ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『愛の流刑地』

2006-12-05 00:21:21 | 新作映画
「こういう映画はフォーンの前では
話しにくいなあ。
ちょっとどこかに行っててくれる」

----えっ、どうして?
そう言われるとよけいに聞きたくなるよ。
「あとでカリカリあげるから……」
----えっ、ほんと?
だったらいいよ。
「いやあ。まったく、お子ちゃまなんだから。
さて、フォーンがいなくなったところで…
と言っても、なんだか喋りにくいなこの映画。
セックスの最中に『殺してください』と乞う女性。
そのまま首を絞めて殺してしまった男。
果たして彼女の真意は?
男と女がすべての虚飾を捨てて愛し合う……。
その先には<死>をも恐れないふたりだけの世界が
横たわっている。
いや死ぬことでそれを永遠のものにできる……
いつも話題となる激しいセックス描写も、
それだけを取り上げれば、
センセーショナルだけれど、
ぶつぶつ…………」

----ニャに言ってんのよ。
結局は、<純愛>という言葉のイメージを根底から覆そうとする、
渡辺淳一のいつもの世界でしょ。
「あれっ、聞いてたの?
いやあ、助かった(汗)。
ほんと苦手なんだ、こういう映画。
何のかんの言っても、結局は不倫殺人映画だからね。
そのあまりにも過激な描写に
最後まで主役が決まらなかったと言うんだから…」

----実際に観てみてどうだったの?
「性描写としては『失楽園』の方が過激だね。
まあ、セリフに関しては、
こっちもかなりのものだっけど…。
それにしても一昔前の日活ロマンポルノだったら、
この程度、たいしたことなかったはずだけど、
いまじゃ、CMのスポンサーがらみもあって、
なかなか脱いでくれる女優が少なくなったんじゃないかな。
そういう意味では冬香を演じた寺島しのぶは
さすが映画女優だ」

----母親が、あの富司純子だしね。
「うん。この映画では
母と娘役で共演しているのも話題だ」

----監督が鶴橋康夫?
確か映画は初めての人だよね。
「うん。テレビでは長年やっていたようだけどね。
映画の演出はどうかなあ?
雨降る中での逢瀬のシーンがあるんだけど、
周囲は太陽の光が燦々。
明らかに特機による雨降らしと分かってしまう。
後半の法廷シーンでも、
冬香が死ぬ前の日の言動を母目線で捉えた母親の証言が
意外にさらりと流れてしまっている。
その中身からして、本来ならば、
心打ち震えるような感動を呼ぶはずなんだけどね」

----法廷劇と言えば
最近『それでもボクはやってない』も話したよね。
「あの映画で留置所の常連を演じていた
本田博太郎がこっちでは裁判長。
もっとマニアックなところでは
司法修習生として裁判を傍聴する役を演じていた中村靖日が
こっちでは長谷川京子演じる検事の補佐的な仕事をしている。
両者並べて観ると、違った楽しみ方もできるよ。
あっ、それと仲村トオルの<爆発>にも注目!」

----ニャんだか、話が横道にそれている気がするけど…。
「はいはい。今日はこれまで。
おやすみ


                  
    (byえいwithフォーン)


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猫ニュー

『シャーロットのおくりもの』

2006-12-03 14:31:34 | 新作映画
(原題:Charlotte's Web)

----ねぇ、ねぇ。これ、豚さんのお話でしょ。
豚さんって、少し前に『ベイブ』というのがなかった?
「ありましたねぇ~。
あれは牧羊豚さんのお話。
この『シャーロットの贈りもの』も、
やはり田舎町に住んでいて
他の動物たちもみんなお喋りができる。
ただ、あの『ベイブ』に比べて
こちらの子豚ウィルバーは
生まれた時からかわいそうな運命を背負っている。
彼は生まれてすぐに人間によって殺されそうになるんだ」

----えっ、どうして?
豚さんって、
ぼくらと同じくたくさんの兄妹と一緒に
生まれるんでしょ?
なぜその子だけそんなことになるの?
「ウィルバーのお母さんは11匹もの子豚を産むんだ。
ところがお母さんのお乳は10しかない。
そこでいちばん小さなウィルバーが犠牲にされそうになるんだね。
それを止めたのが牧場の娘ファーン」

----えっ、いまニャんて言ったの?
フォーン?
「いや、残念ながらファーン(笑)。
彼女はウィルバーを殺そうとしていたお父さんに抗議。
自分の手でこの子を育てると誓う。
でも家の中には置いておけずに向かいのザッカーマン農場へ。
そこには馬、ガチョウ、ネズミ、羊、牛など
さまざまな動物が住んでいるんだけど、
なぜかみなウィルバーには冷たい」

----えっ。どうしてなの?。
「彼らは変化のない日常を
淡々と受け入れているだけでなく
知っているんだね。
春に産まれた豚は冬を越すことができないということを。
そう、春産まれの豚は
クリスマスのハムになってしまうんだ」

----ゴクっ……。
あっ、勘違いしないで。
これって息を飲んだだけで、
よだれじゃないよ(汗)。
「大丈夫。分かっているよ(笑)。
映画は彼らの視界に入るスモーク小屋を
それこそナチスのガス室を思わせるような
不気味な存在として描いていく。
そんな中、彼にもある友だちができる」

----ニャるほど。分かった。
それがシャーロットだね。
でもシャーロットってどの動物?
馬さん、牛さん?もしかしてネズミじゃないよね?
「なんと、これがクモなんだね。
『私があなたを守ってあげる』。
かくしてその約束を守るべく、
シャーロットはある<奇跡>を起こすわけだ」

----その<奇跡>は聞かない方がいいみたいだね?
でもクモって気持ち悪くニャい?
「いやあ、どうしてどうして。
これが
日本の平安時代の女性を思わせる顔つき。
正面から見るとかわいくて憎めない。
このシャーロットを演じるのがジュリア・ロバーツ。
出産休養後初の出演だからか、
そのおっとりとした口調は
どことなく母性を感じさせてくれる。
その他のキャスティングも超豪華。
ファーンにはダコタ・ファニング。
動物たちにはロバート・レッドフォード、キャシー・ベイツ、
ジョン・クリ-ス、トーマス・ヘイデン・チャーチ。
ナレーションはサム・シェパード。
でも<声>としていちばん特徴があったのは
食いしん坊で自分勝手なネズミを演じている
スティーブ・ブシェミかな」

----それはスゴい顔ぶれだ。
よく集めたよね。
「やはり原作が大ベストセラーで有名と言うことが大きいかもね。
『スチュアート・リトル』のE・B・ホワイト。
この小説は児童文学の世界に初めて<生と死>を
取り入れたことで知られているらしい。
映画を観たら分かるけど、
無数のクモが産まれ、そして宙に旅立つ
クライマックス・シーンなんて、
もう鳥肌もの。
命をつないでいくことの素晴らしさが繊細な映像で描かれ、
それだけで胸が熱くなる。
脚本が『エリン・ブロコビッチ』『イン・ハー・シューズ』
スザンナ・グラントと
『チキンラン』『森のリトル・ギャング』の
キャリー・カークパトリック」

----つまり、女性映画とアニメが合体してるわけだね?
「おっ。なかなか言うね。
あと、やはり最先端のCGだろうね
今から54年前、
この小説が完全映画化できるなんて、
当時はだれも夢にも思わなかっただろうからね」



                   (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「動物さんいっぱい。ぼくも観たいニャ」ぼくも観たい

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猫ニュー

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『善き人のためのソナタ』

2006-12-02 11:50:29 | 新作映画
※カンの鋭い人は注意。※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


(原題:Das Leben des Anderen)

----これって来年度のアカデミー賞の
ドイツ映画代表なんだよね?
フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク?
まったく知らない監督だけど?
「うん。ぼくも知らなかった。まだ33歳の新人らしい。
でもドイツからは『ヒトラー~最期の12日間~』『戦場のアリア』と、
2年連続で骨太な映画がアメリカに乗り込んでいる。
だからこの映画もある程度のレベルは行くんじゃないかなとの予感はあったけど、
まさかここまでの興奮を与えてくれるとは
このキービジュアルからは想像もできなかった」

----確か、左下にヘッドホンをした男の人がいて、
右上にはピアノを前にして
恋人みたいなカップルがいる絵柄だよね?
これってニャんのこと?
「うん。じゃあ、まず物語を話すことにしよう。
舞台は1948年、東西冷戦下、東ドイツのベルリン。
ヘッドホンの男は国家保安省(シュタージ)に勤めるヴィ-スラー。
彼は、劇作家のドライマンと舞台女優である恋人のクリスタが
反体制的であるという証拠を掴むように命じられる。
キービジュアルの上に配置されているのは
このドライマンとクリスタだ」

----なぜ彼らが目をつけられたの?
「どこの国でもそうだけど、
芸術家というのは当局の思惑を超えた活動をする。
自分の内面の声に耳を傾けるからだね。
同じように宗教家も神の声に耳を傾けるわけだけど、
彼らの場合は少し特殊な事情があった。
国家保安省のヘムプフ大臣がクリスタに対して
性的欲望を抱いてしまうんだ。
彼の意を受けた国家保安省の文化部長は
そこでふたりの監視をヴィースラーに命じる。
わずか20分足らずでドライマンの家に盗聴装置を
仕掛ける国家保安省のメンバーたち。
かくして彼らの生活はすべてヴィースラーに筒抜けになってしまう。
仲間たちとのパーティでの会話はおろか、
ドライマンとクリスタのセックスに至るまで…」

----怖いね。自分の私生活が全て知られてしまうなんて。
「そうなんだよね。
しかもこのヴィースラーが実にイヤな性格で、
クリスタが大臣の車の中で体を奪われたこと気づくや、
その現場をドライマンに目撃させ、
ふたりの間に波風を立てようとする」

----うわあ。最悪の男だ。
「ところが、
盗聴を重ねるうち、
ヴィースラーに、ある変化が起こる。
自由な彼らの空気に影響され、
自分の生活に混乱が生まれるんだ。
そのもやもやを娼婦を呼んでまぎらわせたり、
ドライマンの部屋からブレヒトを持ち出して読んだり。
そんなある日、当局から活動を禁止されていた
演出家イェルカが自殺するという事件が起こる。
その日、ドライマンは彼からプレゼントされていた
“善き人のためのソナタ”を弾く。
それを聞いているうちにヴィースラーの目から
ひとすじの涙が流れる。
イェルカいわく
この曲は『本気で聞いた者は、悪人になれない』」

----ニャるほど。ヴィースラーは
その言葉も盗聴で知っているわけだから、
心を大きく揺り動かされるよね。
「そうなんだ。
映画が真にオモシロくなるのはここから。
イェルカの死にショックを受けたドライマンは
国家が発表していない
東ドイツでの恐ろしく高い自殺率を西側メディアに報道させようと動き始める。
一方、クリスタは大臣と密会しようとして
それに気づいたドライマンと気まずい関係になる。
映画は、盗聴されていることに気づいていない
ドライマンたち芸術家グループに対して、
自由や芸術に目覚めたヴィースラーが
どう行動を起こすか、
その過程をスリリングに映し出してゆく」

----ということは、映画はまだまだ続くんだ。
長いお話だね?
「うん。最初は138分と聞いて
正直、腰が引けたけど、
まったくその長さを感じさせない。
ぼく自身、最初は登場人物一人ひとりの顔、
それにそれぞれの役柄を把握しきれなくて、
大丈夫かなとも思ったけど、
中盤から後半にかけては
それこそ前のめりになってスクリーンを見つめていたね。
映画は観る者の<読み>を翻弄するかのように
どんどん先へ先へと突っ走っていく」

----一歩先も読めないの?
「少なくともぼくはそうだったね。
映画を観ている時って、
観客は普通『こうなってほしいな』という
物語展開の予測を無意識ながらも立てるよね。
それは普段の自分の考え方、そして生き方から生まれてくる。
でもこの映画の場合、
クリスタの立ち位置が微妙。
大臣に身を委ねることを
彼女はほんとうに嫌がっているのか?
自分の身の安全確保のためには
それもやむなしと思っているのではないか?
その描き方のさじ加減と、観る人の信条。
このふたつの絡み合いによって
いわゆる<望みうる展開>は大きく違ってくる。
クライマックスでクレスタは
ドライマン密告の決断を迫られるわけだけど、
そこで観客は、彼女の行動がどっちに転ぶのか読みきれない。
と言うよりも
どちらに転ぶのが望ましいのかは
それこそ観る人の判断基準によって変わってくるわけだ。
これは、ほんとうにスリリングな体験だったね」

----ニャるほど、密告、裏切りもテーマとして描かれてくるんだね?
「そう。
実はこのヴィースラーを演じたウルリッヒ・ミューエ自身も
国家保安省に監視を受けていたらしい。
しかも自分の妻であり女優のイェニー・グロルマンに
10数年間も密告されていたということを
なんと2001年に知ったのだとか。
その記録は254ページにもわたるファイルがあるんだって。
もっとも夫人は国家保安省が偽のファイルを作ったと
主張しているんだけどね」

----う~ん。それもありそうな話だニャあ。
「映画的には旧東ドイツの再現も見モノだね。
“異様な静けさ”の雰囲気を表すために
音声には
なんとデジタル録音ではなくアナログ音が使われている。
とにかくもう一度は観たい映画だね」



                 (byえいwithフォーン)


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『あなたを忘れない』

2006-12-01 01:19:17 | 新作映画
※注:ひさびさの辛口注意報発令!

----これって実話なんだよね?
JR新大久保の駅で韓国の若者が
ホームから線路に転落した人を助けようとして
命を散らしたと言う…。
「うん。でもあのとき、
実は日本人カメラマンも同じ行動に出て
同じく命を落としている。
ただ、それが「異国の地」だったというところがやはり強烈で
ニュースでも、彼イ・スヒョンさんを中心に取り上げていた。
この映画は、その話を基に
事実とは異なるエピソードを盛り込んで作り上げた
日韓合作映画なんだ」

----えっ、まったくの実話というわけじゃニャいんだ?
「そういうこと。
主人公のイ・スヒョン(イ・テソン)は韓国からの留学生。
兵役を終えたばかりの彼はギターが抜群に巧く、
またスポーツも大好き。
両親を心から敬い、性格は明るい。
この映画の彼を観ていると、
韓流映画、そして韓国スターが
年配の女性に受ける理由もわかってくる。
日本に比べて、韓国の青年たちは遥かにオトナ。
彼らは兵役と言う、自由を奪われた世界を経験している。
その中で、国とは?男とは?ということを考えるわけだ。
それが自分の好きなものを自由に選択でき、
しかも実力もないくせに、
夢が叶えられといって嘆く日本の若者と対比して描かれる。
彼らから見れば、まさしく甘えたコドモというわけだ」

----ニャるほど。韓国の男性は男気があるというワケだニャ?。
「うん。それがかつての日本映画で育った女性達の郷愁を誘う。
石原裕次郎や高倉健、そして加山雄三。
もちろん、いまの韓流ブームを作っているのは、
それよりももっともっと若い世代だけど、
いまの日本映画にはとても望みえない理想のオトコが、
少なくともそこにはいるわけだ」

-----う~ん。でもこの映画ってそんな映画だったっけ?
「いや、そうじゃないはずなんだけど、
決して嫌韓じゃないボクが見ても、
この映画はなぜかあまりにも
韓国の青年を日本の若者と比較し、
しかも美しく描きすぎている。
さらに言えば、
在日の問題にまで目を向け、
日本の過去を断罪しているところもある。
主人公は山登りが好きで富士山を登山。
その上、父がかつて住んでいた大阪まで
マウンテンバイクで向かうんだ」

-----体力もあるんだね?
「映画の中で本人も『体力には自信がある』と言っていた。
つまりすべてにおいて秀でているわけだ。
でも、プレスなどでは彼は<特別な人>ではないと触れている。
正直、よく掴めない映画だったね。
彼とロマンスの花を咲かせる女性・ユリ(マーキー)は
ストリートミュージシャン。
人に心を開かない彼女を支え、
見守るのがイ・スヒョン。
クライマックスはインディーズの決勝大会。
う~ん。やはりこの描き方だと、
実在のイ・スヒョンさんが
なぜあのような行動に出たのか、
そしてどういう人だったのかに迫ることはできないのではないかな。
あまりにも作りものめいている」

----う~ん。辛口ダニャ。
「それでも線路に落ちた酔客を救おうとするシーンは
やはり泣ける。
なぜ、逃げる時間があったにもかかわらず
彼は電車を避けようとしなかったのかも明らかにされる。
ここは実話らしいけど、それはやはり感動的」

----つまり映画よりも実話が勝っているというわけか。
「う~ん。ぼくにそれを言わせないでよ」
                  
    (byえいwithフォーン)


※話の作りがベタすぎる度
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