ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『そして友よ、静かに死ね』

2012-06-30 15:25:23 | 新作映画
(原題:Les lyonnais)


----この映画観たのって確か昨日だよね。
少し早くない。
公開は9月と、ずっと先だし…。
「確かにそうかも。
でも、この映画のオモシロさはちょっと異質。
昨日、ツイッターでもちょっと呟いたけど、
それについて早く喋りたくなっちゃったってワケ」

----どういう風にオモシロいの?
「まず監督を説明すると
『あるいは裏切りという名の犬』で一躍名を知られるようになったオリヴィエ・マルシャル
物語自体は、
まあ、よくある話で、
男の友情と裏切りを裏社会の中に描いた
一種のフィルムノワールもの、
主人公はエドモン・ヴィダル(通称モモン)。
ロマの生まれの彼は子供の頃
周囲からのいじめに遭っていた。
そんな彼を助けたのがセルジュ。
それをきっかけに仲よくなったふたりは、
その青春時代をギャングの一員として過ごし、
派手な強盗事件を繰り返していた。
やがてふたりは他の仲間を連れて組織から独立。
伝説のギャング“リヨンの男たち”として名を馳せるようになる。
そんな過去を持つモモンだが、
いまは財をなし、妻と子供、そして多くの孫に囲まれて悠々自適の生活を送っている。
そんなある日、彼の元に、
麻薬仲間を裏切って逃亡中のセルジュが捕まったという知らせが入る。
モモンとセルジュの過去を知る若手刑事ブロナーは、
モモンがかつての親友を脱走させるに違いないと睨む…。
もう、すでに足を洗ったことを自分の妻にも約束していたモモンだが、
やはり長年の親友を見捨てられず、
セルジュを救おうと決意する…」

----確かに“よくある”のかもしれないけど、
これはいい話だニャあ。
「この暗黒街、友情、裏切りの3点セットは、
近年では、香港ノワールの方が有名だけど、
フランスにはフランスの伝統がある。
ジャック・ベッケル『現金に手を出すな』とか
『仁義』を始めとするジャン=ピエール・メルヴィルの作品とかね。
でも、なぜかぼくはジョゼ・ジョヴァンニを思い出して…。
どうしてだろう?と考えていて気づいたのが
『ル・ジタン』との共通性」

----ジタンってフランスの煙草のこと?
「そう。
あのパッケージにはジプシーの祖度っている女性が描かれているけど、
実はアラン・ドロン主演の映画に『ル・ジタン』というのがある。
これが、やはり主人公がロマ出身という設定。
このあたりが、ごっちゃになって少し分かりにくいかもだけど、
かつて、日本ではロマという言葉はまだ一般化していなく、
ジプシーと呼ばれていた。
そのため、この『ル・ジタン』も主人公はジプシーと表記されているところが多い。
ロマの言葉が映画で定着するのは
母がロマ人のトニー・ガトリフあたりからだね。
さてここで、ついでに連想ゲームをやっちゃうと、
このアラン・ドロンの主演作に『友よ静かに死ね』というのがある。
こちらの方は、同時期にやはり多くの作品を発表した
ジャック・ドレ―監督作品。
まあ、ぼくはこのジャック・ドレ―+アラン・ドロンだと、
ジャン=ルイ・トランティニャン共演の『フリックストーリー』の方が好きだけどね。
この作品は、ジャン=ルイ・トランティニャン出演作の中でも
『男と女』『暗殺の森』『離愁』『狼は天使の匂い』などと並ぶ名作」

----楽しそうに喋っているけど、
話が大分、逸れてニャい。
「あらら。
さて、この映画に戻すと、
その頃のフランス映画の雰囲気が全編を覆っているんだ。
もっとも、最初のうちは、どちらかというと
日本の実録ヤクザ映画を思わせる
ド派手なバイオレンスが続いたけどね。
それと、この映画の魅力は
若いころ、つまり彼らが活躍した70年代を
生き生きと見せていること。
音楽もディープパープル『ブラックナイト』とか
ジョップリンの『ジャニスの祈り』とか、
おそらく当時では
この手の映画にはだれも使おうとは思わなかったようなハードロックが
ふんだんに使用。
あれから長い時を経た今だからこそ、
強烈なノスタルジーを匂わせる。
さっきも言ったように、話はある程度読めちゃうけど、
こういう映画がこの時代、
フランスから甦ったというのがほんとうに嬉しかったね」




                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「この若手刑事の存在がまたいいらしいのニャ」身を乗り出す

※まだ新米の頃、彼と同席したことがあり、
ある種の憧れを秘めているという設定だ度…
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猫ニュー

『おおかみこどもの雨と雪』

2012-06-28 22:01:44 | 新作映画

----この映画のって、
『時をかける少女』『サマーウォーズ』で人気の細田守監督作品だよね。
タイトルが分かりにくいんだけど…。
「そうだね。
でも、よくキービジュアルを見てごらん。
ほら、ふたりの子どもの耳…」

----あっ。
「ね。彼らは
人間とオオカミの間に生まれた子ども。
その名前が“雨”と“雪”ってわけ。
このお父さんにあたる狼男(大沢たかお)は、
映画が始まって、早々に命を落としてしまう。
で、映画は、残された人間の“花”(宮あおい)が
ふたりの子どもを大自然の中で
どのように育てていくかが中心となってくる。
ぼくは、この映画のテーマ、
それは“育”ではないかと思いながら
ずっと観ていた」

----“育”?
「そう。
命あるものは、みな育っていくことによって
生の営みを続けていく。
それは、狼だろうと人間だろうと、そして動物ばかりではなく植物でも同じ。
この映画には、田舎に移り住んだ“花”が
自分たちが食する野菜を育てる…など、
この“育”がさまざまな形で姿を覗かせている。
そして、子どもたちを育てることが、
また、“花”自身が大きく育っていくことでもあるんだ。
“命”だの“生”だのにテーマを持ってくる作品は多いけど、
この“育”に持ってきたところが野心的」

----そう言えば、
プレスにもお花の絵が多い気が…。
「植物の方の<花>ね。
この植物の<花>は、冒頭のお花畑に始まり、
大きな比重を占めて登場する。
たとえば、狼男が亡くなった後、
毎日、その写真の前に<花>が瓶に活けられている…。
田舎に移り住むまでは、
若者ふたりの秘かに育む恋愛という感じで、
まったく違う映画を見ているようだった。
かなり、甘酸っぱいシーンもあるし…。
映画がそのトーンを変えるのは、田舎に移り住んでから…。
子ども時代の“雨”と“雪”がエピソードの多くを占めることもあり、
やんちゃで楽しいシーンが続く」

----でも、いずれ子どもたちも
そのアイデンティティに悩んじゃうよね。
「そういうことだね。
彼らは、人間として生きるのか、それとも狼として生きるのか?
いずれ決断のときはやってくる。
そしてそれは巣立ちのときでもある。
花が育てることから、自分で育つことへ--。
映画はそのクライマックスを
あの『台風クラブ』をも思わせる豪雨の日に持ってくる。
一人またひとりと帰って、自分と草平という男の子だけが残った教室。
“雪”はここで彼に対し、ある<禁断>の行為に出る。
あっ、変な意味じゃないからね。
ここにおける映像は、もう、アニメ史上に残る屈指のシーン。
誰もが息を飲むだろうね。
一方、同時刻、“雨”はある決意の元に森の奥深く入っていく。
それを追う“花”の前に姿を現すのは…!?
ここもまた巧い。
大自然で“育”っているのは人間だけではないこと、
そして、そこにも家族と愛があることを
肌打つ冷たい雨によって、
その下に流れる血の暖かさを見る者に伝えてくれる」

----いよいよ楽しみだ。
音楽もよさそうだね
高木正勝だね。
最初の方で、映画の主旋律が流れてきただけで
涙腺が緩んできた。
世界的な注目を集めている彼だけど、
こういう新しい才能が映画に流れてくるのはとても嬉しいね。
エンドロールの歌も、
よくあるタイアップ曲というのではなく、
歌詞が映画の内容をきちんと押さえている。
監督の細田守自身が作詞しているんだから
当然といえば当然なんだけどね」




                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「日本のアニメーターは、ほんとスゴイのニャ」身を乗り出す

※いまwikiを観たら、なんと細田守監督は『台風クラブ』を名作と評価しているとか。納得だ度…

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『ローマ法王の休日』

2012-06-26 23:04:24 | 新作映画
(原題:Habemus Papam)



※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。



----この映画のタイトルって、
奇をてらいすぎてニャい。
あの有名な映画をパクってる。
「一見、そう見えるよね。
でも、この邦題は、映画の内容をズバリ言い当てているんだ。
物語は、ローマ法王の死去により
ヴァチカンで開催された法王選挙(コンクラーヴェ)に始まる」

----コンクラーヴェ?
どこかで聞いたことがあるような…。
あっ、『天使と悪魔』だ。
「よく思い出したね。
さて、果たして、新法王は誰なのか?
世界中が注目する中、
投票会場のシスティーナ礼拝堂に集められた各国の枢機卿たちは
全員が必死に祈っていた。
『どうか私が選ばれませんように――』」

----ニャるほど。
世界のカトリック教徒のトップに立つわけだから、
それはプレッシャー大きいものね。
「うん。
票は割れてなかなか新法王は決まらない。
そんな中、最終的に選ばれたのは
ダークホースのメルヴィル(ミシェル・ピッコリ)。
彼は、さっそくバルコニーで大観衆を前に
新法王としてスピーチをしなくてはならない。
ところが、バルコニーに出るスンz年、突然叫びをあげその場から逃げだしてしまう。
『私は無理だ』。
あわてた事務局は、
セラピスト(ナンニ・モレッティ)を呼び寄せるが効果なし。
頭を悩ませた報道官は、禁を破り、
メルヴィルをローマ市内の外部のセラピストの元へ連れていくことに。
ところが、メルヴィルは彼らの目を盗んで
ローマの街へと逃げ出してしまう…」

----ニャるほど、それで“休日”。
「うん。自由になった彼は、
デパートガールやパン職人と触れ合ったり、
ストリートミュージシャンの音楽に聞き入ったり、
舞台俳優たちとの出会いの中、
若き日の俳優への夢を思い出したり…。
一方、他の枢機卿たちといえば、
こちらは新法王が公表されるまでサン・ピエトロ大聖堂から出られない、
ジグソーパズルする者、タバコをくゆらす者、
ひとりトランプをする者と、思い思いに過ごす。
事務局は、スイス衛兵隊に命じて、
いかにも新法王が部屋にいるように見せかける。
言い方は悪いが、身内をも騙してしまうんだ。
で、このあたりの描き方がユーモアたっぷり。
セラピストは、聖書を引き合いに出し、
うつ病の人ばかりだ…と、枢機卿たちとやり合う。
そればかりか、彼は、枢機卿たちを大陸ごとに分けて
バレーボール大会まで始めちゃう」

----そうか。カトリックへの風刺も入っているというワケだ。
「う~ん。この監督、ナンニ・モレッティ、
イタリアのウディ・アレンと言われるだけあって
確かに、その笑いはシニカル。
風刺というほどでもなかったけど
実に刺激的な体験ではあったね。
ぼくは、これを観ながら
“映画”というものを少し考え直したしね」

----また、大げさな…。
「いや、このラストには頭をガツンとやられた。
普通、
この手の映画は、新法王が街で市井の人々と触れ合いながら
自分を見つめなおし、
一回り大きくなって帰ってくる…
こういう流れを予測してしまいがち。
ところがこの作品、まったく予想もしなかった結末を迎える。
これって
結末ありきの帰納的なものか、
それとも演繹的にたどり着いた結末か?
いきなりのエンドロールにビックリしながらも改めて思ったのは、
人は複雑な存在だということ。
なのに、観る方は“人間かくあるべし”、
あるいは“映画かくあるべし”との思いの中から、
勝手に予定調和的ストーリーを作り上げてしまう。
後でよく考えたら、
一見、予想外に思えるこの結末も、
その二つ前のシーンで
すでに主人公にとっては喜ばしくないシチュエーションを
監督は用意。
そして次のシーンでは、
彼の心の中も映像で見せている。
なのに、あの結末は読めなかった」

----けっこう映画観ているはずなのに
まだまだだニャ。
「うん。
でも、だからこそ映画は常に新鮮でオモシロい。
と、そうも言えるんだけどね」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「その結末を知りたいのニャ」小首ニャ


※ここまで読めば分かるはずだ度…

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『リンカーン弁護士』

2012-06-23 21:28:31 | 新作映画
(原題:The Lincoln Lawyer)


----『リンカーン弁護士』って変わったタイトルだニャ。
リンカーン大統領と関係あるの?
「いやいや。
リンカーンはリンカーンでも
高級アメ車のリンカーンのこと。
このあまりにも直截的なタイトルと
動きのないキー・ビジュアルに、
ちょっと食指が動かなかったんだけど、
『ラストが…』みたいな勧められ方をされて…。
この『ラスト』というのは
映画好きの心をくすぐる言葉。
いったい、どんな終わり方をするのかなって…」

----それは分かるけど、
そもそもどんなお話ニャの?
「簡単に言えば、
弁護士がハメられてしまうというもの。
主人公は、やり手の弁護士ミック(マシュー・マコノヒー)。
その顧客は、主に麻薬の売人や娼婦。
だからと言って、彼が報酬なんて二の次の人権派とかそういうわけでもなく、
彼ら相手にも口八丁で、がっぽり稼いでる。
そんな彼に、顔なじみの保釈金建て替え業者ヴァル(ジョン・レグイザモ)から
おいしそうな話がやってくる。
資産家の息子ルイス(ライアン・フィリップ)が女性への殺人容疑で告発され、
司法取引でうまく収めれば報酬ががっぽりと得られるはず、とこういうんだね。
ミックは調査員として重用する親友の私立探偵フランク(ウィリアム・H・メイシー)と共に、
ルイスの母親メアリー(フランシス・フィッシャー)の顧問弁護士ドブス(ボブ・ガントン)のオフィスを訪ね、ルイスと会う。
その席でルイスは、自分はハメられたのだと、無実を主張。
いつものように司法取引で済ませようとしていたミックは、
それをルイスに拒否され、戦略の転換を迫られる。
かくして事件を調べ始めるミック。
だが、その中で、
ルイスは4年前にミックが弁護を担当した殺人事件の真犯人ではないかという疑惑が持ち上がってくる・・・」

----つまり、ルイスはそんなミックの過去を知って彼を雇ったってことだね。
「そういうこと。
さて、ここまでは明かしていいと思うけど、
ルイスは、あっさりと自分が真犯人であることをミックに打ち明ける。
ところがミックは
“弁護士は依頼人を警察に突き出せない”という 秘匿特権のせいで、
あらゆる証拠を使えない。
そんな彼をあざ笑うかのように、
フランクが何者かに殺され、
しかもミックがその罪を着せかねられないという
最悪の状況に陥ってしまう。
そしてルイスの魔の手はミックの別れた妻マギー(マリサ・トメイ)や娘にまでも及ぼうとしていた…」

----いやあ、これは確かによくできたストーリーだ。
原作はベストセラーだって?
「うん。マイクル・コナリーの法廷ドラマ。
このストーリーからだけでも想像できるように、
映画化には、そうとうに演技ができる者じゃないと難しい。
法廷では、ミックはルイスの弁護をしなくてはならない。
でも、どうにかして彼はルイスには罰を与えたい。
なぜって、ミックのミスで、
かつて、無実のマルティネス(マイケル・ペーニャ)という男を服役までさせているのだから…。
こういう立場に立たされた男は、果たしてどう行動するのか?
ジリジリ焦り悩むミックをマコノヒーが巧演。
彼の苦悩は伝わるものの、
いったい、最終的にはどのような決断を下すかは
観ている間、まったく読めない。
まさに、計算され尽くした演技。
事実、裁判も意外な結果に終わり、
しかし、それだけでコトは済まず二転三転。
最後は痛快な気持ちを味あわせてくれる。
それと、この映画で忘れてはならないのが
さきほどから、出てきた名前を見ても分かるように
脇も名優ばかり。
相手検事役はジョシュ・ルーカスだしね。
なかでも長髪のウィリアム・H・メイシー、
これは見モノだよ」


       (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「マコノヒーは大学時代に弁護士を志望していたらしいのニャ」身を乗り出す

※マコノヒーの弁護士は『評決のとき』もオススメだ度

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猫ニュー

『BRAVE HEARTS 海猿』

2012-06-21 23:26:03 | 新作映画

----今日のお話が『海猿』とは思わなかったニャ。
まだ、プレスも読んで二ャいじゃん
「うん。
ツイッターでも呟いたんだけど、
これはちょっと始まっただけで、
その流れがすべて読めちゃう、
いわば“お約束”映画。
特撮につ言って知りたければ読んでもいいけど、
読まなくても十分楽しめちゃう」

----それって、ほめてニャいんじゃ?
「いや、そんなことはないよ。
映画って
どんな観方をしたっていいわけで、
この映画の場合、ぼくは“第二の寅さん”になる可能性を秘めていると思ったね。
ほら“寅さん”は“国民的映画”とまで言われているんだから、
これは、最上級のほめ言葉…。
もちろん、この映画を観て感動する人、泣く人がいてもいいワケだけど、
ぼくはそうはならなかった。
最初こそ、仙崎大輔(伊藤英明)のハードな肉体訓練が出てくるものの、
そのすぐ後は、バディの吉岡(佐藤隆太)との悪ふざけ。
シャワールームで、『お前にチェックイン!』
ふたりのオールヌード(バックだけね)というサービスカットまで出てくる。
そして今回はさらに、美香という吉岡の彼女まで登場。
仲里依紗演じるその役はキャビン・アテンダント。
で、吉岡のプロポーズを彼女が断った時点で、
ストーリーは全部読めてしまう」

----そうか。美香の乗った飛行機が事故に遭うってわけだ。
「そう。すぐ分かるよね。
で、その後も想像どおり。
吉岡が美香を助けて、でも、そのために…。
そして最後は、あの人が彼を助けに行く…」

----ふむふむ。
「さらに今回、
この大いなるワンパターンを、
確信犯としてやっているなと思ったのが、
仙崎と貴重の無線による会話。
以前も『海猿』では、
救助の任務中に仙崎が環菜(加藤あい)と長々と愛の電話を交わし、
海外では笑いが起こったという。
その事実を製作サイドが知らないわけがない。
今回もきちんとそれに類似したシーンを取り入れている。
普通に考えたら胴体着陸で神経を集中している機長(平山浩行)に、
プライベートの話をするなんて言語道断。
ところが、その仙崎の話を課長の下川(時任三郎)だけなら分かるけど、
指令室のそれこそ全員が仕事の手を休めて聞き入っている。
ここでもう一つ不思議な“はず”なのが、
その無線が指令室に、そしてジャンボ機機長にまで流れること。
確か32名をほど、特殊救難隊員はいるワケだけど、
みんながみんな、それを許されていたら
それこそ統制は取れないんじゃ?」

----その“はず”って…。
「うん。
でも、そのありえないことがこのシリーズなら許されるという意味。
『海猿』シリーズにおける仙崎は、
かつての『若大将』映画の田沼雄一と同じでスーパーヒーロー。
映画観客みんなの夢を一身に背負っている。
そして、こういう、映画があってもおかしくはない」

----そうか、“寅さん”というから、
ちょっと変な気がしたけど、
これは“若大将”と観ればいいわけか…。
「うん。
それをツッコミとして楽しんでもいいし、
お約束として観てもいい。
ぼくはそう思うよ」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「もちろん泣いてもいいのだニャ」身を乗り出す

※そういうことだ度…

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『スノーホワイト』

2012-06-18 18:32:23 | 映画
(原題:Snow White and the Huntsman)



----- 今日は、フォーンが前から観たいと言っていた『スノーホワイト』
なぜ、観たかったかって?
それは、もともとは童話のこんな子供向けのお話が
どうやって、2時間を超える、しかもスペクタクルな作品になるか、
そこに興味があったから…。
で、観てみて納得。
この映画には眠りについた“スノーホワイト(白雪姫)”(クリステン・スチュワート)を
助ける“王子”さまは出てこない。(※ウェブの解説では王子になっているけど、違うよね?)
ここでまず乙女チックなイメージを脱却。



しかも、もっと驚くのは
その白雪姫が眠りにつくきっかけになった毒りんご。
これを食べさせるのは、もちろん継母(シャーリーズ・セロン)だけども
でも、その姿はお婆さんというわけじゃない。
さあ、じゃあ、それは誰なのか?
白雪姫に毒りんごを食べさせたときの姿、
そして白雪姫をキスで目覚めさせたのは?
このふたつを突きつめて考えると
この映画の隠れたメッセージも読み取れるんだろうけど、
フォーンは、そういうタイプでもないし、
この映画はもっとビジュアルを楽しめればそれで十分。
戦いのシーンは、
いかにもハリウッド・スペクタクルって感じで、
そんなには驚きはしなかった。
それよりも、やはり嬉しいのは
暗い森の風景や、そこに住む動物たちの描き方。
みんなが言っているように
宮崎駿のアニメのイメージがいっぱい。
瘴気もあればシシ神もいるって感じ。
そんな中に、たとえばうさぎに乗った妖精とかね。
これはオモシロかった。
そうそう、苔生した亀も。
あと、トロールとかも出てきてこちらも大迫力。
あれっ、このふあっつって
どこかで観たことがあるような…
そうか、ロックバイターにモーラ。
『ネバーエンディング・ストーリー』
だ。
でも、この映画のラストはだれも読めないだろうな。
フォーンは、もっとお伽噺風に終わると思ったから
ちょっと驚いたのニャ。

(byフォーン)



フォーンの一言「そうそう、小人は8人いたのニャ」ぱっちり

※えいより一言※海辺を馬で疾走するシーンはゾクゾクした度

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猫ニュー

画像はオフィシャル・ダウンロードサイトより。

『先生を流産させる会』

2012-06-13 14:02:47 | 映画
----この映画って大ヒットしているんだよね。
タイトルがきついけど…。
「そうだね。
実はこの物語は、
愛知県の某中学校で実際に起きた事件が下敷きになっている。
女子中学生たちが、セックスへの嫌悪感から
妊娠した担任女教師を流産させようと企む。
やがて映画は、
いまの教育環境が抱える諸問題、
そしてさまざまな悪意をえぐり出していく。
その根底に流れるのは“命とは”というヘビーなテーマ」

----ふうむ。
思っていたのとはだいぶ違うニャ。
「でしょ。
確かに目を背けたくなるような映像がないワケでもないけどね。
さて、この映画。
その作品の良し悪しについては他の人に譲るとして、
考えさせられたことがいくつかあるんだ。
それは、そのヒットの要因について。
ここには、それこそフォーンがさっき言ったタイトルのインパクトがある。
もし、これを普通に、
もっとおとなしめのものにしたら、どうだっただろう?
それこそ従来からの“教育映画”『中学生日記』という感じで、
客層自体、まったく違っていたかもしれない。
つまり、この映画のタイトルには
“ターゲットをどこに絞るか”という、
ある種の戦略がなされているんだ」

----そうか。映画館にかかるからには、
利益を生みださなくちゃいけないものね。
「そうなんだよね。
製作者サイドが少しでも多くの人に見てほしいと願うのは当然。
でも、それがほんとうに観てほしいと思う人ではなくて、
たとえばこの映画のタイトルから猟奇的なものを期待した人たちで
映画館が埋まっていたとしたら、どう思うんだろう?
ぼくは、この映画に関しては
“なぜ観にきたか?”のアンケートを取り、
その回答を監督がどう受け止めるかを聞いてみたい気がする。
今日の上映後に、
この映画を高評価した柳下さんと内藤瑛亮監督のトークショーがあるとか。
映画そのものの持つ力強さ、それは観れば一目瞭然だし、
逆にそのあたりのことを聞いてほしい気がするな」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「インパクト大なのニャ」身を乗り出す

※噂が噂を呼ぶ度…

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『だれもがクジラを愛してる。』

2012-06-11 22:49:35 | 新作映画


(原題:Big Miracle)

----変わったタイトルの映画だよね。
ちょっと、想像がつきにくい…。
「うん。
舞台もアラスカだし、
これはまじめな環境映画かなと、
ぼくも少し腰が引けていたんだけど、
改めてキャスト表を見て
いやいや、観る価値十分ありと…」

----どういうこと。
主演は、ジョン・クランスキードリュー・バリモアだっけ。



「そうそう。
そのドリュー・バリモアの名前を見て
あっ、これは大丈夫と…。
彼女の出演映画は、
話がシリアスだろうとラブコメだろうと、
変に身構えたところがない。
物語を解き明かすように描いていて、
分かりやすく観やすい。
ある意味、オールドファッションとも言えるけど、
安心して観ることができるんだ」

----それって、観る側に想像の余地を残さず、
全部言いきっちゃうということでしょ。
ある意味、つまんなくない。
「いや。彼女の映画は、
そのさじ加減が実に巧い。
ちょっと思い返しても、
ドリュー・バリモアの映画に
“作家主義”の作品は見当たらない。
はて、その映画の監督ってだれだっけ?というのばかり。
でも、作品そのものは幸せな気分になったという印象がある。
とりわけラブコメ。
『25年目のキス』『5回目のファースト・キス』『2番目のキス』…。
宣伝サイドもそれに気づいているんだろうね。
“キス”をタイトルに持ってくる」




----スティーヴン・セガールの“沈黙”と同じだニャ。
「そういうこと。
アラスカのバロー沖。
分厚い氷の下で動けなくなっていたコククジラ3頭を、
救出しようとする人々の奮闘を実話に基づいて描いたこの作品も
実に分かりやすい構造を持っている。
クライマックスは、
誰が見てもクジラ救出の<瞬間>だものね。
いわゆる『ソウル・サーファー』と同じ。
実話からくる感動…という、お約束の世界」

----へぇ~っ。これ実話に基づいているんだ。
「そういうこと。
で、興味深いのは
ドリュー・バリモアが演じるヒロインのレイチェルというのが、
いま世界中で衝突を引き起こしているグリーンピースの活動家ということ。
見方によっては自己中心的で傲慢にも見える
その主張、生き方を
嫌味すれすれのラインで演じきるこの力量というのは、
さすが名優ならでは。
ある種、凝り固まった考え方にも見えるこのヒロイン、
いかにすれば観客に反発を持たないでもらえるか?
美化しすぎず、自分の欠点も演じた彼女の演技は、
繰り返しになるけど、一流の言葉がいちばんふさわしい」

----ニャんだか、ほめすぎてニャい?
それにドリュー・バリモアの演技のことばかり。
「あらら。
でも、お話の方もけっこうオモシロいんだよ。
閉じ込められたクジラを救うのが
グリーンピースであるヒロインの宿敵の石油採掘会社社長であったり。
あるいは環境政策の甘さを穴埋めしようとする大統領であったり、
本来ならクジラを食用とする地元の狩猟民族イヌピアトであったり…。
そこには、クジラ救出に集まる世間の目を意識しての思惑が入り乱れる。
そして最後には、レーガン大統領のゴルバチョフ大統領への要請で
ソ連が砕氷船で救出活動に乗り出すんだ」




---ニャるほど。
だから『だれもがクジラを愛してる』になるんだ。
「そういうこと。
クジラの造詣も本物そっくりだし…。
さっき、監督は表面に出ない…というようなことを言ったけど、
この作品に関しはそれは例外。
『旅するジーンズと16歳の夏』『そんな彼なら捨てちゃえば?』ケン・クワピス
実は『そんな彼なら捨てちゃえば?』では
ドリュー・バリモアは製作総指揮も兼ねている。
この映画への出演も、おそらくそのつながりだろうね」



                    (byえいwithフォーン)



フォーンの一言「クジラがまたリアルなのニャ」気持ちいいニャ


※そりゃ、もう大迫力だ度…

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猫ニュー

画像はオフィシャル・ダウンロード・サイトより。

『ハロー!?ゴースト』

2012-06-09 08:38:21 | 映画
※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる
部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。



----この映画、ラストが『シックス・センス』
比較されているみたいだね…。
「そうだね。
確かに、このオチは読めなかった。
ストーリー自体はシンプルで、
いわゆるゴーストストーリー。
ちょっとオフィシャルから転用すると…。
生きる希望を失ったサンマン(
チャ・テヒョン
)は何度も自殺を図るが、
なぜかいつもうまくいかない。
ある日、運ばれた病院で目覚めたサンマンは、
4人の一風変わったゴーストにとり憑かれてしまったから、さぁ大変!!
彼らを成仏させるため、仕方なく生前にやり残した願い事を叶えてあげることに。
そんなとき、病院で出会った看護婦ヨンスにひとめぼれして…」

----ほんとだ。
「で、観終わった後に
こうやって話すと、
なぜ気づかなかったん名だろうという気にはなるんだけどね。観ている間は、実は少し落ち着かない。
ちょっと納得のいかない、
いわゆる突っ込みたくなるところが多くって…。
でも、全部終わった後に、
それが、あ~、だからね…となるんだ。
そういう意味でもこの映画の脚本は巧い。
ただ、
キム・ヨンタク
、これが初監督と言うこともあってか、
キレは悪いけどね」

----あと、フォーンが気になるのは
このゴーストたち。
みんなダサくニャい?
「そうなんだよ。
ちょっと不潔っぽかったりもしてね。
でも、それがまたある意味を持っている。
これはキャスティングも巧く練られた作品だよ」


フォーンの一言「泣かせる話らしいのニャ」
悲しい


※でも、恋も絡んで、ハッピーエンドだ度


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猫ニュー



『プレイ-獲物-』

2012-06-06 23:47:12 | 新作映画
(原題:La proie)


----この映画、スゴく評判いいようだね。
“エンターテイメントの原点”だの
“本物の映画魂”だの言われている…。
「そうだね。
派手なアクションは香港映画、
凝ったサスペンスは韓国映画と言う感じ。
しかも、それをフランス映画がやってのけているというのがオモシロい。
ただね、後で考えるとこの映画は、
いいとこどり、あるいはごった煮とも言えちゃう」

----どういうこと。
「それは今から話すストーリーを聞けばわかるよ。
主人公は服役中の銀行強盗犯フランク(アルベール・デュポンテル)。
出所後、愛する妻と娘と穏やかに暮らすことを望んでいた彼だが、
冤罪の主張が通り、先に釈放された同房者モレル(ステファン・デバク)を信頼したことから
すべてが狂い始める。
なんと、彼は若い女性ばかりを狙う連続殺人鬼だったのだ。
獄中で自分に面会にきた憲兵を名乗るマニュエル(セルジ・ロペス)から
そのことを聞いたフランクは、妻と娘が危ないと察知。
なんとか脱獄し、モレルの後を追う…」

----うわあ。これだけ聞いてもオモシロそう。
「でしょ。
しかもこの映画が巧いのは、
このストーリーの主軸に
いくつものふくらみを持たせるところ。
たとえば、フランクは
彼が隠した金のありかを聞きだそうとする元仲間たちに狙われていて、
獄中、一瞬たりとも気が抜けない。
彼らは看守たちを買収。
その暴行は黙認されているんだ。
と、これだけで一本の<獄中>映画ができそうな按配。
ところが本作でのそれ=獄中暴行、賄賂は、あくまでサイドストーリー。
この四面楚歌の中からいかにして脱獄するかという
サスペンス増幅のための<装置<にとどめてしまう。
さて映画は、その刑務所内での暴力を描いた後、<脱獄>サスペンスへ。
さらには
<ヒッチコック>サスペンス(あるいは<逃亡者>サスペンス)へと
形を変えながら加速度を付けて転がってゆく」

----犯人を追いながら、自らも警察に追われる…というわけだニャ。
「そう。
そんな中、フランクはモレルが異常殺人鬼という情報を彼にもたらしたマニュエルに接近。
しかし果たしてこの男を信用していいのかどうか、
そこにまたひとつのサスペンスが生まれていく。
一方、警察側も決して一枚岩というわけではなく、
フランクを追う女刑事クレール(アリス・タグリオーニ)とその上司の関係はぎくしゃく。
そしてそれらすべてを俯瞰しているかのように、
余裕綽々で新たな犯罪を重ねていくモレル…。
ほんとうに、よくぞこんなにも多くの要素を入れながら
それをすべて有機的に絡ませ凝縮させたなと、
いまこうして喋りながらも改めて感心」

----そういえば“驚愕のラスト”みたいなことも言われているようだけど…。
「実は、ここにもうひとりの人物が登場するんだね。
まあ、個人的にはそこでのオチは読めたけど、
ここで言うところの“驚愕”は、
おそらくさらに先の結末を言っているんだろうな。
コピーでは“打ち震える!”と続いているからね」

----ニャんのこと言っているか、よく分からないニャあ。


                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ステファン・デバクが、ほんと憎たらしい演技をするのニャ」ご不満

※問題はタイトルだけだ度…

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猫ニュー

『ブラック・ブレッド』

2012-06-04 23:41:33 | 新作映画
(原題:Pa Nerge)


----この映画って、アルモドバル監督の『私が、生きる肌』を押しのけ、
アカデミー外国語映画のスペオン代表にノミネートされたんだって?
「うん。
スペインのアカデミー賞にあたるゴヤ賞でも
作品賞ほか最多9部門を受賞している。
まあ、作品の質が違うし、比べるのも変だけどね」

----へぇ~っ。
それにしては、観てからかなり時間が経っているよね。
「そうだね。
実はこの映画は、ストーリーだけでも語るのがかなり難しい。
あまりにも込み入っている。
とはいえ、まったく説明しないわけにもいかないから簡単に。
舞台は激しい内戦を終えた1940年代のスペイン・カタルーニャ。
11歳の少年アンドレウは、
内戦で負け組になっても理想を失わない父の姿に誇りを抱いて生きている。
そんなある日、彼は森で血まみれになった親子の遺体を発見する。
彼らが最期の瞬間に遺したのは<ピトルリウア>という謎の言葉。
それは子どもたちの間で語り継がれる、洞穴に潜んだ翼を持つ怪物の名前。
彼は、そのことを警察で話す。
一方、警察はアンドレウの父を犯人とにらむ。
いち早く身の危険を察した彼は、どこかに姿をくらましてしまう。
そんな中、アンドレウは安全のため祖母の家に引き取られる。
だが、そこで彼が目にしたモノは、
オトナたちがひた隠しにする惨たらしい現実だった…」

----ははあ。
つまり、この事件の裏には
その内戦による憎しみがあって、
父親はかねてから当局に睨まれていたというわけだニャ。
「普通、そう思うよね。
ところがこの映画では、
終盤に向かうにつれ、
思わぬ事実が次々と明らかになっていく。
そこで暴かれるのは、思想や信条を超えた人間の<闇>、ダークサイド。
人は生きるためなら、なんだってやるんじゃないか?
映画が終わった頃には、そういう気にさえなってくる」

----ニャるほど。
食うためにはなんでも…ということか?
だからタイトルに『ブラック・ブレッド』と
食べ物の言葉が使われているんだ…。
「おそらくね。
実は当時のスペインでは、
パンの色を階級別に分けていた。
ブラック・ブレッドは小麦に大麦、トウモロコシ、キビ、ドングリの粉等をまぜたモノ。
“貧者のパン”と呼ばれ、自分たちで作っていたらしい」

----へえ~っ。
じゃあ、普通のパンは?
「白い小麦粉を使ったモノ。
そちらは購入しなければ手に入らない。
もちろん食するのは富裕者層。
さて、話が横道にそれたから元に戻そう、
この映画では
少年が見聞きする人間のさまざまな欲望をサブエピソードとして挟みつつ、
物語の発端であった殺人事件の真実に近づいていく。
そしてそれが無垢だった少年を大きく変えていく。
この映画のラスト。
それは観た人すべてが戦慄するほどの衝撃的なセリフで締めくくられる。
でも、それもやむなしと思わせるところが
本作の真の恐さだろうね」

----そうか、なにがあるんだろう?
フォーンも観てみたくなったニャ。


                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「これはあの時代の特別なことではないのニャ」ぼくも観たい
ミヒャエル・ハネケ『白いリボン』より恐い度…

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『道-白磁の人-』

2012-06-03 21:46:48 | 新作映画

----- 今日は、オンライン試写会。
ということでフォーンも一緒に鑑賞。
この『道~白磁の人~』というのは、
日本の韓国併合の4年後に京城ヘやってきた林業技術者の浅川巧のこと。
彼の仕事は朝鮮の山を緑にすること。
ところが、仕事以前に彼は、この地で
思いもかけぬものを目にする。
それは、朝鮮人を蔑視し、横暴にふるまう日本人の姿。
そんな中、巧は、同僚の朝鮮人雇員チョンリム(青林)から朝鮮語を習い始めるが…
というお話。
フォーンは、この人のことまったく知らなかったから、
メインビジュアルを観たときも、
これって格闘家のお話かニャ?なんて…。
だって、主演の吉沢悠の服が純白。
でも、これは白い朝鮮服バジ・チョゴリのことだったんだ。
そうそう、ここでタイトルの説明を。
“白磁”というのは、朝鮮の美術工芸品。
二束三文にしかならないという、白磁の壺を見た巧は、
その温かみのある美しさに強く惹かれ、
収集と研究を重ね、
民芸運動の祖である柳宋悦にも影響を与えていくんだ。
と、ストーリーはこのくらいでいいかな?
この映画の監督は、高橋伴明
どちらかというと、こういうウェブの世界からは遠く、
映画館で映画を…という感じがするけど、
えいが言うには、そこが彼の“漢”を感じさせると言っていた。
どういうこと?って思うでしょ。
ネット社会って、2~3日前の「東京新聞」にも載っていたけど、“嫌韓”の人が多い。
そんな中であえて、この朝鮮との架け橋になった日本人を描いた映画を
オンライン試写会としてかける。
それも、また高橋伴明監督にとっての
ひとつの“戦い”じゃないかと言うんだ。
『BOX 袴田事件 命とは』で、そして『禅 ZEN』で、
人間の尊厳、歩むべき道を描いてきた高橋伴明監督。
ここでは、不寛容の現代日本を写しだすかのような作品を世に問う。
ある意味、祈りにも似たような映画だったニャ。


(byえいwithフォーン)

フォーンの一言「素朴で温かみのある白磁のような人、浅川巧。吉沢悠にピッタリなのニャ」ぱっちり

※高橋監督、精力的だ度

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