ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『アンコール!!』

2013-05-30 21:12:55 | 新作映画
※カンの鋭い人は注意。
※中で使われる歌など、映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。





(原題:Song for Marion)


----この映画に似たような話、
前に聞いたことある気がする。
ほら、高齢の人たちばかりの合唱団…。
『ヤング@ハート』のことだね。
ぼくも観るまでは
あの映画のドラマ版かと…。
事実、あれはあれで感動的だったし、
それがドラマ化されるなら
これは一見の価値あり…と。
ところが…」

----ところが…?
「設定は似ているけど、
同じもの問うワケではなかった。
これは英国アカデミー賞にも新人賞としてノミネートされた
新鋭ポール・アンドリュー・ウィリアムズ監督の半自伝的作品」

----えっ、年齢的におかしくない?
新人なのに、こんな歳を取った人の話で、
しかも半自伝ニャんて…。
「いや、
それは彼の両親に関する話という意味。
さて、まず物語を整理しよう。
舞台はロンドン。
無口で気難しいアーサー(テレンス・スタンプ)。
頑固者の彼は息子との関係もぎくしゃくしている。
アーサーが笑顔を見せるのは最愛の妻マリオン(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)にだけ。
病弱だが陽気なマリオン。
その趣味はヘビメタやヒップホップなどにもチャレンジする
シニアの合唱団“年金ズ”で歌うこと」

----それって、
アーサーの性格からすると、
ついていけなさそう。
「だよね。
アーサーは彼女の送り迎えだけ。
いつも終るのを待って外で煙草プカプカ。
そんなある日、
“年金ズ”が国際コンクールのオーディションに出場することに。
ところが喜ぶマリオンに、
なんとガンが再発したという告知が…」

----うわあ。
「さて、どうしようかな。
この後のストーリー、
喋っていいのやらいけないのやら」

----でも、想像はつくよ。
だってキャッチコピーが
『歌わにゃイカん理由ができた。』
「う~ん。
でも、ここは押さえて…。
ストーリーよりも別のことを語っちゃおう。
この映画、見どころは
テレンス・スタンプヴァネッサ・レッドグレイヴの共演。
片や『コレクター』『テオレマ』における
神秘的な“ブルーアイ”で世界の女性を虜にしたばかりか、
今でいうシネフィルの心にいつまでも生き続けている神話的存在。
そしてもうひとりは
リリアン・ヘルマン原作の『ジュリア』ジェーン・フォンダと共演。
アカデミー助演女優賞を受賞するも
授賞式でのスピーチが政治的と物議を醸しだした伝説の女優。
いずれも“時代のアイコン”。
そのふたりがこうして共演している。
そのことだけでもぼくの心を震えさせずにはおかなかった」

----ふたりとも実際に歌っているの?
「うん。
その選曲が素晴らしい。
ここからはネタバレだからね。
「なかでもレッドグレーヴが歌うシンディ・ローパーの『True Colours』
これが映画の内容にピッタリとフィットしているんだ。
そしてテレンス・スタンプのビリー・ジョエル『Lullabye (Goodnight My Angel)』
ここでは、その青い目に、
ほんのわずかだけど涙がこぼれる。
この涙の量がもう見事の一言。
これより多くても少なくてもいけない。
もう、役者の真髄を見た気がしたね。
後半、ある<障壁>を入れているとはいえ、
話自体は、そう珍しいものでもない。
これは間違いなく“役者”で見せる映画。
しかも、かつて彼らの映画を観てきた人の心を打つ映画。
いまの若いファンにはあまりなじみのない
ふたりの俳優を起用してのこの映画、
それを輸入配給したアスミック・エースの“仕事”の素晴らしさには
いくら拍手を送っても送り足りないね」




「テレンス・スタンプって、ほんと美形だったのニャ」2009.4.7フォーン


※「『テオレマ』がプレスのフィルモグラフィから漏れてるのは問題だ度」
http://www.youtube.com/watch?v=mQiDs9tKZv4
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『俺はまだ本気出してないだけ』

2013-05-25 14:53:41 | 新作映画

(原題:Oblivion)


「今日は、ちょっと気楽な映画を…」
----確かに。
この映画、
タイトル聞いただけで噴き出しそう。
これって原作、漫画ニャんでしょ?
「そうらしいね。
いつものことで、ぼくは読んではいないけど、
プレスに載っている絵を見る限り、
この主人公、大黒シズオは
彼を演じた堤真一とは似ても似つかないキャラ。
体型もまったく違うし、
最初にオファーがきたとき、
堤真一は『冗談か『』と思ったらしい。
で、原作者からOKがでて『え?本当にやるの?』(笑)」

----でも、ここでこうやって喋っているってことは、
かなり楽しんだってことだよね。
「うん。
自己反省も含めてね。
この大黒シズオ。
『本当の自分を見つける』と会社を辞めた後、
一人娘・鈴子(橋本愛)を抱えていながら、毎日、朝からゲーム三昧。
そんなある日、本屋で立ち読みをしていたシズオは突然ひらめき、
家族に宣言する。
『とうとう見つけちゃったよ。
俺の生き方。
俺、マンガ家になるわ』。
これには、父の志郎(石橋蓮司)も
嘆きを通り越して怒り心頭。
毎日のように取っ組み合いの喧嘩。
だからと言って、一生懸命漫画を描いているかと言うと
何かと理由を付けてはサボり、
サラリーマンをやっている幼なじみの宮田(生瀬勝久)を呼び出しては
グダグダ酒を飲む。
もちろん奢り。
で、アルバイト(ファーストキッチン)先では、
“店長”というあだ名をつけられながら、
新人もやらないような失敗を重ね、
年下の20代の本物の店長(賀来賢人)に怒られ、へこへこ。
で、バッティングセンターで
『いいんですか?本気出して!』
まあ、究極のモラトリアム人間だね」

----て言うか、
究極のダメ人間じゃニャい。
だれかさんと似ているところもあるけど…(笑)。
「あいたたた。
この映画、そのオモシロさとしては『アフロ田中』 と似ているかな。
極端な人間を出して、
その生き方をで笑いを取る。
ただ、主人公の個性だけに頼っていたあちらよりも
この映画の方が広がりを持っている感じがしたね」

----どういうところが?
「彼の周囲にいる人間を
彼のダメさを写す鏡として登場させるんだ。
先ほどの宮田もそうだし、
編集者(濱田岳、指原莉乃)や、
バイト先の金髪青年・市野沢(山田孝之)もそう。
彼らのシズオを見る目、接し方を描くことによって、
彼ら自身の生き方をも浮き彫りにする。
そこがこの映画のオモシロさだと思う。
で、これは絶対言っておかなければいけないのは、
石橋蓮司の針の振り切れた演技について。
主人公は、もちろん堤真一で、
ある夢のシーンでは、なんと神様役も含めてひとり4役の大熱演。
だけど、彼と絡む石橋の演技が
この映画をオモシロくしているのは間違いない。
『あらかじめ失われた恋人たちよ』『竜馬暗殺』など、
“アウトロー”の若者を演じていた彼も
いつしかこんな頑固爺さんをやる歳に。
彼の盟友・原田芳雄が亡くなった後だけに、
よけいに感じるものがあったね」


「こうはなってほしくないのニャ」なにこれ?


※「かなりヤバいかもだ度

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『華麗なるギャツビー』(バズ・ラーマン×ディカプリオ版)

2013-05-23 23:10:43 | 新作映画

(原題:The Great Gatsby)



----これって、観るまで少し不安を抱いていた作品だよね。
「うん。
オリジナルの印象があまりにも強いからね。
まずは、そのさわりを…。
宮殿のような豪邸に暮らす一人の男。
彼の名はジェイ・ギャツビー(レオナルド・ディカプリオ)。
毎日のように、
豪華絢爛のパーティを繰り広げるその屋敷には、
招かれもしないのに、
街から多くの客がやってきては狂乱の夜を愉しんでいた。
そんな中、ニック(トビー・マグワイア)は
彼から一通の招待状を受け取る。
なぜ、自分にだけそんなものがくるのか?
いぶかりながらパーティに出かけた彼の前に、
ギャツビーその人が姿を現す。
それは、これまで彼が見たこともないような
ステキな笑顔を持った男。
裕福な名家に生まれ、贅沢な暮しを送り、
戦争では数々の勲章を受けて英雄に…。
あまりにも出来すぎたその話に
ニックはどこか引っ掛かるものを感じるが…。
う~ん。難しいな。
これは前作ロバート・レッドフォード版『華麗なるギャツビー』を見ている人になら話せるけど、
もし、これが初“ギャツビー”体験だとしたら、
これ以上は言わない方がいいのかもしれない。
なぜ、彼がこの地に居を構えたのか?
なぜ、毎夜、パーティを開くのか…?」




----そうか。
これって、
かつて愛し合ったデイジーを取り戻そうとする話だったよね。
「あらら。言っちゃった。
まあ、そこまではいいか。
かつて相思相愛の仲だったにもかかわららず、
いまは別の男の妻となっているデイジー。
彼女に見合うような男になるべく、
危ない橋を渡りながら
彼は莫大な財産を築いていった…。
野望はすべてその恋を成就するため――それがギャツビー。



実は、前作のレッドフォード版では
あまりにも残酷なラストカットに
ぼくは、ちょっとしたトラウマを抱えてしまったほど。
この映画では、
そこに象徴された“女の残酷さ”を
どのような形で見せるのか?
これが本作に対するぼくの最大の興味だったわけだ。
当時と違って、
映画は<余韻>を持たせる方向へと進んでいるからね。
もしかしたらそれは、
その後に続くエンドクレジットとの親和性のためかもしれないけど」

----そう言われると、
最近は
バシッと終る映画って少なくなったよね。
結果、どうだったの?
「いやあ、まいりました。
ぼくは、ここまで
観る人の網膜に余韻を残すラストカットを見たことがない。
このバズ・ラーマンという映像の魔術師、
それを
映画を成り立たせている基礎、
光と闇だけでその<余韻>を創りだしているんだ。
しかも、そこで写される<灯り>が映画の内容と深くリンクしているという完璧さ。
もとより『ムーラン・ルージュ』など
技巧派として知られるこの監督が
いったい、どのようなアプローチでこれを映画化するのか、
見る前はかなり心配していたんだけど、
なるほど、こういう方法もあったのか…と。
3Dの素晴らしさにしてもあの『』と肩を並べる。
あまりにもゴージャスな夢幻の世界に
もう、陶然としてしまったね」

----ディカプリオは?
レッドフォードとはキャラが違うけど…?



「これがオモシロいもので、
最初出てきたときはレッドフォードかと…。
もちろん、それは正面から写されたものではなく、
もうひとつの象徴的シーン、
桟橋でデイジー(キャリー・マリガン)が住む対岸を眺める後ろ姿なんだけどね。
以後は、ディカプリオならではの個性、
<大人になりきれない未熟>さを役の中に取り入れることで、
紳士レッドフォードとの差別化を行なっている。
なかでも、自分を見失い激昂するシーンは圧巻。
ニックの言葉を借りれば“殺人者”
これは『ジャンゴ・繋がれざる者』 での“グラス血まみれ”をも超える」

----なんか、
話聞いていると、
レッドフォード版よりも気に入っているみたいだけど…?
「もともと前作は、
原作にのっとって描いたと言うだけで、
映画としての魅力はあまり感じなかったからね。
ところが今回は違う。
バズ・ラーマンという映画の魅力を知り尽くした男の手によって
原作に新たな命が吹き込まれた、
そう言い切ってもいだろうね。
う~ん、これもまた観たいなあ」


ディカプリオ、いよいよオスカーかニャ」2009.4.7フォーン


※「またまたトラウマになりそうだ度
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『エンド・オブ・ホワイトハウス』

2013-05-22 23:42:05 | 新作映画
(原題:Olympus Has Fallen)


----確かこの映画って、
最初のうち、
エイリアン侵略ものと
勘違いしていたヤツだよね。
「そう。
ちょうどアスミックに行った時、
巨大POPを作っていて…。
それがホワイトハウスだったものだから、
『インデペンデンス・デイ』とダブって…。
実際は、テロリストの侵略によって
ホワイトハウスが陥落するという話だった(汗)」

----陥落って
ホワイトハウスが
テロリストにジャックされちゃうってこと?
そんなこと可能ニャの?
「これは
この映画で初めて知ったんだけど、
ホワイトハウスに軍が到着するまでには
なんと15分かかる。
そこから創りだされたのが
『13分で陥落し、15分で敵の要塞と化す』という設定。
そのタイムラインの中、
テロリストは、空から奇襲をかけ、
陸上では自らの命を投げ打つ、
いわゆる人間爆弾までをも駆使し、突撃してくる。
この<画>が
これまでだれも見たことがないモノ。
それもそのはず、
建国以来、アメリカという国は
敵国から本土攻撃を受けたことはない。
ところがここでは、
ホワイトハウスのあるワシントンD.C.が
一瞬にして市街戦の場と化すんだからね」

----うわあ。
不謹慎だけど、それは見てみたくなるニャあ。
「確かに。
かなりショッキングではあるけどね。
なにせ、空からの機銃掃射でホワイトハウス前の人々が
次々に犠牲となっていく。
まるで戦争映画の市街戦を観ているかのような、
そんな錯覚に陥ってしまう」

----でも、そんなに簡単に空から攻撃なんてできるの?
「これは正直、
“ありえない”かなと…。
でも、そういうことを
チクチクつついていたら、
この映画は成り立たなくなる。
オモシロい<画>を見せる…
それが第一義的という意味では、
これは、ぼくの中では十分にありだね。
そういう“ありえない”ことの流れで言えば、
主人公の“ダイ・ハード”ぶりも同じ。
ジェラルド・バトラー扮するマイク・バニングは
人質となった大統領(アーロン・エッカート)救出のため、
単身、ホワイトハウスに乗り込んでいく。
いくら運が味方するとはいえ、
他のシークレット・サービス全滅の中、
そのタフネスな戦いぶりは人間離れしすぎている」

----そのマイク・バニングって人も
シークレット・サービス?
「そう。大統領専任のね。
ところが、これもよくある話で
一年前、大統領夫人の命を守れなかったことから
いまは現場を離れているという設定。
つまり、これは彼の名誉回復を賭けたお話でもあるんだ」

----ニャるほど。
クリント・イーストウッド『ザ・シークレット・サービス』
そんな話だった。
ところで、彼らテロリストの目的は?
「これは、
アメリカの核の無力化。
もし、敵が核攻撃を仕掛けてきたとしても
合衆国内に核がなければ
報復はしたくてもできない…」

----あっ!
「実は、
この映画には、
そのさらに<先>があるんだけどね。
でもこれについては言わない方がいいかな。
そういえば
やはり6月に公開される
『G.I.ジョー バック2リベンジ』も、
テロリストの作戦は途中までそっくり。
そういえば、あっちにも北朝鮮が…」

----えっ、もしかして
そのテロリストって!
う~ん。

テロリストの要求がスゴイらしいのニャ」おっ、これは



※「日本海域からの米国第7艦隊の引き揚げ、そして非武装中立地帯から28,500名の米軍全員の撤収だ度

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『オブリビオン』

2013-05-18 14:39:29 | 新作映画

(原題:OBLIVION)




----これって、
最近トム・クルーズが来日して話題になった映画だよね。
「うん。
トム・クルーズは華があるよね。
ぼくはこれまでに
シュワルツェネッガー、ハリソン・フォード、さらには
ディカプリオなどの来日記者会見に行ったことあるけど、
変な意味で慣れっこに。
それほどの興奮を味わうことはなくなっていた。
ところがトム・クルーズだけは別。
『アイズ ワイド シャット』ニコール・キッドマンと共に
東京国際フォーラムに姿を現した時、
思わず息を飲んだモノ」

----『アイズ ワイド シャット』って
スタンリー・キューブリック監督の遺作だよね。
そういえば、この映画
『2001年宇宙の旅』が引き合いに出されているみたいだけど…?
「そう。
それと『月に囚われた男』、そして『トータル・リコール』だね。
そのビジュアルひとつとってもそう。
全体的にそのカラーはホワイトで統一されている。
製作者サイドが
『2001年宇宙の旅』を意識したことは間違いないだろうね。
でも、これってあまり言っちゃうと
ネタバレになるからなあ」

----ということは、
映画の中身も難解ニャの?
「いや、
そう構えて観ることはないと思う。
物語は、こう。
2077年、地球はスカヴと呼ばれるエイリアンの侵略によって壊滅。
生き残った人類は土星の惑星タイタンへと移住を果たす。
荒廃した地球にはドローンという無人偵察機が飛び回り、
ジャック(トム・クルーズ)はパトロール機バブルシップを駆り、
そのドローンを管理している。
そんなある日、ジャックは墜落した宇宙船で眠る美女ジュリア(オルガ・キュリレンコ)を発見。
目を覚ました彼女はなぜか会ったことのないジャックの名を口にする…

----へぇ~っ。
ミステリーがらみニャんだ。
「そう。
この映画は、
いわゆる宇宙でのバトル
(もちろんそれも見モノだけど)よりも、
その<謎解き>を核に置いている。
だからこそ、ぼくが入りこみやすかったとも言えるね。
戦いばかりでシーンを繋いでいくんだったら
それはアトラクション、あるいはゲームで十分だもの。
やはり、観ながら
考えるところがほしい」

----ふうん。
その任務には
ジャックはひとりであたっているの?
「いや、高度1,000mのところにそびえたつスカイタワー
同じ任務に就く妻ヴィクトリア(アンドレア・ライズブロー)と暮らしている。
さて、問題はここから。
ふたりは、機密保全のため記憶を消去されている。
ところがその任務もあと2週間で終りという頃になって、
ジャックは、頻繁に、ある女性の、
しかも地球にまだ文明が残っていた頃を背景にした夢を見るようになる」

----うわあ、オモシロそう。
「でしょ。
実はポイントはココにある。
なぜ、ジャックは夢を見るのに、
ヴィクトリアのほうは見ないのか!?
それは結局は
それぞれの<愛>の深さの違いへと繋がってくる。
これに気づいたとき、
一見、難解に見えるこの映画もまた、
愛こそすべて”という
ハリウッド伝統の映画へと転化する。
さて、ビジュアルに話を戻すと、
この映画で人気が出ると思われるのが
ドローン、そしてバブルシップ。
このユニークなデザインは
『ブレ―ドランナー』シド・ミードが作り上げたスピナーに匹敵すると思うよ。
さっきは、バトルについてさらりとしか話さなかったけど、
シューティング・ゲーム世代にとっては嬉しくなるシーンも満載。
そのオチも含めて、
久しぶりに満足ゆくSFに出会った気がしたね」


「その時代、地球の月はエイリアンの攻撃を受けて
なくなっているらしいのニャ」2009.4.7フォーン


※「これもまた漫画『幻魔大戦』のラストカット以後の世界だ度
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画像はオリジナル・ポスター。

※劇中で使用されている「青い影」(プロコルハルム)

<iframe width="420" height="315" src="http://www.youtube.com/embed/buSzOh84QX4" frameborder="0" allowfullscreen></iframe>

『25年目の弦楽四重奏曲』

2013-05-09 22:08:53 | 新作映画
(原題:A Late Quartet)


----もしかして、
いま映画界ってクラシックばやり?
最近も、やはりベテラン俳優4人が共演する
音楽映画があったような気がするけど…。
ダスティン・ホフマンが監督した『カルテット!人生のオペラハウス』のことだね。
ただし、あちらの主要人物はみな声楽家。
弦楽四重奏団結成25年前夜に起こったある“事件”を描いた
この映画の方が
“カルテット”という言葉にはピッタリのように思うな」

----えっ、ニャにか“事件”が起こるの?
「うん。
チェリストで最年長者のピーター(クリストファー・ウォーケン)が
突然、パーキンソン病に侵されてしまうんだ。
メンバーに迷惑をかけてはいけない。
そう考えた彼は、
今季を持って引退したいと申し出る。
だがそれをきっかけに
それまで抑えてきた感情や葛藤が露わに。
メンバーの間に不協和音が響き始めるんだ」

----へぇ~っ。
フォーンの住む世界とはあまりにも違うから
考えたこともなかったけど、
これって意外にありそう。
「うん。
たとえば人気バンドの突然の解散。
その理由には
メンバーの体調不良があったりとかね…。
ただ、若いミュージシャンたちに比べて、
この映画の4人の場合は、
その生きてきた年輪が違う。
たとえばメンバーの紅一点、
ビオラのレイチェル(キャサリン・キーナー)をめぐって
第1バイオリン、ダニエル(マーク・イヴァニール)と、
第2バイオリン、ロバート(フィリップ・シーモア・ホフマン)の間には、
若き日に恋の火花が散ったことも。
結果、彼女はロバートと結婚し、
娘ももうけているけど、
このカルテットの第1バイオリンはダニエルの方」

----はい。
ここで質問。
第1バイオリンの方が
第2よりも腕がいいの?
「いや、そういうことじゃないらしい。
第2バイオリンは第1を引き立たせ、
他の奏者たちと繋ぐ役割を持つ。
どっちが上というワケじゃなんだ。
ただ、やはり花形なのは第1。
そこでロバートは、
このピーターの引退を機に、
曲によって第1と第2を変えようと提案する」

----ニャんで、こんな微妙な時期に?
「ピーターの代わりに新しいメンバーを入れるということは
楽団としての<音>を新しく構築することを意味する。
こういう時期だからこそ、
こんな提案があってもいいじゃないか…
ロバートは、そう考えるんだね。
ところがこれに対し、
ダニエルはおろかレイチェルも猛反対。
自分の才能を認めていない--
そう受けとったロバートは妻に腹を立て…
というように、それまでの関係がどんどん崩れていくんだ」

----ニャるほど。
よく考えたシナリオだニャあ。
「この映画、
それまでぼくの知らなかった
いろんなクラシックの逸話を盛り込んでいて、
それだけでもとてもためになたt。
たとえば、彼らが記念すべき25周年の演奏に選んだのは
シューベルトが死の間際にその曲だけを聞きたがったという
『ベートーヴェン弦楽四重奏曲第14番』
なんとこの曲は
4楽章がスタンダードだった時代に
7楽章編成で作られている。
しかもベートーヴァンはこの曲を『アタッカ』で演奏すべきとしたらしい」

----『アタッカ』?
「楽章の間にポーズを入れないこと。
この曲の場合、
それは40分間も休憩なしで演奏することを意味する。
となると、各楽器の音程はバラバラに。
さて、演奏家たちはそれにどう対処したらいいのか?
『演奏を止めるべきか?
それとも調弦が狂ったまま最後まで互いにもがき続けるか?』
この興味深い問いかけに
監督ヤ―ロン・ジルバーマンは語る。
『これは、長きにわたる人間関係の格好のメタファーだと思った。
人は時の経過と共にさまざまな変化を遂げるわけだから、
長きにわたる関係には常に調整や微調整が必要とされるのである』

ほんと、オモシロいところに目を付けたもの。
この映画も脚本はオリジナル。
それも監督自身の。
日本映画にもこういう人が出てきてほしいな」


「演奏シーンにも圧倒されるのニャ」2009.4.7フォーン


※「最後の演奏のゆくえは見モノだ度
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『欲望のバージニア』

2013-05-05 18:51:19 | 新作映画
(原題:Lawless)


----あれっ。これもギャング映画だ。
ちょっと前にも『L.A.ギャングストーリー』というのがなかった?
「そうだね。
ただ、物語の背景となっている時代が違うし、
描いている視点もあちらとは正反対。
舞台は、
アメリカが禁酒法を敷いていた1930年代初頭のバージニア州、フランクリン。
映画は、酒の密造によってその名を馳せていた
ボンデュラント3兄弟の立場で描かれる。
長男ハワード(ジェイソン・クラーク)は野卑で怪力、
二男のフォレスト(トム・ハーディ)は度胸と気迫で他を圧倒。
そんな彼らは『俺たちは死なない』と豪語。
不死身伝説でも知られていた」

----あれっ。
もうひとりは?
「末っ子のジャック(シャイア・ラブーフ)。
彼はふたりの兄の陰に隠れた、
どちらかというとひ弱な存在。
だが、よくある話で、
この映画は、その三男の、
兄たちに認められたいという思い、
そこからくる先走り、失策によって物語が動いていく。
経験も少なく未熟な彼が動く、そのきっかけを作ったのは、
新任の特別取締官レイクス(ガイ・ピアース)。
ボンデュラント兄弟に高額の賄賂を要求して拒否された彼は、
手始めにジャックを完膚なきまでに殴打。
フォレストは弱音を吐く弟に
『本当の強さは立ち向かう意志だ』と諭す」

----ニャるほど。
そうなるとジャックが奮起するのも当然だよね。
「だよね。
この兄の言葉が彼の心に火を付け、
まずはギャングのフロイド(ゲイリー・オールドマン)と単独で取引。
大金も転がり込み、
大量の金が転がり込んできたジャックだったが、
レイクスのボンデュラント攻撃はエスカレートとしてゆき…という流れだね」

----そんな中に、
女性たちとのロマンスも挟まれるんだね?
ジェシカ・チャスティンとかミワ・ワシコウスカとかが出ているし…。
「そういうこと。
この映画の魅力のひとつは
彼ら、実力派俳優たちによる豪華な共演。
そんな中でも目を引くのは
もはやベテランの域に達しているガイ・ピアース。
髪を真ん中で真っ二つに分け、
眉毛ともみ上げを剃り落としての怪演。
服も、この地には似つかわしくない黒地に水玉のスーツ。
性格はサディスティックで、
自分の服を血で汚さぬよう、手袋をして相手を殴る。
もうひとり印象に残るのは3兄弟の仲間のクリケット(デイン・デハーン)。
ジャックの親友で蒸留器を任せられている彼は脚が不自由。
このことが後に、観る者の感情を揺さぶる“ある出来事”へとつながる。
でも、残念ながら、
映画自体はあまりノレなかったな」

----どうして?
「これも事実だから仕方がないとはいえ、
三男があまりにも幼すぎる。
周りは
足を引っ張られるたびにその後始末をしなくてはならない。
これの繰り返しだから、
観ていてイライラ。
最近、某著名評論家がツイッターに
『映画は主人公が成長しなければいけない』
というような呟きを…。
ぼくはその観方に組みする方ではないけど、
この映画を観ると、
それもむべなるかなと、
そう思わずにはいられなかったね」



「けっこう残酷シーンも多いのニャ」ご不満


※次男がカッコイイ3兄弟と言うと『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』がある度
http://www.youtube.com/watch?v=mQiDs9tKZv4
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『リアル~完全なる首長竜の日~』

2013-05-02 22:40:54 | 新作映画



----これって、カリスマ的な人気を誇る黒沢清監督の作品だよね。
『叫(さけび)』『LOFT ロフト』などのホラー映画でよく知られているけど…?
「原作はホラーというよりもミステリー。
なにせ、あの 『チーム・バチスタの栄光』以来の
選考委員満場一致で『このミステリーがすごい!』大賞に選出されている。
ただね、この手のミステリーの映画化の場合、いつも思うんだけど、
原作を読んだ人には既にネタがバレている。
ということは、そこで張り合ってもしょうがないのじゃないなあと…。
確かにこの物語、
幾層もの謎が仕込んであって、
ぼくもある“どんでん返し”までは読めたけど、
その大元となっている<種>については分からなかったからなあ」

----<種>?
「うん。
それも<恐怖の種>。
これはその<恐怖の種>を探す旅の映画。
黒沢清監督の個性がよく出たホラーだと思う。
そのワケを説明するべく、
まずは簡単なあらすじから。
幼なじみの恋人同士の浩市(佐藤健)と敦美(綾瀬はるか)。
だが一年前、漫画家の敦美は自殺未遂により昏睡状態に陥ってしまう。
浩市は敦美を目覚めさせるため、<センシング>という最新医療によって
彼女の脳内に入っていく。
そこで自殺の理由を問いただす浩市。
だが、敦美は
『首長竜の絵を探してきてほしい』と頼むばかり。
首長竜の絵を探しながら、
何度も彼女の脳内に入り対話を続ける浩市。
そんな彼の前に、見覚えのない少年の幻覚が現れるようになる。
そしてそれは現実の世界をも浸食していく…」

----ぶるる。確かに怖そうだ。
「でしょう。
この黒沢清という監督、
他のジャパニーズ・ホラーとは異なり、
心の奥底までその恐怖の触手を伸ばしているようなところがある。
しかもその表現法が
映像のもたらす効果というものを知り尽くしたところから生まれている。
なかには人の顔がのっぺらぼうと言った日本古来のものもあるけど、
た敦美が連載していたコミック雑誌の編集長・沢野(オダギリジョー)や
彼女の漫画のアシスタント・高木(染谷将太)らの顔が
蒼白く静謐に無表情だったりとかね。
ただ、惜しむらくはその意識下の世界に
現実世界と同じようなSEを付けるのはやめてほしかった。
思い切って無音にするなどの方が、
かえって恐怖を醸しだせたんじゃないかなと…。
ほら、夢ってあまり<音>はないでしょ?」

----さあ、どうだっけ。
人間の<夢>のことまでは
フォーンには分からないニャ。
「そりゃそうだ。
あと、ぼくがこの映画で嬉しかったのは
<自動車>が<移動>するときの描写だね。
『CURE キュア』のバスのときと同じく、
実際に走るのではなく、
流れる風景との合成で見せてくれる。
確か、タランティーノ『キル・ビル Vol.2』でやっていたんじゃないかな。
これってまるでヒッチコックの映画を観ているような
クラシックな香りになるんだ。
で、『CURE キュア』のときにも
そう思ったんだけど、
この手法が出てくると、
それは<異界>に人を運んでいることを意味しているのではないかと…」

----今回もそうだったの?
「う~ん。
そこを話すとネタバレになるけど、
結果的にそういうことかもね。
あと、街が崩れるシーン。この描写はなかなかだよ。
デヴィッド・フィンチャー『ファイト・クラブ』への返歌とも言えるかも。
黒沢清監督、
『日本映画にはジャンルムービーがなくドラマしかない』
というようなことを言っているというのを
ツイッターで読んだけど、
それを自分で一歩踏み出し、破って見せたって感じ。
うん。こういう映画が世界で通用する映画なんだろうな」

----あらら、いきなりまとめちゃった。



中谷美紀、小泉今日子も出ているのニャ」2009.4.7フォーン


※黒沢清監督に村上春樹 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『海辺のカフカ』を映画化してほしい度
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