※ラストカットを記しています。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただくことをおススメします。
「そうか、長尾君は
このアップが撮りたかったんだなあ」
----ニャにニャに?いきなり監督を“君”づけ?
「実は彼の映画は
『THE GREAT ADVENTURE OF PHOENIX』など
早稲田の学生だった頃の作品から観ているんだ。
当時の学生映画は実験&観念的な作品から
エンタメ的に物語へと移る過渡期にあった。
そんな中で、
『えっ、これが8ミリ?』と思わせるほどの
原色を強調した色彩と切れのいい編集によって
独自のポップな世界を作り出しているのが彼、長尾直樹だった。
ちょっと個人的なことを言えば、
ン10年前に仕事を手伝ってもらったこともあるんだ。
以後、ブラジルのグラウベル・ローシャ監督に師事したとは聞いていたけど、
その名が日本でも出てきたのは
初の劇場映画『東京の休日』から。
で、再会したのが『鉄塔武蔵野線』のPFFでの上映のとき。
以後、年賀状のやり取りだけは続いているってわけ」
----へぇ~っ。
でも『アルゼンチンババア』の話はどこへ行ったのよ?
「もうちょっと待ってね。
その年賀状のデザインがここ数年、
日本のクラシック映画の大女優たちをあしらったものに変わってきていたんだ。
で、一昨年は、その裏に
「今年こそ、こんな奇跡の一瞬をつくりたいと願いつつ
●○●さんで御挨拶!」と一文あったわけ。
そして昨年の年賀状には
「どメジャーかどマイナーか、
いずれにしろ今年は新作に入ります。乞御期待!!」。
つまり、その“新作”がこの『アルゼンチンババア」だったというわけだ」
----これって確か、よしもとばななの原作だよね?
「うん。彼女の原作はこれまでに
『つぐみ』と『キッチン』が映画化されている。
村上春樹と並んで世界で人気のある作家の小説だけに
注目度も高いとみたね」
----主人公のアルゼンチンババアは鈴木京香だっけ?
最初に話したのは彼女のアップのこと?
「いや。
ぼくは、ヒロインみつこ(堀北真希)の母・良子を演じた手塚理美のアップに
それを感じたね。
お話を簡単に説明すると、
みつこは、父と母の3人家族。
イルカが大好きだった母・良子が病死し、
なぜかその日に限って病院に顔を出さなかった
父・悟(役所広司)は、突然、姿を消してしまう。
半年後、父は広い草原にポツンと立つ風変わりな屋敷で発見される。
そこには、町の人々が『アルゼンチンババア』と呼ぶ
謎の女性・ユリ(鈴木京香)が住んでいた。
みつこは勇気を奮い起こし、父親奪還に向かうが……。
ぼくは、この映画の制作過程を知らないから、
長尾君が自ら望んだ企画なのかどうかさえ分からない。
物語は原作ものだし、
内容云々よりも長尾君色がどう出ているか
そこに興味を持って観たわけだ
----先ほどの話だと、まず<色>だっけ?
「うん。
イエロー系のフィルターを使ったのかな。
アルゼンチンババアの敷地に近づくと、
全体が温かい黄緑色のトーンになるんだ。
青空にも黄色みが少しかかっている。
アルゼンチンババアの屋敷も実際にオープンセットを設営。
CG頼みにしていない手作り感が嬉しかったね」
----ふうん。
あれっ?
手塚理美が演じる母親はすぐ亡くなっちゃうんだよね。
「そう。良子は回想シーンで出てくる。
海でイルカを発見し、大はしゃぎの彼女の帽子が宙に舞う。
そのとき空を見上げた良子の表情に、
実は2年前の年賀状の大女優の笑顔が甦ったんだ。
ああ、なるほど。
長尾君は女優のこの<一瞬>が撮りたかったんだってね」
----でもそれだけじゃ映画にならないのでは?
「ところが、もう一つの素晴らしい表情が
ラストに出てくる。
みつこ=堀北真希が空を見上げる、その<一瞬>だ。
ここでぼくの脳裏には、アルゼンチンババアの鈴木京香ではなく、
母・良子=手塚理美の顔がフラッシュバック。
すると、みつこ=堀北真希は口にする。
『お母さん』。
いやあ、ゾクッときたね。
これぞ映画でしか撮れない世界だ.
長尾君の手の上で親と子は一体化したと言うわけだ」
----ニャるほど。となると今年の年賀状は?
「もちろん。
この映画のラスト、そのアップだよ。
長尾君は見事、<奇跡の一瞬>を撮りあげた。
ぼくはそう思ったね」
(byえいwithフォーン)
フォーンの一言「ネコさんもたくさん出ているらしいニャ」
※素敵なラストだ度
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「そうか、長尾君は
このアップが撮りたかったんだなあ」
----ニャにニャに?いきなり監督を“君”づけ?
「実は彼の映画は
『THE GREAT ADVENTURE OF PHOENIX』など
早稲田の学生だった頃の作品から観ているんだ。
当時の学生映画は実験&観念的な作品から
エンタメ的に物語へと移る過渡期にあった。
そんな中で、
『えっ、これが8ミリ?』と思わせるほどの
原色を強調した色彩と切れのいい編集によって
独自のポップな世界を作り出しているのが彼、長尾直樹だった。
ちょっと個人的なことを言えば、
ン10年前に仕事を手伝ってもらったこともあるんだ。
以後、ブラジルのグラウベル・ローシャ監督に師事したとは聞いていたけど、
その名が日本でも出てきたのは
初の劇場映画『東京の休日』から。
で、再会したのが『鉄塔武蔵野線』のPFFでの上映のとき。
以後、年賀状のやり取りだけは続いているってわけ」
----へぇ~っ。
でも『アルゼンチンババア』の話はどこへ行ったのよ?
「もうちょっと待ってね。
その年賀状のデザインがここ数年、
日本のクラシック映画の大女優たちをあしらったものに変わってきていたんだ。
で、一昨年は、その裏に
「今年こそ、こんな奇跡の一瞬をつくりたいと願いつつ
●○●さんで御挨拶!」と一文あったわけ。
そして昨年の年賀状には
「どメジャーかどマイナーか、
いずれにしろ今年は新作に入ります。乞御期待!!」。
つまり、その“新作”がこの『アルゼンチンババア」だったというわけだ」
----これって確か、よしもとばななの原作だよね?
「うん。彼女の原作はこれまでに
『つぐみ』と『キッチン』が映画化されている。
村上春樹と並んで世界で人気のある作家の小説だけに
注目度も高いとみたね」
----主人公のアルゼンチンババアは鈴木京香だっけ?
最初に話したのは彼女のアップのこと?
「いや。
ぼくは、ヒロインみつこ(堀北真希)の母・良子を演じた手塚理美のアップに
それを感じたね。
お話を簡単に説明すると、
みつこは、父と母の3人家族。
イルカが大好きだった母・良子が病死し、
なぜかその日に限って病院に顔を出さなかった
父・悟(役所広司)は、突然、姿を消してしまう。
半年後、父は広い草原にポツンと立つ風変わりな屋敷で発見される。
そこには、町の人々が『アルゼンチンババア』と呼ぶ
謎の女性・ユリ(鈴木京香)が住んでいた。
みつこは勇気を奮い起こし、父親奪還に向かうが……。
ぼくは、この映画の制作過程を知らないから、
長尾君が自ら望んだ企画なのかどうかさえ分からない。
物語は原作ものだし、
内容云々よりも長尾君色がどう出ているか
そこに興味を持って観たわけだ
----先ほどの話だと、まず<色>だっけ?
「うん。
イエロー系のフィルターを使ったのかな。
アルゼンチンババアの敷地に近づくと、
全体が温かい黄緑色のトーンになるんだ。
青空にも黄色みが少しかかっている。
アルゼンチンババアの屋敷も実際にオープンセットを設営。
CG頼みにしていない手作り感が嬉しかったね」
----ふうん。
あれっ?
手塚理美が演じる母親はすぐ亡くなっちゃうんだよね。
「そう。良子は回想シーンで出てくる。
海でイルカを発見し、大はしゃぎの彼女の帽子が宙に舞う。
そのとき空を見上げた良子の表情に、
実は2年前の年賀状の大女優の笑顔が甦ったんだ。
ああ、なるほど。
長尾君は女優のこの<一瞬>が撮りたかったんだってね」
----でもそれだけじゃ映画にならないのでは?
「ところが、もう一つの素晴らしい表情が
ラストに出てくる。
みつこ=堀北真希が空を見上げる、その<一瞬>だ。
ここでぼくの脳裏には、アルゼンチンババアの鈴木京香ではなく、
母・良子=手塚理美の顔がフラッシュバック。
すると、みつこ=堀北真希は口にする。
『お母さん』。
いやあ、ゾクッときたね。
これぞ映画でしか撮れない世界だ.
長尾君の手の上で親と子は一体化したと言うわけだ」
----ニャるほど。となると今年の年賀状は?
「もちろん。
この映画のラスト、そのアップだよ。
長尾君は見事、<奇跡の一瞬>を撮りあげた。
ぼくはそう思ったね」
(byえいwithフォーン)
フォーンの一言「ネコさんもたくさん出ているらしいニャ」
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