ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『GONINサーガ』

2015-09-27 14:07:08 | 映画
『GONINサーガ』。
「お約束」を封印した竹中直人の殺し屋。
渾身の力で映画に臨んだ根津甚八。
やはりオリジナルキャストの存在感は凄い。
そして現(うつつ)と幻の間(あわい)を見せてくれる佐藤浩市!
物語の軸を通し、しかも石井隆監督ならではの映画表現で締めくくるクライマックスに身震い。


----あれれっ。
この映画、もう始まっちゃってるよ。
ほんとは別の映画の話をするんじゃなかったけ?
「うん。
最初は『アクトレス~女たちの舞台~』のつもりだったんだけど…。
ほら、最近のここでの映画紹介の方法、
まずはTwitterでのつぶやきから…でいこうとしたら、
そこまで遡ることができなくって…」

----いかにここを放置していたかってことだニャ。(怒)
でも、まさか代わりにこのバイオレンスがくるとは…。
でもこれって、正式な続編と思っていいの?
ほら『GONIN2』なんてのもあったじゃニャい。
「それは気になるところだよね。
女性のみで集団クライムサスペンスを作り上げた
『GONINN2』とは違って
こちらは正真正銘、
その後の『GONIN』

----でも、あの映画って
主要人物、全員死んでいなかった?
「そう。
この映画は、彼らの次の世代、
いわば子供たちの物語。
それもそれぞれが抱える理由での復讐譚」

----その割には、
前作と同じ俳優が出ているよね。
佐藤浩市、鶴見辰吾、永島敏行、竹中直人…。
そうそう、根津甚八がこの映画だけということで復活しているのも話題。
「あっ、根津甚八は前作で生き残っていたという設定。
しかし、その他の人たちは、
冒頭で語られるのダイジェスト、
あるいは途中で織り込まれる回想が中心。
ただ、竹中直人だけは別だね。
一転して凄みのある殺し屋を演じている。
これが酸素吸入器を引きずりながら動いているという、
他の人ではちょっと考え付かない設定」

----さっき、凄みって言っていたけど、
今回の俳優たちは優しすぎニャい。。
「そうなんだよね。
主演の東出昌大とか、顔つきが端正すぎて、
前作の底に流れていた“怖さ”は失せていた気がする。
ぼくは前作『GONIN』を思い出すときにすぐ浮かぶのは
部屋に追い詰められた椎名桔平、横山めぐみ
精神に異常をきたす竹中直人
そして後半、それまでのだれよりも凄みをもって
突然現れるビートたけし
実をいうと、それ以外の細かいところは覚えていない」

----えっ?それでも付いていけるの?
「一回観ていればね。
でも初めての人だと、
何が何かわからないかも。
そういう意味では、
前作をDVDなりで観ておくか、
少なくともシノプシスを読んでおいた方がいいだろうね」

----ふうむ。
それでもこの映画を紹介しようと思ったからには
ワケがありそうだニャ。
「それは
この作家・石井隆監督ならではの映画としてのカタルシスだね。
監督デビュー作『天使のはらわた・赤い眩暈』
あるいは代表作の一本『ヌードの夜』などに観られるように、
石井監督の映画には“死者の想い”が映像化されることが多い。
ここでは、それに加えて
石井監督と根津甚八の出逢いの作品『月下の蘭』のイメージ復元を試みている。
夜だの、雨だのばかりが取りざたされることが多い
石井隆監督映画だけど、
『花と蛇』『甘い鞭』のように
クライマックスで現実からあちらの世界へ飛ぶことも…。
やはり刺激的な監督だと思うよ」




フォーンの一言「でも、やはり雨と夜は徹底しているらしいのニャ」身を乗り出す

「やはり独自の世界観と語り口を持っている映画は魅力的だ度


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猫ニュー


『ジョン・ウィック』 

2015-09-13 21:00:51 | 新作映画

(原題:John Wick)



「『ジョン・ウィック』。
そこは殺し屋専用の通貨もあれば情報交換の定宿もある蠱惑的闇社会。
愛犬を殺された主人公。
その怒りの銃弾は敵に反撃のいとまさえ与えず、
結果、映画は些かの停滞も生むことなく最後まで突っ走っていく。
言葉にすれば安っぽくなるが「シビれた!」。この映画にはこれしかない。

----ニャんだか、最高級のほめ方のような気がするけど。
これってキアヌ・リーヴスの主演作だよね。
彼が出ている作品って、
ここしばらくは
そのほとんどが
こけていたような気がするけど…。
「そうだね。
どうしても『マトリックス』を超えることはできなかった。
でもこれは彼にとって次の地平を切り開ける
そのきっかけとなりうる作品」

----これまでの作品とは
どこが違うの?
「うん。
『マトリックス』とまではいかなくとも、
その舞台で蠢く人物を
こちらではない“あちらの世界”の住人としたところかな。
彼が扮しているジョン・ウィックは
一旦は足を洗った元殺し屋。
そう、裏社会の人間なんだ」

----でも、それって
別に珍しくないような気がするニャあ。
「確かに。
ただ、これまでの“殺し屋”ものには
どこか抑えたところがあった。
こちらの世界じゃない知られざる世界だからこそ
リアルに描こうとでもいうような変な自制心が…」

----えっ、そうかニャあ。
最近のアクション映画って
それが銃であれ、車であれ、
針を振り切っているじゃニャい。
で、そのしつこさが逆に
いやだって言っていなかった?
「いいところを突いてきたね。
フォーンが言うように、
カーアクションもガンアクションも
近頃の映画は派手。
実際にあんなことが起こったら、
新聞ネタになること間違いないのに、
そんなこと気にせず、ぶっ放し、ぶっ飛ばしていく。
でも、それだけ。
どうせ、振り切るならもっとやってほしい。
この映画がオモシロいのは、
さっきも言ったように、
こっちの世界に戻ってきた男が
また、<あちらの世界>へ行くところ。
そして、その<あちらの世界>を
フィクショとに割り切って描いている」

----ふむふむ。
それがたとえば
殺し屋専用の通貨>ってことだニャ。
「そうなんだ。
この<通貨>を手に、
彼、ジョン・ウィックは、
あちらの世界>で動き始める。
そこには彼ら裏社会専用のホテルがあり、バーもある。
このホテルが出てきたとき、
ぼくは『これはイケる』と確信したね。
フロントマンの見せ方とか、
裏社会の住人が楽しむバーとか…。
デヴィッド・リンチかお前は?
と言いたくなるほど妖しさが充満している。
さて、このホテルには
“殺しはご法度”なる決まりごとがある。
だが、それを破ってまでジョンを狙う暗殺者が現れるんだ」

----ちょっと待って。
復讐するのはジョン・ウィックの方では?
なぜその彼が狙われるの?
「実は、ジョンの愛犬を殺し、
しかも愛車を盗んだのは、
彼のボスだった男の息子」

----あらら。
『ラン・オールナイト』と同じだニャ。
ボスのバカ息子が原因。
「そうだね。
ボスはジョンの恐ろしさを知り尽くしているけど、
バカ息子はそうではない。
かくして、凄絶な戦いが始まる…
とは言ってみたけど、
この映画のオモシロさの一つは、
ジョン・ウィックの力が
伝説”となるほどずば抜けていること。
狙った敵を撃ち殺すのに何発もかかるなんてことはない。
つまり撃ち合いに至るまでもなく、
一方的に撃ちまくってターゲットを追い詰めていく」

----ニャるほど。
映画に加速度がついていくわけだニャ。
「うん。
結局はヒーロー側が勝つに決まっている撃ち合いを延々見せるなんてことしないからね。
この停滞しないスピード感は『ターミネーター』を思い出したな。
それでも、相手の策略で
苦境は何度も訪れる。
このさじ加減の上手さがこの映画のポイント」

----それは観たくなるニャ。
「でしょ。
ぼくももう一回は観たい。
この映画、シリーズ化されるらしいけど、
絶対、同じスタッフでやってほしいな。
そうじゃなきゃ意味がない」





フォーンの一言「ラストも決まってるらしいのニャ」身を乗り出す

「読めるけど、それでも嬉しい終わり方だ度


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『顔のないヒトラーたち』

2015-09-03 22:08:33 | 新作映画

(原題:Im Labyrinth des Schweigens)

「今、この国が求めているのは、体裁のよさだけなんだ。真実は二の次さ」。
ドキッとした。
1958年。多くのドイツ人がアウシュビッツで何があったかを知らなかったという。
自国で自国を裁くフランクフルト・アウシュビッツ裁判。
この有無こそがドイツと日本の違いだな。


----あっ、これって
ドイツ映画の『顔のないヒトラーたち』
Twitterでの反応がスゴかったよね。
でも、ドイツと日本の違いって?
「今年は、
第二次世界大戦が終わって70年。
日本でも安倍首相が
どんな談話を出すかが注目されていた。
結果、右にも左にも配慮した談話に。
ところがそれとよく比較されるのが
あの戦争で日本と同じ陣営だったドイツのメルケル首相の談話。
『顔のないきヒトラーたち』のプレスには、
その一部が載っている」


「私たちドイツ人は、恥の気持ちでいっぱいです。
何百万人もの人々を殺害した犯罪を見て見ぬふりをしたのはドイツ人自身だったからです。
私たちドイツ人は過去を忘れてはならない。
数百万人の犠牲者のために、過去を記憶していく責任があります」。


----ニャるほど。
日本とは違って、
戦争責任を国のトップが
はっきりと認め、
しかも謝罪しているわけだニャ。

「そうなんだ。
日本では南京大虐殺とか
慰安婦問題とかが
犠牲者の数や事実の有無をめぐって
議論を呼んでいる。
一方、ドイツではユダヤ人虐殺を
はっきりと認め謝罪しているわけだ」

----それって
戦後ずっとそうだったのかニャ?
「いや。
ドイツのほとんどの人は
そのことを知らされていなかったようだ。
少なくとも1958年まではね。
この映画でも主人公の検察官ヨハン(アレクサンダー・フェーリング)は、
当初、アウシュビッツについて何も知らない。
ある一人の訴えから、
強制収容所にいたナチスの親衛隊員が、
規約に違反して教師をしている事実を知る。
それをきっかけとして、
彼は、かつてナチスでありながら
いまは何もなかったように市民生活に溶け込んでいる人たちを
さまざまな圧力を受けながらも告発していく。
と、こういう話なんだ」

----ニャるほど。
でもその“圧力”って?
「当時はナチスに刃向かうことは許されなかった。
いや、むしろ国あげてナチスに心酔。
それが全体主義だからね。
つまりそのことを暴きだすというのは、
大変な事態を引き起こすことになる。
国民全員を告発するようなものだからね。
映画の中に次のようなセリフが出てくる。
『ドイツのすべての息子たちに
自分の父親が殺人者だったかもしれないと疑わせることが本当に重要なことなのか?』

----ニャるほど。
それが最初に話してくれた
「今、この国が求めているのは、体裁のよさだけなんだ。真実は二の次さ」。
これに繋がってくるわけだニャ。
「そうなんだ。
戦後、日本に関しては東京裁判、
ドイツに関してニュールンベルグ裁判が
それぞれ戦勝国側のさばきとして行われたけど、
自国を裁く裁判はドイツと違って行われていない。
果たして、
日本が世界から信用を取り戻す日はいつくるのか?
それを考えずにはいられない映画だったね」



フォーンの一言「『ハンナ・アーレント』という映画もあったのニャ」身を乗り出す

『ハンナ・アーレント』が描くのは“悪の凡庸さ”。
戦争犯罪は何も特別な一部の軍人だけが引き起こすのではない。
なにも疑問を持たず長いものに巻かれていった大衆社会にもその責任はあるのではないか?
あの映画はそう問いかけている度


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