。
彼女は深夜の公園で3歳の娘を見失ってしまう。
ところがその娘は取り憑かれたように何かを見ている。
それは街灯に群れる無数の蛾……」

----ニャるほど。それがこの映画の大人たちを象徴しているってワケだ。
「そう。この映画の登場人物たちは、
みんな光を求めて
あがいている……ぼくにはそんな気がしたね」



   (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「うたた寝はなさそうだニャ」ぱっちり

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猫ニュー 

画像はアメリカ ・オフィシャル壁紙より。

『ルネッサンス』

2007-06-05 23:33:26 | 新作映画
(原題:Renaissance)


「さて、今日は苦手の近未来アニメ…。
チャチャッとやってしまうかな」

----あらあら(笑)。
でも確かに、えいの苦手そうなアニメだね。
退屈したんじゃないの?
「うん。絵は白黒でグラフィックだし、
こりゃダメかもと覚悟していたんだけど、
最後の方は前のめりだったね。
その凝ったアングルのおかげもあって、
カーチェイスやフィジカル・アクションが
まるで実写映画を観ているかのように興奮させられる。
それがガラスによって何層にも分かれている
レトロフューチャーなパリの街中で展開するんだから、
言うことなしだ。
後で、知ったんだけど、
この映画、
モーション・キャプチャーを使用。
その流れるような動きは当然ってわけ。
でも、同じモーション・キャプチャーでも
『ポーラー・エクスプレス』とはまったく違う。
『シン・シティ』からさらに色をそぎ落とした映像。
はて、これのどこが3Dなのやら、
アニメ音痴のぼくには
まったく?だ(汗)」

----まあまあ(汗)。でも、それでもオモシロかったわけだ。
「うん。少しネタバレチックになるけど、
物語に“永遠の命”が絡んでくる、
『火の鳥』に慣れ親しんでいる日本人にとっては分かりやすい設定。
それでいながら、
主人公が警部でベースにハードボイルドが流れている。
しかもそのヒーロー&ヒロインのラブロマンスもあれば
マッドサイエンティストも、その裏幕の巨大資本家もいる。
それらが一つのドラマの中で絡み合うんだから
見どころは十分だ」

----で、どんなお話ニャの?
「何者かによって誘拐された女性研究者を追うカラス警部(ダニエル・クレイグ)。
ところが、その背後には
人類の未来を大きく左右する巨大な陰謀が隠されていた……というもの。
冒頭、クラブのようなところから始まるため、
そのコントラストの強い映像と大音量で
これはついていけないなと思ったのが嘘みたいに、
後半はハードボイルド、そしてミステリーの定石通りに展開していく。
劇中、何度も挿入されるアドボードなど、
きっと『ブレードランナー』の影響が大きいんだろうね。
思えばあの映画もハードボイルドとSFを融合させた作品だった」

----ふうん。それって雰囲気だけじゃニャいの?
「いや、物語の結末の付け方なんかもそうだね。
ここもネタバレになるから
あまり詳しくは言えないけど、
そのストイックな締めくくり方は
けっこう後を引くよ」



    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「いろんなアニメがあるニャ」ぱっちり

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猫ニュー 

画像はアメリカ ・オフィシャルより。


『イラク ー狼の谷ー』

2007-06-04 23:28:38 | 新作映画
(原題:Valley of the Wolves : Iraq)


「いままでいろんなキャッチコピーが映画を売るために考案されたけど、
この映画のそれはちょっとスゴいね(笑)」

----ニャんだっけ?
「『アメリカ敗北』。
『東京スポーツ』なら最後に『か?』を付けるところだけど、
これは断言しているから、またスゴい」

----どの戦争で敗北したの?
「そこなんだよね。問題は。
アメリカが敗北した戦争と言うと、
一般にはベトナム戦争がイメージされるけど、
これはいまだ進行中のイラク情勢が背景。
この映画は、2003年7月、イラク北部の戦場で起こった
アメリカ兵によるトルコ兵拘束事件で幕を開ける。
同盟国であるはずのアメリカ兵に突然司令部を襲撃され、
屈辱的な姿で連行されたトルコ将校は、
一通の手紙を友に送り、自殺。
復讐を託されたトルコ諜報員ポラット(ネジャーティ・シャシュマズ)は
数人の仲間とともに
指揮官サム・マーシャル(ビリー・ゼイン)率いるアメリカ兵と戦うと言うお話だ」

----ニャるほど。これは反米映画ってワケだ。
「しかも映画には、
マスコミで報じられた
実際の事件を彷彿させるおぞましいできごとが次々と出てくる」

----たとえば?
「結婚式虐殺事件、アブグレイブ刑務所事件、
コンテナ輸送虐殺事件、臓器売買疑惑、
これら米軍の蛮行に加えて、
イスラム過激組織によるジャーナリスト殺害事件や
子供を殺された父親の自爆テロもある。
映画は、この結婚式で新婚の夫を殺された
新妻レイラの助けを借りてボラットたちが戦うさまが描かれる。
でも映画と言うより長編のテレビドラマみたいな感じ。
映像がベタッとしていて、あまり深みがないんだね。
なんて思って観ていたら、
この主人公の諜報員ポラットと言うのは、
もともとテレビシリーズのキャラクターらしい。
もっともそこでは敵がマフィアだったらしいけど…」

----ふうん。でもアメリカの有名俳優も出ているんだよね?
「さっきのビリー・ゼインに加え、
ゲイリー・ビジーが臓器売買を手がけるドクターに。
ふたりとも、まあ憎々しいことこの上ない。
ビリー・ゼインはいつも白い服。
これが少し『真昼の用心棒』のニーノ・カステルヌオーボを思わせたね」

----ニャに、それ?
「ルチオ・フルチのマカロニウエスタン。
ニーノ・カステルヌオーボが演じているのは、町を牛耳る悪役。
なんだか、それにそっくりなんだ。
ビリー・ゼイン演じるサム・マーシャルは司令官でありながら、
私利私欲が全面に出ている。
で、個人的にはクラシックを愛好し、
白いピアノをプレゼントされたりする。
あっ、これってマカロニのパロディ
『ガンクレイジー・episode1復讐の荒野』で
鶴見辰吾が同じようなことやってたな。
やはり白い服で……。
そう言う映画の記憶があるからかな。
この映画、政治性は確かにあるものの、
基本はアクションと言う風に感じられて仕方がなかったね」


    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「『狼の谷』って、どこにあるニャ」ぱっちり

※ちょっと長すぎる度
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猫ニュー 

画像はトルコ・オフィシャル壁紙より。